隠れオタでもいいじゃないか
主にPCゲームの二次創作を書かせていただいています。 あとは最近やっているゲームやら読んでいるラノベやらのこととか……。
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カテゴリー: FORTUNE ARTERIAL SS
08月05日(火) [ FORTUNE ARTERIAL SS ] # 82 <固定リンク>
- FORTUNE ARTERIAL 千堂伽耶SS 〜Real Tag Game〜
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人間ってのは意外とやるもんだなあとしみじみ思ってしまった。
いや、人類の歴史を辿るだとか中国四千年の歴史だとかそういうことではなく、ましてやここ四、五百年の早すぎる進歩を考えるとかしたわけでもない。もっと身近な――そう、イメージ的には文化祭。どうしても間に合いそうも無いと思っていた前日の徹夜。火事場のなんとやらといったところか。意外や意外、蓋を開けてみればギリギリではあるものの完成してしまったという感じ。
協力とかそういうものの素晴らしさ。学生生活で学ぶべきものの一つであると俺も思う。だからこそ監督生という模範に、そして規範になるべき存在になれてよかったと思う。
――ただこんなことで学んでほしくなかっただけで。
FORTUNE ARTERIAL 千堂伽耶SS
〜Real Tag Game〜
確か昨日まではここら一帯は何の変哲も無い広場だった。といっても他所から見ればとんでもなく豪華な造りだけれども。少なくとも俺が見る限りこんなところは他にはなかった。ともかく昨日までは見慣れた場所だったのだ。
けれども今現在俺の目に映るのは凱旋門さながらの馬鹿でかい門。ライブでもやるのかというステージ。しかしその目的が違うというのは上のほうに掲げられたボードが主張している。
「しし☆るいるい 第一回支倉孝平争奪杯♪」
心の中で呟いた言葉を繰り返すように明るい声が聞こえてきた。
「これ考えたのかなでさんですよね?」
「あれー? こーへーって実はエスパーだったの?」
「誰だって……というわけじゃないですけど、少なくともお茶会のメンバーで分からないやつはいないと思いますよ。ししるいるいだなんて変なネーミング」
背後に立つかなでさんに視線を落としながら答える。それにしても視線を『落とす』というのはどうなんだろう。いや、個人的には奨励するけれども。
「違う……」
「え?」
「違うよ。こーへー」
「違うって……何がですか?」
両手を広げ首を横に振ることで否定してみせるかなでさんは、まるで自己主張のやたら激しい男がやれやれだぜとぼやいている姿を髣髴とさせる。
「しし☆るいるい」
「??? だからししるいるいですよね?」
「そうじゃないよ。しし☆るいるい。星マークが抜けてるの」
「星マークって…………あれって必要なんですか?」
「星も名前の一部なの」
「はぁ、名前の一部ですか」
「当然。我ながら見事なネーミングセンスでしょ」
「センスはともかく、どうやって発音するんですか?」
「どうやってって――――しし☆るいるい、って感じで」
「俺にはそんなクリエイティブかつハイセンスなこと出来ません」
少なくとも人間に発音できない言葉は操れない。
「まったくだらしないぞ。言葉っていうのは大切なものなんだよ。自分の伝えたいことを相手に届けるっていう無二のコミュニケーション手段なんだから、行間を読むだけじゃなく言えるようにならないと」
「んな言外で人外なことはできません」
「でもこーへーは吸血鬼になっちゃったでしょ?」
「まいったな、痛いトコつかれちまったZE☆」
「ふぅ、まったくこーへーは注意力が足りないんだから。そ・れ・に、今ちゃんと星を発音できてたよ」
「おおっと、こいつは驚きだぜ。まったく、とんだ授業だったな」
「でもよかったね。こういうのを棚ボタっていうんだよ」
「そいつは傑作だぜっ!! あっはっはっはっは」
「あっはっはっはっは」
「ってこのノリはなんですかっ!?」
こんなポーカーの役っぽいアメリカンコメディーなノリは望んでなんかいない。
「と言いつつも素晴らしいノリツッコミだったよ。そんなこーへーにはこれを授けよう」
孝平は『ノリツッコミ』を習得した!
ノリツッコミ:
どんなボケにでも乗ってしまう。突っ込んでしまう。天性の素質。相方は常に募集中。
「よかったね。新しい能力をゲットしたよ」
「ええ。これで俺も新しい素質に目覚めることが出来ました――って全然良くないですよ!! 勝手に変なものつけないで下さい!! それに天性のくせになんで後付けなんですか!?」
「おお〜、見事なノリ&三段ツッコミ。やっぱり天性のものだね」
「はっ!? 身体が勝手に……」
恐るべきアビリティー。自分でも分からないうちにキャラ付けをされてしまっていた。てかそもそもかなでさんに吸血鬼のこと話したっけ?
