隠れオタでもいいじゃないか
主にPCゲームの二次創作を書かせていただいています。 あとは最近やっているゲームやら読んでいるラノベやらのこととか……。
D.C. SS(3) Canvas2 side story(1) 未分類(34) 藤浪朋子 SS(29) CLANNAD SS(2) D.C. SS(1) FORTUNE ARTERIAL SS(3) キリ番SS(1) リトルバスターズSS(4)
07月20日(日) [ 未分類 ] # 78 <固定リンク>
- もう少し……
-
ちょっと忙しくて全然更新できていません。_| ̄|○
テストとかいろいろいろいろありすぎです。今月は無理かもという感じです。
来月になったらがんばるんで待っていてください。リトバスEXも出ますから……
06月19日(木) [ FORTUNE ARTERIAL SS ] # 77 <固定リンク>
- FORTUNE ARTERIAL 千堂伽耶SS 『れくとあんぐる・ハート』〜ハーレムエンドなんか存在しませんから〜
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温暖化の影響か一足飛びに訪れた猛暑。鬱陶しいほどに求愛行動を続ける蝉たちと嫌気が差すほどの降水量。クラスメイトたちが脱力しながら過ごす毎日だが、俺の心情はここ数日非常に穏やかだった。
というのも吸血鬼のおかげか、気温の変化に耐性がついたのが一つ。うだるような暑さも辟易するような湿気にも不快感を覚えることはなかった。まあ副会長はそれでも暑そうにしていたが要は慣れの問題なのだろう。今は不便な状況が一転したための快適さ。これから先はその快適な状況が普通になり、しだいに不自由を感じるようになってくるのだろう。とりあえず今だけのボーナス期間みたいなものだろう。そして二つ目、ここ最近学園生活がとても平和だ。生徒会の仕事はそれなりに忙しく、クラスでは紅瀬さんや陽菜たちと楽しく話したり――そうそう、数日の間行方不明だった司がようやく戻ってきた。本人もどうしてそんなことになったのかは覚えていなかったらしいが――寮でもみんなとお茶会をしたり。ふと嵐の前の静けさではないかと嫌な予感も芽生えたりするが……
ともかく平々凡々な日々をようやく勝ち取れたと思えたある日。今回の物語はここから始まる。
FORTUNE ARTERIAL 千堂伽耶SS
『れくとあんぐる・ハート』
〜ハーレムエンドなんか存在しませんから〜
「なあ、今日は何の集会なんだ?」
俺の横を歩いていた司が不思議そうに尋ねる。眠そうな瞳を何とか開きながら気だるそうに歩く姿は、さながら真夏の動物園に放り出された白熊のようだ。
「残念ながら俺も知らないんだよな」
俺たちは全校集会に参加するため講堂に向かっていた。外はぎらぎらと輝く太陽が昇っており数十分突っ立っていたならば運ばれていってもおかしくない気温(のようだ。前述の通り俺は平気だ)なのだが、講堂は冷房がかかっているため、かなり過ごしやすくはなっている。ただ人の熱気のせいでそれほどの効果は期待できないが。
「知らないって……お前生徒会だろ?」
「生徒会でも知らないことは知らないんだよ。ただ今日起きたらメールが入ってただけ」
言いながら携帯を取り出し司に見せる。
「……本日体育館で緊急の集会を取り行なう。各員、至急準備をされたし……?」
「てなわけだ。んで朝っぱらから準備をしてたんだけどさ、送り主も分からない。結局副会長も東儀先輩も白ちゃんも知らないって言うし。ただ会長は怪しかったけど……兎に角理由は分からないまんまだったよ」
「あ〜……まあなんだ、俺は寝られればなんでもいいよ」
「お前はそういうやつだよな」
ぐだぐだと会話を交わしだらだらと歩き続けようやく講堂に到着した。本来ならばもっと早く着けるのだろうが、司を放置しておくと暑い暑いといいながらもその辺で寝てしまうだろうから誰かが連れてこないといけないのだ。その誰かとはつまるところ俺だ。他のやつは怖いからといって近寄ってこない。
俺は司を後列の椅子に座らせると、自分は脇を通って裏へと回る。そこから壇上に上るとこちらからは生徒の姿が見え、向こうからはこちらが見えない場所がある。ここが生徒会役員の定位置だ。
「もう、遅かったじゃない。生徒会役員たるもの全校生徒の見本となるものなのよ? それなのに一般生徒より最後に来るなんて」
着くなり委員長のような言葉を浴びせてきたのは副会長だった。
「悪い。ちょっと司を連れてくるのに時間がかかった」
「またなの? 全く、ようやく紅瀬さんがまともになってきたと思ったら次は八幡平君だなんて……これは指導が必要かしら」
不穏な教育的指導を連想しながら哀れ司と心の中で呟く。もちろん口に出したりはしない。冗談でもそんなことをすればついでとばかりに俺まで指導されてしまうからだ。
殺伐とした雰囲気に恐怖しながら俺のために空けられた席に座る。怪しげな笑い声を上げる副会長と若干距離を開けながら。そうすると当然逆側の人とは距離が近くなるわけで。何気なく見たその隣――白ちゃんと視線がばっちり合う。一瞬どうリアクションを取るべきか迷ったが、とりあえず笑顔になってみた。
すると一瞬の疑問を浮かべた後、白ちゃんも満面の笑みを返してくれた。無垢で純真で、それでいて華やぐように。まさに癒しを具現化した笑顔だった。長らく続いた恐慌の日常によって擦り切れ叩かれ荒みきったその心が今この瞬間に洗われるような心地だった。俺は無意識のうちに癒しを求めふらふらと白ちゃんに引き寄せられ――
残り一メートルの距離で思いとどまった。
思いとどまらされた。
