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<title>隠れオタでもいいじゃないか</title>
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<description>主にＰＣゲームの二次創作を書かせていただいています。 　あとは最近やっているゲームやら読んでいるラノベやらのこととか……。</description>
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<title>無題</title>
<description> 『またね――――』　そう言って別れたある日のこと。　夕焼けに染まる茜色の絨毯。河原はその光を反射し、世界は朱に包まれているようだった。　記憶の中にある光景だからではなくて、自分にとって都合の良いように改変しているのでもなくて。　懐かしさを羨望に変えるような年齢でもない。まだ数年前と言ってしまえる程度だ。　ただ大切な人がいるだけで、世界は輝いていた。　とりとめのない会話が楽しかった。拙い言葉だったけど、
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<![CDATA[ 『またね――――』<br />　そう言って別れたある日のこと。<br />　夕焼けに染まる茜色の絨毯。河原はその光を反射し、世界は朱に包まれているようだった。<br />　記憶の中にある光景だからではなくて、自分にとって都合の良いように改変しているのでもなくて。<br />　懐かしさを羨望に変えるような年齢でもない。まだ数年前と言ってしまえる程度だ。<br />　ただ大切な人がいるだけで、世界は輝いていた。<br />　とりとめのない会話が楽しかった。拙い言葉だったけど、偽りのない感情が込められていたから。<br />　そんな、魔法のような素晴らしい時間だった。<br />　それを純粋さと受け止めるのか、幼さと一笑に付すのか。今の自分にはどちらもできそうにないけれど。<br />　ずっと昔に思える短い期間。<br />　次々に降り積もっていく日常に埋もれていく時間。<br />　けれどそれを取り出そうとはしなかった。むしろ壊れぬよう、汚れぬようにそっと被せていった記憶。<br />　今はもう、思い出すことはない。<br />『またね』<br />　そう返したメール。<br />　あの時は携帯電話なんて持っている人の方が少なかった。<br />　家には誰もおらず、もしもの時のためにと渡されたものだったが、そもそも電話をかける相手も、かかってくる相手もいない。<br />　アドレス帳には自宅の電話番号だけ。ただ持っているだけだった。<br />　けれどある日、偶然によってそれが変わった。<br />　１つだけ埋まったアドレス。０００番に登録された、とても大切なアドレス。<br />　幾度も交わしたメール。話すことなんてほとんどなく、内容もどうでもよいと言えるものだった。<br />　それでも僕にとっては大切な繋がりで、かけがえのない時間だった。<br />　毎日に意味を与えてくれたもの。毎日に意義をもたらしたもの。<br />　言葉に直せないものも、直接言葉にすることの出来ない臆病な僕でも、素直になることができた。<br />　離れていても繋がっていられるもの。<br />　そして今は、決して届くことのないもの――――<br /><br /><br /><br />「――――君は、現代の社会をどう思う？」 <br />「…………へ？」 <br />　唐突な質問だった。 <br />　そのときの僕は大層間の抜けた表情をしていたことだろう。 <br />　具体的に例えようにも、そもそもこんな顔をすることなどまずないだろう。<br />　語弊を含むことを大前提に置いて話させてもらい、なおかつネガティブな意味がないことを小前提に置かせてもらうとしよう。<br />　UFOを見たとか宇宙人を見ただとか、信じられないものを見たときと同じぐらいの驚きがあっただろう。<br />　同時に、まるで夢の中から帰還したばかりの脳と同様にぼんやりとしていたことだろう。<br />　しかし未確認飛行物体というものは、観察がされた時点で確認飛行物体となるのではないだろうか。<br />　大体自分の理解を超えた物体を異物として捉えること自体がどうかと思うけど。自分の知っている世界なんて極僅かであって、知らない世界の方がまだ膨大にあるんだ。<br />　その限りなく広い中の一部分だけを取り出してみて、あたかも知り尽くしたかのように思っているから。<br />　宇宙人だって居て当然だと思う。そもそも人間だって宇宙人の中の１つでしかないじゃないか。<br />　とてもじゃないけど観察することの出来ない、今も広がり続けている宇宙の中で、地球にだけ生物がいると考えるのは早計であり驕りでもある。<br />　――――緩和休題。余計なことばかりを考えてしまっていた。けれど、それも仕方のないことだと、この場にいたら誰だって納得してくれるはずだ。<br />　こんな、あり得ない光景を前にしたら――――<br /><br /><br />　放課後、帰宅途中。<br />　友人たちと話しながらのことだった。カバンの中から財布を取り出そうとしたところ、どうにも量が少ないようことに気がついた。<br />　調べてみると足りなかったのはノートが１冊、よくよく思い出してみると机の中にノートをしまいっ放しだったかと。<br />　学校から駅前まではバスで来たため、戻るためにはもう１度乗りなおさなければいけないため、かなり面倒なんだけど。<br />　散々迷いはしたものの、明日の朝に提出しないといけないことを考えたら（数十分で終わる量じゃない）、初めから選択の余地などはなくて。<br />　仕方なく友人たちと別れ学校へと踵を返すこととなった。<br />　丁度来たばかりのバスに飛び乗り、様々なものが込み合った溜息を大きく１回。<br />　面倒だと思いながらも自業自得だと諌め、座席に深く身を預けた。<br />　この時間に学校へと向かうバスに乗ったことはなかったため、少しだけ新鮮な気持ちになれ、僅かばかりではあるけれど溜飲は下がってくれた。<br /><br />　ようやく学校へとついた頃には日が傾いていた。<br />　部活動を行なっている生徒はまだ残っているけれど、僕みたいに帰宅部の生徒がグラウンドに残っていることはない。<br />　ちょっとだけ場違いな空気を感じながら、大慌てで教室へと走った。<br />　靴を下駄箱にしまうのものどかしく、上履きも爪先で床を叩きながら足を納めさせる。<br />　型落ちした携帯電話（それでも使用に不都合はない）で時間を確認し、バスの時間を計算しながら目的の場所を目指した。<br />　友人たちに変えたらどうだと進められるけれど、慣れてしまえば意外に見やすいため、２年どころではなくずっと重宝している。<br />　そんな携帯電話をスラックスに収め、廊下を走り（普段は注意される）、１段飛ばしで階段を駆け上がる。<br />　どうしてこんなときに宿題が出るのかだとか、むしろ宿題が出たときに限ってノートを忘れるのかだとか、そのときまではそんなことを考えていたと思う。<br />　あるいは帰ってからの予定――――未読の小説があったとか、その前に宿題をやらなければいけないとか、テレビは何かやっていただろうか――――を考えていたのだろう。<br />　そんな曖昧な記憶。実のところ思うだけでよく覚えていないのだ。 <br />　それ以上に、強い記憶に上書きされて――――<br />　西日の差し込む教室。燃え上がる世界。 <br />　茜色の空間は原始への帰還。人間の本能を揺り起こす懐かしい色。 <br />　その強さに何もかもが染められ、本来の色を見失う。<br />　逢魔が時、全てが溶け合うその世界、彼女はそこの住人であった。 <br />　物憂げな表情で窓の外、空の上へと視線を流す彼女。<br />　机の上に腰掛け、黒のオーバーニーに隠された長い足を優雅に組みながら。<br />　透き通るような肌は照らされることでようやく人間味を持ち、身体を支えるために伸ばした手のひらからは白くしなやかな指が伸びている。<br />「――――」<br />　彼女を見たとき、頭の中から余計な感情は吹き飛んでいた。<br />　形容するべき言葉は数え切れないほどあるだろう。<br />　僕の貧困な語彙では説明出来ないほどに、そんな形容では物足りないぐらいに。<br />　賛辞など暗記できるほどに繰り返し受けてきたであろう。<br />　言葉にする・しないを問わなければ、人々とすれ違う度に、老若男女など関係なしに、それこそ嫌気をさすぐらいに。<br />　だけど――――僕程度が口にできる言葉などはない。<br />　だから――――今の僕が口にできる言葉などはない。<br />　素晴らしい芸術を鑑賞する際にそんなものは要らない。ただ心が打ち震えるそのままにしていればいい。<br />　作者からの明確なメッセージを受け取れずとも、ただ圧倒的な情報量に流されていればいいのだ。<br />　今の僕の内はまさにそれであった。邪念を捨て、ただあるがままの彼女を視界に収めていたかった。 <br />　無用なことを考えている必要などないのだ。無駄なことを考えていてはいけないのだ。<br />　何より、自身が理解できる許容量を超えた場合には、ただ受け取ることだけに専念させられる。<br />　溢れる感情に翻弄される。考えることなど出来ない。<br />　美しさに、見入ってしまっていた。<br />　眩しさに、魅入ってしまっていた。<br />　だからこそ、絵画の向こうから声をかけられたことが信じられなかった。 <br />「おっと、少し抽象的すぎたようだね。すまない。私の性分でね、どうも回りくどいことを好んでしまうようだ」 <br />　静寂の中を響き渡る声。鋭さと冷たさを持つ、凛とした音だった。 <br />「えっと…………」 <br />「ならば君にも分かりやすく言おうか」 <br />　僕の呟きに上乗せするようにして言葉を紡いだ。 <br />「君は、人間が個にして己、そして孤で有り続けることができると思うかい？」 <br />　心臓が撥ねた。彼女の瞳が僕を捉えた瞬間、体中に緊張が走った。 <br />　彼女は違うと、僕という存在は彼女が『異』であり『優』であると、無条件に認めていた。<br />　値踏みするかのごとく投げかけられた視線、たとえ彼女にその気がなくとも僕というちっぽけな存在はあっという間にかき消されてしまいそうだった。 <br />「やれやれ、私は同じ質問をするのが嫌いなのだがね」 <br />「あっ、っと…………ごめん」 <br />「ふふ、謝罪などされても困るよ。どうやら私の聞き方のほうが不味かったようだからね」 <br />「いや、そんなことな――――ありません」 <br />「どうして敬語なんだい？　私と君は同学年だよ？」 <br />「そうなんだ…………てっきり――――」 <br />「てっきり年上に見えてしまった、と。残念ながら私は実年齢より老けて見られる運命にあるようだ」 <br />「そ、そんなことは！！　ただ随分達観しているように見えたので…………」 <br />「有難う、誉め言葉として受け取っておくよ」<br />　口角をつり上げるその姿に、思わず視線を絡め取られてしまう。<br />「しかし私は質問に答えてもらっていないのだが。ちなみに答えはどんなものでも構わないのだよ？　いっそ『知るかこの雌豚野郎。そんなことを言う口に俺のナニを咥えさせてやろうか！？』でも勿論ね」 <br />「……………………」 <br />　生まれて初めて絶句という言葉の意味を実感できた。こんなことでしたくはなかったのだが。 <br />　人の口からこんな言葉が出るなどとは思いもしなかったし、それが女性の口から出るなんて考えもしなかった。何より彼女のような人の口から出るなんて…………<br />「おや、私なりのジョークだったんだが…………すまない、お気に召さなかったようだね」 <br />「あ……ジョーク、ね。ははは…………」 <br />　なんかとんでもない人に出会ってしまったようだ。や、勿論会いたくなかったというわけじゃないんだけど。<br />「まあ入ってきたまえ。そんなところに突っ立っていては会話もままならないだろう？」<br />「あ、うん…………失礼します」<br />　恐るおそる足を踏み入れる僕に、彼女は小さく噴き出した。<br />「失礼するも何も、ここは君のクラスだろう？　遠慮する必要などこれっぽっちもないだろう？」<br />「そうだけど…………」<br />　ただ入ってはいけないような雰囲気がしたからで、完成された作品に対して土足で踏みにじるような罪悪感が生まれたからだと思う。<br />　ただそこにいるだけで絵になると、こういう光景を目にした人が発した言葉なんだと思った。<br />「まあいい、少なくとも私は邪魔とは思っていない」<br />「それじゃあ、遠慮なく」<br />　と言っても、やっぱり遠慮はしてしまうんだけど。<br />　出来るだけ意識しないように近づいたけれど、その努力は数秒で無駄な行為と化してしまった。<br />　近くで見れば見る程、近くに寄れば寄るほど、彼女の素晴らしさに圧倒されてしまう。<br />　完璧だった。非の打ちどころがどうとか言うレベルじゃない。優でないところを見つける方が難しい。<br />　少なくとも僕の目からすれば、偉そうに言わせてもらうのなら、まさに理想の姿だった。<br />　そんな彼女がどうしてここにいるんだろうか？<br />　彼女が自称した通り僕のクラスの人じゃないし（それなのに僕の机に座っている）、そもそも学校では見たことがないし。<br />　もしかしてテレビや雑誌に出る有名な人かもしれないけれど、生憎僕はそういう情報に疎いから分からない。 <br />「それで、質問の答えはいかに？」 <br />　僕の思考を打ち切るようにして再度質問が投げかけられた。 <br />「す、すいません…………」 <br />　どうにも今日は謝ってばかりのような気がする。<br />　慌てて考える。そもそも質問は何だっただろうかというところから。<br />　僅かばかり時間を置いて思い出すことのできた質問。それに対し肯定／否定／助言／弁護――――頭の中にいくつかの僕を立て、それぞれで議論させる。<br />　結果は明瞭。議論の余地もなく、満場一致で答えが導きだされた。 <br />「その…………無理なんじゃないかな？」 <br />「理由は？」<br />「だって、どうやっても生きていくためには人の力を借りないと」<br />「ほう」<br />　僕の答えに、彼女は興味深そうに身を乗り出してきた。<br />　威圧感とも違う存在感が肌を突く。何より視界を占める彼女の割合が一気に増し、比例するように心拍数が増加する。<br />　それに動揺しないよう（無理に決まっている）なんとか自分の考えをまとめようとする。<br />「例えば、田舎で自給自足の生活を送るにしても、そのための食料はどうするんですか？　自分で育てるにしてもその元が必要です。自然にあるものを食べるだけでは生活できませんし…………」 <br />「文明の中で生活する場合、お金があれば大抵のことはまかり通りますが、何かを買うためには相手が必要です。そもそもお金というもの自体が他人との交流の中で生まれるものですし…………」<br />「文化だって人間が作り上げる者ですから、そこで暮らす限り人と関わらなければどうしようもありません」<br />「あるいは無人島、そこで生活するにしても行くまでにどうするか、生活するための知識だってどこからか学んだもの。つまりは人との交流からです」<br />「だから今まで生きてきた自分、それらのことを考えるに至った時点で他人とかかわっているからこその結果だと思います」 <br />「ああ、一理あるな」 <br />　彼女は顎に手を添え軽く頷いた。何気ない、誰だってするような変哲のない行為。<br />　ただそれだけの仕草にも関わらず、僕は見とれてしまっていた。 <br />「君はなかなか理知的なようだ。合理的でもある。ただ思考が画一的だね」 <br />　添えられていた手を軽く挙げ、人差し指をピンと伸ばした。 <br />「考えてもみたまえ。人間というのは『人』と『人』との『間』にあるべき生き物だ。むしろそうある存在を人間と定義したのだ。生物学的にではなく」 <br />「人と、人との…………」 <br />　鸚鵡返しをする僕に、ゆっくりと頷き同意をする。<br />「にも関わらず、現代の人間はそのコミュニケーションに機械を介している。無論それが悪いことだと言うつもりはない。数世紀以上も前から人は何かを介しての対話を続けていたのだからね」 <br />　だが、と彼女は続ける。<br />「ツールの問題ではない。ルーツの問題なのだよ。そもそも手段であって目的ではないはずのそれに人は依存しすぎている。まるでそれらがなければ生きていけない存在のようではないか」<br />「もはや人は人との間にあるのではなく、機械の前にある存在だ。これを滑稽と言わずして何という？」 <br />　嘲笑を浮かべる表情からは笑みが零れる。しかしそこに愉悦などは含まれていない。<br />　あるのは悲しみ。その運命から逃れることの出来なかった存在を哀れんでいるようだった。 <br />「１つの言葉を伝える際にも自らの口を開くことはない。大切な言葉さえも伝えることが出来ない。そんな存在を君はどう思う？」<br />「それは…………」<br />　言葉よりも早く脳裏に浮かぶもの。<br />　ある女の子へと向けたかった言葉。<br />　言いたかったのに、言うことのできなかった想い。<br />　何度も口ごもり、結局自分の中に仕舞い込んでしまった。<br />　後悔を繰り返し、決して拭うことの出来ない過去となっていった。<br />　あのときの自分の情けなさ、それを正当化しようとした自らの浅はかさ。<br />「…………情けない人間だよね。消し去ってしまいたいと思えるぐらいに」<br />「そんな過去があるなら、やり直したいと願うだろうね」<br />　やり直したいと、何度願ったことか。<br />「ああ、そうだな。けれど、消す事は出来ない」<br />「現実問題の話ではなく、消したくないと感情が拒むだろうね。それさえも、その情けなささえも大切な記憶の一部なのだから…………」<br />「それって…………」<br />　向けられた言葉は僕にではない。誰にではなく、きっと――――<br />「え…………？」<br />　ジジ――――と、一瞬彼女の姿がぶれたように見えた。<br />　映像にノイズが走るかのように、その輪郭が揺れる。<br />　陽炎や蜃気楼に近いかもしれないが、それよりも明確な形で現れた。<br />　見間違えでないのなら、一瞬透けて――――いや、見間違えに決まっている。そんなこと、あり得る筈がないのだから。<br />「…………上へ行こうか。ここはあまり良くない」<br />　不機嫌そうに嘆息を漏らす。<br />　どういう原理か、力を入れた様子もなく机の上から飛び降り、床へとその足をつける。<br />　軽やかば着地。音もたてず、服も乱さず。何気ない動作でさえも優雅に見せながら。<br />　腰まで届く黒髪をふわりと浮きあがらせる。歩を進める度に烏の濡れ羽と称するだろうそれが揺れる。<br />　立ち並んでみると気がつくことがある。<br />　男子生徒の平均から外れない僕だけれど、彼女はそれと同等の背丈を有していた。<br />　座っているときは高いとは思わなかった――――それでも人とは違う存在感はあったが――――彼女だけれど、それはすらりと伸びた足のおかげだった。<br />　日に焼けていない、新雪のような清らかさ。<br />　直視するのが恐れ多いような、そんなことを考えてしまうほど。<br />　そうでなくてもあからさまな視線を向けるのは失礼に当たる。<br />　そう思って視線をあげると、当然のように彼女が目の前にいるわけで。<br />　横に並ぶのが恥ずかしいと思ってしまう。明らかに並び立つには不釣り合いだと、そんなことを考えてしまう。<br />「何を呆けているんだい？　早く着いてきたまえ」<br />　僕の横を通り過ぎ、ドアに手をかけながら声を投げかける。<br />　上に行こうかとは言われたけれど、付いて行くかどうかは返事をしていなかった。そもそも僕がここに来たのはノートを取りにきたわけだし（今更思い出した）。<br />　けれど彼女はその答えを聞くまでもなく、あたかもついてくるのが当然と言うかのように歩いて行ってしまった。<br />　どうしようか――――そんなことを考えたのは一瞬、あるいは刹那。<br />　僕の答えは決まっていたのだろう。ただそれを改めて確認するまでの時間がかかっただけ。<br />　一歩、足を後ろへ。反転し彼女の後を追った。<br /><br /><br />　その姿を追いかけ廊下を進む。<br />　『上』の意味する場所へ、少々薄暗い階段を上っていく。<br />　その先、使用頻度が少ないだろう屋上への鉄扉を押し開く。<br />　重々しい音の後、閉鎖された空間を抜けた先。閉じた瞼の上からでも分るほどの、痛いぐらいの光が飛び込んできた。<br />「あ…………」<br />　思わず漏らしたのは感嘆。<br />　空を覆うほどの光。赤に彩られたその世界、遮るものの無いその空間は開放感に満ち溢れている。<br />　眼下にあるだろう建物など視界に入らない。宙に浮かんでいるような錯覚も覚える。<br />　日常にある風景。今まで見過ごしていただろう光景。すぐ傍にあるそれを今まで気にも止めようとしなかった。<br />　吹きすさぶ風さえも気にならないほど見入っていた僕を引き戻したのは、凛とした、けれど小さなつぶやきだった。<br />「人間の定義の話――――」<br />　視界の先。<br />　無限に広がる空の下、彼女は１人佇んでいた。<br />　風と戯れるよう髪を流し、フェンスに寄りかかるようして空を仰ぎ見る。<br />「人間と同様の思考を持ち、同様の外郭を持っているならば、それは人間と呼べるのかしら」<br />　呟くような声も、風が意思を持つかのように声を届ける。<br />「あるいは種としては人間であっても人間としての思考を持っていないそれは、果たして人間と呼べるのかしら？」<br />「…………考えたことも、なかったよ」<br />　それが正直なところ。唐突な質問、そして考えても答えなんて出てこない。<br />　そもそも人間がどうとか考える前に、ただ目の前にあることをこなしていくことに時間を費やしていた。<br />　ひとつ、またひとつと乗り越えていくたびに、少しずつ前に進んでいた。振り返ってようやく理解できる程で、けれど振り返ることもしなかった。<br />　僕が僕であるためには、そうしないことが唯一の処世術だったから。<br />　考える度に沈んでいく。ならば考えなければいい。そう気づくまでにそう時間はかからなかった。<br />　それなら、と――――悩む僕に彼女はうっすらと笑みを浮かべた。<br />「これは例え話なのだけれど」<br />　小さな声なのにも関わらず、僕の耳には鮮明に届く。<br />　それでも、彼女にもっと近づきたいと足を動かしていた。<br />「寓話でも訓話でもない、ただの世間話なのだけれど」<br />　こちらを見ることなく、思いだすように言葉を流す。そんな彼女に惹かれるよう、さらに距離を縮める。<br />「とある所に居た少女の話。何の変哲もない、ドラマさえ持たない少女のことを仮定する」<br />　あたかも目の前にいるかのように、何もない空間へと視線を向ける。<br />「ただ少しだけ身体が不自由で、クラスメイトから虐められていた少女。独りクラスに居場所がなく、助けてくれる人もなく、泣くことしか出来ない少女」<br />　表情は見えない。声に色はない。<br />　だからこそ、その感情を想像してしまう。<br />「そんな少女を浅はかな愉悦のために虐め続ける子供達、そんなことをする奴らを人間と認めていいのだろうか？」<br />「あるいは、子供のすることだからと流してしまうのだろうか？」<br />「――――君は、どう思う？」<br />「…………」<br />　しばしの逡巡。答えにではなく、答えるのが正しいのかという理由。<br />　僕が持ったのは彼女の問いに対する答えではなく、それ以外への憤懣。<br />　的外れだとは分かっている。赤点どころの話ではなく、そもそも点数などでないだろう。<br />　それでも、間違っていると分かっていながらも、どうしても言わずにはいられなかったんだ。<br />「僕は――――そんな奴らのことなんてどうでもいい」<br />　強く、口調に感情を出さぬよう手を握りしめる。<br />「最初にするべきは、泣いている少女を助けてあげることだよ」<br />「…………」<br />　笑われるだろうと覚悟していた、あるいは一蹴されてしまうか。<br />　僕でさえ間違いだと分かること。彼女にすれば考える必要すらないだろう。<br />「…………そう」<br />　けれど、彼女は深く頷く。<br />「そうね…………」<br />　ゆっくりと顔をあげる。<br />　その瞳の奥、読み取ることは出来ない光を秘めて。<br />「正解、不正解かは分からないけれど…………」<br />　それでも――――<br />「少なくともその答えで救われた少女がいるのだから…………私は、間違ってはいないと思うわよ」<br />「救われた…………？」<br />　例え話と、世間話と言った彼女。想像し、創造しただけのフィクションに過ぎない少女。存在しない、言葉の中でだけ存在した少女。<br />　けれど彼女は、事実に基づくかのように話している。<br />　確信をぼやかし、迂回する言葉にもどかしさを覚える。<br />　他人よりは近く、２人として数えられ、それでも薄い壁を挟んでいる僕たち。<br />　近づいたからこそ感じる壁――――いや、近づいたと感じているのは僕だけなのだろうか。<br />　触れることができず、超えることも出来ない。微かにしか見ることができず、それでも確かにそこにある隔たり。<br />　だからだろうか、そんな曖昧なものを乗り越えてしまいたいと思ったのは。<br />「その少女は、本当に救われたの？」<br />　確かめるように彼女との距離を詰める。伸ばせば優に手の届く距離。<br />「さあ、どうでしょうね」<br />　まるでそれから逃れるように、詰めた分だけの距離をとった。<br />　あくまでも自然に、僕から逃れたわけではないのだろうが、それでも再び開いた距離。<br />　身長ほどもあるフェンスに指をかけ、力を入れる様子もなく飛び乗った。<br />　いや――――『腰を下ろした』と言う方が正しいのだろうか。<br />　ビデオの逆回しのようにも見える、明らかに物理法則に話した動き。<br />　ふわりと浮きあがったかと思えば、奥へとスライドするようにしてその場所へと移動した。<br />「君は…………」<br />　呆然と彼女の姿を見ていた。唯一発せたのは尋ねる言葉の語頭だけ。<br />　思えばおかしなところはいくつもあった。<br />　いくら僕が他人を気にかけていなかったとはいえ、彼女を見過ごすほど節穴ではない。たとえそうでも彼女の噂が出ない方がおかしい。<br />　噂好きな僕の友人たち、あるいは彼女のクラスメイトからの情報。全校集会でだって目にすることがあるはずだ。<br />　それなのに、彼女の姿を見たことがない――――<br />「君は、一体誰なんだ…………？」