「随分とリラックスしてるじゃない。もしかしてそれは余裕の表れかしら?」
己の資質に絶望している最中、背後から声を投げかけられた。綺麗という言葉にイメージどおりの音を乗せた響き。ただ言葉を発するだけで、さもセイレーンが紡いだかのような甘い感情が脳髄を痺れさせる。
培ってきたカリスマ、そして彼女の隠し持つチャームとが交じり合った魅力。俺に対性がなかったら一瞬のうちに彼女の虜となっていただろう。
「緊張して眠れなかったんじゃないかと思ったのだけど、どうやらその心配はなさそうね」
苦笑を浮かべながら副会長が俺とかなでさんの前にやってくる。
しかし体操服姿の副会長を見ていると今日がその日だと改めて実感させられる。
「いや、緊張というかテンションが低かったのは間違いないよ。ただ――」
かなでさんと話していたら落ち着いた、と言おうと思ったのだが、ふと何故かなでさんがここにいるのかに疑問を持った。正規の集合時間まではまだ余裕がある。副会長は準備がちゃんと終わっているか、問題が無いかを確認しに来たのだろう。しかしかなでさんがこんな時間にこんなところへ来る必要は無い。それに集合したのだったら体操服なり運動の出来る格好で来るはずだ。しかしかなでさんは未だ部屋着のままだ。
もしかしたら俺の緊張をほぐすためだったのだろうか。階下の部屋で俺が起きた気配がした。まだ夜も明けきらぬ時刻からそうしていたのだから、俺が起きていることにかなでさんが気づいても不思議ではない。
「ただ?」
「あ、いや……なんでも無いよ」
ただの続きを不思議そうに尋ねる副会長に、思わず出そうだった言葉を押し留めた。別に隠す必要なんかなかったのだけれど、なんとなくかなでさんのさり気ないお節介に気付かない振りをしていたかった。親切は黙って受け取るものだから。
「そう、変なの」
いまいち納得していなさそうだったけれど深く追求してくることはなかった。
「おおっと、いつの間にかこんな時間だー。それじゃあこーへーもえりりんもまた後でねー」
若干わざとらしさの残る言葉を発しながら、手元の時計を見る振りをするかなでさん。まあ多分、俺が気付いたことを気付いたのだろう。照れた顔を隠すように回れ右、そのまま寮のほうへ走って行ってしまった。
「まったく、あの人はいつも慌ただしいね」
「ま、それがかなでさんらしいんだけど」
「……なんだか随分うれしそうね」
それが思わず緩んでいた口元を示しているのに気付くまで、数秒間俺は微笑んでいた。
「ん、まあ。なんだかんだ言ってかなでさんは気配りの出来る人だし。不器用な親切っていうのは嬉しいものだからさ」
「ふ〜ん……」
「?」
いかにも『私、そんなことには興味ないから』を装った態度にクエスチョンマークが次々に浮かんでいく。
そのまま数十秒、副会長は眉間にシワを寄せながら唸っていたが、何か思いついたかのような顔とともにようやく熟考から解き放たれた。
「ねえ支倉君、一つ提案があるんだけど」
「提案?」
「そう、提案。いくら支倉君といえど学園の生徒全員から逃げ回るのは不可能だと思うの。だからここは私と協力して――」
「御免蒙る」
「敵対する生徒を排除して、頃合いを見計らって私に捕まるの。そうすれば私が優勝できるし、お願いだって支倉君が提案した軽いものにすれば一件落着じゃない? 別に支倉君だから特別にどうとか言うわけじゃなくて、その……あ、あの二人がこんな無茶な企画考えなければ良かったわけだし、罪滅ぼしというか――って拒否!? 今拒否した!?」
――ちっ、最悪なノリツッコミだな。タメが長い。間が悪い。返しもいまいちだ。これだから素人は。てめぇ見たいのが簡単にやれるほどノリツッコミってのは甘くないんだよ。
「ああ、断る」
まあ腹の中では煮えくり返るほどの感情が渦巻いているわけだが、そこは俺も子供じゃない。本音を隠して会話をするのだって簡単だ。
「は、支倉君? 何か私と悠木先輩との扱いに差があるんじゃない?」
「そんなつもりは無いけど…………もしあるとするなら」
「するなら?」
「それは副会長が弱ツンデレ気質だからかな」
「…………はぁ?」
残念ながら一度では理解できなかったらしい。普段の聡明そうな面影はそこにはなく、言葉通り残念な声を出す乗り遅れたキャラがいるだけだった。
「だからな、弱ツンデレ気質だからだよ。普通のツンデレならともかく、ツンもなくデレも弱い。そんな薄いキャラじゃ勝ち残れるわけ無いだろう? それにな、もうツンデレの時代は終わったんだよ」
メディアが騒ぎ立てる一方、純粋に『ツンデレ』を理解しているものは数を減らしていった。ただの無愛想に表面だけの言葉を付け加えた者。ツンとデレの切り替えを理解していない者。ただただ流行に乗じて言葉だけを乱用する者。そんな偽者の社会で生き残るには本物たちはツンデレであることを隠して生きていくしかなかった。
「だから今はもうツンデレはいないんだ……。そして同様に俺の中でもツンデレは終わってしまった。