肩口から覗く一条の光。それは暗い闇の中から正確に俺に狙いをつけ虎視眈々と機会を狙っている。銀色に鈍く輝くその輪郭は暗く落ち込んだ相貌に反するようにぎらぎらと輝き俺の目を釘付ける。もし目を離そうものならその次の瞬間にどのような結果になるのか想像できない恐怖、逸らすことなどできはしない。幽鬼のように曖昧な輪郭にも関わらず、強烈な殺気のみがそこにあった。つうっと頬を伝う汗。からからに乾いた喉は万全に呼吸をすることさえ困難にしていた。
とりあえず怖いっすから東儀先輩。
どうやら俺に許された距離は一メートルらしい。距離を開けるとともに東儀先輩の殺気が薄れていく。まあ他の人間だったら数秒間視線を合わせるだけでアウトらしいからいい方だろう。未だにローレル・リングに人が入らないのは東儀先輩が希望者を闇に葬っているという公然の秘密があるぐらいだ。
「あれ? そういえば会長はどうしたんですか?」
副会長、白ちゃん、東儀先輩はいるにも関わらず肝心の会長がまだ居なかった。
「伊織なら準備があるといって先ほど出て行った」
「準備?」
「ああ。準備が整い次第始めるからそのまま待っていてくれ、だそうだ」
「まったく、アレのいい加減さには困ったものね」
辟易しながら肩をすくめる副会長に困ったような笑みを浮かべる白ちゃん。
「ですがしっかりしているところもありますよ」
「まあ有能ではあるけれどね」
それは俺も同感。同じことをやれといわれても絶対に無理だろう。あのカリスマ性や決断力、判断力。それは決して真似できない天性のものなのだろう。
そんな俺たちの注意を引き付けたのは耳を劈くほどの大歓声だった。講堂内を揺るがし、空気を振るわせたその人はまさに話に出ていたその人だった。
「何で会長が?」
「さあ? でも予想通り兄さんの仕業だったようね」
ちらりとステージのほうに目線を送る。突如巻き起こる伊織コールを浴びながら歩く会長を見ながらそう呟く。
「あれって……伊織先輩ですよね? いったい何を持っているのでしょうか……?」
颯爽と歩く会長だったけれども、白ちゃんが言うように何かを担いでいた。大工道具のように用途不明の物を担いでいるのだが全く持ってビジュアルと合っていない。にも関わらず違和感を持たせない会長のスペック。おそらくヘルメットとスコップを持っていても似合ってしまうに違いない。
まあそれはともかくとして、一体何を持っているのか。若干遠めではあるが吸血鬼アイを凝らせばすぐに見える距離である。目を細めるようにして意識を瞳の先に集中すればほら、一瞬にしてその詳細が見えてくる。
「あれって……階段か?」
「の、ようね……」
「そのようだな。以前に監督生室で目にしたことがある」
「階段ですか?」
一般的な視力を持つ白ちゃん以外には同様のものが見えているらしい。しかしだ、それを何故会長が持っているのかはさっぱりだ。まあ一般人の思考と志向を持つ俺なんかに狂人にして才人の嗜好なんかは理解し得ないのだが。
その会長は相変わらず続く伊織コールを受けながらステージの中央に置かれていた演台の前に階段を置くと、演劇のように両手を広げながら颯爽と視線を持ち上げた。
「すまない、みんな…….」
それだけで会場が静まりかえる。あっ、会場じゃなくて講堂だ。やばいなぁ……本気でライブ会場に思えてきてしまった。
「突然集まってもらって悪かったと思っている。貴重なみんなの時間を奪ってしまう俺を許してくれ」
「毎回思うのだけれど兄さんはもっと普通に話せないのかしら」
あんたも大概だぜ副会長さん。まあそこがいいところだけど。
「だが……だがっ!! 今日みんなに話があるのは俺じゃないんだ……」
訴えかけるように、見るものの憐憫を誘うかのような会長の言葉にほとんど全ての生徒が聞き入っている。残りは涙を流してまともに話を聞けない状況だった。なんつーか、とりあえずすごい人だ。最近の演技もまともに出来ないような俳優の変わりにドラマに出てほしいぐらいだ。ちょっと前まではよかったんだけどなぁ……十年位前にやってた子供戦争、だっけ? まあそんな感じのドラマ世代の子役が大人になったぐらいの年代のやつらか、兎に角酷すぎるからなあ。
閑話休題。会長の心の篭った訴えに会場中の――もう会場でいいや。会場中の人間がその主役へと関心が向かっている。
「では脇役は潔く身を引かせてもらおう」
会長が数歩下がるにあわせて見慣れた人影が袖から姿を現す。豪奢な着物を身に纏い、身の丈に合わぬその存在感を持つ人物。
「ってお母様っ!?」
思わずツッコミを入れたくなるその気持ちはよく分かる。俺が声を出さなかったのは、いや出せなかったのはその後の展開が何故か、知りたくなかったが、分かりたくもなかったが、用意に想像できてしまったからだ。
副会長の言葉が聞こえたのだろう。こちらに視線を向けた伽耶さんは意味ありげな笑みを浮かべた。会長もまあまあとでも言うように手のひらをこちらに向け、そうした後マイクを伽耶さんの前にあるスタンドに返した。
それを受け伽耶さんが視線を生徒に移した。伽耶さんが生徒に姿を見せるのはおそらく初めてだろう。一応この前悠木シスターズと司に顔を見せたから厳密には初めてでは無いけれど、公の場では初めてのはずだ。引きこもり児童だった伽耶さんの学校デビューといったところか。あるいは転校生紹介。みんなも突然登場した幼女に視線を引き付けられている。
「紹介に預かった理事長の千堂伽耶だ」
小さな咳払いとともに伽耶さんが口を開いた。戸惑いと好奇の声を上げていた生徒もその凛とした声に自然と静まっていく。
「暫しの間所用で外していたので多くの者は初見であるかと思う。以後見知っておいて欲しい。それでは私のほうから幾つか報告させてもらう。
まずは次週に迫ったプール開きについてだが、以前に書面で通達したように整備委員と水泳部はプールの掃除をしてもらう。またこれには有志の参加も受け付けている。希望のものは申請書を生徒会前に設置してある専用の箱に提出すること。
