隠れオタでもいいじゃないか

主にPCゲームの二次創作を書かせていただいています。  あとは最近やっているゲームやら読んでいるラノベやらのこととか……。

「それは舞い散る桜のように完全版」2008年10月30日発売

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これも一種の花嫁修業〜巫女装束は戦闘服です〜
 歩みを振り返ることで己の未熟さとこれまでの成長をかみ締める。そしてその過程をこれからの道しるべとし、より一層の精進を心がける旨とする。
 
 ――行く年来る年。過ぎ行く過去は尊く、そして訪れるだろう幸福は何物にも変えがたいもではないでしょうか。
 私はこの人たちと迎えることのできた新たな年を最高の一年にしたいと思います。


                  これも一種の花嫁修業
           〜巫女装束は戦闘服です〜



 数百段に上る石段を数多くの人が登って行く。
 若い恋人同士で歩く人。
 子供をつれて歩く家族。
 仲睦まじく連れ添う老夫婦。
 それらのどの人々にも共通しているのは今年一年を幸せに過ごしたいという願い。きっと今は無きあの桜があったならばその多くの願いが叶ったかもしれない。けれどそんなもの無いのが当たり前だ。努力なく叶う願いなどその意味が薄れてしまうだろう。立ち向かうべき壁、幾度となめる辛酸、己の未熟さを悔いる後悔、けれどそれらを諦めず何度でも挑み続け、天から降り注ぐ一縷の偶然を掴み取るための努力。それらなくして人は真に成長することなどできはしない。
 偉そうなことを語ってみたけれど、それが私の経験から得た収穫です。
 そして、桜の零す優しい魔法に頼らなくても、今の私にはそれ以上の宝物を与えてくれる大切な人がいるから――――


「随分と熱心に祈ってたみたいだけど何を頼んだんだ?」
 新年を迎え、私たちは胡ノ宮神社に初詣に来ていました。拝殿には溢れんばかりの人が詰め掛けていたため最初に何をするべきかいろいろ迷いましたが、まず最初にお参りをするのが筋だろうということでそのまま奥に進みました。
 長い待ち時間を過ごしようやく拝殿でのお参りを終えた後、隣を歩く純一さんにそう尋ねられました。
「え? あ、その……」
 さすがに心の中で思うのと口に出していうのでは恥ずかしさが段違いです。しかも言う相手がその本人というのはどうにも困ったものです。
「お兄ちゃん……プレゼントを貰うわけじゃないんだから頼むっていうのは違うんじゃないかな……?」
「そうですよ。だいたい兄さんは無神経すぎます。お願い事は内緒にしないと意味が無いんですよ」
 言うべきなのかどうか戸惑っていると、純一さんの横を歩いていたさくらさんと音夢さんが援護をしてくれました。
「兄さんこそ何を願ったんですか? それこそ煩悩まみれの兄さんは何かを頼んだんじゃないんですか?」
 澄ました顔で笑う音夢さんの表情は、普段の大人びた表情よりも年相応の魅力に溢れていました。
「お前な、もう少し兄を敬おうとは思わないのか? それに俺の願いは家族の安全という素晴らしい願いだぞ?」
 何てったって俺達はみんな家族なんだからな、とちょっと拗ねながら言う純一さん。けれども私たちは茶化すことなどできず、みんな黙り込んでしまいました。
 その言葉に籠められた暖かい意味。全員が直接的な血の繋がりが無いけれど、それでも家族といった純一さんの気持ちが切に伝わってきました。
「兄さん……」
 音夢さんも驚いた表情を浮かべ、次にとろけるような笑顔を浮かべました。そして私もその家族という言葉に将来形を思い浮かべ、つい顔を赤くしてしまいました。
「にゃは〜。流石はおにいちゃんだね〜。こうもすんなりフラグを立てちゃって」
「いや、別に俺は……」
 むず痒くなった空気に押し出されるように、純一さんは赤くなった顔を背けてしまいました。さくらさんはそんな背中に飛び乗り、純一さんの顔を覗き込むように身をせり出しました。ますます照れたように身体ごと背を向けてしまう純一さん。笑みがこぼれる光景ですが、実際は私も人のことを言えないほどに赤くなっていました。
「そ、そういえばさ、その煩悩のことだけど、実は大晦日に突く鐘の数は百八回じゃないらしいぞ」
 唐突な話題転換でしたが、その話の内容は意外なものでした。
「それって除夜の鐘のことですよね? 煩悩の数で百八回じゃないんですか?」
 私もそう思っていました。けれど純一さんはそうじゃないんだよ、と得意そうな顔で笑いました。
「実は大晦日に突く数は百七回、年を越えたときにもう一回。それで百八回らしいぞ」
「それは知りませんでした……」
「私も。兄さんは勉強に役に立たない知識はいろいろと持ってるんですね」
「ほっとけ」
 何時も通りの光景に戻った三人でしたが、さくらさんは何かを考え込むように黙ったままでした。
「ねえお兄ちゃん。煩悩の百八個ってどんなものなの?」
「えっ……?」
 さくらさんの質問に固まる純一さん。話によるとさくらさんは日本の文化や風習にも興味があるようなので、日本独特の風習が気になったのでしょう。好奇心旺盛なさくらさんらしいと思います。
「え〜っと、その……そうだ、こういうことは音夢のほうが詳しいんじゃないか?」
「私ですか!? いえ、その……なんでしょうね……?」
 二人はお互いの視線を行き来しながら口ごもってしまいました。そしてそうなると順番が私のほうに回ってくるのは必然でしょう。といっても私にも分かるはずがありません。しかしここは自分の考えを言っておくべきなのでしょうか?
「あの……」
「――――煩悩の数といわれている百八という数ですが、実はこれには諸説あり数が一定しているわけではないのです」
 私が考えを纏めていると、背後から澄んだ声が聞こえてきました。
 不思議に思い背後を振り返れば、巫女装束に身を包んだ黒髪の女性が佇んでいました。
 結われた髪は優雅に流れ、その深い瞳の色と合わさり大和撫子としての気品と風格を兼ね備えていました。
「明けましておめでとう御座います、朝倉様。それにさくらさん、美咲さんも」
 優しく微笑むその人はクラスメイトの胡ノ宮環さんでした。
「そちらに居るのは音夢さんですよね。いつごろ帰っていらしたのですか?」
「クリスマスに。ごめんなさい、戻ってきたら挨拶をしようと思っていたんですけど」
 にっこりと微笑む音夢さん。親友同士の挨拶としては変わったものだと思いますが、私たちの接点も複雑なものでした。
 純一さん、音夢さん、さくらさん、胡ノ宮さんは中学時代からの同級生。そのときはさくらさんだけ別のクラスだったそうです。
 付属から本校に上がる際、音夢さんとさくらさんは進学しませんでした。というのも音夢さんは本島の看護学校へ、さくらさんは自宅でもともとアメリカで行なっていた研究の続きをやることになったからです。純一さんは胡ノ宮さんとクラスメイトに、私は途中転入という形で純一さんと同じクラスになりました。もちろんさくらさんとの繋がりは言うまでもなく、音夢さんはその年の夏休みに出会いました。
紆余曲折を経て一年、学年が二つ目に上がり私達は何とか穏便に話をすることのできる関係になることができました。

「なんとなく見覚えのある人影を見かけたからもしかしてと思ったんですけど。皆さんとてもよく似合っていらしたので声を聞くまで半信半疑でした。それに純一さんも……」
 そう微笑む胡ノ宮さんの言う通り、私たちの服装は晴れ着姿でした。
 さくらさんの振袖はお婆様が以前下さったもののようです。名前の通り薄い桃色の花びらをあしらったもので、隠れるように混ざった葉桜がより一層色彩を引き立て、流れるように染められた濃淡がその鮮やかさを印象付けます。それらを金色の帯で締めており、その髪の色と合わさり普段の無邪気な雰囲気とはがらりと変わり、ほのかに色気を漂わせています。伸ばされた髪は綺麗に結い上げられ、それが美しさを引き立たせています。
 音夢さんは京紫から藍、そして薄墨色へと美しく移り変わる、まるで夜空を連想させるような着物です。所々に咲いた菫の花が可憐さを表現し、端に添えられた金色の軌跡が気品を漂わせます。その目を引く流れはまるで天の川のように、清らかで荘厳な雰囲気を持ち合わせています。肩口で切りそろえられた髪は結われてこそいませんが、その名を冠する鈴があしらわれた簪がさも戦国の世の姫君を思わせます。着物こそ鷺澤家のものを貸し出したのですが、まるで彼女のために作られたかのように違和感無く、寧ろその魅力を存分に引き立たせています。
 ちなみに私の着物も自分のものです。自分で言うのもなんですが、私にはもったいないぐらいの美しさで、思わず着るのを躊躇してしまいそうです。
蓮の花。紫陽花の花。百合の花。それらが互いの美しさを引き立てあうかのように競演し、波紋を思わせる色の広がりが絶妙に染め上げられ、全ての要素が緑青色の下地に咲き乱れるその美しさには言葉に表せません。確かに派手な色合いではないのですが、見るほどに心が引き込まれるその美しさが私に合っているのではないかと思います。
実はこの着物を貰ったのはもう少し幼い頃だったのですが、実際に着付けを終え外出したのは初めてでした。というのも以前は外出することなどめったに無く、貰った当日に試しに袖を通しただけでそれ以後は着ることなどありませんでした。去年の元日にも着る機会があったのですが、残念ながら当時はまだ私たちの関係がお父様に認められておらず、一緒に出かけることができませんでした。ですから今日が初めての日で、その喜びを皆で味わいたく揃って着付けてもらったというわけでした。
 私も少し手伝ったのですが、まず最初にさくらさんの姿を見たときの純一さんの反応がとても面白いものでした。
 着付けを終え、髪を結い上げ終わり、薄っすらと化粧を施したさくらさんが純一さんの目の前に現れたとき、純一さんはさくらさんに向かって――