そう!! 今俺の中にあるのは『素直クール』なんだっ!!」
俺の中にある想いを正直に届けたい。嘘偽り無い現実、けれどきっと理解してくれると信じている。
「…………」
「副会長?」
「…………フッ!!」
「――っ!?」
唐突に何かが頬を掠めていった。身体が反射的に避けた後で、ようやくそれが副会長の右腕であったことを理解した。
「言いたいことは……それだけかしら?」
わけが分からなかった。俺としては冷静に伝えたつもりだったのだが。やはり言葉というのは難しい。状況は全く理解できない。一つ理解できるとするならば暴君の攻撃を避けなければ、式の開会を待たずして俺はゲームオーバーになるということだけだった。
「この、このっ――大人、しく、あたり、な、さいっ!!」
「無茶言うなよ……」
恐ろしいほどの速度を持った刺突。その手が一閃するたびに風を切る音が耳につく。まさに眼に見えぬほど、というのがぴったりの形容だった。
ただそれを避けれないかと問われれば簡単に首を振ろう。
稚拙。ただ力に任せただけの動きでは実力差の無い相手にはまるで無意味。視線、肩の引き、腕の角度、踏み込みの位置、タイミング。全てが目に取るように分かる今、副会長は俺が避けたスペースを追うかのように手をさし伸ばしているにすぎなかった。
延々と繰り返すのだが互いに全く動きは衰えない。まあ二人とも体力無限みたいなものだから終わりは無いに等しい。
このままでは埒が明かなさそうだ。
「――よっと」
次々と眼前に迫る腕を見ながらタイミングを計り、そして突き出した腕をそのままこちらに引く。それだけでバランスを崩した副会長は蹈鞴を踏んだ。互いの距離は一足一刀よりも数歩遠い。話し合いには十分の位置だった。
「ちょっとタイム」
再び間合いをつめようとした副会長に手のひらを向ける。
「あのさ、一つ質問なんだけどどうして怒ってるんだ?」
「ど、どうしてぇっ!? 分からないの!?」
「うん。さっぱり分からない」
再び素っ頓狂な声を上げる副会長に素直に頷いてみる。しかし残念なことに素直さは時に美徳にはなりがたいときがあるようだ。副会長のこめかみにシャープマークに近いものが浮かんでいる。ついでに拳は真っ赤に燃えている。
「そ・れ・はっ! 貴方がどうしようもないほどにボケているからよ」
地鳴りのような音とともに彼女の威圧感が上がっていく。見れば副会長を中心として風が渦巻いているように見える。髪は揺らめき、よく分からないオーラのようなものが溢れ出している。
――もしかして、大ピンチ?
後ろに下がろうにも俺の足は絡め取られてしまったかのように動かなかった。
靴が地面と捉える音がやけに耳をつく。副会長がゆっくりと足を進めるたびに死期が迫ってくるのが理解出来てしまう。
「反省、してね」
その言葉に頷くことも、首を振ることも出来ない。ただ俺は貼り付けられた聖者のように最後のときを待つばかりだった。
「そこまで」
何の前振りもなく現れた会長。瞬きすらしていないはずなのに、当たり前のように俺の目の前にいた。まるで、そこにいないことに気がつかなかったかのように。
「会長……?」
驚く俺を見ながら悪戯の成功した子供のような笑みを浮かべている。けれど副会長を遮るようにして立っている会長は今まで見る以上に頼もしく見えた。
「まったく、そんな意地を張ったところで男は嬉しくもなんとも無いよ。どうせ張るならドッキドキイベントの伏線でも張ってくれ」
肩をすくめながら大仰に呆れてみせる会長。まるで副会長を挑発するような仕草だったけれど、続いた会長の言葉にぴたりと動きを止めた。
「そんな呼び方ぐらいで嫉妬するなよ」
「――――っ!?」
加えて顔も紅潮していた。威圧感はとうに消え去り、相応の――それ以下の存在感しかなかった。
「そ、それはそういうつもりじゃなくって……」
「だからって力で訴えかけるのはどうなんだろうって思うよ。まあ気持ちは分からなくもないけどね」
「だったら――」
「だからこその、今日だろ?」
「…………そうね」
「まあそういうわけだ。支倉君もそれでいいだろ?」
「なにがそれなのか全く分かりませんが」
それとかあれとか言われたって理解不能です。そもそもどうして副会長が不機嫌になったのかという原因が分からないのに、そこから帰結を導けというのは元より無理な話だ。
「ま、そのほうがいいかもね。知らないほうが面白そうだし」
「面白そうって…………」
「冗談だって。ただ説明しようにもね――タイムアップだ」
その言葉にあわせるようにしてチャイムが響いてきた。周りを見ればいつの間に来たのか生徒が集まっていた。どうやら本当に集合の時間らしく、先ほどのチャイムは予鈴、これからさらに人が集まってくる頃だろう。
「まあ今回は二人ともただの参加者だからね、進行は俺に任せて存分に楽しんでくれ」
手をひらひらと振りながら会長はそのまま歩いていってしまった。
「…………」
「…………」