次に各部の追加予算について。春の大会において優秀な成績を収めた部活動に特別手当を授与することが先日の会議で決定された。対象となる部活動については顧問に通達してあるので各部確認しておいてほしい。
次にだが――」
意外、だった。伽耶さんが出てきたときはどんな騒ぎになるかと思ったのだが、平均以上に上手くできているではないか。まあ報告自体は生徒会の仕事の範疇であるものも含まれているのだが、おそらく出来る限り伽耶さんに話をさせようと会長が譲ったのだろう。
それにしても話し方が上手い。抑揚の付け方、呼吸をするタイミング、発音の仕方も聞いている人間のことを考えている話し方だった。以前は威圧的な印象しか受けなかったのだが、今はそれとは完全に正反対だ。俺も副会長も白ちゃんも感心して、あるいは感動して伽耶さんの話に聞き入っていた。
「最後に私的なことではあるが報告しておこう。私の名前から薄々感づいているものも居るかと思うが、この千堂伊織の親でもある」
会場中にざわめきが走った。まあ当然の結果なんだけど。確かに千堂って苗字は珍しいから親戚かそこらだとは思うが母親とは思わないだろうな。
「それと近々、千堂から支倉に代わるのでよろしく頼む」
「「またそれかっ!!」」
見事に重なった二人の声。これ以上余計なことを言わせるかと立ち上がろうとしたのだが、その前にまるで引っ張られるようにして椅子に叩きつけられてた。
いや、これは叩きつけられているのではなく――
「なっ!? 椅子が動いて――」
「ど、どうなってるの!?」
「きゃああぁ」
パチンコではじき出されるように椅子が急発進。床を滑るようにして移動し――突如急停止。そうなると慣性の法則というもので。
気をつけて、車は急には、止まれない。
見事に放り出された俺たち四人は宙を舞っていた。突然のことに混乱はしたが、どうすべきかは身体が分かっていた。スロー再生を見ているかのごとく長く感じられる時間の中でゆっくりと自分の身体を動かしていく。落下が始まる前に反転、下半身を床側に、衝撃を殺し、体制を整える。
摩擦とともに音を上げる靴。両手両足でブレーキをかけながら何とか着地する。ポーンと放り出された白ちゃんは東儀先輩が見事にキャッチ。副会長も華麗に着地、はしたのだが。
「え゛っ?」
何故か勢いよく反転、逆立ちに近い状態になってしまった。加えてそれだけでは収まらずそのまま滑っていく。逆立ちをしたままで。くるくると回転しながら滑るその姿はブレイクダンスをしているかのようにも見えるが、違う点は本人には制御できないというところだろう。
そのまま真っ直ぐ反対側の袖へと吸い込まれていく。反対側――でっかい木材とか看板とか、用途不明の器具だとかの束――に突っ込んでいく副会長。いくら渾名がアレだからってホントに突撃しなくても……
などとボーリングの玉ように滑っていく副会長を悠長に見送ってしまう。だって俺にはどうしようもないしね? いくら身体能力が高くても物理法則には逆らえません。
反対側まで行き着くとまあ当然のごとく荷物の山にぶつかるわけで。
ここで質問。壁に寄りかかるように立てかけてある物の下方に対して、壁と垂直に力が加わるとどうなるか。
A、倒れてきます。
まあアレだ。ドミノ倒しをイメージして欲しい。正し倒れる方向はある一点に向かってだが。何の因果かその一点に居る副会長。あまりの轟音に擬音で説明するのも困難なほどの衝撃が会場に鳴り響く。副会長の状態は恐ろしくて確認することが出来ない。まあしいて言うならばアレだ。落下したトマト。あるいは叩きつけられたヒキガエル。
にしてもなんであんなに滑ったのだろうかと床に視線を落とせば、これでもかと磨き上げられたレーンがあった。いや、この光沢はワックスだろうか。あるいは氷か? ともかく異常なほどに摩擦が小さくされているのだろう。こんなことをするのは一人しか知らない。
「……準備ってこれですか?」
「はっはっは。何のことだいマイファーザー? 僕には何のことかさっぱりだよ」
「さわやかな笑顔で何を呟きやがりますかこの野郎」
「止めてくれよ父さん。今の時期しつけと虐待は紙一重なんだから気をつけてくれよな」
「だ・れ・が!! 父親ですか!?」
「それじゃあ弟かい? 個人的には父親になってくれたほうがいいのだけれどね。それより支倉君、いつまでいちゃついているんだい? 息子としては両親のバカップル振りほど対応に困るものはないんだよ」
「へ?」
そういわれて初めて自分の隣に人がいることに気がついた。副会長の身体を張ったパフォーマンスに意識を奪われていたため今の今までそんなこと気にもしなかった。反射的にいわれた方向を振り返ってみればそこいたのは伽耶さんであった。ハテナマークが三つ並びそうな状況だったが、よくよく考えてみれば伽耶さんは初めからここに立っていたのだ。突っ込んできたのは俺のほう。
「ただなんで顔がこんなに近いんですか?」
「それは孝平の顔を良く見えるようにするためだ」
「なんで腰に手が回っているんですか?」
「それは愛しい孝平を受け止めるためだ」
もしかしてどうしてそんなにお口が大きいのと尋ねたら食べられてしまうんだろうか……
「ところでその台はどうしたんですか?」
「これか? 伊織に言って持ってきてもらったものだ。ただそれだけでは味気なかったのでな、少々手を加えたがな」
手に入れたおもちゃを自慢げに見せびらかす子供のようだった。ただそのおもちゃはものすんごい高級そうだった。表面は……漆か? 俺には良く分からないが。良く見れば所々に意匠が凝らしてあるし、おそらく俺には想像もつかない値段の代物なのだろう。
「どうだ、雅だろう?」
雅というよりみやびだ。なんだ俺は伽耶ちゃんぷりちーとでも言えばいいのか?