「えっと……君、部屋間違ってない?」

 と真顔で答えたのです。一応演技も付けてみたのですが、まさかあんなに騙されるとは思いませんでした。その場に居るみんながその女性がさくらさんだと伝えた瞬間目をまん丸にして 驚き、その後は顔を背け、けれどちらちらとさくらさんの方を気にして「七五三みたいだな」と照れ隠しをしたのです。さくらさんはその言葉を額面どおりに捉え、怒り腕を振り回したのですが、着付けをしていただいたお手伝いの方に「あちらの方はお嬢さんの美しさに照れておられるんですよ」と言われたことで機嫌を直し、純一さんに抱きついて行きました。
 さくらさんはしきりに似合うかどうかを純一さんに尋ね、とうとう根負けした純一さんが、
「…………ああ…………正直分からなかった。うん…………美人だと思う」
 と決して目を合わせず、それでも顔を真っ赤にしながらそう言うと、さくらさんは満面の笑みを浮かべ、極上の笑顔を浮かべました。「にゃはは〜。……ありがと、お兄ちゃん」と言ったさくらさんのあの笑みは見るものを虜にしてしまいました。
 正直純一さんが他の女性をそこまで褒めるのは少々複雑な気分ではありますが、それがさくらさんなら許容することができます。
 その後音夢さんが着付け、私が着付けましたが、そのたびに純一さんは言葉を失っていました。ちなみに私が音夢さんに、
「わぁ、とても似合ってますね。音夢さんはスレンダーな体形ですから着物がとても似合いますね。私はちょっと似あわないかもしれないので羨ましいです」
と言ったら、「……………………宣戦布告ですか?」と底冷えする三白眼と共に呪詛のように呟かれたのは何故でしょうか……。
 とにかく、お二人ともとても美しかったのですが、それでも純一さんは私を見て、
「…………正直、今すぐにでも式を挙げたいぐらいだよ」
 と言ってくれた事がとても嬉しく、涙が滲みそうになってしまいました。
 これってプロポーズですか? と冗談交じりに言ったら――

「俺が美咲の家を任せても大丈夫だって言われるぐらいになったらまた言うよ」

 と目を見て言い切ってくれました。結局我慢したものは無意味となって顔を伏せてしまいました。
 追い討ちをかけるように扉がノックされ、お父様が部屋に入って来ました。状況が状況だけに慌てる純一さんでしたが、お父様は無言で手に持った包みを差し出し出て行ってしまいました。
 包みを開けてみるとどうやら男性用の袴のようで、不思議に思い戸惑っていると、お手伝いの方が「これは旦那様が成人された際にお召しになられていたものです」と教えてくれました。それが意味するところを理解したときにもう一度溢れてきて、零れる涙と笑顔を堪えることができませんでした。
 純一さんも着替えをし、結局出発は予定を一時間ほど過ぎてしまいました。


「ところで環ちゃん。さっきの話の続きなんだけど」
 新年の挨拶を交わしながらそんなことを思い出していると、さくらさんが胡ノ宮さんの袖を引きながら質問の答えを催促しました。
「そうでしたね。それで煩悩の数の事ですが、実は百八というのはもともと大きな数を意味するものでした。そしてその数に合わせる様に煩悩を上げていったとされるのが有名な説です。
 まずは六随眠と呼ばれる根本的な煩悩があります。『貪、瞋、痴、慢、疑、見』といい、最後の「見」をさらに細かに五分類することで十随眠が定義されます。さらに見惑と呼ばれる正しいものの見方によって断てる煩悩が三十二個定義されます。
 ここに正しい修行によって断てる煩悩が四種、総じて三十六の随眠が生まれます。これらが修惑によって断てる煩悩です。いわば人々を輪廻の世界に結びつける煩悩です。
 残るは瞋が存在しないとされる色界と無色界の煩悩が三十一。総じて九十八。ここに修行を妨げるといわれる十纏を加えて百八というわけです」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「あら? 皆さんどうかされましたか?」
 不思議そうな話をする胡ノ宮さんでしたが、私たちは揃って曖昧な笑みを浮かべることしかできませんでした。
「どうかって言われても、な」
「ええと……ちょっと……」
「あの…………」
 なんと言っていいか分からない私たちに代わって、さくらさんが纏めて答えてくれました。
「うにゅ……ちょっと難しすぎてボクには分からなかったよ」
 困ったように落ち込むさくらさんに、環さんはごめんなさいと申し訳無さそうに謝った。
「先ほどの説明はあくまで一説ですし……他に有名な説としては人間の六感に『好き』、『嫌い』『普通』の三つの感情、それらが『良い』か『悪い』かの判断。そして物事の事象が起こる『現在』、『過去』、『未来』の三つの時をそれぞれかけ合わせ百八だと言われています」
 こちらの話は良く分かりました。他の方々も同様のようで納得した仕草を見せています。
「さすが環だな。音夢とは大違いだな」
「何言ってるんですか。得意になって除夜の鐘の話をしていた兄さんとは大違いじゃないですか。もともと知識の量が違うんですね」
「いえ、あの……私の知識も足りていませんので。生憎寺院の話ですので門外漢ですし、もう少し詳しく知っていたら分かりやすく説明することができたのですけど」
 しょんぼりと落ち込みながらそう答えた胡ノ宮さんですが、そこまで知っていた胡ノ宮さんに尊敬の念を覚えます。純一さんと音夢さんも驚いたように顔を見合わせています
「…………そういえば除夜の鐘って寺だよな」
「兄さん……何を当たり前のこと言っているんですか?」
 ……どうやら違ったようです。
「いや、なんか神社っていう感じがしたから……」
「はあ、まったくいつまでたっても駄目なんですから。いつになったら人並みに成長するんですか?」
「何言ってるんだよ。俺だって真面目に勉強してるっての」
「ですからそういうところが駄目なんです。努力は口で言うのではなく結果で語らないと。それに私が言っているのは学力の問題ではなく教養の問題です」
 腰に手を当てお説教をする音夢さん。やはりどこまでいってもこの二人の関係は変わりありそうにありません。
「でもお兄ちゃんの成績はちゃんと上がってるよね〜」
 純一さんの腕にしがみつきながらそう笑みを浮かべるさくらさん。先ほどからこちらをちらちらと――正確には音夢さんと胡ノ宮さんに挟まれ、加えてさくらさんに抱きつかれている純一さんへの視線が厳しくなってきていますが、いつものスキンシップを続ける二人は全く気にする様子は無いようです。
「そ、そうですね。以前は下から数えたほうが早いと言う話しも聞きましたが、今は断然上からのほうが早いですもんね」
 周りを気にしながらもさくらさんに相槌を打ちます。
 その言葉が示すとおり純一さんの成績は二桁の前半、得意な教科ではたまに一桁に入るほどの学力まで持ってきていました。
「そうですね。私も朝倉様の努力に目を見張るばかりです」
「そうは言ってもなあ、環には勝った事無いしことりにも負け続けてるし……」
「何言ってるんですか。以前から努力を続けている胡ノ宮さんに勝てるわけないでしょ」
 呆れたように溜息をついた音夢さんですが、その可能性が全く無いとは思っていないようです。その証拠にこの前は帰ってきたテストの点数を見て、
「…………これならあの歌う腹黒サイコメトラーに――ではなく、白河さんに勝てるかもしれないですね」
 と言っていましたし。たぶん純一さんが褒められることがむず痒く、嬉しさ半分と恥ずかしさが半分なのでしょう。
「まあ眞子には数学で勝ったけどな」
「でも合計点では負けちゃったんだよね〜」
 さくらさんが純一さんを茶化すように口を挟みました。案の定純一さんは「一言多いやつだ」、とさくらさんの頭に手を伸ばしました。けれどさくらさんの髪型を見て寸前で手を止め、行き場の無い右手を所在無さげに戻しました。
「まあ休み明けのテストでは絶対勝つけどな」
「優秀な家庭教師が三人もついているんですから、これで不甲斐ない結果を出そうものなら……ね」
 音夢さんが言うとおり私とさくらさんは一年生の頃から純一さんの勉強を見ていました。私は現代国語と古典、地歴公民の主に文系科目を、さくらさんは残りの理系科目を教えていました。音夢さんが帰ってくる長期休暇では社会を任せ完璧な体勢で受験にむけ取り組んでいました。もちろんお互いに遊んで過ごす時間が無くなるわけではありませんが、やはり減ってしまうのは仕方が無いことです。そんな苦労をするには気が早いことかもしれませんが全ては二人の夢のために。これは二人で決めたことですから。
「とりあえず最初は眞子、次に環、ことりと続いて最後は杉並を抜かしてワンツーフィニッシュと行こうぜ」
「そうですね。私たちのクラスにはライバルが多いですから」
 二人で微笑みながら新年の誓いを立てました。そんな私たちの姿を胡ノ宮さんが楽しそうに眺めていました。
「やはりとても仲がよろしいようで、とても羨ましいです。やはりお二人の進路は……?」
「ん、まあな。やっぱり美咲の親父さんに胸を張るためには一番を目指さないとな。それに、期待もしてもらってるようだし」
 自分の着ている袴に視線を落としながらそう笑みを浮かべました。
「ええ、兄さんにはがんばってもらって私の生活を楽にしてもらわないといけませんから」
「だよね〜。そうだ、お兄ちゃんが大学に行ったらボクの研究を手伝ってもらおうかな」
「おいおい……お前らあんま自分勝手な事言うなよな……」
 溜息をつく純一さんですが、胡ノ宮さんはそんな私たちの姿を見てもう一度笑みを浮かべました。
「やっぱり純一さんの周りは楽しそうですね」
 その笑顔は本当に純粋な笑顔でした。