まあそうなると微妙な雰囲気の漂う二人が残されるわけだ。
何か話したほうが言いというのは分かるのだけれど、その内容自体が見つからない。謝ろうにも何に対して謝ればいいのかも不明だ。
「…………」
となると結局黙るしかない。語りえぬことは沈黙するしかないとは言うけれど、黙ることで事態が好転するわけでもなく、全く厄介なことだ。
「あ…………」
そんなことをうだうだと考えているうちに、対峙した相手は踵を返し、何も言わず去っていってしまった。
まいった、これは確実に恨まれたパターンだろう。親密というと微妙に語弊があるかもしれないが、それなりに仲は良好だったと思う。結構話もしていたし監督生室でも一緒に仕事をしていた。そりゃお互いの教室まで会いに行くとかはなかったけれど、廊下で会えば一言二言の会話ぐらいは合った。それがなくなるというのはいささか寂しい話だ。やはり何とかして和解しないといけないだろう。
「その機会があるかどうかだけどな」
これから始まる鬼ごっこの最中にそのチャンスがあるかは分からないが、まあ気長にやっていこう。人間話し合えば何とかなるもんだしな。
モチベーションがだださがりだったんで一旦切りで。多分全四話構成の予定になる。
ようやく夏休みに入って時間が出来たのでCLANNAD見ました。
OPで泣きました……
第九話でぼろぼろ泣きました……
なんでしょう、この出来は。最高です。
さらにそれ散るのリメイクが出ます。Basilも復活します。ホント最高です。続編超期待!!!!!
皆さん買うべきでしょう。というか今すぐ予約できますから。
そろそろキリ番です。今回は作品指定でキャラを選んでいただこうかと。
作品:
リトルバスターズ
CLANNAD
空を飛ぶ、3つの方法。
D.C.シリーズ
このあたりが楽に書けそうです。それ以外でもなんかこれ書いてくれ! ってのがあればどうぞ。やったことのある作品だったらやってみますから。あとはシチュエーションとかも言ってもらえると書きやすいです。
次回はCLANNADで杏またはことみのSSか、リトバスで佐々美様のSSを更新予定です。タイトルは3つとも
『その二人、バカップルにつき』
です。
07月26日(土) [ FORTUNE ARTERIAL SS ] # 79 <固定リンク>
- FORTUNE ARTERIAL 予告SS(なのか?)
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唐突に始まってしまった争い。崩壊ははたったの一言から。けれどその言葉に平穏だった俺の学生生活は一変してしまった――
――さあ、始まりだ。孝平はどこまで逃げ切れるのだろうな、
仲のよかったクラスメイトたちまでもが俺のことを追い詰めていく――
「いたぞっ!! こっちだ!!」
「逃がすなよ」
「回り込めっ!!」
幼馴染さえもが敵に回る現実――
「ごめんねこーへー。どちらかを選べといわれたら私には陽菜ちゃんしか選べないの」
「大丈夫だから。痛くなんか、しないよ? だってすぐに終わるんだから」
同士討ちを行なうハンターたち――
「権利をもらうのは一つのグループで十分。あんたたちには消えてもらうね」
「ふ……消えるのはあなたたちじゃないの? 第一、立ち絵もないあなたたちに何が出来るの? それは既に消えているのと同じことよ」
葛藤――
「A子もC子も――いえ、英子も椎子も名前があるじゃない……
でも……でもっ!! 私はいつまでたってもB子のままなのよっ!!」
その中で生まれる友情――
「言ったろ? 俺はな、ダチは裏切らない主義なんだよ」
「司……」
少女の願い――
「私はただ、みなさんで仲良く出来れば良かったんです……」
残りが少なくなるにつれ激しさを増す闘い――
「東儀家が嫡男、東儀誠一郎。推して参る」
「ごめんなさいね。全力というものを出したことが無いから――手加減できないわよ」
「教えてあげる。経験の差が全てを分かつということを」
長年の想い――
「待つということには慣れているさ。俺の時間は無限だ。例えこの世の終わりまでかかったとしても構わないよ」
「会長……」
「おっと、シリアスな雰囲気はご法度だよ? 実は一日に十秒しかシリアスになれないんだ」
そして全てを仕組む影――
「雑魚共など所詮は撒き餌。本命はこれらのうちの一つか。まあ誰が来ようと私の手のひらの上には変わりない」
孝平は選べるのだろうか。その結末を――
FORTUNE ARTERIAL 千堂伽耶SS 「Real Tag Game」
8月上旬 公開予定
*本作品はギャグであり、シリアス成分は1%未満です。
リトバスEX いいよ……
ちょいネタばれっぽく、でもぼかしながら。たぶん内容は分からないはず。
クドの追加エンド。
確かにあんな感じもいい。選ぶのと捨てるのは違う。なんか理樹君かっけーよ。
でも唯ねえも追加してほしかった。やはり人気の差なのか?