<br />「誰、ね…………」<br />　浮かべた笑み、そこに込められた意味を読み取ることができるほど僕は察しがいいわけではない。ただそこに複雑な色が混じっていることに気がつく程度。<br />「少女を救った少年。それはただの気まぐれだったのかもしれないし、打算があったのかもしれない」<br />　続けたのは質問の答えではなく、彼女の『例え話』。ただの世間話と前置きがされた、その続き。<br />「それでも少女は救われた。まるでヒーローの様な少年に助けられて。悲しみの中を漂っていた、先のない暗闇の中で座り込んでいたその日々に、そっと手を差しのべられて」<br />「だったら…………彼女は幸せになれたのかな？」<br />　僕の問いに、彼女は寂しげに眼を閉じた。<br />「けれど、ハッピーエンドにはならなかった」<br />　他人の同情を誘うつもりはないのだろう。まるで自らに聞かせるよう、再度確認するような口調。<br />　にも関わらず悲哀に彩られた音、あまりにも弱々しい姿。意図せずに素を晒してしまうほどに痛む心。<br />　彼女の心と直結しているように、僕の心は強く揺さぶられた。<br />「会話すらほとんどなく、ぎこちない２人だった」<br />　その光景がありありと浮かんでくる。<br />「そんな少女と少年を繋いだのは携帯電話。学校が違い、面識もほとんどなく、会うこともほとんどなかったから」<br />「それでもメールの交換で交流を続け、そうして互いのひととなりを深く理解していった」<br />「それまで友人と呼べる存在がいなかった彼女にとって、それは救い以上に幸福でもあった」<br />　過去のアルバムをめくるように、懐かしみながら言葉を紡ぐ。<br />「次第に明るさを得ていく彼女――――そう、取り戻すのではなく、だ」<br />「そんな彼女が出会ってひと月も経たぬ少年に恋心を抱くのは時間の問題だった。そして時間すら問題にしなかった」<br />　想い出を言葉に直し、感情を音に乗せて届ける。<br />　その心に共振するように、僕の感情も震わせられていた。<br />　記憶の底に生じた波紋、響き渡っていく想いに揺られ自然と口を開いていた。<br />「時間は、関係ないと思うよ。長く一緒に居ても分からないことや、出会った瞬間に理解しあえることもあるよ」<br />「年月が親密さを比例させるのなら、世の中はもっと素晴らしいものになっているよ」<br />「そして時間なんか無関係に、２人の仲は良かったんだと思うよ」<br />「…………そうだな。その答えには諸手を挙げて賛同しよう」<br />　嬉しさを溶かした微笑。自身の意見が賛成されたからだろうか。<br />　しかしそう思ったのは僕の方だ。僕の考えが自分以外に、彼女の理解を得られたことが嬉しかった。<br />　自らの過去を掘り返すなんて面倒なことをしなくても、ちょっと足元を見てしまえばすぐに分かる。今までずっと同じことを引きずり続けてきたのだから。<br />　ある日出会った女の子。面識はなく、けれどちょっとしたきっかけで知り合った。<br />　純粋な女の子で、何でも信じてしまうような、うっかり冗談も言えないような女の子だった。<br />『――――くん』<br />　そうだ、声だって思い出せる。思い起こせる。<br />　話した期間は短かったけれど、確かに彼女は素敵な女の子だった。<br />　けれど、いつしか会うこともなくなっていった。接点がぷつりと切れ、それ以降会うことはなかった。<br />　なぜ、どうしてと、問いかけた数など覚えていない。<br />　初めて会ったあの場所で、何度も会ったあの場所へ。足を運ぶ度に呼び起こされる楽しかった記憶。<br />　ずっと思い続け、擦り切れるほど思い返し、やがて薄れていってしまった。<br />　2人でしたことなんて何もない。ただ話をして、話を聞いて、次に会う日も決めずに『またね』と言い合って別れと再会を確認する。<br />　女の子への想いだけが胸に積もりつつ、感情だけがあちこちをつつき、最後には摩耗していってしまった。<br />　メールを出しても返事は来ず、それ以来送ることもなかった。<br />　想う度に悲しみが生まれ、徐々に考えないようになっていた。<br />　どうしてと自分に問いかけても答えは出ず、答えを出してくれる人などいなかった。<br />　だから次第に、あの子のことを考えることが間違いだと、出会ったことが間違いだったとさえ思うようになっていたから…………<br />　そんな考えこそが間違いだと、僕の想いが過ちではないと、認めてくれた気がしたから。<br />「想いの積もった少女。初めて抱いた、淡く、純粋な気持ち。故にどうすればいいか分からず、何をすることもできなかった」<br />「ただ傍にいられたらいいと感じていたが、ふとした拍子に思うことがあった。自分が世界と繋がるための窓は少年だけだったが、果たして少年も同じなのだろうかと」<br />「いつまでもこのままではいられないのではないか、次第に環境も、気持ちも変わっていってしまうのではないかと思うようになった」<br />「幸か不幸か、知識だけは持っていた少女。恋愛に関した小説もいくつか読んでいたからな、ハッピーエンドにたどり着くためには動かなければならないと知っていた」<br />　不安定なフェンスの上であっても揺らぐことはない。吹き抜ける風の上に、気持ちよさそうに髪を乗せる。<br />　懐かしさを胸に抱き、大切にしまうように手のひらを当てる。<br />「しかし少年を前にしていざ告白しようとすると、どうしてもその勇気が出てこなかった。動かなければいけないと分かっていながら、動いたあとにどうなってしまうかを考えてしまったから」<br />「元来口下手であった少女にとって、想い人を前にしてすらすらと話すことなど出来る筈もなかった」<br />「手紙にしても、直接渡すことなどできなかった。恥ずかしさなどではなく、恐ろしさから。そもそも意識して少年の前に立つことすら努力が必要だったのだからな」<br />「加えて、返事を聞くのも怖かった。もしも断られたら、そればかりを考えてしまったから」<br />「そのため彼女はメールで告白しようとする。それならば断られても顔を合わせずに済むからという理由で」<br />　なんとも情けない話だがな。自虐的にそう付け足した。<br />「ある日、少年と会った帰り道。溢れる気持ちを懸命に文面へと変え、そうして少女はメールを送信した」<br />　ありったけの勇気を込めて、前へと進んだ少女。不安を抱えながら、それでもあと１歩の距離を縮めたくて。<br />「けれどその途中、メールが届くことはなくなった」<br />　トーンが落ち、感情を抑えるよう歯を噛みしめる。<br />　フェンスに乗せた手が強く握りしめられる。もともとの白さ以上に、血の気がなくなるぐらいに。<br />「ボタンを押すその際、意識が携帯電話へと向かっていた少女は、眼前に迫っていた車に気がつかなかった」<br />　それでもIFに浸るような真似はしない。そんなこと無意味だから。<br />　悔いることはある。けれど悲観的になることはない。<br />　嘆くことはしない。必死に自分を律しているから。<br />　こちらを見ていない。向こう側へ届けるように、空へと言葉を投げる。<br />「メールは届くことなく、少女は少年と会うことはなかった」<br />　自らを律し、ただの事実であると告げようとする。<br />　それは、悲しい話だった。<br />　救われたと言った彼女。けれど少女が救われたのは一瞬だけで。これから先にあるものを全て犠牲にしての、仮初めの一時だったから。<br />　残る全てをかき集めても、僅かばかりの幸せにしかならなかったなんて…………<br />　少年も、それからの時間をどう過ごしたのだろうか。<br />　ぽっかりと穴が開き、どうして彼女がいなくなってしまったかの理由も知らなかっただろう。<br />　日々少女のことを考え続け、いつしかそれ以外のことを考え何ようにしてきた。<br />　何かあったのではないかと、そういう考えに至ったこともあったが、時間が経つにつれその原因を自身に求めていったはずだ。<br />　どこにも行けない想いを募らせて、向かう先のない心を深く押し込めて。<br />「行く宛ての分からなくなった文面と想いは、残滓として中空を彷徨う。形のない電波として、曖昧な存在として」<br />「届けるべく生まれた想いは、届くことなく霧散する。行く宛てのない想いを宿しながらも」<br />　そして悲しむことすら許されなかった少年。時間を経てその事実を知ったとき、果たしてどう思うのだろうか。<br />　悲しむ意味さえ知らされなかった男の子。あのとき抱いた感情は決して消えないだろう。<br />　癒されることなく、深々と残った傷跡。今も残っている、今も残している傷痕。時間などで癒されぬように、触れられぬように押し殺していた記憶。<br />　そして、悲しむことを許されてしまった僕。事実を知って、怒りの矛先を自らに向ける必要がないと知らされてしまった僕。<br />　癒されてしまいそうになる大切な傷痕。残しておきたい、悲しくも大切な思い出を。<br />　忘れたくない。失いたくない。<br />『一緒に居たい――――』<br />「そうして消えるはずだったソレは、存在と呼べるまでになった」<br />「同じように飛び交うその他多くの情報をそこに受け、あり得ない偶然によって…………」<br />「そう、陳腐な言葉にするのなら『奇跡』の様に――――」<br />「そうして、１つの形を作った」<br />　手すりの上から、こちらを見下ろして。<br />「願いをかけるよう、少年の望むだろう姿を想像して」<br />「想いに答えるよう、少女の理想の姿を創造するかのように」<br />　淡々と、彼女は言った。<br />「それが私。何物でもない、データの集まりに過ぎない私」<br />　陽炎のように揺らぎ、背後の陽に溶けるように見える。<br />　目には映る、けれど希薄に見えるその姿。<br />　儚さと力強さ、存在感と透明感を宿す。<br />　明らかに矛盾する形。現世に矛盾する存在。<br />　つまり、彼女は――――<br />「人間ではないということね」<br />　感情なく、事実だけを口にする。<br />　それが逆に、彼女の悲哀を代替するかのように。<br />「ならば彼女の想いそのままの自分は、一体どのような存在なのか」<br />「記憶も全て持っている。形も同じ、けれど生きているわけではない。あの子本人なのか、それとも届けるべき想いに過ぎないのか…………」<br />　腰かけた格好のまま、風に吹かれるように舞い上がる。<br />　ゆっくりと、コマ送りをしているような動きで。<br />　質量と質感を全て取り除いた身体。同時に輪郭さえも消え失せそうだった。<br />　徐々に高度を下げ、コンクリートの地面に足を下ろす。<br />　その間際――――<br />　透明な床に着地するよう、その両足を僅かばかり宙に浮かせたまま直立した。<br />　僅かにもぶれず、当たり前のように浮かんでいる。<br />「私は一体、何と定義されるのでしょうね」<br />　同じ高さに視線を合わせ、真っ直ぐに僕の目を見つめてくる、<br />「その気になれば浮かぶことも、物体をすり抜けることも出来るでしょう。勿論誰にも見つからずにいることだって出来る」<br />「幽霊に近い存在、けれどその差はあまりにも広く、且つ深い溝が存在している」<br />「元の形はなく、幽霊になることさえ出来ない自分」<br />「きっと、強く望めば消えることだって出来るのでしょう。それでもこうして、いつまでも未練たらしく存在している」<br />　情けないわね――――自嘲するように彼女は言う。<br />　僕は、返す言葉を見つけることが出来なかった。１つの単語が、頭から離れなかったから。<br />　未練――――彼女はそう口にした。<br />　やり残したこと、やりきれなかったこと。<br />　何が未練なのか――――普遍的に考えるのなら最後にやり残したことだろう。<br />　メールを送ることができなかったから。言葉を伝えることが、想いを届けることができなかったから。<br />　その相手は、僕なのだと。彼女はそう口にした。<br />「未練になるほど、思っているんだよね…………」<br />「…………そう、だな」<br />　ならば僕にはそれを受け止める義務があり、それ以上に聞く権利がある。<br />「聞かせて、もらえるかな…………？」<br />　無茶苦茶に鼓動を刻む心臓、彼女の言葉が聞こえないぐらい五月蠅く高鳴るそれを、何とか抑えようとする。<br />　そう試みても、結果は出ない。<br />「あの子が、何を思っていたのか。何を込めようとしたのか…………」<br />　直視するのが怖く、けれど下を向くことなど許したくはなかった。<br />　ぎゅっと手を握りしめる。<br />　僅かばかりの勇気を振り絞る。<br />「…………ああ」<br />　緊張したように、神妙に頷く。<br />「どうか、笑わずに聞いてほしい」<br />「そんな余裕、どこにもないよ…………」<br />　口の中が渇く。ただ短く返事をしただけなのに、それだけでもうへたり込んでしまいたい。<br />　それでも気力を振り絞って彼女の言葉を待つ。僕の比でないぐらいに緊張しているのだから。<br />「件名、『お願いがあります』」<br />　赤より朱に、紅潮する顔で。震える声で、女の子が抱いていた想いを代弁する。<br />「いきなりこんなことを言って迷惑かも知れませんが、どうしても伝えたいことがあります」<br />　すっと息を吸い、意を決して口を開く。<br />「初めて会った時からあなたのことが好きでした」<br />「――――っ」<br />　あまりにも純粋な想いに、激しく胸が揺さぶられる。<br />「理由はいっぱいあります。