「そういえば環ちゃんはここにいて大丈夫なの?」
 思い出したかのようにさくらさんが疑問を口にしました。確かに誰も言いませんでしたが胡ノ宮さんは格好からしてお仕事中のように見えます。もしかして私たちが話し込んでいたので戻れなかったのでしょうか。もしそうなら悪いことをしていました。
「いえ、今は休憩の時間ですから。あと二十分ほどなら平気です」
「でも私たちのせいで休憩時間を……」
私がそう口に出すと胡ノ宮さんは、「それは違います」と首を振った。
「私は皆さんとお話しすることが何よりの安息ですから。私のほうこそ突き合せてしまって申し訳ないぐらいです」
 その笑顔に嘘はなく、多少の疲れは見えていたとしてもそれを吹き飛ばすほどの活力に満ちていた。
「う〜ん……環ちゃん、そんなに忙しいの?」
「え? それは、まあ……。それもお昼を過ぎれば落ち着いてきますから」
 歯切れが悪かったけれど、胡ノ宮さんはそう答えた。きっと朝から休まずに続けていたに違いありません。それでも嫌な顔ひとつせず続けられるのは素晴らしいことだと思います。
「ならボクも手伝うよ」
「さくらちゃん?」
 突然の提案に私たちは驚きの声を上げてしまいました。音夢さんがさくらさんに真意を問いかけるように呼びかけました。
「だって環ちゃんがこんなに苦労してるんだよ。だったら少しぐらい手伝っていこうよ」
「さくらさん、お気持ちはありがたいのですが……私の仕事というのは関係者しか任せられない物なので。ですから御免なさいね」
「そっか……」
「とか言いながらお前は巫女服が着たいだけだろ?」
「にゃっ!? それは、その……あははは〜」
 どうやら純一さんの言うとおりのようで、さくらさんは誤魔化すように笑い出しました。私たちもその光景が微笑ましく、声をそろえて笑い合いました。
「ですが折角綺麗に着付けていらっしゃるのに、どうしてこのような服装が羨ましいのですか?」
「それは……お兄ちゃんが巫女さんの服が好きだから……」
「そうなんですか?」
 さくらさんの言葉に、先ほどまで胡ノ宮さんのほうを向いていた音夢さんの首が、勢いよく九十度ほど回転し純一さんの顔を睨みつけました。
 咎めるようなその視線に純一さんは取り繕うようなうめき声を上げました。
「いや……そのな、変な意味じゃなくて…………あれだ、神職の服だから、なんかこう清らかなイメージがあるというか……」
「にゃはは〜。お兄ちゃん、嘘はよくないよね。ボクはよ〜く知ってるんだから。まえにお兄ちゃんの持ってた参考書の中にあった巫女さんはあんまり清純じゃなかったよね〜」
「ちょっ、おま――」
「へ〜」
 一斉に向けられる三人の視線。音夢さんは先ほどよりも温度の下がった視線を向けています。
「他にもいろいろあったよ〜。半分以上あったのは着替えてるやつだったよね。給仕さんとかメイドさんとか、もちろん巫女さんも。あとは学校の水着とかエプロン姿とか制服とか体操服とか――あ、お兄ちゃんはブルマよりもハーフパンツのほうが好きなんだよね?」
「ななな何でそれを――」
「本当ですか?」
 純一さんの叫びは最後まで聞こえることはありませんでした。
 音夢さんは純一さんの右肩に手を置き、息がかかるほどの距離までずいっと顔を近づけました。
けれどその目にあるのは怒りではなく、それよりももっと純粋な真剣な表情でした。
「本当なのですか?」
 胡ノ宮さんも顔を近づけてきました。純一さんの左肩に手を置きじっと目を合わせます。
「あの……本当ですか?」
 という私もつい気になってしまい、無意識のうちに正面から覗き込むようにして近づいていました。
「兄さん?」
「朝倉様?」
「純一さん?」
 三対の視線にさらされた純一さんは、半ば強制的に、自棄になったように答えました。
「そうです確かに興味はありますよ! でも別にいいだろ。俺だって男なんだから!」
 その答えを聞くと、私たちはまるで示し合わせたかのように純一さんから離れ、黙ったまま視線を合わせ頷きあいました。
「――では皆さん、後日揃っていらしてください。皆さんの分も用意させていただきます」
「ごめんなさいね。わざわざ用意させてしまって」
「あの、ありがとうございます。胡ノ宮さん」
「ボクの分もあるの?」
「はい。もちろんですよ」
 唐突な話の流れに唖然としている純一さんを他所に、三日の予定が決まりました。