小毬さんの扱いが納得いかねぇ……
鈴のエンド。
いい感じ。逃げた先にシーン追加と思いきや、いい意味で裏切ってくれました。ただメンバーとのからみがもうちょい合ってもよかったんじゃないと。
美魚さん→特に変わりなし。
葉留佳→むしろ佳奈多さんのほうで頑張りました。
んで追加キャラ。
佳奈多。
感動した。前回葉留編で思った感想。うぜーこいつ。
すんません。自分浅はかでした。
なんというか、すごいよ。
猫の人。
あ〜。ほうほう。理樹良い奴だよ。てか成長した後だからか頼りがいがある。
結局名前がわかんない人。
このキャラ考え付いた人最高。
攻略メンドイけど、何回笑ったことやら。風子以上のボケですよ。
SS書きたいけどいろんな意味でムズイ↓
とりあえずやってみるがいい。
06月19日(木) [ FORTUNE ARTERIAL SS ] # 77 <固定リンク>
- FORTUNE ARTERIAL 千堂伽耶SS 『れくとあんぐる・ハート』〜ハーレムエンドなんか存在しませんから〜
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温暖化の影響か一足飛びに訪れた猛暑。鬱陶しいほどに求愛行動を続ける蝉たちと嫌気が差すほどの降水量。クラスメイトたちが脱力しながら過ごす毎日だが、俺の心情はここ数日非常に穏やかだった。
というのも吸血鬼のおかげか、気温の変化に耐性がついたのが一つ。うだるような暑さも辟易するような湿気にも不快感を覚えることはなかった。まあ副会長はそれでも暑そうにしていたが要は慣れの問題なのだろう。今は不便な状況が一転したための快適さ。これから先はその快適な状況が普通になり、しだいに不自由を感じるようになってくるのだろう。とりあえず今だけのボーナス期間みたいなものだろう。そして二つ目、ここ最近学園生活がとても平和だ。生徒会の仕事はそれなりに忙しく、クラスでは紅瀬さんや陽菜たちと楽しく話したり――そうそう、数日の間行方不明だった司がようやく戻ってきた。本人もどうしてそんなことになったのかは覚えていなかったらしいが――寮でもみんなとお茶会をしたり。ふと嵐の前の静けさではないかと嫌な予感も芽生えたりするが……
ともかく平々凡々な日々をようやく勝ち取れたと思えたある日。今回の物語はここから始まる。
FORTUNE ARTERIAL 千堂伽耶SS
『れくとあんぐる・ハート』
〜ハーレムエンドなんか存在しませんから〜
「なあ、今日は何の集会なんだ?」
俺の横を歩いていた司が不思議そうに尋ねる。眠そうな瞳を何とか開きながら気だるそうに歩く姿は、さながら真夏の動物園に放り出された白熊のようだ。
「残念ながら俺も知らないんだよな」
俺たちは全校集会に参加するため講堂に向かっていた。外はぎらぎらと輝く太陽が昇っており数十分突っ立っていたならば運ばれていってもおかしくない気温(のようだ。前述の通り俺は平気だ)なのだが、講堂は冷房がかかっているため、かなり過ごしやすくはなっている。ただ人の熱気のせいでそれほどの効果は期待できないが。
「知らないって……お前生徒会だろ?」
「生徒会でも知らないことは知らないんだよ。ただ今日起きたらメールが入ってただけ」
言いながら携帯を取り出し司に見せる。
「……本日体育館で緊急の集会を取り行なう。各員、至急準備をされたし……?」
「てなわけだ。んで朝っぱらから準備をしてたんだけどさ、送り主も分からない。結局副会長も東儀先輩も白ちゃんも知らないって言うし。ただ会長は怪しかったけど……兎に角理由は分からないまんまだったよ」
「あ〜……まあなんだ、俺は寝られればなんでもいいよ」
「お前はそういうやつだよな」
ぐだぐだと会話を交わしだらだらと歩き続けようやく講堂に到着した。本来ならばもっと早く着けるのだろうが、司を放置しておくと暑い暑いといいながらもその辺で寝てしまうだろうから誰かが連れてこないといけないのだ。その誰かとはつまるところ俺だ。他のやつは怖いからといって近寄ってこない。
俺は司を後列の椅子に座らせると、自分は脇を通って裏へと回る。そこから壇上に上るとこちらからは生徒の姿が見え、向こうからはこちらが見えない場所がある。ここが生徒会役員の定位置だ。
「もう、遅かったじゃない。生徒会役員たるもの全校生徒の見本となるものなのよ? それなのに一般生徒より最後に来るなんて」