数えきれないぐらいにあります」<br />「最初は話しかけてくれたことが嬉しかったです。私に優しく話しかけてくれる人はあなたが最初でした」<br />　彼女の言葉に、自分の中にある思い出が鮮明に呼び起こされる。<br />「他の人は私にいじわるばかりして、誰も助けてくれませんでした」<br />　学校の帰り道、気まぐれで通った土手で出会った女の子のこと。<br />『――――ねえ』<br />　今まで忘れたことのない、けれど思い出さないようにしていた記憶。<br />「言った事はありませんでしたが、あなたが話しかけてくれた時も怖かったです。また何かされるのではないかと、そんなことを考えていました」<br />『ねえ、どうして１人でいるの？』<br />　独りで泣いていた女の子。どうして誰も助けてあげないのか、どうして大人に助けを求めないのか。<br />　苛立ちと悲しさを胸に抱きながら話しかけたのだ。<br />「でもあなたは違いました。泣いている私にハンカチをくれました。理由も聞かずにそばにいてくれました」<br />　理由を聞かなかったんじゃない、聞けなかったんだ。<br />　理由を聞いても僕にはどうしようもないことかもしれない。助けを求められても、助けられないかもしれないからだ。<br />「あなたは私の話をじっと聞いてくれました」<br />　期待されて、裏切って、結局深く傷つけてしまうかもしれないから。<br />　だから僕は、偽善的な優しさを振りまくことしかできなかったんだ。<br />「あの時、座り込んでいた私に伸ばしてくれた手が、とても温かかったです」<br />　だって、僕に出来るのはただそれだけだったから。独りでいる寂しさを知っていたから。きっとそれは同情だったんだ。<br />　自分と似ているから、だから自分にできたことを押しつけようとしたんだ。そうしないと、自分の出した答えが嘘になってしまうから。<br />「あなたが話してくれたこと、そのおかげで学校に行くのも少しだけ嫌じゃなくなりました」<br />「前までは行きたくなくて、でも行かないといけなくて、行きたくない理由も言えませんでした」<br />　真摯に、そして愚直に。ありのままの想いを話す彼女。その言葉に強く胸を打たれる。<br />「本当のことを言うと、死んでしまいたいと思ったことも何回かありました。でもそんな怖いこと出来なくて、結局いつも泣いているだけの私でした」<br />　目を閉じて思い返すまでもなく、すぐに浮かび上がってくる。<br />　昔のことじゃなく、今のことだから。<br />　忘れたふりをしていた事――――影になる河原、人気なく、物寂しい場所。誰も来ないからこそあえてそこを選んでいたのかもしれない。<br />　普段は通らないその場所に行ったのはただの偶然で、そこへ行ったのは何となく。運命なんて恰好のいいものじゃなかった。<br />「そんな私に、あなたは勇気をくれました」<br />「私のことを見てくれる、優しくしてくれる。他にもいっぱい、たくさんの気持ちがありすぎて書けませんけど…………」<br />　精一杯の勇気を振り絞り、お互いを真っ直ぐに見つめ――――<br />「だから、あなたのことが大好きです」<br />　逃げずに、ありのままを伝える。<br />「…………」<br />「もしも悪いお返事でも、今まで通りお友達でいてほしいです。お返事、待っています」<br />　何度もリフレインする想い。生まれて初めて言われた言葉。そして言いたかった言葉。<br />　ぐるぐると頭を回り、動揺を伝えるかのように心臓が跳ねる。<br />　なんと答えればいいのだろうか、それだけが胸を覆い、冷静な答えが返せない。<br />「いやはや、我ながら拙い文章だな」<br />　言い終えた後、彼女は再び淡い光を纏いながらその足を地につけた。<br />　恥ずかしさを隠すように肩を竦め、無理やり微笑んで見せる、<br />「我ながらって……やっぱり君は…………」<br />「さあ、どうなんだろうね。ある側面から見れば確かに私は君の望むとおりの存在かもしれない」<br />「けれどそのものではない。私は彼女の理想を体現した姿。君と釣り合うだけの存在になりたいと願った、女の子の理想の姿なのだから」<br />「そうだな、言うならば思念体と称されるものだろう。もしも私がこのような形を持ったとするならば、それは君に出会うためだったのだろうからな」　<br />　彼女が寂しげに微笑む。<br />　少女が悲しげに微笑む。<br />　女の子の面影を残しながら。<br />　僕の答えはどこにあるのだろうか。<br />　今まで消し去ろうとして内にしまいこんでいたもの。<br />　水底に積もっていたものへと投じられた言葉。浮き上がったものをそっと掬いあげ、目の前に翳してみればすぐに分かる。<br />　過去の自分に答えを求める。少年へ、男の子へ向かって。<br />「僕だって…………僕だってそうだよ」<br />　返ってくる答え。あのときからすっと持ち続けていたもの。故意に目を背け惰性に生きてきてしまったから。<br />　それを今終わらせる。そして今から始めるんだ。<br />「今までの人生に意味をつけるのなら、きっと君からの言葉を聞くために生きてきたんだよ」<br />「あの子の言葉を、君の想いを受け取るためにここにいるんだと思う」<br />「受け取る…………受け取ってくれるのかい？」<br />「うん、受け取るよ…………」<br />　変わらないもの。ずっと待っていたもの。<br />「だって、僕だって――――」<br />　周りから離れた自分。周りから突き放されたあの子。<br />　あの子はまるで過去の自分を見ているようだった。周りから虐められて、苛められないために考えられる限りの復讐をした。大人を利用して、弱い立場を利用して。<br />　そうして奪い取った場所。勝つことで負けないようにした。<br />　そのやり方は間違ってはいなかったのかもしれないけれど、もっと正しいやり方があったはずなんだ。<br />　だから、同じような女の子を救うことで――――救うなんておこがましいことを思っていたんだ――――自己満足を得ようとしていたんだ。<br />　けれど、救われたのは僕の方だった。<br />　女の子を通して、自己満足じゃないものを与えられた。<br />　それ以上に、優しさで包んでくれた。<br />　同じように虐められていたのに、あの子の瞳はとても澄んでいた。誰も恨んではいなった。<br />　僕は原因を他に求め、強くなることで周囲を遠ざけた。<br />　けれどあの子は原因を自らに求め、たとえ悲しんでも、呪ったりはしなかった。<br />　優しくて、優しすぎて、守ってあげなくてはいけないと思うようになっていた。<br />　一緒に居てあげたい、一緒にいたいと思うようになっていた。<br />「あれきり会うことはできなくて、不運が重なって、お互い会えなくなってしまったけれど…………」<br />　でも、そんなことは口には出せなかった。恥ずかしい以上に、後ろめたくて。<br />　最初に抱いた感情が後ろめたくて、あの子の優しさを前にして、自分が不釣り合いだと思った。<br />　純真さを汚すのが怖くて、拒絶されるのが怖かった。<br />　結局は自分のことだった。<br />　けれど、今は違う。<br />　後悔を重ね、ようやく自分の気持ちが分かったんだ。<br />　本当なら後悔で終わるはずだった。それを偶然、あり得ない可能性の中で掴んだ奇跡。<br />　その機会は、絶対に逃さない。<br />　彼女と同じように、少女と同じように、女の子と同じように。自身を奮い立たせる。<br />「それでも僕も同じ気持ちだった」<br />「僕はあの子のことが好きで、君のことを好きでいたのだから」<br />　ずっと、好きだったんだから。<br />「最初は打算からだった。自己満足のためで、誰かから褒めてもらいたかったからなんだ」<br />　嘘偽りなく、自分の全てを正直に話す。<br />　弱さも、汚らしさも。全て受け入れてほしいと思うのは僕のエゴかもしれないけど。<br />「僕があの子を好きだって思いは、あのときから変わっていないよ」<br />「…………そうか、有難う。あの子もきっと喜ぶよ」<br />　彼女が言うのなら、きっとそうなのだろう。<br />　でも、それだけじゃ足りないんだ。<br />「それなら、君はどうなの？」<br />「うん？」<br />「君は、どう思っているの？　今のは、誰の言葉なの？」<br />「…………さあ、誰のものだろうね」<br />　空へと目をやり、答えを探すように言葉を届ける。<br />「自分の想いは別にあるのか、それすらも分からない。与えられたものなのか、抱いたものなのか…………それさえも分からない」<br />「形を持たぬまま、ただ君の姿を追い続けていた。引き連れられるように、惹きつけられるように」<br />　ストーカーみたいだがな、と彼女は苦笑を浮かべた。<br />「私は言葉を受け取ることが出来ない…………だから、もしも返事をもらえるのならば、純粋に彼女に対しての言葉にしてほしい」<br />「…………うん、返すよ」<br />　そうだ、何をするにもまずそちらへの返事をしなければならないだろう。彼女を通してではなく、あの子自身へ返すために。<br />　自分にけじめをつける意味でも、彼女に向き合うためにも。そしてあの子に気持ちを伝えるためにも。<br />　居住まいを正し、しっかりと向き直る。<br />　息を大きく吸って、噛まないよう落ち着いて。<br />　真っ直ぐに、あるがままの気持ちを。<br />「僕も、あなたのことが好きでした」<br />「もっとあなたと居て、もっともっとあなたのことを知れたらいいと思っています」<br />　震えるのを諫め、遠まわしになるのを避けて。<br />　誤魔化すことなく、出来る限り僕の素直な気持ちを伝えた。<br />「…………信じて、いいのかな？」<br />　それでも不安げに聞き返してくる。答えが信じられないと言うように。<br />「なら、どうすれば信じてもらえるの？」<br />　手を伸ばせば触れ合える距離。互いの瞳の中に互いがいる。<br />　その瞳の中にいる彼女が、恐るおそる口を開き、そして僕の胸にそっと手を伸ばす。<br />「…………その証拠が欲しい」<br />　顔を伏せたまま、弱々しく呟く。<br />「君に好かれていたという、その証が欲しい…………」<br />「…………」<br />　わざわざ聞き返さなくても、彼女の言わんとしていることぐらいは理解できる。<br />　そしてわざわざ聞き返すほど野暮ではない。<br />「君があの子を今でも好きでいてくれると言うのなら…………」<br />　そっと、首の裏に両手が回される。<br />　僕はそれを、そっと押しとどめる。間近で視線を合わせて。<br />「それは、君の気持ちなの？」<br />「…………私のことはいいさ」<br />「そんなことはないよ。僕は君の気持ちを聞かせてほしい。君の言葉を聞かせてほしい」<br />「…………やれやれ、君は思った以上に厄介な性格だな。据え膳を頂く程度のつもりでいればいいものを」<br />「そのぐらい、ずっと僕のことを見ていたのなら分かるでしょ？」<br />　吐息のかかる距離に立ち、彼女の細い腰に手を回す。<br />「そうだな、君はそういう人間だったよ」<br />　互いに優しく引き寄せる。<br />「しかしな、君には悪いが答えられないんだ…………」<br />「だからな、答えるとするならば…………どちらの気持ちか分からないけれど、私は君が嫌いじゃないよ」<br />　相手の顔しか視界に映らないほど近づきあい、<br />「君のことを見てきた数年間、君に対する思慕が強くなっていったのだから」<br />　視線を合わせ、<br />「私たちは、君のことが好きなんだと思う」<br />　鼓動を合わせ、<br />「こんな答えで、いいのかな？」<br />　ささやく言葉に、僕は小さく頷いた。<br />「…………ありがとう」<br />　瞳を閉じ――――<br />　そっと、唇を合わせた。<br /><br /><br />　＊　＊　＊　＊　＊<br /><br /><br />　彼女と繋がり合ったのはほんの数秒の出来事、けれどその数秒間を忘れることなど出来そうにもない。<br />　いや、もとよりするつもりもないが。<br />「…………」<br />「…………」<br />　しかしその後彼女はすぐさま離れてしまい、こうして顔を向けてもくれない。<br />「あの…………」<br />「っ！？」<br />　覗き込もうとすると丁度反対側を向いてしまう状況が何度も続いている。<br />「…………」<br />　あれこれと推論を立てること数分、ようやくある結論に達した。<br />「…………もしかして照れてる？」<br />「なななな何を馬鹿なことを。や、やれやれ、呆れてものも言えないな」<br />　唇をつり上げているととらえてあげるのが優しさというものなんだろうね。決して引き攣っているわけでも動揺しているわけでもないんだよね。<br />「格好いいけど、それ以上に可愛いよね」<br />「ばっ…………か、勝手に私のイメージを作ってもらっては困るな」<br />「そんなこと言われても、受けた印象をそのまま話しているだけだし…………」<br />「それは君の受容器官に不具合があるのだろうな。そんな私に不釣り合いな形容など遠慮したいものだな」<br />　頬に掛かる髪をかき上げながら、僕の抱いた印象を吹き飛ばすように視線を向ける。<br />　確かに、こう見ると可愛いなんて微塵も感じられず、僕の意見など軽く捻られてしまうだろう。<br />　風にはためく制服姿も様になっているし、彼女の姿を収め写真を撮れば、それだけで表紙になるぐらいの存在感もある。<br />「あ」<br />　そんな屋上に吹く一陣の風。