「胡ノ宮さんはいつもあのようなことをされているんですか?」
 神社からの帰り道、私は忙しそうだった胡ノ宮さんの姿を思い出しながら疑問を投げかけました。今まで彼女が働いている姿を見たことが無かったので驚きました。
「ん〜、いつもは神社のお掃除とかお守りを用意したりしてるよね?」
「そうだな。確かに忙しそうにしているところは見たこと無いけど、本人によると朝は毎日六時より前に起きてるらしいぞ」
「そうなんですか!? すごいんですね〜」
 音夢さんが驚いたように声を上げます。私も同様に感嘆の念を抱きました。
「やっぱりそういう生活をしていると清楚な雰囲気を纏えるようになるんでしょうか……。それに胡ノ宮さん、肌も綺麗でしたし……」
 そして私たちは揃って黙り込んでしまいました。
「やっぱりそういうのは日々の生活から変えていかないといけないんじゃないかな? 特に音夢ちゃんなんて正反対だしね〜」
「…………さくらちゃん? それはどういう意味ですか?」
「えっ!? 自覚が無いの?」
「そういう態度がさらに憎いですね……」
「う〜ん、言い辛いんだけどね……でも音夢ちゃんがそう言うなら。例えば性格は環ちゃんが清純で誰にでも親切、物腰は柔らかだし裏表が無いし、それでいて少し消極的なところがあるよね。
 それに対して音夢ちゃんはどす黒い感情を抱えているし、丁寧に対応する相手をかなり選ぶし、腹黒いし。おまけに自分の障害になりそうな相手には影から貶める姑息なところがあるじゃない?」
「………………へぇ? それで?」
「それにお兄ちゃんは髪の長い女の子が好きなんだよ。知らなかった?」
「な――――!?」
 先ほどまではこめかみに欠陥を浮き立たせていた音夢さんでしたが、さくらさんの最後の言葉に衝撃を受けたように仰け反り、そして弾かれるようにその視線を私たちのほうへと向けました。
「――例えば美咲ちゃんは言うまでも無いよね? ボクもそうだし、他に挙げれば白河さんや環ちゃんにななこちゃん、美春ちゃんも最近は髪を伸ばしているから、もうロングって言ってもいいのかな。あとは萌先輩とかみっくんとも仲がいいよね?
 ――それに比べて髪が短い娘への対応を考えてみれば分かるんじゃない?」
「た……確かに。眞子への扱いが私と同様なのはそのせいだったの……? そういえば眞子に対しては男友達のような扱いをするのに萌先輩に対してはいつも親切だし…………」
「おい……音夢?」
 俯いて独り言を続ける音夢さんは、純一さんの呼びかけにも気付かず自分の世界に閉じこもってしまっているようです。
「あの、音夢さん?」
「あ〜美咲ちゃんは話しかけないほうがいいと思うよ? たぶん油どころかウランを注ぐ結果になりそうだから」
「はぁ……」
 そうして暫く音夢さんを見守っていると、突然何かを閃いたかのように伏せていた顔を上げました。その表情はとても晴れやかで、先ほどまでの虚ろな面影はどこにもありませんでした。
「不安だ……」
「不安だね……」
 そんな音夢さんを見てお二人が一言。私はその意味が分からず首を傾げてしまいました。
「ねえ、私思ったんですけど。例えば世の中に男女がそれぞれ一人しかいなかったら、その男女は恋人同士になると思いますか?」
「……アダムとイブのことか? まあそりゃ赤の他人同士なら難しいかもしれないけど、仲がよかったらくっつくんじゃないか?」
 純一さんがそう答えると、音夢さんはとても満足そうに頷きました。
「音夢ちゃん、もしかしてお兄ちゃんの周りの女の子を……?」
「亡き者にする、ですか? やめてくださいよ。私はそんなひどいこと電波女にしかするつもりありませんよ。ただ髪の長い女の子が美容室に行く手間を省いてあげるだけです。どうです、親切でしょう?」
 どこから取り出したのか、音夢さんはにび色に鈍く輝く一対の刃を取り出しました。それを例える名称は『鋏』と呼ぶのが正しいのでしょうか。ただそれを『鋏』と呼んでしまうのにはいささかの抵抗を覚えてしまいます。
 なぜならその刃が恐ろしいほどに鋭く、加えて信じられないほどに巨大だったからです。刃渡りはおよそ私の肘から腕ほど。かの有名なジャック・ザ・リッパーが使用していたといわれても頷いてしまいそうな凶悪さでした。
 その風貌は使用している自らが傷ついてしまいそうな危うさを秘めています。きっとそれを目にした人は持ち主に自殺願望でもあるのではないかと考えてしまうでしょう。
 私たちは自然と距離をとっていました。
「ふふ……まずはあのワンコからですね。全く、ペットの分際でご主人様に楯突こうなどと……イヌの癖に盗人猛々しいとはよく言ったものです」
 歪に顔を歪め刃をうっとりと眺めるその姿は、すでに正気の沙汰ではありませんでした。
「音夢……それだけは止めておけ。髪を切るのも立派な傷害だぞ……?」
「何を言っているんですか!? 私と兄さんの幸せを築くためには障害を取り除くべきです。そのためには傷害なんかを怖がっていられますか!?」
「音夢ちゃん、巧いこと言ったつもりかもしれないけどその台詞は死亡フラグだから」
 さくらさんは妙に冷めた視線で――いえ、まるで消え逝く亡霊を見るかのように音夢さんを見つめています。 
「さくらさん!? そんなことを言ったら音夢さんが……」
 私の言葉が届くのを待たずして音夢さんの視線がこちらを向きました。
「…………まあワンコを狩る前に手近なもので試すのも良さそうですね」
「ひっ――」
 絡めとられる様な視線の前に私はすくみ上がることしかできませんでした。
強者と弱者――完全な捕食関係が出来上がった両者では、その行動すら他者にゆだねられてしまう。
 一歩、また一歩と、まるで狩るまでの時間を楽しむかのようにじわじわとにじり寄っていく。
「――そうはいかないよ」
そして残すは一メートルほどとなったところでさくらさんが前に躍り出ました。
「そうですか。まずはさくらちゃんからですか。潔いことです。ふふ、きっと綺麗な輝きが舞うことでしょうね」
 数度、まるで刃の音を確かめるように擦り合わせる。
「無駄だよ。それのもともとの持ち主は妹への純粋な思慕の念を抱いていた。そして持ちぬき亡き後、その想いは守護の念へと昇華し、偉大なる名器とかした。そう、その属性とは妹への殺傷能力がゼロになるというもの」
「なっ――――」
「それに残念ながら、僕の髪を切るのは五十年先まで予約済みだからね。お兄ちゃんと一緒に桜の木下で話をしながら切ってもらって、最後には出発前の感動的なシーンで幕を閉じるんだから。そ・れ・に、たぶんそんな展開になるよりももっと素敵な展開になるんじゃないかな? 例えば鷺澤家なら妾の一人や二人ぐらいは許してもらえるんじゃないかな。ねえ、美咲ちゃん?」
「え? あの、その…………相手にも、よりますけど」
 思わず答えた内容に純一さんと音夢さんが驚きの声を上げました。
 実際どうかとは思いましたが、さくらさんにはとても感謝していますし、私もさくらさんなら許せますし。それに何より、長年の想いが通じない悲しみは良く分かりますから……。
「美咲ちゃん……」
 さくらさんは泣きそうでいて申し訳無さそうな、それでも喜びを秘めたような表情をしていました。純一さんはそんなさくらさんをなんとも言えない表情で見ています。確かに純一さんからすれば微妙な話題でしょう。さくらさんが純一さんのことを思っているのはずいぶん前から知っていた話ですから。だからといって安易にその案に飛びつくのも私に悪いと思っているのでしょう。
「……ゆっくり考えましょう。まだ時間は有りますから」
「……そうだな。さくらの考えも変わるかもしれないからな」
「へっへーんだ。ボクのお兄ちゃんに対する気持ちが変わるわけないよ」
 複雑ではあるけれど、私たちは揃って笑顔を浮かべていました。
「――あの!」
 そんなときにかかる声。その主は少し離れたところにいた音夢さんでした。
「私も――立候補していいですか?」
「いや、御免こうむる」
「音夢ちゃんと一緒はちょっと……」
「あの……ごめんなさい」
 見事に息のあった返答。
「というわけで悪いな、音夢」
 純一さんがさわやかな笑顔で答えると、音夢さんは震えだし、そして突如奇声を上げて飛び掛ってきました。某三世のようなポーズで私たちのところへ飛び込んでくる音夢さん。
「ちょ、音夢――落ち着け、よ!!」
 身体をぐるんとひねり、寸前のところでかわした純一さん。そのまま左手で勢いを殺さぬよう――寧ろつけるようにして受け流し、かつ下半身を持ち上げるようにし、迎え撃つように構えられた右手で一閃――――掌底を重心へと叩き込みました。
「ヴェギュ――」
 人間が出せるとは思えない悲鳴を上げながらコンクリートへと叩きつけられた音夢さん。思わず手が出てしまった純一さんは慌てて抱きかかえあげました。
「おい、大丈夫か音夢!?」
「あ……兄さん……」
 音夢さんは弱々しい声で純一さんを呼び――
「ふふふふふ……兄さんに殴られた兄さんに殴られた兄さんに殴られた…………おまけに抱きかかえてもらった……」
 ――恍惚とした表情で微笑んでいました。
 思わず抱えていた腕を放していました。


 ――こいつ、Mだ!!

 話し合いの結果、ここに置いておくのは迷惑になるという判断が下りました。実際に放置しようとしたら、「ふふふ、放置プレイですね……」と音夢さんが呟いていたからです。仕方なく純一さんは音夢さんを簀巻きにし引きずっています。
「…………Mって無敵だよね……」
 さくらさんの重い呟きに私たちは揃って頷いていました。






 元日に間に合わなかった……。
 まあ当然だけどね。なんせ思いついたのが昨日の11時。家族で麻雀やってたら突如思いつきました。初めはCanvas2ネタでいこうと思ったんですけど、祭りに出さずにやるのもどうかと……。てなワケで本作です。
 なんやら音夢が壊れていくような……( ̄Д ̄;;

 とりあえず祭りは既に掲載されているものと、朋子&霧、あとは美咲家&主人公どもの話です。まあ時間がなかったものでプロット無しで突っ走っちゃってマス。御免です。

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

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これも一種の花嫁修業〜山荘に事件はつきものです〜
 季節は夏。
 木々が鮮やかに色づき、生けるものたちは力強く合唱を始める。
 太陽から伸びる日差しを浴び大きく膨らんだ雲を見送る。
 
 学生たちは夏休みという節目を向かえ気分を入れ替え心身ともに充実した時間を過ごす、そんな充実した季節。
 私たちはこの猛暑を乗り切るため山間の別荘地に来ていました。
 強い日差しを遮り、安らぎの空間を作り出す木陰。鳥たちは幾重にも重なるようにさえずり夏を優雅に飾り立てます。
 小川のせせらぎはそこにいるだけで涼しげな空気を味あわせてくれます。
 ここへは何度も来ていますが、今回はそれまで以上に弾む気分です。
「本当にいい場所だな、美咲。つれてきてくれてありがとな」
 足を小川に浸しながら私の隣で嬉しそうに笑顔をほころばせるのは、私の恋人さんである純一さんです。
 『恋人さん』と呼ぶときに詰まらなくなったのは練習の成果です。やっぱり『恋人』と呼ぶとちょっと恥ずかしいです。私には『恋人さん』と呼ぶ方が合ってる気がします。それに『彼氏さん』と呼ぶのもかなり恥ずかしいですし。
「さっすが美咲ちゃん。こんないいところなら毎年でも来ちゃいたいね〜」
 斜め上から掛かる言葉は芳野先生のもの。純一さんの背中にもたれながら持ってきたジュースを飲んでいます。純一さんは暑いから離れろ、って言っていますがあまり嫌ではないみたいです。
「ホント鷺澤先輩はすごいですね〜。美春のお父さんも変なものばっかり買ってないで、こういうところにお家を建てて欲しいですよ」
 純一さんの右隣では天枷さんが足で水を遊びながら涼んでいます。純一さんは彼女のことを『わんこ』と呼んでいますが、活発で可愛らしい様子はまさに無邪気な子犬を見ているようで心が和みます。
 そして――――
「ええ、誘ってくれて有り難う御座います、鷺澤さん。兄さんも楽しそうで良かったですね。――――女の子に囲まれて」
 背後から背を焦がすような視線と声が突き刺さってきます。笑顔にも関わらず、背から冷たい汗が湧き出てくるのはどうしてでしょうか。