「ねえ支倉君、ちょっといいかい?」
「どうかしたんですか会長」
「さっきもいったんだけどさ、いつまでくっ付いているんだい? みんな見てるよ?」
会長の指を指すままに視線を向ければそこにいるのは全学院生。好機の視線が束となって俺に襲い掛かってきた。
途端に羞恥心が湧き上がってくる。
「ちょちょちょっと伽耶さん!? いい加減その手を離してもらえないでしょうか?」
慌てて引き剥がそうとするのだが、がっちり食い込んだその手は一向に離れそうも無い。
「まあそう言うな。丁度いい機会ではないか」
「いい機会?」
馬鹿みたいに鸚鵡返しに呟いた俺に、会長が肩を叩きながらにこやかな笑みを浮かべてきた。
「そう、いい機会だよ」
遊園地で配られる風船のように手に紐を握らされた。反射的に引っ張ってしまう俺。すると一瞬の手ごたえとともに背後の壁が剥がれ落ちた。
「ドンドンパフパフ〜。第一回チーム対抗型鬼ごっこ〜」
秘密道具でも出すかのように声を上げる会長に唖然としてしまう。会場中も静まりかえり会長の言葉に聞き入っていた。
「今回の企画を説明させていただきましょう。ルールは簡単、鬼を捕まえるだけです。参加可能なのは全校生徒だれでもです。一チーム最大三人までとしてある人物を追いかけてもらいます。そのある人物とは――」
スポットライトがある一点に集中する。まあ言うまでもなく俺なのだが。
「って俺ですか!?」
「はい、ナイスツッコミをありがとう。そう、とある人物とは我が生徒会役員である支倉孝平君です。この支倉君を最初に捕まえたチームには豪華賞品を差し上げます」
「そこから先は俺から説明させてもらおう」
いつの間にか横に立っていた東儀先輩が会長かマイクを受け取り一歩前に躍り出た。それだけで会場中の熱い視線を独り占めしていた。
「豪華賞品とは形あるものではない。それは優勝者の望むもの、刑法に触れない限りはどんなものを望んでもらっても構わない。東儀家が全力を尽くしてバックアップをさせてもらおう」
その言葉に会場のボルテージが一気に引き上げられた。東儀家が付く、それはすなわちこの島で出来ないことは何も無いということだ。先ほどまでは半信半疑だった生徒も今では完全に乗り気になっているだろう。
「といっても誰もがその権利を得れるわけではない。もちろん参加は自由なのだが……」
そう言って何やら番号の書かれた布のようなものを取り出す。
「参加者にはこの鉢巻を身体の見える部分に結んでもらう。同じ番号の書かれたものが三枚、チームに三枚ずつ配られる。これを持っているチームだけが鬼を捕まえることが出来る。ここで重要なのは一つだけリーダー用の鉢巻があることだ。他の鉢巻きが取られても即失格にはならないがリーダーのものが取られたらそこで終了となる。ただしリーダーでなくても鉢巻を取られた人物はそこで退場となる。
しかしチームの誰かが再び鉢巻を取り返せば再び参加することも出来るので最後まで諦めないことだ。基本的なルールは以上となる。詳細はこの後各クラスに配布するのでその際に確認すること」
「補足させてもらうと直接的な暴力は禁止だよ。ただ危険が及ばないようなトラップはOKだ。そのあたりは自己判断で頼むよ。もしも危険だとこちらが判断すればペナルティーを受けてもらうからね」
何がなんやら。いつの間にか鬼にされた俺。まあ吸血鬼だからあながち間違いでは無いんだけどさ。それにしたってもうチョイ事前説明があってもいいんじゃないのか?
「だって言ったら反対するだろ?」
「当たり前です」
俺の返事に満足そうに頷くと再び生徒のほうに身体を向けた。
「先ほど行ったとおり賞品は自由だ。お金でも構わないし世界一周旅行でも構わない。身近なテスト免除でも気になるあの子あの人とお近づきになるのでも構わない。まさにアタック・チャ〜ンス」
「それはアレですか……?」
「めがねめがね〜」
「それはきよし違いです。あと東儀先輩の眼鏡を取らないように。多分本気で怒ってますよ」
どす黒いオーラが渦巻いてるあたり。
「それにだ、もしも逃げ切ったら君にもごほうびがあるからさ」
「ごほうび?」
訝しげに呟くと、会長は俺の傍に顔を寄せると越後屋のようにニヤリと笑った。
「瑛里華といいことをさせてあげよう」
「アホかぁぁぁっっっーーーーーっ!!」
数十メートルを一瞬でかける助走で副会長が飛び込んできた。突っ込みも忘れずに。
ただその右手に持つものはハリセンではなく角材だったが。この兄妹の漫才は命がけだな。
「え、瑛里華……なぜ、角を、取らない……?」
「角を取ったら殺傷能力が落ちるでしょ?」
小学五年生を相手に説明するかのような懇切丁寧な副会長の言葉。ただ言っている間もその両手は正確に振り下ろされているが。
「なあ……瑛里華…………どこからか、ごめんなさいって…………聞こえないか?」
「聞こえないわね」
集会で繰り広げられる惨劇。つーか対性のない人間が見たら卒倒する光景だぞ? そうでなくても副会長に対するイメージは滝のように落ちきっているだろうよ。
「それでは開始は三時間後の十二時からとする。全員用意をしておくこと。説明はこれで終わらせてもらう」
それでも動じることなく(眼鏡を取り返して)そう締めくくった東儀先輩。一礼をするとその場を伽耶さんに譲るように一歩下がった。
「以上を持って今回の集会を終わらせてもらう。一同礼」
こうして集会は終わったのだが、惨劇の気配は容赦なく俺の背後へと近づいていた。
<続>
ようやく更新完了です。まあ続きは結構早めに更新する予定☆
ただし次回はバトルものです(嘘)
ここ最近メモオフにはまりました。ヒストリーが手に入ったんでずっとやってます。いや、キャラがいい。普通なんだけどその普通さが。どっかの地雷作品よりもよっぽどね。
ちなみに一番気に入った台詞はこちら。
「デモは機動隊が鎮圧しました」
ちょっと違うかも知れんけどこんな感じ。私生活でもつい使えそうな台詞っすね。
06月02日(月) [ 未分類 ] # 75 <固定リンク>
- どっちを先にあげようか