<br />　遮るものの無い場所を吹き抜けた突風は、制服を強くはためかせるほどであった。<br />　制服が肌に貼りつくほどの風量。もっとも僕はスラックスだからあまり関係ないんだけど。<br />「うん、どうかしたかね？」<br />　呆然とする僕のことをいぶかしむ様に、僅かばかり目を細める彼女。<br />　僕の視線を追うように、自らの足元へと視線を落とす。<br />「ひゅえぇっ！？」<br />　慌ててスカートを抑えしゃがみ込む。<br />　なんと言いますか…………僕の正面から吹いてきた風は、丁度彼女の背後からになるわけで。<br />　突風と呼べるほどでして、制服が張り付くぐらいだったから…………ね？<br />「……………………見た？」<br />　結果として、見事にスカートが捲れ上がっていました。<br />「えっと…………」<br />　見たも何も、僕の視線を追っていたから気づいたはずなのに…………<br />　それでも聞いてしまう心理は何となく分かる。きっと自分でも認めたくないから、否定してなかったことにしてほしいからだろう。<br />　彼女に対して嘘はつきたくないけれど、ときには優しい嘘も必要だろう。<br />　正しいことばかりが必要とされるわけではない。嘘も方便、事実と反していても、それこそが正しいのだ。<br />　だから僕は言う。<br />「うん、見たよ」<br />「――――っ！？」<br />　だってね、こんな事で嘘をついても仕方ないじゃん。<br />　ちなみに、可愛らしいピンクのショーツでした。<br />「うぅ…………ひっく、ひっぐ」<br />「ってまた泣いてる！？」<br />「し、下着…………見られたぁ……………………」<br />「な、何で泣くの？　別に他の人に見られたわけじゃないのに…………」<br />「だってぇ、恥ずかしいもん…………」<br />「恥ずかしいって…………」<br />　しかも言動が幼くなってるし。<br />　瞳を潤ませ、顔を赤くしてしゃがみこんでいる姿も可愛いんだけど…………やっぱりこのままじゃ駄目だよね？<br />「大丈夫だよ、他には誰も見てないから」<br />「ううぅ…………」<br />　初々しい反応だけど、ちょっと無防備すぎる…………<br />　膝を折り曲げ、体操座りのような格好でしゃがんでいるから、思いっきり見えている。<br />　風に吹かれたとかそういうレベルじゃない。むしろその部分が強調されているから余計に…………<br />「すん、すん…………」<br />　おまけに本人は無自覚で（自覚あったらそれはそれで困るけど）、胸も強調されているから、ちょっとばかりではなく目の毒だ。<br />「ほら、大丈夫だよ」<br />「うぁ…………」<br />　頭に手を乗せて数度撫でる。<br />　片膝をつき、目線を合わせる。<br />「ちょっと恥ずかしかったかもしれないけど、他には誰も見てないからね？　僕も誰にも言ったりしないよ？」<br />「う、うん…………」<br />「だから落ち着いて、ゆっくり息を吸おうか」<br />「すぅ…………はぁ…………」<br />「うん、いい子だね」<br />　へたり込んだその肩を優しく抱きしめ、風で乱れた髪を優しく整える。<br />「ん…………」<br />　気持ちよさそうに声を漏らす。小動物のように頬を摺り寄せてくる。<br />「ほら、あんまりやるとせっかく綺麗になった髪がぐちゃぐちゃになっちゃうよ？」<br />「ん～～～」<br />　僕の言葉などお構いないしに甘えてくる。<br />　シャツを指先できゅっと掴んできて、それはそれで嬉しいんだけど…………というか滅茶苦茶嬉しくて、どうにかなりそうなぐらいに可愛らしい。<br />　勿論凛々しい姿もいいんだけど。<br />「――――はっ！？」<br />「えっと…………」<br />　突如、ぴたりと止まった頬ずり。<br />「…………」<br />「…………」<br />　時間が止まったかのように停止するその行動。３つのキーを押しても反応なしだろう。<br />「…………」<br />「…………」<br />　ちょっとタイム。ただいま思考中だ。<br />　フリーズしたなら再起動。少しずつ状況を理解していこうね。<br />「…………」<br />「…………」<br />　もぞもぞと身じろぎをする。きっと自分の置かれている状況を再確認しているのだろう。<br />「……………………その、もう大丈夫だ」<br />「あ、うん…………」<br />　身体から両手を離す。少々やり場に困った両手が宙に彷徨ってしまう。<br />「…………」<br />　ゆっくりと顔を上げ、スカートの汚れを払いながら立ちあがる。<br />「…………」<br />「…………」<br />　棒立ちになったまま、再び訪れた沈黙を前にしてどうしてよいか分からず、少しだけ視線を外しながら向かい合う。<br />「その…………済まなかったな。突然の事態に取り乱してしまったよ」<br />「え？　まだそのキャラ続けるの？」<br />「キャラではない！！　これが素だっ！！」<br />「でもさっき…………」<br />「あれは…………少々驚いたからであって、デフォルトでそうあるわけではない。ただ設定外のことをされると対応に困るだけであって…………」<br />「設定って…………」<br />　その表現はどうかと思うよ？<br />「勘違いをしているようだから言わせてもらうが、私はもともとこういう性格だぞ？　言ったであろう？　私はあの子の理想を体現した姿であり、存在であると」<br />「あ…………そういえば」<br />「あの子が望むような立ち居振る舞い。想像できるありとあらゆるパターンに対して理想の容姿と受け答えになっている」<br />「よ、よくそんなことできたね…………」<br />「時間ならいくらでもあったからな。暇なときは１日中妄想しているような状態だったぞ？　正直なところ私から見ても変人だったと思う」<br />　１日中妄想かあ…………僕もあんまり人のことは言えないんだよなあ……………………<br />「が、それでも想定外の場合については対応付けがなされていない状態にあるのだよ」<br />「想定外の場合って？」<br />「そうだな…………あの子は主に君との日常会話に置いてを念頭に置いていたからな。おまけに乙女の妄想が爆発していたため、君が大分美化されていたな」<br />「う……美化かあ…………」<br />　絶対過大評価をされてそうだ…………<br />「だからまあ、君が行うであろう言動は紳士的なものであり、自分に対して意地悪な事をするはずがないと信じていたというわけだ」<br />「な、なるほど…………さすがに下着を見られたことまでは考えてなかったと…………」<br />「そういうときは、あの子の素が出てくるというわけだな」<br />　厄介なことにな。付け加えたその言葉の割には楽しそうだったけれど。<br />「素かあ…………」<br />　結局、どちらも彼女の性格なのだと思う。ただ驚いたり、動揺したりすると言動が幼くなってしまうと。<br />　そう考えると、時折現れるギャップというのは彼女の魅力を引き立てる役目も果たしているように思える。<br />「何だその顔は？　また勝手な妄想をしているのではないだろうな？」<br />「してないって」<br />「その笑った顔が信じられないのだよ。大体思い返せばいろいろと怪しいところがあったからな。当時は気がつかなかったが、嘘や冗談を吹きこんでいただろう？」<br />「それはちょっとしたコミュニケーションというか…………」<br />「いい機会だ。じっくりと話し合うことにしようか」<br />「じ、じっくりね…………」<br />　ちょっと危険な予感が…………<br /><br /><br /><br /><br />　あの子との思い出というのは、実のところそれほど多くない。<br />　やったことと言えば、河原で他愛のない話をしていただけ。<br />　それ以外の場所に行くことなんてなかったし、行こうと提案することもなかった。<br />　互いの家のこともほとんど話さなかったし、場所も分からなかった。<br />　外でしか会わなかったけれど、外で遊ぶことなんてほとんどなかった気がする。<br />　河原で遊んだのは水切りだとか、虫を捕まえたことだとか、せいぜいそのぐらい。あとはずっと話をしていた気がする。<br />　具体的な内容はなんだったのかと言われても、ただその日の出来事を、前に会ってからその日までの出来事を話すだけだったから困ってしまう。<br />　けれど毎日会うことは難しく、学校も違うため、時間が経つにつれて話す内容も少なくなっていった。<br />　趣味みたいなものがなかったから話は弾まなかったけれど、ゆったりとした時間が楽しかった。居心地が悪いとは思わなかった。<br />　格好をつけていた自分が、とがらせていた自分が恥ずかしく思え、会話をするにつれて自身の幼さを実感するようでもあった。<br />　あの子は僕なんかよりもずっと大人で、出来た人間だった。<br />　会話をしているだけで僕も成長した――――なんて口が裂けても言えないけど、少なくとも自分の駄目なところが分かったことは収穫だったと思う。　<br />　そんな日常を続けていたある時、僕はあの子が虐められているのを聞いた。<br />　出会ったときの状況からも想像できるし、聞かなくてもある程度事情は把握していたけど、本人の口から聞かされるとまた話は違う。<br />　虐めの理由はつまらないものだった。要約すれば他人と少しだけ違うということが原因だった。<br />　他の人より少しだけ耳が聞こえ辛く、少しだけ話すのが苦手で。<br />　それ以外に虐められる理由のない、静かな女の子だった。<br />　ただ自分から友達を作るのは苦手だった。そのためクラス替えで話せる人がいなくなり、他のクラスに行く勇気もなかった。<br />　周囲に壁を作っているわけじゃないけれど、周囲にある溝を超えることはできなかった。<br />　休み時間は１人静かに本を読み、何をするにも控えめで。誰かと対立するような子ではなく、けれど率先して輪に入っていくこともしなかった。<br />　そんな女の子。虐められる理由はなかったけれど、虐められない理由がなかった。<br />　僕からすれば、どうしてあの子の魅力に気がつかないのか不思議だった。ちゃんと向き合って話し合えば、誰だってあの子の素晴らしさに気がつくはずだった。<br />　同時に、あの子の魅力を知っているのが自分だけだという優越感もあった。他の人には見せてくれない素顔を見せてくれるのが嬉しかったから。<br />　もしかしたら他の人のところへ行かなかったのも、それが理由だったのかもしれない。自分から離れていってほしくなかったから、一緒に居てほしかったから。<br />　大切な宝物のように、綺麗な宝石みたいに、キラキラ輝いていた。<br />　決して僕の手が届かないような存在だったのに、突然目の前に舞い降りてきた。<br />　触れていいのか、声をかけていいのか。時折戸惑いを覚えてしまうような女の子で――――<br />　そんなあの子に、僕はいつの間にか見とれていた。　<br />　僕はいつの間にか、好きになっていたんだ。<br /><br /><br /><br />　とりとめのない会話をどれだけ交わしただろうか。<br />　燃える空は流され、荒々しさは朗々たる空気の前に消え去っている。<br />　夕から宵へ、既に空は薄暗くなっていた。<br />　それでも僕たちはまだ屋上にいた。フェンスに背を預け、２人並んで腰を下ろす。ぴったりと寄り添うことはせず、ほんの少しだけ間隔をあけて、それでも手はしっかりと繋いで。<br />　交わす言葉は多くはない。けれどその少ない言葉でも伝わる気持ちはある。<br />　届ける想いに溢れている。それをすべて伝える言葉なんて存在しない。<br />　だから僕たちは、こうやって手をつなぐ。<br />　そのまま感情が伝わるように。お互いの気持ちを分かりあうために。<br />　肌寒い中、けれど手のひらから身体に伝わってくる温かさは消えたりしない。<br />　想いを繋ぐよう、時間を繋ぐように。<br />　昔から今日までのことを話していた。<br />　けれど彼女は僕のことを知っていたので、もっぱら僕の話になってしまったけど。<br />　久々の会話だったから、最初は少しだけ戸惑ってしまったけど、次第にそんなものはなくなってきた。<br />　盛り上がり、ときに笑いが生まれ、和やかな雰囲気が流れていた。<br />　彼女の見せる姿に面影を感じ、また新鮮な一面も見ることができた。<br />　こんなことなら、もっと早く会えればよかった。<br />　こんなことなら、ずっと一緒にいられたらよかった。<br />　互いにそう思っていた。なんて考えるのは僕の勝手な思い込みじゃないはずだ。<br />　ずっとこの時間を続けたいと、そんな願いを抱いてしまう。<br />　いつか夜が来る事を知っているからこそ――――<br />　別れを意識するごとに口数が減っていってしまう。<br />　徐々に静かになり、吹き荒ぶ風を意識するようになってしまう。<br />　互いに分かっていながら、あえてそれを避けるようにしていながらも、いつしか触れなくてはならない時が来るのだ。<br />「…………さてと、そろそろ行くとするか」<br />　長い沈黙を破ったのは、やはり彼女の方だった。<br />「行くって、どこへ？」<br />　会話を伸ばしたくて、どうしても聞き返してしまう。<br />「さあ、どこだろうな」　<br />　どうでも良さそうに答える。振り切るように、突き放すように。<br />「存外、あの世と呼ばれるところに行けるのかも知れんし、あるいはただ霧散するだけかも知れんな」<br />「…………」<br />「なに、君が気に病むことはない。