着くなり委員長のような言葉を浴びせてきたのは副会長だった。
「悪い。ちょっと司を連れてくるのに時間がかかった」
「またなの? 全く、ようやく紅瀬さんがまともになってきたと思ったら次は八幡平君だなんて……これは指導が必要かしら」
不穏な教育的指導を連想しながら哀れ司と心の中で呟く。もちろん口に出したりはしない。冗談でもそんなことをすればついでとばかりに俺まで指導されてしまうからだ。
殺伐とした雰囲気に恐怖しながら俺のために空けられた席に座る。怪しげな笑い声を上げる副会長と若干距離を開けながら。そうすると当然逆側の人とは距離が近くなるわけで。何気なく見たその隣――白ちゃんと視線がばっちり合う。一瞬どうリアクションを取るべきか迷ったが、とりあえず笑顔になってみた。
すると一瞬の疑問を浮かべた後、白ちゃんも満面の笑みを返してくれた。無垢で純真で、それでいて華やぐように。まさに癒しを具現化した笑顔だった。長らく続いた恐慌の日常によって擦り切れ叩かれ荒みきったその心が今この瞬間に洗われるような心地だった。俺は無意識のうちに癒しを求めふらふらと白ちゃんに引き寄せられ――
残り一メートルの距離で思いとどまった。
思いとどまらされた。
肩口から覗く一条の光。それは暗い闇の中から正確に俺に狙いをつけ虎視眈々と機会を狙っている。銀色に鈍く輝くその輪郭は暗く落ち込んだ相貌に反するようにぎらぎらと輝き俺の目を釘付ける。もし目を離そうものならその次の瞬間にどのような結果になるのか想像できない恐怖、逸らすことなどできはしない。幽鬼のように曖昧な輪郭にも関わらず、強烈な殺気のみがそこにあった。つうっと頬を伝う汗。からからに乾いた喉は万全に呼吸をすることさえ困難にしていた。
とりあえず怖いっすから東儀先輩。
どうやら俺に許された距離は一メートルらしい。距離を開けるとともに東儀先輩の殺気が薄れていく。まあ他の人間だったら数秒間視線を合わせるだけでアウトらしいからいい方だろう。未だにローレル・リングに人が入らないのは東儀先輩が希望者を闇に葬っているという公然の秘密があるぐらいだ。
「あれ? そういえば会長はどうしたんですか?」
副会長、白ちゃん、東儀先輩はいるにも関わらず肝心の会長がまだ居なかった。
「伊織なら準備があるといって先ほど出て行った」
「準備?」
「ああ。準備が整い次第始めるからそのまま待っていてくれ、だそうだ」
「まったく、アレのいい加減さには困ったものね」
辟易しながら肩をすくめる副会長に困ったような笑みを浮かべる白ちゃん。
「ですがしっかりしているところもありますよ」
「まあ有能ではあるけれどね」
それは俺も同感。同じことをやれといわれても絶対に無理だろう。あのカリスマ性や決断力、判断力。それは決して真似できない天性のものなのだろう。
そんな俺たちの注意を引き付けたのは耳を劈くほどの大歓声だった。講堂内を揺るがし、空気を振るわせたその人はまさに話に出ていたその人だった。
「何で会長が?」
「さあ? でも予想通り兄さんの仕業だったようね」
ちらりとステージのほうに目線を送る。突如巻き起こる伊織コールを浴びながら歩く会長を見ながらそう呟く。
「あれって……伊織先輩ですよね? いったい何を持っているのでしょうか……?」
颯爽と歩く会長だったけれども、白ちゃんが言うように何かを担いでいた。大工道具のように用途不明の物を担いでいるのだが全く持ってビジュアルと合っていない。にも関わらず違和感を持たせない会長のスペック。おそらくヘルメットとスコップを持っていても似合ってしまうに違いない。
まあそれはともかくとして、一体何を持っているのか。若干遠めではあるが吸血鬼アイを凝らせばすぐに見える距離である。目を細めるようにして意識を瞳の先に集中すればほら、一瞬にしてその詳細が見えてくる。
「あれって……階段か?」
「の、ようね……」
「そのようだな。以前に監督生室で目にしたことがある」
「階段ですか?」
一般的な視力を持つ白ちゃん以外には同様のものが見えているらしい。しかしだ、それを何故会長が持っているのかはさっぱりだ。まあ一般人の思考と志向を持つ俺なんかに狂人にして才人の嗜好なんかは理解し得ないのだが。
その会長は相変わらず続く伊織コールを受けながらステージの中央に置かれていた演台の前に階段を置くと、演劇のように両手を広げながら颯爽と視線を持ち上げた。