-
一応次のアップ予定はFAー伽耶様SSか、CLANNAD−杏の続編SSのどっちかです。
今のところ前者がプロットのみ、後者が四割ほどです。ただ後者は中盤のつなぎの部分でぐだりそうなんで進行スピードが落ちそうです。前者はギャグの予定だし、それなりに書けそうな予感。
んでどっちを先にやるべきか。多分先に取り掛かったほうが週末ぐらい、次が再来週の頭ぐらいになるかと。まあ皆さんのコメント見てから決めようかと。なんもリアクションが無いようなら杏の方にいきますw
今フルボイスのほうやって感動中(*ことみ編)次に姉妹ルート行くから多分モチベーションが上がります。でもリリカルDS@きなこもやりたい_| ̄|○
05月30日(金) [ 藤浪朋子 SS ] # 74 <固定リンク>
- それはすぐ傍に(28)
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子猫はとても寂しく思いました。少年の傍には自分の居場所が無いと感じたからです。
胸がずきずきし、涙が零れてきました。
一人で町をとぼとぼと歩きました。冬の空は子猫の姿を何も言わず見下ろしていました。
人がたくさんいるところへ行ったのに、だんだんと寂しくなってきました。そこにはまるで自分の居場所が無いかのようでした。
子猫は家に帰ろうと思い後ろを振り返りましたが、そこで驚くことに気がつきました。子猫は帰り道が分からなくなってしまったのです。
知らずしらず遠いところまできてしまった子猫は迷子になってしまいました。きょろきょろと辺りを見回しても自分がどこにいるのか分かりませんでした。誰かに尋ねようとしてもみんな無関心に通り過ぎて生きます。
子猫は必死に歩き回りました。けれどますます迷ってしまうばかりでした。
どれだけ探したでしょうか、とうとう歩きつかれてその場に座り込んでしまいました。
声を上げて鳴き続ける子猫に誰も気がつきません。
一人、また一人と子のこの前を通り過ぎていきます。
涙は止まることなく溢れてきます。
そんな子猫の前で足を止める人がいました。
子猫が泣き顔のまま視線を上げれば、そこにいたのは絵描きの少年でした。冬の寒さにも関わらず汗をびっしょりとかいていました。けれど少年の顔には疲労ではなく安堵の表情しかありませんでした。
一番でも二番でもなく、順番など関係ありませんでした。自分にとっても、相手にとっても、ただ大切であればそれでよかったのです。
思わず少年の腕の中に飛び込んでいました。
迷子だった子猫は、ようやく安心することが出来ました。
(28)
校門から見上げる空は生憎の曇天だった。なにをもって生憎なのかはよく分からないが。春や夏ならば晴れがいい天気だと思うが、冬の空ならば雪が降るのが相応しい天気とでも言うのだろうか。まあいい天気などというのは、その個人がそのときの都合で勝手に決め付けるものなので一概にどれがいいなどと定義できないのだが。
約二十分ほど、そんなどうでもいいことをこの寒空の下で延々と考えながら時間を潰しているのだが。現在の時刻は既に八時十五分を回っている。予鈴が二十分になることを考えるとそろそろ教室に向かわなければ間に合わない。
というのも昨日の海での会話が発端だった。久々の学校、それもようやく手術をし健康とは言えないまでも病人ではなくなったのだ。これからクラスの中でも馴染まなければならないと考えると非常に緊張してしまう。受験など受かって当たり前の気持ちだったから、今は比べるまでもなく心臓が高鳴っている。足が震え気味なのも寒さのせいでは無いだろう。
つまるところ一人で登校することは出来ても、教室に入る度胸はちっぽけな胸には詰まっていなかったというわけだ。比喩的な意味合いであって、決してスタイル云々の話ではない。
そういうわけで一緒にドアを潜る相手を待っているのだが。
「遅い……」
時計を見ながら何度目か分からない呟きを零した。本気で先に行こうかと思った矢先、目の端に特徴的な色が引っかかった。
ゆらゆらと風にたゆたう髪。にび色の空を背景に映える月の色は、ただそこに居るだけで確かな存在感を見せ付ける。一歩、また一歩と歩調を乱すことなく優雅に――――とは程遠かった。近づくにつれよく分かるが、のんびりしているというか無頓着というか、遅刻ギリギリであるのを気にしているようには見えない。
「ごめーん朋子ちゃん。待った?」
「うん。かなり」
私が着いてから三十分近く遅れてようやくエリスちゃんがやって来た。詳しい時間は決めていなかったものの、これほどまでに遅くなるとは思っていなかった。
「ごめんね〜。急いだつもりだったんだけど遅くなっちゃった」
手を合わせて謝るエリスちゃんだったが、私の観察眼が「ダウトッ!!」と声高らかに宣言した。
まず乱れていない制服、次に整った髪。汗一つかいておらず、上気もしていない肌。整った呼吸。結論――のん気に歩いていました。
「……何時に家出たの?」
「えっと……何時だっけ? 起きたのが七時三十分ぐらいで、それからご飯食べて……」
うんうんと唸りながら朝のスケジュールを挙げていく。朝食をしっかりとって身だしなみを整え急ぐことなく歩いてくる。それを聞いているとまあ確かにこの時間になるだろう事は想像できた。というかゆっくりしすぎだ。とりあえずあと十分早く起きれば間に合うだろう。
「上倉先生と一緒にこればいいんじゃないの?」
「お兄ちゃんとか〜。でもお兄ちゃんって私を起こすのはいっつもご飯作った後だから。それから急いでも私が食べ終わったらすぐに出ちゃうもん」
いくつか問題点があるのでは。
「……上倉先生に起こしてもらってるの?」
「そうだけど?」
それが何か? とでも言いたげな口調。決して優越感などではなくそれが当たり前、しないほうが変だと言うようにエリスちゃんは頷いてみせた。
「前まではお兄ちゃんの布団で寝てたんだけど最近は自分の布団で寝ろって言うんだよ。冷たいと思わない?」
……私にどんな答えを期待しているのだろうか?