今日の出来事はありえなかったこと、架空の出来事として処理してくれればいい」<br />「そんなこと、出来ないよ。出来るはずもないし、するつもりもないよ」<br />「今日のことは覚えている。そもそも忘れるつもりもないからね」<br />「…………そうか」<br />　彼女は笑顔で頷いた。それでも、どこか悲しそうだった。<br />　悲喜交々が絡み合い、解くことの出来ない感情。自分でも整理がついていないみたいに表情を変化させる。<br />「ならばそれでもいい。幼い頃、あんな女の子がいたなと…………ふとした拍子に思い出してくれ」<br />　握っていた手を外し、ゆっくりと立ち上がる。<br />　するりと抜けていく細くしなやかな指。僕は、その手を握りしめなかった。<br />「まあ、いろいろと名残が尽きないのは事実だが、君をこんなところに引き留めるのもどうかと思うのでな」<br />　恰好よく唇をつり上げる。無理やり感情を押し殺し、弱々しさを消し去ろうとしている。<br />　淡い光が彼女を包む。空に溶けるように、星の輝きを得るように。<br />　再び彼女の輪郭がぼやける。光の中に佇み、風と戯れるように空を仰ぐ。<br />「…………」<br />　いろいろと言いたいことはあるはずなのに、感情が募るばかりで言葉に出来ない。<br />　昔からそうだ、口下手な僕は思ったことをすぐに言葉に直すことが出来ない。<br />　直接言う勇気がなく、伝えるための言葉に直すことができず、もどかしさを胸に抱えてしまう。<br />　悔み、悲しみ、結局自分を責める毎日を続けてしまう。<br />「ではな。輪廻転生というものが事実ならば、また君に会えることを祈っているよ」<br />　背を向けて、軽く手をあげる彼女。<br />　やめてほしい、そんなことをされてはどうやって返せばいいのか分からなくなってしまう。<br />　いろいろと考えていた言葉が、必死に紡ごうとした言葉があったはずなのに…………全て解けていってしまう…………<br />　徐々に薄くなり、身体が透けてくる。<br />　結局、僕は何も言うことができなかった。口に出せば、自分の気持ちとは違うことを言ってしまいそうだったから。<br />　渦巻く感情の中から１つ掬い上げても、遍く想いは治まりなどしない。<br />　溢れる感情の中から１つ掬い上げても、それが僕の感情とは言えない。<br />　だから――――僕に出来ることは１つだけで。<br />　立ち上がり、その距離を詰める。<br />　立ち尽くす、彼女との距離を。<br />　心で泣いている、彼女の気持ちを理解するために。<br />　相変わらずそれしか出来ないけれど、何も成長していないけれど、それが僕にとって唯一出来ることだから。<br />　言葉にすることの出来ない内側。<br />　その代り、明確な願いが、叶えなければならないものが１つだけ。<br />　どうすればいいのかは分からない。何が正しいのかも分からない。<br />　けれど、自分に出来ることが１つだけで。<br />　出来ないことを悩んでも仕方無くて。やらないよりも、やった方がいいって事ぐらいは知っているから。<br />　だから簡単だ。出来ることをすればいいんだ。<br />「え…………？」<br />　そうしてまた、僕は手を伸ばす。<br />　逃さぬよう、離さぬよう。<br />　本当に大切なものは、絶対に手放してはいけないと知っているから。知らされたから。<br />　彼女の小さな手を、しっかりと握りしめる。<br />「な…………何をするんだ？」<br />「だって、離れたくないから」<br />「――――――――」<br />　唖然とするように口を開いたままの表情。<br />　それでも、たとえ呆れられても自分の気持ちに嘘はつけない、つきたくないんだ。<br />「き、君は何を考えているんだ…………？　折角の感動的な別れのシーンだろう？　あれだけ綺麗にまとまったのに、それを引き戻す馬鹿がどこにいるんだ？」<br />「ここにいるよ」<br />「な…………」<br />　そんな言葉なら、喜んで受け入れよう。泣いている女の子の力になれるのなら、道化にだって進んで成ってみせよう。<br />「馬鹿でいることで君を離さずいられるのなら、それでもいいよ。綺麗な別れなんていらないんだ」<br />　そうだ。誰もが涙する別れなんかよりも、空気が読めないと罵声を浴びるような結果の方が僕はいい。<br />　ドラマなんていらない。感動なんていらない。<br />　笑い話として、後から２人で思い出せるような、格好悪い喜劇を演じていられたらそれでいい。<br />「そんな我が侭が通るものか！　第一私はここに居てはいけない存在なのだぞ！？」<br />「いいよ、我が侭でも。それに我が侭なんかじゃないよ。君はここに居てもいいんだから」<br />「何を言っている。私は人間ではないのだぞ？　君とは違う存在なんだ…………」<br />「同じだよ。君は人間だから」<br />「は…………？」<br />　自分に対する疑問。おそらく、自我を得てからずっと悩んでいたこと。<br />『果たして人間と呼べるのかしら？』<br />　その問いに、今答えるよ。<br />　的外れだとは分かっている。赤点どころの話ではなく、そもそも点数などでないけれど。<br />　それでも、間違っていると分かっていながらも、どうしても言わずにはいられないんだ。<br />　笑われるだろうと望んでいる。一蹴されてしまっても構わない。<br />　それでも間違いだとは思わない。悩む必要なんてこれっぽっちもない。<br />　自信を持って、胸を張って言うことができる。<br />「例え世界が否定しても僕は断言するよ。君が人間だって。僕以外の全員が否定しても、僕はその答えを貫き通すよ」<br />　何があっても、絶対に変わらない答え。<br />　たとえこの身が朽ち、精神が折れてしまっても、これだけは譲ることが出来ない。<br />「……………………たとえ、世界が敵になっても闘うと？」<br />「さすがにそれは無理かな」<br />「は――――はあぁっ！？　あれだけ大層なことを言っておきながら無理だって！？」<br />「いや、だって６０億人を敵に回すのは無理だよ。精々２人ぐらいだって」<br />「な、なんと情けない…………そこは嘘でも頷くところだろう……………………」<br />「仕方ないよ、嘘はつきたくないんだから」<br />　そもそも誰も敵に回したくない。<br />　１人を敵に回しても、お互いに傷つくだけで、それ以上に悲しいだけで。<br />　２人を敵に回したら、毎日が辛くて、どうしていいのか分からなくなってしまう。<br />　敵だらけの中で幸せになることなんて、決して出来ないのだから。<br />　幸せになりたいのなら争っちゃ駄目だ。敵の中で立ち回る努力をするぐらいなら、僕は別の努力をするよ。<br />　そんな理想論を振りかざしてみせる。貫き通してみせる。<br />「でもね、世界中の人を味方にする努力ならできるよ」<br />「は…………？」<br />　僕に出来るのはそれぐらいだから。無理はせず、出来ることをしっかりとやっていこう。<br />「最初はこの小さな、２人だけの閉じられた世界の中で。僕と君だけが信じる世界で」<br />　スタートはそれでもいい。敵がいないのなら何の問題もないはずだ。<br />「だんだんとその世界を広げていって、理解してくれる人を増やしていく」<br />　まずは１人。お隣さんと仲良くなろう。<br />「話し合っていけば、必ず分かり合えるんだ」<br />　次はその友達と。ちょっとずつ、輪を広げていけばいい。<br />「反発されることもあると思うけれど、君と一緒ならやれると思うんだ」<br />　敵でも味方でもない人から無自覚な悪意を受けるかもしれない。でも、その人を味方にする努力ならいくらでも出来る。<br />　そもそも努力だとは思わない。自分が望むようにやっているだけで、その副産物として結果が出るのだから。<br />　だから何だって出来る。僕に出来ることだったら、何でもこなして見せる。<br />「だって、僕は君のことが好きだから」<br />「……………………」<br />「君のためだったら、何でも出来ると思うぐらいに。君が望むことだったら、何でもしてあげたいと思うぐらいに」<br />　僕は、君のことが好きなんだ。<br />「……………………その想いは、勘違いだ」<br />「私にではなく、あの子に向けられるべきものだよ…………」<br />　俯きながら、掠れた声で漏らす。<br />　けれど、そんな言葉で惑わされるほど他人を信じられる僕じゃない。自分で決めたことを、信じたことを他人の言葉で変えられるほど器用じゃない。<br />　思い込んだらずっと信じてしまう。そんな情けない人間なんだ。<br />「違うよ。確かにあの子のことは好きだけど、それだけじゃないんだ。それを含めてなんだよ」<br />　握った手のひらを両の手でそっと握る。<br />「誰か１人じゃなくて、全て含めて君なんだと思うよ。あの子がいたから今の君がいるんでしょ？」<br />　同じじゃなくて成長した姿、合わさった存在なんだと。<br />　どちらかが欠けてもいけないんだ。互いがいるから、２人分の想いがあるから今ここにいるんだよ。<br />「彼女もあの子も、君だって…………本当は消えたくないんでしょ？　この手だって、その気になれば触れられなく出来るのに」<br />「そ……それは…………」<br />「僕だってそうだよ。消えてほしくなんてない…………」<br />　消えてほしくないだけでなく、もっと望んでしまうんだ。<br />「傍に居てほしいんだ。人間として、友人として」<br />　視線を合わせる。逃げたりしない。今度こそ、真っ直ぐに向き合う。<br />「きっと、君自身のことも好きになるだろうから――――」<br />　揺らいだ瞳をしっかりと見つめる。<br />「君もあの子も、僕のことを好きでいてくれた」<br />　大きすぎて、気がつかないぐらいの愛情があった。<br />「確かに僕が『君』といた時間は少ないかもしれない。それでも時間なんて関係ないと思うんだ」<br />　２人が時間の壁なんて物ともせず、互いに紡いだ絆のように。<br />　時間の問題じゃない。<br />「君といれば、僕はきっと君の事が好きでたまらなくなると思う。一緒にいると、きっと想いが止まらなくなってしまうから…………」<br />　そして時間の問題なんだと思う。彼女みたいに魅力的な女の子に惹かれないはずがない。<br />　だから――――<br />「だから今度は、僕の方から告白させてほしい」<br />　君たちのことが、好きだから。<br />「……………………」<br />　さあ――――っと、風が吹き抜ける。<br />「やれやれ…………」<br />　髪に隠され、その時の表情は分からなかった。<br />　笑っているのか、怒っているのか、はたまた泣いているのか…………<br />「…………まったく、君は物好きだな」<br />　けれど、その声はとても嬉しそうで――――<br />「物好きだ…………君みたいな人間には出会ったことがないよ……………………」<br />　もっとも、私が出会ったのは君が初めてなんだがな、と小さく笑う。<br />「それが面白そうだと思ってしまう私もまた、物好きなのかもしれないが…………」<br />　年相応の、女の子の笑みで――――<br />「まあいいか、その気になれば私の時間は無限になるのだろうからな。<br />　とても弾んでいて――――<br />「そんな気まぐれに付き合うのも、悪くない」<br />　そして、可愛らしい笑顔だった。<br />　伸ばした手に答える小さな手。<br />　壊れないよう優しく握ると、返事をするようにぎゅっと握り返してくれた。<br />　突然引かれる手、少しだけよろけてしまう。<br />　それを支えたのは暖かな手、僕の大切な人の手のひら。<br />　彼女はちょっとだけ背伸びをして、コンクリートの上、上履きを少しだけ曲げて。<br />　瞳を閉じ、唇を寄せられた。<br />　不意打ちの口づけに、ちょっとしたイタズラに、温かなものが広がっていく。<br />「何せ私は、君のことが好きでたまらないんだからな…………」<br />　瞳の中に、互いの捉える自らを映しながら。<br />「君からの告白を、いつまでも待たせてもらうよ」<br />　小さく微笑んだ。<br />　綺麗で、可愛くて、イタズラも好きで――――魅力にあふれた僕の大好きな女の子。<br />　ずっと好きだった女の子。その初恋はしっかりと叶えられた。<br />　僕の気持ちと、あの子の気持ちと、彼女の気持ち。みんなの想いが重なり合って。<br />　ようやく繋ぐことのできた想い。この手はずっと、離れることはないだろう。<br />　ずっと、離すつもりはないんだから――――<br /><br /><br /><br />　ある日僕の携帯電話に届いた１通のメール。<br />　古臭い着信音。何年も前に流行った歌謡曲。<br />　もちろん和音なんかじゃなくて、単調なメロディで僕のことを呼び出してくる。<br />　ポケットから取り出して見てみるけれど、何故か送り主の名前はない。<br />　不思議に思いながら開いた画面。選択したメールに書かれているのはちょっとしたサプライズ。<br />　件名は『お願いがあります』。<br />　キーを操作して、少しずつスクロールさせていく。<br />　幾行もある文字をじっくりと、そこに込めた意味を丁寧に感じ取っていく。<br />　ゆっくりと、何度も読み直した文面。<br />　聞きなれたフレーズだったり、懐かしい記憶だったりと。そんなものが次々と浮かんでくる。<br />　数度見返し、ちょっと頬が赤くなるのを自覚しながら携帯電話を閉じた。<br />　大切なメール。消えないように、しっかりと保護してある。<br />　毎日何度も読み直したメール。新たに加わった、宝物の１つ。<br />　今日、僕はそのメールに返事をした。<br />　宛先は、僕の大切な人へ。<br />　件名は――――『ずっと一緒にいてください』。<br />　文面はこれから少しずつ、段々と話していくよ。<br />　なんせ直接伝えることができるのだから。<br />　待ち合わせのあの場所で。そよ風が吹き抜ける草原の上で。<br />　あの時と同じように、あの時とは少しばかり違い、１人佇みながら待っている。<br />　涼しげなワンピースと、麦藁帽子をかぶりながら。気持ちよさそうに風を感じている。<br />　遠目からでも分かるあの姿。見間違えるはずもないあの姿。<br />　格好いい姿も、可愛らしい姿も、見せてくれる全ての表情が素敵な、僕の大切な女の子。<br />　それじゃあ気合を入れていくとしようか。<br />　大切な人に、大切な言葉を送るために。<br />　一緒に歩いて行くために。<br /><br /><br /><br /><br /><br /><hr size="1" /><br /><br /><br /><br /><br />　どうしても更新できないので、前に企業用に書いた作品をアップ。一次創作かな。もとはエロありだったのを修正したんで、可笑しくなっている可能性もｗ<br />　まー、しばらく更新できない感じですね。今はサークルとお仕事と卒業研究と…………時間がほしい。<br />　長文ですが、ここまで見てくれた方に感謝。先にあとがきを読むあなた、ぜひ読んでやって下さいな☆<br />　あ、リトバスはプロット完成してるのよ。一部ならテキストにもしてるのよ。<br />　けどどうしても進まない。ごめんっすorz ]]>