 これも一種の花嫁修業
        〜山荘に事件はつきものです〜



 そろそろお昼の時間が近づいてきたので、私たちは別荘に戻ってきました。
 調理場に立っているのは私とさくらさんと天枷さんの3人です。
 正確に言うと調理場にいるのは4人ですけど…………。その最後の一人が原因で昼食が完成しないわけです。
「だーかーらー。音夢ちゃんは部屋に戻ってなよ。料理はボクたちでやるからさ」
「そうですよ〜。わざわざ音夢先輩のお手を煩わせるほどのことでもありませんし。不肖、この天枷美春にお任せください」
「ですから何度も言わせないでください。料理は女性の仕事です。ですから私も手伝います」
 先ほどから同じようなやり取りが続けられています。さくらさんと天枷さんは、音夢さんに料理を作らせまいと頑なに――というより必死になって拒んでいます。その理由は正直なところ痛いほど分かります。
 現に私は痛い目に合いました。といっても食べたところまでしか覚えておらず、目が覚めたときには純一さんのベッドに寝ていました。えっと、倒れたことよりも純一さんがずっと手を握ってくれてたことのほうが私にとっては重要でした。
「もう、どうして二人ともそんなに頑固なんですか? ねえ鷺澤さんも変だと思いませんか?」
 唐突に話題をふられ困っていると、お二人と視線が合いました。
「……だって、ねえ」
「……ですよね」
「えっと…………」
 アイコンタクトが成立です。
 どうやらさくらさんが全員の意見を代弁してくれるようです。
「音夢ちゃん。そろそろ自分の実力を把握したほうがいいよ。自分の武器も理解せずに社会に出たらすぐにブタ箱行きだよ。もちろん集団食中毒テロの首謀者として」
「つまり私の極上の料理を食べるのがもったいないと思った人たちが、そんなに日持ちもしないのに料理を取って置き、その結果食中毒になるということですね」
「うわ〜、すごいポジティブシンキングですね。正直美春でもそこまでは行けませんよ」
「あの、音夢さん? とりあえず料理をするのは私たちに任せてもらえませんか?」
「は?」
「ひゃう!!」
 目線だけで人を殺せるのは本当ですっ!! 冗談なんかじゃありませんって!!
「美咲ちゃん、世の中には正論が通じない人たちがいるんだよ。無理も通りも押しのけて進すむところが音夢ちゃんらしさなんだから」
 さくらさんが私の頭を撫でながら慰めてくれます。
 もう訳が分かりません。しかし音夢さんは混乱する私を待っていてくれる人ではありませんでした。
 音夢さんは溜息をつき、呆れたように私を一瞥しました。
「まったく、料理をするなっていうのなら私に何をしろというんですか?」
「音夢先輩は空のお鍋でも回しててください」
「音夢ちゃんは鍋でも回してたら? ただし空のままね?」

「あの……空のお鍋ならすぐに用意できますけど……?」
「……………………鷺澤美咲。そこまでしてライバルを追い詰めたいんですか?」
 なんで私だけ!? それになんで私が!?  むしろライバルですか? 私はただお鍋が必要という話でしたから口を開いただけなのに。というより空のお鍋で何をするつもりなのでしょうか。
「鷺澤先輩。勝負に敗れたヒロインは空のお鍋を回すという鉄の掟があるんです。そもそも発端となったのは某柑橘系の会社が生み出した――」
「美春、誰が解説しろといったのかしら?」
「え? あ、その……元ネタを知らない良い子達に正しい知識を教えてあげようかと……………あ、あはは、あはははははははは」
「――――――――はぁ?」
「失礼しました〜〜〜〜〜〜〜〜」
 脱兎のごとく駆け出していく天枷さん。音夢さんは獲物をしとめそこなったスナイパーのように小さく舌打ちをすると私たちのほうへ向き直りました。
「仕方がありませんね。あなたたちがそこまで言うのなら今回は手を引いておきましょう。まあこういうところで点数を稼いでおかないと、サブキャラ扱いのヒロインなんて簡単にぽいされちゃいますからね」
「突っ込んだら負けだからね」
「は、はい」
 思わず口からでかかった言葉を飲み込み、さくらさんと頷きあいました。音夢さんとの付き合い方もそろそろ分かってきた今日この頃。
「それじゃあ音夢ちゃんは美春ちゃんを呼んできてくれないかな? お兄ちゃんもそろそろ降りてくる頃だよ」
「そうですね。あの子も出番の無い可哀想な子ですしね」
「出番?」
「にゃっ!? 美咲ちゃん!?」
 思わず聞き返してしまった私にさくらさんが驚きの声を上げました。 けれど私がその言葉に反応する前に音夢さんが意味ありげに微笑みました。
「ええ、出番です。美春ったらシナリオの追加もされない、冬のファンディスクでもロボにおいしいところを奪われ、あまつさえ夏のファンディスクではシナリオ自体が無いなんて。まったく不甲斐ないにも程があります。仕方がありません、私がヒロインとしての自覚を芽生えさせてあげましょう」
 懐いている後輩に辛らつな評価を下す義理妹(予定)。虚ろな視線に本能的な恐怖を覚えてしまうのは私だけでしょうか。
「…………でも作者は音夢ちゃんのシナリオをやらなかったみたいだよ。むしろ美春ちゃんの出番が見たくてアリスシナリオをやってたらしいけどね」
「本当ですか? いや〜美春もそこまで人気が出るとは思っていませんでしたよ」
 先ほどから柱の影で頃合いを見計らっていた美春さんが、照れ笑いを浮かべながら出てきました。
 音夢さんは天枷さんを一瞥しただけで話を続けました。
「ですが他人のフォローばかりしているなんて人生の無駄です。かの赤い人はいいました。贅沢は心の贅肉だと。へんに気を使っている暇があったら新規シナリオのひとつでも書いたらどうですか?」
「音夢ちゃんは身体の贅肉を気にしたほうがいいんじゃない? 主に胸とか胸とか胸のあたりとか」
「ネムのムネですか。芳野先生上手いこと言いますね〜。あっ、そういえば普通兄妹で住んでるのなら『お風呂場でばったり☆』のイベントがあってもおかしくないですよね? なのに音夢先輩にはそんなイベントの気配なんて微塵もありませんでしたよね〜」
「「「………………………………」」」
「そんなことだから白河先輩に出し抜かれるんですよ。音無先輩がやらないから代わりに白河先輩がやっちゃいましたよ。もうお風呂場の磨りガラスってあんなにエロかったんですねえ。なんかこう、ぼやけた中にも薄っすらと見える曲線がエロだっ!! って断言しても言いぐらいでしたよ――ってあれ? どうしたんですか皆さん? それに音夢先輩もどうして震えているんですか?」
 ――痛い。空気が痛すぎます。もう白河さんとそんなことがあったのかとか、どうして天枷さんがそんなことを知っているのかだとか、それにしても天枷さんの台詞はおじさんくさいとか、そんなことはどうでもいいくらいに空気が張り詰めています。
 例えるなら盆の有明の扉が開く瞬間のように!!
「美咲ちゃんの知識、随分偏ってるね…………」
 さくらさんが遠い目をしながら小さく呟きました。
 そんなことをしている間にも空気はどんどん険悪になっていきます。天枷さんは全く気付いていないようですが、音夢さんから発せられる威圧感が痛いほど身体を突き刺していきます。
 そしてまさにその膠着状態が破られようとした瞬間――――
「おい美春、いつになったら昼飯ができるんだよ」
「あっ兄さん、ごめんなさい。美春がどうしてもバナナを混ぜるんだって聞かなくって」
 ――――純一さんがキッチンに入ってきました。
「さすがは音夢ちゃん。一瞬で裏モードと切り替えたね。ついでとばかりに美春ちゃんに責任を押し付けるあたりが抜け目無い」
 音夢さんは先ほどまで纏っていた剣呑な雰囲気を消し去り、普段純一さんと話すときのできた妹の姿に戻っていました。
「…………おい美春、昼飯が遅れたのはお前の仕業か」
「うえぇぇぇ!? ちょ、ちょっと待ってくださいよ!! 美春たちは音夢先輩を止めようと――ほら、芳野先生からも朝倉先輩に言ってあげてくださいよ!!」
「美春ちゃんごめんね〜。ボクも自分の命が一番大事だからさ〜」
 そう苦笑しながら応えるさくらさんの背後には、氷の笑顔で肩を掴んでいる音夢さんの姿がありました。もちろん純一さんから見えない角度で。
「美春ったらいつまでも子供なんだから。兄さんもそう思いますよね?」
「ったく、あんまり迷惑かけるんじゃないぞ。バナナは一人で食べてろよ」
純一さんは嘆息まじりの呆れた視線を天枷さんに投げかけました。
一方、身に覚えの無い罪を擦り付けられた天枷さんは何とか弁解を試みますが、音夢さん相手では分が悪いのかどんどん泥沼にはまっていってしまいます。
「ですから、美春はバナナを混ぜようなんて思っていませんってば」
「だったら何でこんなに遅くなるんだ? 案外バナナを混ぜてみれば上手くなると思ってたんじゃないのか?」
「ですからそれは確かに思いはしましたけど――――」
「まあまあ兄さん、美春だって悪気が合ったわけでは無いんですよ。もう少しでできますからリビングで待っていてくださいね」
「…………音夢ちゃん、美春ちゃんを弁護するふりをして説明をさせないつもりだね。ついでにうやむやのまま自分の責任を消すなんて…………」
 さくらさんの感心と軽蔑が見事に混ざり合った呟きは私にしか届きませんでした。
「美春もそろそろ協調性ってものを持っとけよ。いつまでも子供みたいなことできないんだからな」
「う〜〜〜。た、確かにバナナを混ぜようと言ったかもしれません。その可能性は無きにしも非ずです。ですが美春だけの責任というわけではなくてですね、音夢先輩が料理を作りたいと言ったからでして――――」
「本当か音夢?」
 先ほどまで天枷さんに先輩らしい話をしていた純一さんでしたが、『音夢さんが料理を』という言葉が聞こえた瞬間、ばね仕掛けのように態度と相手を180度変えてしまいました。
「…………兄さんは私よりも美春を信じるんですか?」
「音夢ちゃんらしい言葉だね。お兄ちゃんの質問も答えずに、代わりにお兄ちゃんが答えずらい質問をかえすなんて…………」
 その言葉通り純一さんは冷や汗をかきながら左右を見比べています。
「兄さん?」
左では音夢さんが純一さんに微笑みかけています。
「朝倉先輩……」
 右では天枷さんがすがるように純一さんを見つめています。
 どちらを選んでも遺恨が残るこの選択には正解がありません。何とかやり過ごそうと必死に脳細胞を活性化させますが、残念ながら純一さんにはどうしようもなさそうです。
 さくらさんに救いを求めた純一さんでしたが、さくらさんは露骨に――もとい悲しそうに目を背けてしまいました。となれば残る選択肢は――――
「み、美咲。お前も一緒にいたんだよな? どんな状況だったか教えてくれないか?」
「え、わわ私ですか?」
 私の名前が出た瞬間、その場にいる全員がぐるんと私のほうに視線を向けました。
 音夢さんは笑顔のまま、けれど下手なことを言おうものなら…………。
 天枷さんは祈るように手を合わせ、潤んだ瞳で訴えかけています。
 さくらさんは悲しそうな気の毒そうな、そんな優しげな眼差しをしています。
 そして純一さんは申し訳なさそうに、加えて助かったというような安堵の表情で。
 これは…………危険な状態では無いでしょうか。
 手持ちのカードは『説明する』という1つだけ。正直にあったことを話せば文字通り大変なことになってしまいます。かといって逃げることも出来そうにありません。回り込まれた! という状況です。
 失態続きの総理大臣も、言われ放題の親方も、電車の中で紙袋が破れて中身をばらしてしまった有明帰りのおにいさんよりも危険な状態です。
「…………やっぱり美咲ちゃんの知識って偏ってるって」
 今はさくらさんの呟きさえも気にならないほど危ない状態です。
 周囲の緊張感がじわじわと身体を圧迫してきています。呼吸するにも力を使い、気を抜けばすぐにでも意識を失ってしまいそうです。手には汗がにじみ、瞬きの仕方さえ忘れてしまいそうな緊迫した状況。
 もうどうしていいかわからなくなったそのとき、天啓とでも言うべき名案が浮かびました。
「そ、そうですね。確かに天枷さんはバナナを料理に混ぜたいといったかもしれません。けれどそれは押し付けるようなものではなくアドバイスのようなものでしたから。
 音夢さんが料理を作りたいといったのも、ただ一人で見ているだけというのが申し訳なく思ったからなんです。けれどキッチンに3人も立てば狭くなってしまいますから。そういうわけでお断りしていたんです。
ですから誰が悪いというわけでは無いんです。それも純一さんに美味しい食事を出そうと思ったからなんです」
我ながら驚くほどの流暢な説明。これほど長く話をしたのは産まれて初めてでした。
「おお〜」
 さくらさんも感嘆の声を漏らしました。他の3人も納得したようでやっとキッチンに平穏の空気が戻りました。