「すまない、みんな…….」
それだけで会場が静まりかえる。あっ、会場じゃなくて講堂だ。やばいなぁ……本気でライブ会場に思えてきてしまった。
「突然集まってもらって悪かったと思っている。貴重なみんなの時間を奪ってしまう俺を許してくれ」
「毎回思うのだけれど兄さんはもっと普通に話せないのかしら」
あんたも大概だぜ副会長さん。まあそこがいいところだけど。
「だが……だがっ!! 今日みんなに話があるのは俺じゃないんだ……」
訴えかけるように、見るものの憐憫を誘うかのような会長の言葉にほとんど全ての生徒が聞き入っている。残りは涙を流してまともに話を聞けない状況だった。なんつーか、とりあえずすごい人だ。最近の演技もまともに出来ないような俳優の変わりにドラマに出てほしいぐらいだ。ちょっと前まではよかったんだけどなぁ……十年位前にやってた子供戦争、だっけ? まあそんな感じのドラマ世代の子役が大人になったぐらいの年代のやつらか、兎に角酷すぎるからなあ。
閑話休題。会長の心の篭った訴えに会場中の――もう会場でいいや。会場中の人間がその主役へと関心が向かっている。
「では脇役は潔く身を引かせてもらおう」
会長が数歩下がるにあわせて見慣れた人影が袖から姿を現す。豪奢な着物を身に纏い、身の丈に合わぬその存在感を持つ人物。
「ってお母様っ!?」
思わずツッコミを入れたくなるその気持ちはよく分かる。俺が声を出さなかったのは、いや出せなかったのはその後の展開が何故か、知りたくなかったが、分かりたくもなかったが、用意に想像できてしまったからだ。
副会長の言葉が聞こえたのだろう。こちらに視線を向けた伽耶さんは意味ありげな笑みを浮かべた。会長もまあまあとでも言うように手のひらをこちらに向け、そうした後マイクを伽耶さんの前にあるスタンドに返した。
それを受け伽耶さんが視線を生徒に移した。伽耶さんが生徒に姿を見せるのはおそらく初めてだろう。一応この前悠木シスターズと司に顔を見せたから厳密には初めてでは無いけれど、公の場では初めてのはずだ。引きこもり児童だった伽耶さんの学校デビューといったところか。あるいは転校生紹介。みんなも突然登場した幼女に視線を引き付けられている。
「紹介に預かった理事長の千堂伽耶だ」
小さな咳払いとともに伽耶さんが口を開いた。戸惑いと好奇の声を上げていた生徒もその凛とした声に自然と静まっていく。
「暫しの間所用で外していたので多くの者は初見であるかと思う。以後見知っておいて欲しい。それでは私のほうから幾つか報告させてもらう。
まずは次週に迫ったプール開きについてだが、以前に書面で通達したように整備委員と水泳部はプールの掃除をしてもらう。またこれには有志の参加も受け付けている。希望のものは申請書を生徒会前に設置してある専用の箱に提出すること。
次に各部の追加予算について。春の大会において優秀な成績を収めた部活動に特別手当を授与することが先日の会議で決定された。対象となる部活動については顧問に通達してあるので各部確認しておいてほしい。
次にだが――」
意外、だった。伽耶さんが出てきたときはどんな騒ぎになるかと思ったのだが、平均以上に上手くできているではないか。まあ報告自体は生徒会の仕事の範疇であるものも含まれているのだが、おそらく出来る限り伽耶さんに話をさせようと会長が譲ったのだろう。
それにしても話し方が上手い。抑揚の付け方、呼吸をするタイミング、発音の仕方も聞いている人間のことを考えている話し方だった。以前は威圧的な印象しか受けなかったのだが、今はそれとは完全に正反対だ。俺も副会長も白ちゃんも感心して、あるいは感動して伽耶さんの話に聞き入っていた。
「最後に私的なことではあるが報告しておこう。私の名前から薄々感づいているものも居るかと思うが、この千堂伊織の親でもある」
会場中にざわめきが走った。まあ当然の結果なんだけど。確かに千堂って苗字は珍しいから親戚かそこらだとは思うが母親とは思わないだろうな。
「それと近々、千堂から支倉に代わるのでよろしく頼む」
「「またそれかっ!!」」
見事に重なった二人の声。これ以上余計なことを言わせるかと立ち上がろうとしたのだが、その前にまるで引っ張られるようにして椅子に叩きつけられてた。
いや、これは叩きつけられているのではなく――