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<description> ここ最近全く更新出来ず、申し訳ありません。というのも大学の課題だったり、就職活動だったり、同人活動だったりで時間がなかったためです。同人活動はご存じの通り（だったら光栄ｗ）行っていますが、少々トラブルがありまして時期がずれそうです。ネタは多々あるのですが、時間があまりないのでブログの更新が出来ていない状態です。大学はちゃんと行ってます。これでも真面目なのでｗｗｗそして就職活動の件なのですが、来年の
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<![CDATA[ ここ最近全く更新出来ず、申し訳ありません。<br />というのも大学の課題だったり、就職活動だったり、同人活動だったりで時間がなかったためです。<br />同人活動はご存じの通り（だったら光栄ｗ）行っていますが、少々トラブルがありまして時期がずれそうです。<br />ネタは多々あるのですが、時間があまりないのでブログの更新が出来ていない状態です。<br /><br />大学はちゃんと行ってます。これでも真面目なのでｗｗｗ<br /><br />そして就職活動の件なのですが、来年の春からとあるメーカーさんでシナリオライター（＋企画？）として身を置かせていただくことになりました。どこのメーカーかはまた後日ご報告になりますが、希望通りの会社へ行くことが出来ました。<br /><br />最近は一次創作ばかりをしていましたが、勿論二次創作を辞めるつもりはありません。勿論ドラゴンＳＳも完成させたいと思っています。<br />暫く更新できない時期が続くかと思いますが、気長に待って頂けると幸いです。<br /><br />初期に書いた作品に目を通すとかなり恥ずかしく思うのですが、それもまた自分の成長の証だと思っています。<br />まだまだ足りない部分があって、書きたいものを上手く言葉に直すことが出来ずもどかしい思いもしますが、毎日少しずつ成長している自分がいるのを実感しています。<br />自分がここまで来られたのは応援して下さる皆さんのおかげだと思っています。<br />自分の作品を評価してくれる人がいる、そう思うことで書き続けることが出来たと思っています。<br />拙い言葉であってもそれが他人の心に残るものがある。それが大きな励みになりました。<br /><br />まだまだ勉強しながらですが、良い作品を作ることが出来ればと思います。<br />これからもよろしくお願いします。<br /><br /><br /><a href="http://blogranking.fc2.com/in.php?id=147796"><img src="http://blog-imgs-24.fc2.com/s/i/d/sideota/c_04.gif"style="border:0px;"></a><br /><br /><br /><a href="http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=tirotiro" target="_blank"><br /><img src="http://blog-imgs-24.fc2.com/s/i/d/sideota/web_b.gif" border="0"></a> ]]>
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<title>リトルバスターズＳＳ　～ストーカーじゃありません。これは愛ですから　前編～</title>
<description> 「「「ストーカーだってっ！？」」」「ま、まだ完全にそうだって言うわけじゃないんだけど…………」　予想以上の声に驚き、少し声を抑えて答えを返す。　昼休みの屋上。いつも通りメンバーで集まって（葉留佳さんは佳奈多さんと２人で、笹美さんは部活の方で）ご飯を食べていた。　そんな中で出た話題。ぼくの身の回りで起こったことについて。　最近おかしなことが続くから、ちょっと相談してみようかなってぐらいのつもりで話したん
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<![CDATA[ 「「「ストーカーだってっ！？」」」<br />「ま、まだ完全にそうだって言うわけじゃないんだけど…………」<br />　予想以上の声に驚き、少し声を抑えて答えを返す。<br />　昼休みの屋上。いつも通りメンバーで集まって（葉留佳さんは佳奈多さんと２人で、笹美さんは部活の方で）ご飯を食べていた。<br />　そんな中で出た話題。ぼくの身の回りで起こったことについて。<br />　最近おかしなことが続くから、ちょっと相談してみようかなってぐらいのつもりで話したんだけど…………<br />「ストーカーとは、なかなかに物騒な単語だな」<br />「これはリトルバスターズの危機じゃないかっ！！」<br />「そ、そんなことないから！」<br />　立ちあがった恭介と謙吾を慌てて止める。<br />「ストーカーって言うのは言葉のあやで、もしかしたらってことだからさ」<br />「で、でもストーカーさんでしたら大変ですよ？」<br />「ふーむ、ストーカーか」<br />「物騒だよね～」<br />　３人並んで顔をしかめているけど、あんまり深刻に見えないのはどうしてだろうか。<br />「なあ理樹…………」<br />「真人…………」<br />　ゆっくりと顔をあげた真人。神妙な表情で、重々しく口を開く。<br />「ストーカーって何だ？」<br />「こいつ馬鹿だっ！！」<br />「まあまあ、そう言ってやるな鈴。誰だって少しずつ学んでいくんだよ」<br />「黙れ変態」<br />「……………………」<br />　関係の修復はなかなか厳しいみたいで…………<br />「…………ストーカー」<br />「西園さん？」<br />　先ほどまで黙っていた西園さんがぽつりと呟く。<br />「ストーカーとは、ある人に病的なほどの恋愛感情を抱き、相手の迷惑を考えず後をつけたり、家の周りをうろついたりする人のこと。元はこっそりと忍び寄る人の意。<br />　またストーカーにしても様々なタイプが存在します。愛情から付きまとうタイプや怨嗟から付きまとうタイプ。アイドルを追うような場合や別の犯罪につながるような可能性も。そのような犯罪者の心理についても深く研究されていましたが」<br />　西園さんはすごいなあ…………これからは心の中で歩く辞典と呼ばせてもらおう。<br />「ぐああぁっ！！　頭があああぁっ！？」<br />「って真人！？」<br />　突然頭を押さえながら転がり出してしまった…………はっ、もしかして難しい単語のせいで頭が！？<br />「ふむ、その通りだな」<br />　同じく隣でお弁当（クドと小毬さん作）を食べていた来ヶ谷さんが頷く。<br />「美魚君は真人少年がストーカーについて分からないと言ったため、説明をしてくれたというわけだよ」<br />「みおは物知りだな」<br />「さすがですっ」<br />「美魚ちゃんすごいね～」<br />「簡単な説明でしたが」<br />「だ、大丈夫真人！？」<br />「な、なんとか大丈夫だ…………くっ、筋肉がなかったら危なかったぜ……………………」<br />「あ、うん…………」<br />「けど悪いな理樹、全く分らなかったぜ…………」<br />「大丈夫だよ、真人もちゃんと成長してるって」<br />　前だったらそのまま倒れてたと思うし。<br />「ふむ、仕方あるまい。ならば私が説明してやるとしようか」<br />　里芋を口の中に放り込んだ来ヶ谷さんは、箸を指し棒のように振りながら軽く頷いた。<br />「簡単に言えば、理樹君を自分のモノにしようと思っている輩がいるということだ」<br />「なにぃっ！？　そりゃ大変じゃねえかよっ！！」<br />「だ、だからまだ決まったわけじゃないんだって」<br />「おっ、そうなのか？」<br />「そうなんだよ」<br />　真人が心配してくれるのは嬉しいけど、あんまり騒ぎにはしたくないからさ…………<br />「しかし少年、被害を受けているのは間違いないのだろう？」<br />「被害…………う～ん、被害なのかなあ…………」<br />「リキは困ってるのですか？」<br />「というより、戸惑ってると言うか…………」<br />　実際自分がそんな目に遭うとは思わなかったし。<br />「ちなみに被害に遭っているのは理樹君なのかね？　それとも『なお君』なのかね？」<br />「ちょ――――」<br />「「「なお君？」」」<br />　一斉に首をかしげる面々。ただ鈴と小毬さんは思い出したかのように手を合わせた。<br />「そのなお君と言うのは来ヶ谷の知り合いか？」<br />「私だけではなく、謙吾少年の知り合いでもあるがな」<br />「私とは知り合いなのですか？」<br />「もちろん、クドリャフカ君とも面識があるぞ？」<br />「そうなのですか？　む～～～、思い出せないです」<br />「というより、全員と面識があるはずだがな」<br />「ちょ、ちょっと来ヶ谷さん…………」<br />「そんな奴いたっけなあ……………………なあ、理樹は知ってるか？」<br />「ええぇっ！？」<br />　僕に聞くの！？　知ってるけど答えようがないって！！<br />「なおは理樹の――――」<br />「鈴はちょっと黙ってようね！！」<br />「なおちゃんは可愛い子だよ～」<br />「こ、小毬さん…………」<br />「ちなみになお君とは理樹君の女装したときの姿だ」<br />「「「なにぃっ！！？？」」」<br />「ちょっと来ヶ谷さぁぁぁーーーん！！？？」<br />「これがその時の写真だ」<br />「…………いい写真ですね。ぜひ印刷して数枚ほど頂けると嬉しいのですが」<br />「西園さんも食いつき良過ぎだからっ！！」<br />「ならば赤外線で送ろうか」<br />「赤外線、ですか…………？」<br />「携帯の機能の一部だよ」<br />「…………覚えます。この機会にぜひ」<br />「せめて別の機会に覚えてよ！！」<br />「女装とはどういうことだ？」<br />「え？　理樹が女の恰好してるのか？」<br />「理樹が女装か」<br />「だから３人とも見ないでってばっ！！」<br />「これがリキですかっ！？　とっても美人さんなのですよ」<br />「そうだろう。何せ私の自信作だからな」<br />「クドも興味を持たない！！　来ヶ谷さんも見せないで早く消してよっ！！」<br />「まあまあ、落ち着きたまえ。今の問題は理樹君のストーカー被害についてだろう？」<br />「あ…………」<br />　そう言えばそうだったよね。<br />「さあ少年、君の悩みを聞かせたまえ。お姉さんが力になってあげよう」<br />「う、うん」<br />　こんなに親身になってくれるなんて、やっぱり来ヶ谷さんはいい人だなあ。<br />「それで理樹、一体何があったんだ？」<br />「あ、うん…………大したことじゃないんだけど、よく手紙が来るから気になって…………」<br />「「「手紙？」」」<br />「あとメールも…………これなんだけど…………」<br />　ポケットから携帯電話を取り出してみんなの前に見せる。<br />『こんにちは理樹君、元気そうでなによりだわ。最近は涼しくなり、過ごしやすくなってきたわね』<br />「う～ん、普通のメールだね？」<br />「何が変なんだ？」<br />「私も分からないです」<br />　女の子３人が首をかしげるのも分かるんだけど…………<br />「待て、まだ下があるみたいだな」<br />　恭介の言うとおり、まだ続きがあって…………<br />『理樹君はスポーツの秋みたいね。今日やっていた野球の試合、見てたわよ。凄かったわね、ホームラン。あたしも思わずはしゃいじゃったわ。