「ま、まあそろそろ一人で起きられるようになってほしいんじゃないかな?」
「む〜。でもねでもね、その起こし方が酷いんだよ。私が布団に包まって寝てたら、こう布団の端を持ってずばーって。しかもその後ごろごろごろーって転がっちゃったんだよ?」
テーブルクロスを引くように腕を動かす仕草を見せる。まあ言いたいことは理解できるのだけど。
「随分とエキセントリックな起こし方ね……エリスちゃんも驚いたんじゃない?」
「あっ、なんかそれでも目が覚めなかったらしいの。後になってお兄ちゃんがそう言ってただけだから良く分かんないんだけど」
――エキセントリックはそっちか!?
まあそんな話をしながら廊下を進んでいたのだが、いざ教室の前まで来るとまるで枷でも填められたかのように急に足が重たくなってしまった。
「朋子ちゃん?」
「あ……な、なんでもないから」
とは言ったものの確実にばれているだろう。登校拒否になる人間の気持ちが良く分かる、
というより私も立派な登校拒否だろう。
硬くなった身体をほぐすように大きく深呼吸。震える鼓動を押さえつけドアに手を伸ばし――
「早く入ろうよ」
「きゃっ!?」
背に衝撃。何かを理解する前に身体が前のめりになる。何とか持ちこたえたものの、二歩三歩と蹈鞴を踏んで勢いよく飛び込んでしまった。
「あ、ごめん。そんなに強く押したつもりはなかったんだけど」
く、これが身体能力の差か……どこまで私の身体は錆び付いているのだ!? ではなく。
「まったく、危ないでしょ。いい? 人の背中を押すのは危険だから止めときなさい。そもそもエリスちゃんは意外と力あって私は人並み以下の体力しかないんだから」
「それはそうだけど、朋子ちゃんがドアの前で止まってるから。もう予鈴なりそうだったし」
まるで見計らったようにエリスちゃんの言葉に合わせてチャイムが鳴り響いた。確かにギリギリだった。それに遅れてきたのはエリスちゃんだったとしても、私から頼んで待ち合わせたのだ。遅れそうになるのが嫌ならば先に行っていればよかっただけの話。それを棚に上げて怒るのも筋違いだろう。
「まあ、そうね」
この話はここで終わりにしておこう。
「えー、鳳仙、藤浪。話が終わったのなら席についてくれないかな?」
思わぬところから割って入った声に驚きの表情を向ければ、そこには困ったような怒ったような、それぞれを足し合わせた笑顔を浮かべた担任が立っていた。加えて私たちに向けられる顔、顔、顔。クラス全員の視線が私たちに向けられていた。あんな騒ぎながら入ってきて、そのままドアの前で突っ立っていたならば注目されるのも当然だけれど。
羞恥と陰鬱たる気分を抱えながら自分の席に向かう。せめてもの救いは私の席が後列にあることか。
それにしても厄介なことになってしまった。手術前と後では状況が全く違う現在、私の気分は転校生も同然だった。まさに新たに人間関係を作らなければならないこの状況、むしろ私に対する壁があることを考えると転校生よりも不利かもしれない。そんな中で先ほどのような奇妙ととられる行動で注目されたとなるとますます生活しにくくなるではないか。
「――ところで藤浪」
同じく自分の席に向かうエリスちゃんを見送りながら、思わず溜息をつきそうになったところで唐突に名を呼ばれた。反射的に顔を向ければ声の主は担任だった。
「手術したんだよな」
「え、はい……」
意図が理解できず曖昧な返事を返す。
「あまり無理はせずに調子が悪いようだったら友人に助けてもらえよ」
「は、はい……ありがとうございます」
その瞬間教室がざわついた。
なぜかクラスの人間が私のことを見ている。そのプレッシャーに思わず気おされそうになってしまった。さらに不思議なことにエリスちゃんは笑顔だったが。
「ん、んん。それじゃあホームルームを始めるぞ――日直」
「きりーつ」
腑に落ちないまま立ち上がった。
「Time passed quickly, and Tommy became more active every day. In no time class was over.」
「エクセレント、ミス・フジナミ」
一時間目――英語。
休んでいたのはそれほど長くなかったため、浦島太郎のようにはならなかった。一応自分でも予習をしていたため楽だったと言えた。若干教師の発音が駄目すぎたのが気になったが。
「ねえ、エリスちゃん?」
「なあに……朋子ちゃん……」
「……どうしたの?」
授業が終わっても立ち上がろうとしないエリスちゃんに声をかけたのだが、そこにいたのは抜け殻となった人型だった。
「ねえ……朋子ちゃん。朋子ちゃんってずっと休んでたよね? どうしてさっきの授業分かるの?」
「どうしてって、そんなに難しかった?」
「難しかったよ!!」
半ば逆ギレのような唐突さで声を上げるエリスちゃん。
「あ〜どうして休み前にこんな量の宿題出すのよ〜」
「確かに結構あったけど、このぐらいの内容だったらすぐ終わるんじゃないの?」
撫子の授業はそれなりに進んでいるけど予習と復習をしていればそれほど苦になるわけではない。
「……エリスちゃん、なんでそんな顔してるの?」
信じられないものを見る目つきで見られても困るのだが。
「そうだよね……朋子ちゃんはエリート組だったもんね」
「エリート組みって……ちょっとそんな老け込まないでよ。ほら、別にテストがあるわけじゃないんだしそんなに焦らなくても……」