 

 十数分後、ようやく昼食の準備が整いました。メニューはハヤシライスとシーザーサラダ。とフルーツを混ぜ合わせたヨーグルトです。カレーは何度か作ったことがあっただけに、今回のハヤシライスもなかなかの出来だったと思います。
「カレーにバナナが合うんですから〜、やっぱりシチューにもハヤシライスにもバナナを入れるべきれすよ〜」
「ねえ、美春ちゃん? なんだか呂律が怪しいような気がするんだけど……」
「え〜気のせいれすよ。まったく芳野先生も小はいことばかり気にしすぎれすよ。小さいのは身体と胸だけにしてくらさいね〜」
「…………美春ちゃん、酔っ払ってるみたいだね〜」
 さくらさんが声を震わせながら苦笑しています。もっとも手に持っていたスプーンは音を立てて曲がっている最中なのですが。
「でも本当に美春の様子が変だぞ? いつもならそんな分かりきっていることをわざわざ言うほど失礼なやつじゃないんだけどな……。なんか変なものでも入ってたんじゃないのか?」
 純一さんの意見も十分失礼ではありますけど、美春さんの様子がおかしいというのには同意します。
「でもそんなおかしなものを入れていたらみんな気づくはずですし…………」
「そうですよね。同じ料理を分け合っているわけですし、美春だけに変なものを混ぜるなんてできませんよ」
「でもそれだと美春ちゃんがおかしくなった理由がわからないよね」
「も〜みんらして何をごちゃごちゃ言っているんれすは!? 美春の話は終わっていませんよ〜。いいれすか? バナナにはバナナミンと言うとてもすご〜い栄養素がはいっているんれふよ。それはもうバナナのバナナによるバナナのための神秘と言えるでしょうか。いいえ言えないはずがありません、反語!!」
「…………なあ美咲。本当に変なもの入ってないよな?」
「…………そのはずですけど。だんだん自信がなくなってきました」
「とりあえず美咲ちゃんが入れたものを挙げてみてよ」
「はい。ええと牛肉、タマネギ、ジャガイモ、小麦粉、それに隠し味で赤ワインを少々――」
「「「ワイン?」」」
 三人の声が同時に重なりました。確かに真っ先に思い浮かびそうな原因ではありますけど。
「で、でも、入れたといってもスプーンに2杯程度ですよ? それだけで酔っ払うでしょうか?」
「でもなあ……実際に酔っ払ってるだろ、あれは」
「だよねえ。原因はどうあれ、美春ちゃんは酔っ払ってるみたいだし。ベッドで休ませてあげたほうがいいんじゃないかな」
「何いっれるんれすか!! 美春は酔ってなんかいまへんよ。まったくバナナを食べないからみんな小さいまんま何れすよ。そんなんじゃ生徒に示しがつきまへんよ〜」
「小さくて悪かったね……」
 さくらさんの手が震え、先ほど曲がったスプーンが今度は逆に曲がっていきます。私と純一さんは冷や汗をかきながら成り行きを見守ることしかできません。
「ちょっと美春? 酔っ払っているからって何を言ってもいいわけじゃないのよ」
「にゃむ先輩こそ今更いい人ぶってポイントをかせいだって無駄れすよ。にゃむ先輩が立てれるフラグなんれこれっぽっちもありえませんよ〜。ほんと胸板が洗濯板に見えるくらい平坦で何もないれすって」
「なっ――――」
「確はに胸の大きさらけで女性の魅力が決まるわけれはありませんよ〜。れすけど、胸の大きさが重要なふぁくたーであることは変わりませんよ〜。その分にゃむ先輩は勝負する土台に上がれてさえいないんれすよ」
「――――――――」
 本当に危険です。もう冷戦状態を突き破って一気に宇宙戦争のセカンドインパクトがワールドエンドで星の寿命がなんとやら。もうデットエンドまっしぐらで助かりようがありません。道場の常連さんです。
 先ほどまで一触即発の雰囲気だったさくらさんも、今は結末を見送るしかできなさそうです。 
 そしてとどめ。
「まったく勝負したいのれしたらそれなりの準備をしてきてくらはいよ。なんと言いまふか――――いくぞ貧乳王!! パッドの準備は十分か!? みたいな〜」 
「死亡フラグだね」
「死亡フラグかよ」
「死亡フラグですよね」
 明らかに変わった空気。既に結末の見えた未来は見るに耐えないものです。喜劇にも悲劇にもなれない舞台裏の惨劇が幕を開けようとしています。
「あれ〜どうしてみんな黙っちゃったんれすか〜。はりゃ? にゃむ先輩もなんだか様子がへんれすよね〜。いっはいどうひうげきゅぷっ
 突然の奇声と続く振動音。
 天枷さんの開いた両の目が写すのは白い世界。四肢は力なく垂れ下がり、身体をテーブルに預けるように力なく俯いてしまいました。口から零れ落ちる赤はきっと今食べていた食事でしょうそうに違いありませんそうしておきましょう。そして天枷さんの横にいるのは朝倉音夢さん、その人でした。
「あら、美春ったらこんなところで寝たら風邪ひいちゃうわよ。仕方ないわね、私が運んであげますね」
 明らかな棒読みの台詞ですが、それを口にする人は誰もいません。3人とも目を背けただ凶行が過ぎ去るのを震えながら待つだけです。
「一人で行けるかしら? それとも私が運んであげましょうか?」
(こくこく)
 もちろん天枷さんが答えられるはずがありませんが、確かに天枷さんは首を振りました。音夢さんが乱暴に身体をゆすって。
 かくん、かくんとなされるがままに揺れる天枷さんの頭。同時に首元で切りそろえられた髪が静かに揺れます。そんな様子を見ながら音夢さんはしかたないわね、と呟き天枷さんに手をかけます。
「ちゃんと掴まっててね」
 無表情のまま、天枷さんの襟首を掴み引きずっていく音夢さん。行く先はもちろん客室などではなく、何故か奥の倉庫でした。ゆっくりと引きずられていく天枷さんの姿は悲惨という表現など遥かに通り越して、もはや言葉になどできそうにありません。
 そして扉の閉まる音。数秒後に響く鈍い音とドアの隙間から流れでる赤い液体。
 あれはケチャップに違いありませんいえもしかしたらトマトソースかもやっぱり赤いペンキだっていう可能性もだって倉庫ですからいろいろ置いてあっても変ではありませんしそうそうそういえば血のりの原料はなんでしたっけ授業で習った気もするんですけど忘れてしまいました――――
 