<br />　それに打った後にこっちを見るんだもん、目があった瞬間ドキッとしちゃった。もしかしてあれって、お前のためにホームランを打ったんだよ…………ってやつ？　キャー、理樹君ってばだ・い・た・ん。でもすっごく嬉しかったな。理樹君の愛情しっかり受け取ったからね（はあと）。<br />　でも周りにいた女の子がちょ～っと馴れ馴れしかったよね？　理樹君にべたべた触って…………理樹君は人気があるんだから気をつけてね。勘違いした子が何するか分からないから危険だよ？　この前だって無理矢理女の子の恰好をさせられてたし…………可愛かったけど、他の人にあんまり見せちゃ駄目だよ？　それに嫌ならそう言った方がいいし…………あ、もしも直接言い辛いんだったら遠慮なくあたしに言ってね？　理樹君のためだったらあたし、何でもしてあげるんだから。<br />　それに理樹君のクラスメイトもちょっと心配だな。最近――――』<br />「「「…………………………………………」」」<br />「えっと、毎日こんな感じで…………あと体育祭の時の写真とか、僕が何してたのか結構知ってるみたいで……………………」<br />「…………理樹、それは間違いなくストーカーだぞ？」<br />「で、でもメールも悪意がある感じじゃないし、写真だって気を利かせてとってくれたのかもしれないし…………」<br />「すげえ気のきかせようだな…………さすがは理樹、モルディブだぜ」<br />「そういう真人はポジティブだね」<br />「へ、ありがとよ」<br />　あとモルディブ共和国を知ってるのも驚いたけど。正確にはモルジブだっけ？<br />「そういえばメールだけど、送った人は誰なのかな？」<br />「それが分からなくて…………件名には『Ｔより』とだけ入ってて…………」<br />「Ｔか…………」<br />　推理するように唸る恭介だけど、さすがにこれだけじゃ探しようがないと思う。もしかしたらこの学校の生徒じゃないかもしれないし…………<br />「となると、やはりなお君の可愛らしさに惹かれたのも原因の１つだな」<br />「来ヶ谷さんもまた引っ張りださないでよ！！」<br />「けどよお、理樹に筋肉が足らないから女っぽく見えるんじゃねえか？　ちょっとオレ筋肉を分けてやるぜ」<br />「それは――――」<br />「駄目です、それは美しくありません」<br />「え？　えっと、西園さん…………？」<br />　突然西園さんがすごい勢いで真人に詰め寄った（しかも正座のまま！？）。<br />「ほう、今のはいい動きだったな」<br />「うむ、流石は美魚君だな」<br />　そういう問題じゃなくて。<br />「いいですか井ノ原さん、大切なのはバランスです。確かに身体がしっかりしている男性も必要ではありますが、精々１人で十分です。４人それぞれキャラが確立されているにもかかわらず、それを崩すのは愚の骨頂です」<br />「お、おう…………」<br />「先ほど写真を見させていただきましたが、あの姿は素晴らしいものでした。よりバリエーションも増え、棗×直枝、宮沢×直枝はもちろんのこと、責めに転じることもできるようになりました」<br />「うっ…………頭が……………………」<br />「直枝×能美、来ヶ谷×直枝…………ありです、むしろ押していきましょう。パターンとしては先輩後輩や友人、あるいは両刀にして誘い受けという展開も面白いです」<br />「なかなか素敵じゃないか。なお君が相手なら私も喜んで参加させてもらおう」<br />「喜ばないでよっ！！　それにまた話が変わってるし！！」<br />「理樹の言う通りだな」<br />「恭介…………」<br />「相手はかなりの強硬派だ。こういう場合、あまり長引かせるのも問題だな。必要なのは早期解決、幸い誰が送ったか目星は付いているからな」<br />「本当に！？」<br />「ああ、勿論だ」<br />　さすが恭介だ。僕なんて全然予想もつかないのに…………<br />「だが恭介氏、相手が分かっているからと言ってすぐに解決できるものではないぞ？　それに呼び出すにしても問題が多々あるが」<br />「そのあたりは問題ない。俺にいい作戦がある」<br />「またおかしな作戦じゃないだろうな？」<br />「心配するな鈴、ちゃんとお前のことを考えた作戦だ。誰のも迷惑をかけず、理知的かつ平和的な解決方法。<br />　名付けて、『ちょっと誰よあの娘！？　ドキドキ・嫉妬大作戦♪』だっ！！」<br />　ばさぁっと、どこからともなく取り出した横断幕。そこには確かに恭介の言ったとおりの文字が大きく書かれてるけど…………<br />「「「……………………」」」<br />　ちょっと言葉が出てこない…………<br />「あの、恭介さん。私たちはいったい何をすればいいのですか？」<br />　そんな状況の中、全員を代表してクドが恭介に尋ねてくれた。<br />「うむ、よくぞ聞いてくれた。この作戦はだな、理樹が別の女子と仲良くしていればあのストーカー女は嫉妬に駆られて出てくるだろうと言う判断から生み出された見事な作戦なのだ」<br />「ほえ～～」<br />「ん？　それじゃあたしは何をすればいいんだ？」<br />「理樹とイチャイチャすればいい！！」<br />「ええっ！？」<br />　しかも何でガッツポーズ！？<br />「まあ鈴に限らず、もちろん能美や神北でも構わないんだが」<br />「ふえぇっ！？」<br />「わ、わたしですか！？」<br />「おいおい、そんなに驚かなくてもいいだろう？」<br />「で、ですけど…………みんなの前ですので……………………」<br />「あはは…………ちょっと恥ずかしいかなって……………………」<br />「そうなのか？」<br />「鈴さんは恥ずかしくないですか？」<br />「２人っきりだったらいいけど、みんなの前だと恥ずかしくないかな？」<br />「むう、よー分からん。普通に話してればいいんじゃないのか？」<br />「私も嬉しいですけど…………その普通が難しいので…………」<br />「ま、鈴には少しだけ早かったかもしれないな」<br />「おいきょーすけ、あたしのことをバカにしてないか？」<br />「そんなことはないぞ？　ただ急いで考えても仕方ないってことだよ。<br />　まあそのあたりのことは後でだな。そろそろ昼休みも終わることだし」<br />「ほ、ほんとーですっ！？」<br />「急がないと午後が始まっちゃうね。僕はこっちを片付けるから、小毬さんはそっちをよろしく」<br />「はーい」<br />　ストーカーとかは分かんないけど、みんなが僕のためにいろいろ考えてくれるのは嬉しいと思う。<br />　一致団結して１つの問題にあたるっていうのも楽しいし。ただ相手の人にも迷惑にならないようにしないと。<br />　もともとは厚意から来ているものだと思うし、仲良くしたいって感情があるんだと思う。だったら僕も仲良くしたいって思うしね。<br />　真人や謙吾だって、いろんなことがあってこそ仲良くなれたんだしね。<br />「――――ですからカップリングを考える場合、見た目だけでなく普段の言動から考える必要があるということです。安易なイメージだけで決定した場合、後々悲惨な目に遭うでしょう。<br />　またなお＆こまりという場合もありますので注意してください。この場合は逆にしてもそれほど問題ではないのですが、なお×こまりとした場合、間違えると大変なことになるので気をつけてください」<br />「特に私を後ろにしたりすると大変なことになるからな」<br />「謙吾…………分かるか……………………？」<br />「もう、駄目そうだ…………」<br />「ってまだやってるの！？　しかも人が増えてるし！？」<br /><br /><br /><hr size="1" /><br /><br /><br />　ご無沙汰です、本当にご無沙汰です。生きてますから…………<br />　久々にＳＳを書こうと思ったら、全然書けませんでしたorz<br />　どうしてもゲームのシナリオっぽくなっちゃうんで、いろいろとリハビリが必要です。まだ多人数を動かすのが苦手だし、キャラの特徴を出さないと駄目だなぁと思ったり。<br />　てなわけで２部構成になっちゃいました。今回はプロットをちゃんと作ったし、あの人が登場するからしっかり作りたいんで。<br />　明日あたりに後編をあげますんで、また見てやってください(￣Д￣；；<br /><br /><br /><a href="http://blogranking.fc2.com/in.php?id=147796"><img src="http://blog-imgs-24.fc2.com/s/i/d/sideota/c_04.gif"style="border:0px;"></a><br /><br /><br /><a href="http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=tirotiro" target="_blank"><br /><img src="http://blog-imgs-24.fc2.com/s/i/d/sideota/web_b.gif" border="0"></a> ]]>
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<dc:subject>リトルバスターズSS</dc:subject>
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<dc:creator>tiro</dc:creator>
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<title>明日あたり更新するかも…………</title>
<description> かなり長い間更新してませんでした、すいません(￣Д￣；；ねこかんのほうで手いっぱいという部分もありまして、なかなかできませんでした。しばらく休止することも考えたのですが、コンスタントに訪れていただける方もいるようで。拍手、コメントも残してくださる方も多く、見る度に頑張ろうという気持ちがわいてきました。今は企業に作品を送って結果待ち。ねこかんのほうも順調とは言えませんが、なんとか頑張っていますヽ(ﾟ∀ﾟ)
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<![CDATA[ かなり長い間更新してませんでした、すいません(￣Д￣；；<br /><br />ねこかんのほうで手いっぱいという部分もありまして、なかなかできませんでした。<br />しばらく休止することも考えたのですが、コンスタントに訪れていただける方もいるようで。<br />拍手、コメントも残してくださる方も多く、見る度に頑張ろうという気持ちがわいてきました。<br /><br />今は企業に作品を送って結果待ち。ねこかんのほうも順調とは言えませんが、なんとか頑張っていますヽ(ﾟ∀ﾟ)メ(ﾟ∀ﾟ)メ(ﾟ∀ﾟ)ノ<br /><br /><br />実際こっちに乗せたいSSもネタはいっぱいあり、同時に少しばかり成長した自分も見てもらいたいと言うのもありまして。<br />明日、明後日あたりに１つアップしたいなと思います。<br />ネタはリトバスです。一応前の続きもので。<br />かな～り長い時間を明けてしまったので、自分も皆さんもストーリーを覚えていないかと （´△｀)<br /><br /><br />一度見直して、全部加筆修正をしてあげたいなと。<br />あぁ、時間が欲しいσ(~～~、) ]]>
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<title>ほめられてのびるらじおppとか</title>
<description> あんまり更新してなくてすんません(￣Д￣；；只今テスト期間なので、それが終わったら、多分来週あたりに更新します。多分。一応ドラゴンを予定。でも俺つばも書きたい。てか書く。多分。リンダＳＳです。トゥルー＆アフター系（ポッポ行きではないｗ）からのオール系。何回かに分けての中編、最初はリンダ主役、サブにプリンセス、タマでやる予定。話は変わって最近（というか今日からｗ）ネットラジオにはまった。ナツメブラザー
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<![CDATA[ あんまり更新してなくてすんません(￣Д￣；；<br /><br />只今テスト期間なので、それが終わったら、多分来週あたりに更新します。多分。<br />一応ドラゴンを予定。でも俺つばも書きたい。てか書く。多分。<br />リンダＳＳです。トゥルー＆アフター系（ポッポ行きではないｗ）からのオール系。何回かに分けての中編、最初はリンダ主役、サブにプリンセス、タマでやる予定。<br /><br /><br /><br />話は変わって最近（というか今日からｗ）ネットラジオにはまった。<br />ナツメブラザーズを改めて聞きました。理由は忘れたけど（今日なのにｗｗｗ）なんか聞いた。<br />で、その後ほめらじを。<br /><br />風音様が来ました。<br />Ｂｅｆｏｒｅ：まきいづみさん　≧　民安ともえさん　＞　（北都南さん、青山ゆかりさん、．．．風音さん．．．）<br /><br />↓↓↓<br /><br />Ａｆｔｅｒ：風音様＞＞まきいづみさん　≧　民安ともえさん　＞　（北都南さん、青山ゆかりさん、．．．）<br /><br /><br /><br />すばらしいっす。<br /><br /><br /><br /><br />あ、ねこかんのＨＰも微妙に更新されてますんで。<br />体験版をつくりたいな☆ ]]>
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