「だって終わらせないと冬休みに補習だよ!? それなのにこんなに難しいなんて……」
ずーんと擬音とともに沈んでいくエリスちゃん。なんと声をかければいいのか悩んでいると、何かに気がついたようにエリスちゃんが飛び起きた。
「ねえ朋子ちゃん。さっき授業分かったっていってたよね?」
「う、うん」
「だったらさ、教えてくれないかな。宿題」
暗に写させてといっている笑顔。自分でやらなければ意味が無いんじゃないかと思ったけれど、ちょっと打算が浮かんできたので保留。
「いいけど――」
「いいの!?」
目をキラキラさせながら迫ってきたエリスちゃんの前に指を一本立てて言う。
「交換条件ね」
「だからさっきの訳は『In no time』で無い時間、つまり時間がかからなかったって意味なの」
「うんうん」
「その次の『over』は超えるよりは終わるの方が近いから。『out』とかも同じような使い方があるから直訳して混乱しないこと」
「なるほど」
「だから訳すと『トミーは日に日に活動的になり、あっという間に授業は終わってしまった』となるわけ」
説明しながら想う。この文はまさに今の私を示しているのではないか。実を言うと先ほどの授業はあまりに早く終わってしまい驚いた。真面目に聞いていたというのもあるし、意外に簡単だったのもある。しかしより大きなウェイトを占めるのは訳にあるとおりだ。
全ては気持ちしだい。やるかやらされるか。小さな世界、けれどその小さな世界も自分の想いひとつでこうもありようを変えることを思い知った。
「質問です!! どこから授業という単語が出てきたんですか?」
「この『class』っていうのはクラスって訳すんじゃなくて授業って訳すの。どうしてかっていうと授業は教室で行なうでしょ? だからクラスじゃなくて授業って言うのよ。これもテストに出やすいから注意ね」
「はい先生」
元気よく頷くエリスちゃんとともに廊下を歩く。
何をしているかというとさっきの復習兼、宿題のためだ。今の時間は一と二の休み時間なのだが、ちょっとやんちゃをして抜け出してきた。一応クラスメイトには保健室に行くと伝言を頼んである(伝えたのはエリスちゃんだが)ので大丈夫だろう。一応まだ身体が弱いという認識が植えつけられているのであっさり信じてくれるだろう。まあ保健室に行くのは嘘ではないし。
それにしても私が身体が弱いことをダシにする日が来るとは思っても見なかった。それも隣を歩く少女たちのおかげだ。私には無い強さ、というよりは私が弱すぎたのだが、それでもみんなはすごいと思った。具体的には言えないのだが、生き方というか在り方というか、そういうのが眩しいと思った。
「でも朋子ちゃんってすごいんだね」
「すごい? 私が?」
丁度思っていたことをそのまま返されてしまった。その根拠が思い至らなず首をかしげる私に恨みがましい視線を向けてくる。
「だって私なんて毎日授業受けてても分かんないのに、学校休んでた朋子ちゃんが授業分かるなんておかしいよ」
なんだ、そんなことか。
「エリスちゃんだってやれば出来るでしょ? ちゃんとこの学園に入れたんだからテストだって大丈夫よ」
「そうかな……私の場合は推薦だったから」
勉強のほうは駄目なんだよね、と憂鬱そうな表情を浮かべるエリスちゃん。
「そもそも私は日本にいるんだから英語なんてできなくても問題ないんだし」
「ねえ、その容姿でその台詞はどうかと思うわよ」
初対面では絶対に英語を使おうかと思うから。
「美術部か……」
あまり吹聴する様子はないけれど彼女は絵画界期待のホープらしい。みんな(それほど知り合いが居るわけでは無いけれど)が言うには『天才』とのことだ。コンテストに出るたびに賞をさらっていく彼女を皆がそう讃える。そのせいかクラスの人間との間に壁のようなものを感じるのは私の思い過ごしなどではないだろう。良く言えば天真爛漫、悪く言えば自分本位な彼女の性格もそれに一因している。
「でもとりあえず勉強し特に越したことはないと思うけど。将来いつ必要になるか分からないし、それ以前に卒業するためには出来なきゃいけないんだし」
「朋子ちゃんまでお兄ちゃんと同じこと言わなくてもいいのに」
「上倉先生と、一緒?」
「……変なこと想像してないよね?」
「してないってば」
一緒という言葉に思わず緩みかけた顔を引き締める。正直自分の価値観が同じところにあるというのはいい気分だった。恋人同士が別れる原因となるのは価値観の相違が原因となるところがほとんどだという話を以前見たことがある。別に私が付き合っているわけではないけれど。
閑話休題。とりあえず今は第一の目的を果たすことにしよう。これ以上考えているとエリスちゃんが不機嫌になりそうだし。
「失礼します」
軽くノック。続いてエリスちゃんも断りをいれ室内に入る。
保健室独特の消毒の匂い。慣れ親しんだこの感覚だが、もう慣れてはいけないと思う。
「あれ、藤波さん? どうしたんだい。それに鳳仙さんも」
「やっと手術が終わったので一応報告しようかと」
「私はその朋子ちゃんに連れられてやってきました」
「ああ、そのことか。ちゃんと聞いているよ。おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
ちょっと照れくさい。坂井先生には私の我が侭で随分とお世話になった。仮に私がちゃんと手術を受けていれば坂井先生の仕事が半分になっていたはずだ。