 私にできることなど何もありません。

 部屋の中を包むのは静寂。ずっと鳴いていただろうひぐらしの声だけが耳に残っていました。






最初に言います。コメディなんて書けません。 


 
 もうプロットなんてたてれません。とりあえず更新遅くなってすいませんということだけです。

 なんか書いててもどのあたりでくすりと来るのかはなはだ疑問です。てなわけで『ここ面白い〜』とか『ここ微妙だな……』とかあれば忌憚なく、はっきりずばっと切れ味鋭く容赦なく、でも優しい言葉で教えていただければこれ幸いです。

 次回の更新はいつになるやら分かりませんが、とりあえず9月中には必ず書きますから。









こちらのほうもよろしくお願いいたしますです。

テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

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これも一種の花嫁修業〜兄と恋人、それに小姑〜
 眩しいほどの太陽がこの初音島を照らす夏の季節。
 以前咲いていた桜は散ってしまいましたが、今は生命力溢れる新緑の葉が優しい木陰を創っています。
 夏に入っても今日はいつもより涼しく、朝の清々しい空気が私を包んでくれるかのようです。
 私――鷺澤美咲は幸せな毎日を送っています。

「ら〜らら〜」」
 思わず浮かれてしまうほどの幸せ。掃除機をかけていると左手に輝く指輪が視界に入ります。それを見ているだけで踊りだしたくなるほどです。
 今私がいるのは純一さんの――そういえばこの呼び方にも慣れてきました。最初は恥ずかしくて小声になってしまったんですが、今なら笑顔で言えるようになりました。
 えっと、そうじゃなくて、今私は純一さんの家にいます。
 別に何もオカシナことはありません。なんたって私は、その……純一さんの、ここここ恋人なんですから!!
 


              これも一種の花嫁修業
   
      〜兄と恋人、それに小姑〜



 私が風見学園に転校してきた初日、私は純一さんの恋人になりました。
 嬉しくって一日中浮かれていたのですが、後々聞いてみれば大変な状況だったそうです。
 杉並さんから聞いたんですが、純一さんの周りには幼馴染とか、婚約者とか、学園のアイドルとか……、とにかくたくさんのライバルがいたそうで。
 それからいろいろ有りましたが、とにかく私は純一さんの恋人になれました。

 そんな純一さんですが、今は学園のほうに行っています。
 学園は既に夏休みとなっているのですが、私たちの担任の白河先生に何か頼まれごとをされたみたいで、朝から出て行っています。
 純一さんと会う約束をしていたのですが、用事があるのなら仕方がありません。
 昨夜電話で昼から会おうという話になったのですが、私は朝から純一さんの家にいました。
 純一さんが帰ってくるまでに掃除と洗濯を終わらせて、帰ってきたときに笑顔で「お帰りなさい」と言ってあげるんです。
 そのときの純一さんの笑顔を思い浮かべただけで、足取りが軽くなります。

「あっ――」
 うっかり純一さんの机の上に乗せられていた雑誌を落としてしまいました。
 数冊の教科書が床に散らばってしまいました。
 一冊ずつ拾っていくと、教科書には書き込まれた文字とマーカーでチェックされた跡がありました。
 最近の純一さんはとてもがんばっています。
 クラスの人たちが言うには、以前は口癖のように「かったるい」といって勉強もあまり真面目にやっていなかったそうです。
 私が見る限りかったるいなんて言っているのを聞いたことは無いのですが……。
 白河先生も、
「あ〜あれだね。ほら、鷺澤の前で格好悪い姿は見せられないってやつ? いや〜若いもんはいいねぇ」
 なんて笑われてしまいましたが、きっと純一さんもいろいろと考えているんだと思います。
 私も習い事やパーティーに出なければならないこともありますし、そうでなくてもあまり外出は出来ません。
 ですからもっと時間を作れるように頑張っているのだと思います。
 以前純一さんは私に相応しいように頑張るよ、と冗談交じりで言っていたのですが、きっと真剣だったんだと思います。
 
 そのときの嬉しさを思い出していたらまた手が止まっていました。
 慌てて片付けていくと、教科書ではない一冊の雑誌が目に留まりました。
「デートスポット特集……?」
 そこには初音島とその周辺のお店が掲載されていました。デートスポットに最適なお店から穴場のお店など、写真と共に紹介文が載せられていました。

 ページを捲りながら目を通していくと、とある場所が目に付きました。
「メイド喫茶――」
 ふと思い浮かんだのは頼子としてこの家に来たときのこと。
 懐かしい思い出。
 メイドというのはどんな仕事なのかも分かっていなかった私を、純一さんは笑顔で家に置いてくれました。
 紹介文の続きを読めば、そのお店は随分と人気だそうです。
「そういえば確か……」
 前に屋敷の人たちに男の人はみんなメイドさんが好きだって話を聞いたことがあったような。
 ――えぇと、好きじゃなくて萌え? だったかしら……。
 水越さん家の萌さんのことかと思ったけれど違うみたいでした。
 とにかくメイドさんの格好をすると男の人は喜んでくれるそうです。
 純一さんが帰って来るまでにはまだ時間はありそうです。そうと決まれば急いで家に帰らなければいけません。
 私はもらった合い鍵で戸締まりをして家を飛び出しました。


「これでよし、っと…」
 荷物を持って朝倉家まで往復30分、それからすぐにエプロンドレス――メイド服に着替えました。さらに頭には懐かしい物がついていました。
 頼子のメイド服を取りに戻ったとき、屋敷にいたメイドさんに渡された猫の耳の様なカチューシャでした。
 差出人は屋敷には珍しいフランクな人でよく私の相談にも乗ってくれた人です。
 ちなみに男の人たちがみんなメイド好きだと教えてくれたのもこの人でした。

 鏡に移る姿はあのころの頼子そのもの。純一さんを驚かせようとこの格好をしたのだけれど、思いのほか楽しんでいる自分がいました。
 リビングで純一さんが帰って来るのを待つ。緊張して手を強く握ったり、純一さんの驚く顔を想像して微笑んだり、その後の甘い時間を思い 浮かべては頬を赤らめたり。
周囲に人がいれば奇異の視線で見られること間違いなしなのでしょうが、幸いなことに朝倉家には他に人はいませんでした。

 ふと玄関に人の気配を感じました。
 私はやや緊張した面もちで玄関に立ちました。
 大丈夫、台詞はちゃんと覚えました。
 ドアがゆっくりと開かれました。
 ――今です。
「お帰りなさいませご主人様。御食事になさいますか? 御入浴になさいますか? それとも御一緒に寝室へ参りますか?」
 教えられた通りの台詞を間違えずに言うことができました。
 ですが現れた人物は純一さんではありませんでした。
 笑顔を浮かべた少女は玄関を開いた姿勢のまま固まっているます。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
 二人の間には沈黙にカーテンが降りたまま。
 動いたのは相手の少女でした。
 現れたときの笑顔のまま、緩慢な動作でドアを閉じる。
 私はというと状態が理解できず少女のいた場所を眺めるだけでした。
 カウベルがわりの鈴の音が、静寂の間に小さく響きました。


 カチッ、カチッ、カチッ――

 玄関での邂逅から数分後、私と先ほどの少女はリビングで向かい合っていました。
 私も彼女も混乱していたのでうやむやのうちにこのような状況になってしまいました。
 二人とも無言、時計の無機質な音だけが正確なリズムを刻みます。
 彼女は私のことを値踏みするかのように、上から下までじっくりと見回しています。
 私はというと、緊張のあまり背筋を伸ばしたまま硬直しています。
 純一さんのおかげで外に出るのは怖くなくなりましたが、まだ初対面の人と二人きりというのは緊張してしまいます。
 ですが目の前の女性をどこかで見たような気がします。