「この前学校に電話が来たからね。今日からまた学校に通うからよろしくお願いします、ってね。それに朝も僕のところへやって来たからね」
「やって来たって、誰がですか?」
「ん? 上倉先生だよ」
「お兄ちゃんが?」
「ああ。エリスと藤浪がお世話になってますって」
恥ずかしい。これじゃあ完璧に保護者じゃないか。私のことをそこまで考えていてくれるというのは嬉しいけれど素直に喜べない。完全に生徒で妹で子供扱いだ。ものすごく複雑な気分。エリスちゃんは純粋に嬉しそうだけど。
というより見た目健康優良児のエリスちゃんがそんなに保健室の世話になっているなんて知らなかった。少なくとも私は保健室であったことはない。まあ私がそこまで出席しているわけではないけれど。
「藤浪さんは手術をしたけれどまだ体の弱さは治っていないから、無理をしないように僕からも言っておいてほしいってね。彼には君たちが今日僕のところに尋ねてくるところまでお見通しだったようだね」
「さっすがお兄ちゃん。私のことは何でも知ってるんだね」
「相変わらずだね、鳳仙さんは。校内でそうやって呼ぶと上倉先生に叱られるよ」
「大丈夫ですよ。なんだかんだ言ってお兄ちゃんは喜んでますから」
これもまた意外、軽口を叩きながら笑顔を浮かべるエリスちゃんを見ながらそう思う。社交的に見えてかなりの内弁慶で人によって対応に差がある彼女がこうも親しげに話すとは。その様子からも結構ここに来ていることが推察される。
「そういえばこんなことも言っていたな。二人が仮病を使って保健室に来るようなら厳しく指導してやってくれって」
「え……?」
「あ……」
時間は既に次の授業が始まっている。二時間目は……国語か。まあ私は問題ないけれどエリスちゃんはどうなんだろう。
「どうするエリスちゃん」
「うう……お腹が……」
「…………」
べたべただった。第一保健室でその嘘はどうなんだろう。上倉先生からの注意もあったことだし。確かに授業の途中から教室に入るのは緊張するけれど……そう考えるとなんだか私まで迷ってきた。
「はっはっは。まあどちらにするかゆっくり決めるといいさ」
言いながら椅子を引っ張り出して私たちの前に置いた。
「いいんですか? 明らかに仮病ですけど」
「僕はただの養護教諭だからね、教師みたいな指導は出来ないよ。ただ一人の大人としての意見を言うと藤浪さんはもう少し楽に生きたほうがいいかな」
僅かに逡巡したが、結局出された椅子に座ることにした。それに坂井先生の話にも興味があった。
「楽に、ですか……?」
「うん。例えて言うならば今までの君は張り詰めた糸みたいだったからね。いつ切れてもおかしくなさそうだった。ただその糸を何重にもぐるぐる巻きに糸を重ねていって、頑丈にはなったけど逆に枷となって身動きが出来なくなっていたようだけどね」
枷か。その表現は正鵠を射ているのかもしれない。私は何にも囚われないよう生きているようで、実際は囚われてはいけないという概念に囚われていたんだろう。
「きっとそれを解いてくれたのが上倉先生なんだろうね。けど今の君はちょっと無防備で打たれ弱いところがあるから、もう少し気を緩めてみるのも悪くないんじゃないかな」
気を緩めるか。言葉にすると簡単そうだけど果たしてそうも簡単に自分の生き方を変えれるだろうか。一応自分の中では変わろうと思ったけれどそれは周囲との協調を考えようといった程度。気を抜いて生きると言われてもどうすればいいんだろうか。
「そんなに難しい顔をしなくてもいいんじゃないかな。要するにたまには考えずに行動してもいいんじゃないかって事だよ。そのあたりは友人たちの付き合いの中で学んでいくといいさ」
「そうそう。朋子ちゃんって融通が利かなさそうだよね」
「気の抜きすぎも悪そうだけどね」
「うぅ……朋子ちゃんが苛めるよ」
ちょっとムッと来たので反撃。まあムッと来るのは自覚しているからなのだけど。
「要するに極端なのはよくないってことだよ。心にも身体にもね」
そんな私たちの様子を見ながら坂井先生が言う。その言葉には上倉先生とはまた違った説得力を感じる。
「僕の仕事は君たちが健康で過ごせるようにすることだから、また気軽に来るといいさ」
「そうさせてもらいます」
「朋子ちゃんどこ行くの?」
椅子から立ち上がる私に不思議そうな声をかけた。
「授業に戻ろうかなって」
「今から戻るの?」
「やっぱりサボるのは良くないからね」
「固いよ〜」
不満げな口調だけれどエリスちゃんも立ち上がる。交換条件として保健室まで着いてきてくれたけど、多分そんなものなくても来てくれただろう。打算的な部分がなかったわけではないだろうけど、おそらくそれが友人というものだろう。
「失礼しました」
「ありがとうございました」
先生に礼をして保健室を後にする。
これから徐々に慣れていって授業を受けるのも退屈になっていくのだろうか。休み時間が待ちどうしくなって、友人と会うために学校に来たりするのだろうか。部活に入ったりもするのだろうか。
「部活か……」
教室に向かいながら想像する。何一つ決まっていない未来。まだ学校生活は一日目だけど、幸先の良いスタートを切れた気がした。
ども。今回は比較的早く更新できたかと。まあそれまでに随分と時間かかったんで、ね。
しかしラブコメになるとか言っておきながら彼は出てきてないからね。まあ坂井先生がいい感じに出せましたけど。上倉先生が兄なら坂井先生は父みたいな感じで。
とりあえず次はちゃんと出しますんで。