「――それで、あなたはどちらさまですか?」
 どうやら彼女は値踏みを終えたようです。
 私が泥棒さんではないということは理解していただけたようですが、それでも訝しげな視線は変わっていません。
「ひゃっ、あ、あの……私は鷺澤美咲、です」
「では鷺澤さん。なぜあなたはこの家にいるのですか?」
「ふえっ? その、ここは純一さんのお宅ですよね……?」
 私が純一さんの家にいると何か悪い理由でもあるのでしょうか。それとも家を間違えたのでしょうか?」
 けれど彼女はその答えが気に入らなかったようで、眉をピクリと動かし、「純一さん?」と不機嫌そうに呟きました。
「あっ、純一さんというのは朝倉さんのことで……。それであなたはどうしてこの家に?」
「私がこの家にいるのは私も朝倉で、ここが私の家だからです。――それで鷺澤さん、あなたは兄さんとどのようなご関係で?」
 にっこりと可愛らしく微笑む少女。
 笑顔のはずなのに背中を駆け上がる悪寒はどうしてでしょう。
「あなたの、お兄さん……?」 
 さまざまな情報がピースとなって一つの事実に思い当たりました。
 その決め手となったのは彼女の髪についていたリボン。
「黄色いリボンの音夢さんっ!?」
「何ですかその三下のような形容はっ!?」
「ひゃうっ!!」
「あ〜もう、いちいち悲鳴をあげないでください……。こっちが悪いような気がするじゃないですか」
「ご、ごめんなさい……」
 どうしましょう。純一さんの妹さんに失礼なことを言ってしまいました。
 ご家族へのご挨拶は第一印象が大事だと、屋敷であれほど教えられたのに……。
「話を戻しますけど、鷺澤さんは兄さんとはどのようなご関係で?」
「それは――」
「――それにはボクがお答えしてあげましょう!」
 私の言葉を遮るように背後から声をかけられました。
 びっくりして振り返ると、そこには印象的な金色の尻尾を二つ垂らした小柄な少女がいました。
「さくらちゃん?」「さくらさん?」
 背後から現れたのは私の恩人のさくらさんでした。そういえばさくらさんは純一さんのお隣さんでしたので音夢さんとも幼馴染でした。
 それにしてもどこから入ってきたんでしょうか。
「さくらちゃん、鷺澤さんと知り合いなの?」
「もちろんだよ。なんたってボクは仲人なんだから」
「仲人って………。それじゃあ鷺澤さんは……」
「そう、美咲ちゃんは――」
 一拍の間の後、
「お兄ちゃんのメイドさんなのだ!!」
「……メイド?」
 ぎぎぎ、と音がしそうなほどゆっくりと私のほうを向く音夢さん。
「いえっ、メイドだったのは昔の話で、今はその、純一さんの恋人、だと思います……」
 けれど私の小さな声など届きません。
「もう身の回りの世話から口には出せないようなお世話まで。お兄ちゃんは美咲ちゃんの恋人、たとえるなら恋の奴隷ってことかな」
「メイドで、主人……メイドの奴隷……」
「まあまあ音夢ちゃん、そんなに落ち込んだら駄目だよ。お兄ちゃんには妹属性よりもメイド属性のほうが強かったんだよ。それに猫耳までついてたんだから」
 呆然とする音夢さんに、さくらさんが説明を続けます。知らない単語ばかりでよく分かりませんでしたが。
「それに料理下手っていう萌え属性も、自分の身に降りかかってみれば迷惑以外の何物でも無いんだよ」
 音夢さんはショックを受けたまま固まってしまいました。
 さくらさんは「にゃはは〜」と無邪気に笑っています。相変わらず理解できない言葉がありましたが。
「――ません……」
「「えっ?」」
 音夢さんが何か呟きました。思わず聞き返すと、音夢さんは勢いよく立ち上がり私をゆびさしました。黒い弾丸が飛んできてもおかしくありません。
「認めません!! 急に現れたメイドなんかに兄さんの隣を奪わせるものですか!!」
「きゃうぅ!!」
 思わず悲鳴を上げてしまう私。けれどさくらさんは小さく溜息をつくと、音夢さんに暖かい眼差しを向けました。
「音夢ちゃん、そろそろ現実を見ようよ。電波貰ってばかりだとこれからが大変だよ? それに家事も全部美咲ちゃんがやってるんだから、もう音夢ちゃんの居場所はないんだよ」
「どういうことですか!っ? 私にだってこの猫耳メイドに無いものを持ってます!!」
「そういえばそうだね〜。美咲ちゃんは胸がおっきいから、ナイチチ属性は無いんだよね。う〜ん、でも胸が無いのをあるっていうのも変な話だよね」
「さくらちゃんが人のことを言える立場じゃないでしょ!!」
「でも僕の場合は体格的には普通だよ? 幼女属性を持ってるからこれはこれでありなんだよ。それなのに音夢ちゃんってば、顔だけはいいのに他は中途半端なんだよ」
 あわわわわ、もう話についていけません……。
「妹属性だってボクと被ってるし、委員長体質なのに眼鏡じゃないし、病弱キャラなのに倒れたりしないし。それに比べて美咲ちゃんは――」
 私のほうをちらりと見やるさくらさん。続いて音夢さんが思わず縮み上がってしまうほどの三白眼で私を凝視してきました。
「わ、私がなにか……?」
 思わず聞き返すとさくらさんは、
「まずはお嬢様キャラ、それに何故か守ってあげたくなるオーラを出してるでしょ。あとは転校生。もうこれで音夢ちゃんの負けなのに、美咲ちゃんはメイドで猫耳なんだよ?」
 子供をあやすように、優しく諭すさくらさん。私も相変わらず理解はできませんでしたが、それでもよく分からない説得力を感じてしまうのは何故でしょう。
「でもっ!! 私だって兄さんの隣にいる権利はあるはずです!! あのニュータイプにだって、ロボにだって、許嫁にだって、幽霊にだって、天然にだって引き分けてきたんです!! ……まあ似非ツンデレとの勝負は話になりませんでしたけど……」
 それなのに、と小さく呟く音夢さん。
「私がライバルたちと引き分けて再戦を誓ったというのに、ぽっと出のメイドなんかに何で負けないといけないんですかっ!! この泥棒猫!!」
「あ、音夢ちゃんうま〜い。座布団一枚だね」
「ふざけないでください! ――とにかく、兄さんの恋人を名乗るなら私に勝ってからにしてください」
「そ、そのぅ……勝負というのは何をすればいいんでしょうか……」
ようやく意味の分かる内容になってきました。どうやら私と音夢さんで何かの勝負をするみたいですが。
「勝負事にはあまり自信がありませんが……。それでも純一さんの恋人として認めていただけるのなら頑張ります!」
「うっ、その純粋な視線が痛い……」
「うにゅ、音夢ちゃんがどこかに置き忘れてきちゃったものだね」
「……ま、まあいいでしょう。とにかく、兄さんの恋人を自称するのなら、家事ぐらいは全てできなくては務まりません。怠け者の兄さんはいつもかったるいと言ってばかりですからね」
自慢気に胸を張る音夢さん。
「音夢ちゃん、いくら胸を突き出しても無い物は無いんだよ……。それにね、お兄ちゃんはもうかったるいなんて言ってないんだよ。美咲ちゃんのおかげでね。あっ、もしかしたら音夢ちゃんといるのがかったるかったんじゃないの?」
無邪気に笑うさくらさんを呆然と見つめる音夢さん。
「そっ、そんなわけありませんっ!! いくら私が言っても直らなかった口癖なのに……もしかして本当に――いえ実は私が注意するからこその口癖だったんですね私に構って欲しくてあんなことを言うなんて……全く子どもですねやっぱり兄さんは私がいないとだめなんですから」
「あ、あの、あの……音夢、さん……? 大丈夫ですか……?」
「あ〜音夢ちゃん? 美咲ちゃんが怯えてるからそろそろ戻ってきなよ」
「鷺澤さん、準備はいいですか?」
「……音夢ちゃん、切り替え早いね」
「そうですか、それではまず家事の三本勝負からですね。最初の勝負は料理からです」
「…………音夢ちゃん? 確かに世の中には負けると分かっていてもやらないといけない勝負ってものがあるんだけどね、初めてから勝負の舞台に立つ資格がない人もいるんだよ?」
「あら、鷺澤さんは料理ができないんですか? ふふ、そんなことで恋人を名乗ろうなんて百万光年早いんですよ」
「…………ベタなツッコミの前に正さないといけないことがあね……。いい? 音夢ちゃんは産業廃棄物しか作れないでしょ? 処理できるお兄ちゃんがいないんだから料理なんでしちゃ駄目だよ」
「何を可笑しなことを言ってるんですか? 看護学校でだって私の料理は評判だったんですよ? 朝倉さんの料理を食べると昇天してしまう、辞世の句を書いてからじゃないと食べてはいけないって」
「そ、それは美味しかったのではなくて……」
「美咲ちゃん、そこにツッコミをいれたら負けだよ」
「もう、何をこそこそ話してるんですか? ほら、私はもう作りましたよ」
「「はやっ!!」」
「これが朝倉家の味なんですから。これを覚えてもらえなければ兄さんも喜んでくれませよ?」
 ――朝倉家の味――
 その言葉を聞いたとき余分な感情など消し飛んでいました。
 そう、これはいわゆる花嫁修業なのです。その家の持つ家庭の味を引き継ぐ。本来なら純一さんのお母様から教わることなのですが、純一さんのご両親は離れて暮らしているとの事。それならば純一さんの妹さんである音夢さんに教えていただくのは普通のことです。
「音夢ちゃん……? 美咲ちゃんは純粋なんだから嘘言っちゃ駄目でしょ? 朝倉家の家庭の味は裏にあるロー○ンのお弁当の味でしょ?」
「何のことでしょうか? 私にはさっぱり」
「…………そうまでして美咲ちゃんを亡き者にしたいんだね」
「まあまあ、さくらちゃんも席についてください」
 万力のような力でさくらさんを席に押し留める音夢さん。ですが私はそんな様子に気づく余裕すらありませんでした。
「音夢さん!! どうか私に朝倉家の味を教えてください!!」
「まあ鷺澤さんったら。そんなに緊張しなくてもいいんですよ? あなたはいずれ私の姉さんになるかもしれないんですから」
「音夢さん……」
「…………ここだけ聴いていたら言い話に聞こえるんだけどね」
 そう呟くさくらさんの肩には音夢さんの両手が置かれたままです。
「それじゃあ遠慮なくどうぞ」
「それでは、いただきます」
 目の前に置かれた料理を一口。
 唐突に視界が暗転しました。
「――音夢ちゃん、証拠の残らない毒殺って卑怯だよね……」
「大丈夫ですよ。これを食べたぐらいではせいぜい気絶がいいところです。――彼女にはこれからずっと苦しんでもらわなければなりませんから」
 ごめんなさい純一さん。私は音夢さんと仲良くやっていく自信はまだもてません。
 
 まあ小姑さんと仲良く過ごすのも一種の花嫁修業ということで。





 コメディ難しいっす……。
 ノリ的にもどっかで見たことのあるような感じだし、切りどころも分かんないし。
 かなりお世話になっているSS作家さんに多謝。


 みんなオラに元気を分けてけろ

         ↓


 

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

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