「なっ!? 椅子が動いて――」
「ど、どうなってるの!?」
「きゃああぁ」
パチンコではじき出されるように椅子が急発進。床を滑るようにして移動し――突如急停止。そうなると慣性の法則というもので。
気をつけて、車は急には、止まれない。
見事に放り出された俺たち四人は宙を舞っていた。突然のことに混乱はしたが、どうすべきかは身体が分かっていた。スロー再生を見ているかのごとく長く感じられる時間の中でゆっくりと自分の身体を動かしていく。落下が始まる前に反転、下半身を床側に、衝撃を殺し、体制を整える。
摩擦とともに音を上げる靴。両手両足でブレーキをかけながら何とか着地する。ポーンと放り出された白ちゃんは東儀先輩が見事にキャッチ。副会長も華麗に着地、はしたのだが。
「え゛っ?」
何故か勢いよく反転、逆立ちに近い状態になってしまった。加えてそれだけでは収まらずそのまま滑っていく。逆立ちをしたままで。くるくると回転しながら滑るその姿はブレイクダンスをしているかのようにも見えるが、違う点は本人には制御できないというところだろう。
そのまま真っ直ぐ反対側の袖へと吸い込まれていく。反対側――でっかい木材とか看板とか、用途不明の器具だとかの束――に突っ込んでいく副会長。いくら渾名がアレだからってホントに突撃しなくても……
などとボーリングの玉ように滑っていく副会長を悠長に見送ってしまう。だって俺にはどうしようもないしね? いくら身体能力が高くても物理法則には逆らえません。
反対側まで行き着くとまあ当然のごとく荷物の山にぶつかるわけで。
ここで質問。壁に寄りかかるように立てかけてある物の下方に対して、壁と垂直に力が加わるとどうなるか。
A、倒れてきます。
まあアレだ。ドミノ倒しをイメージして欲しい。正し倒れる方向はある一点に向かってだが。何の因果かその一点に居る副会長。あまりの轟音に擬音で説明するのも困難なほどの衝撃が会場に鳴り響く。副会長の状態は恐ろしくて確認することが出来ない。まあしいて言うならばアレだ。落下したトマト。あるいは叩きつけられたヒキガエル。
にしてもなんであんなに滑ったのだろうかと床に視線を落とせば、これでもかと磨き上げられたレーンがあった。いや、この光沢はワックスだろうか。あるいは氷か? ともかく異常なほどに摩擦が小さくされているのだろう。こんなことをするのは一人しか知らない。
「……準備ってこれですか?」
「はっはっは。何のことだいマイファーザー? 僕には何のことかさっぱりだよ」
「さわやかな笑顔で何を呟きやがりますかこの野郎」
「止めてくれよ父さん。今の時期しつけと虐待は紙一重なんだから気をつけてくれよな」
「だ・れ・が!! 父親ですか!?」
「それじゃあ弟かい? 個人的には父親になってくれたほうがいいのだけれどね。それより支倉君、いつまでいちゃついているんだい? 息子としては両親のバカップル振りほど対応に困るものはないんだよ」
「へ?」
そういわれて初めて自分の隣に人がいることに気がついた。副会長の身体を張ったパフォーマンスに意識を奪われていたため今の今までそんなこと気にもしなかった。反射的にいわれた方向を振り返ってみればそこいたのは伽耶さんであった。ハテナマークが三つ並びそうな状況だったが、よくよく考えてみれば伽耶さんは初めからここに立っていたのだ。突っ込んできたのは俺のほう。
「ただなんで顔がこんなに近いんですか?」
「それは孝平の顔を良く見えるようにするためだ」
「なんで腰に手が回っているんですか?」
「それは愛しい孝平を受け止めるためだ」
もしかしてどうしてそんなにお口が大きいのと尋ねたら食べられてしまうんだろうか……
「ところでその台はどうしたんですか?」
「これか? 伊織に言って持ってきてもらったものだ。ただそれだけでは味気なかったのでな、少々手を加えたがな」
手に入れたおもちゃを自慢げに見せびらかす子供のようだった。ただそのおもちゃはものすんごい高級そうだった。表面は……漆か? 俺には良く分からないが。良く見れば所々に意匠が凝らしてあるし、おそらく俺には想像もつかない値段の代物なのだろう。
「どうだ、雅だろう?」
雅というよりみやびだ。なんだ俺は伽耶ちゃんぷりちーとでも言えばいいのか?
「ねえ支倉君、ちょっといいかい?」
「どうかしたんですか会長」
「さっきもいったんだけどさ、いつまでくっ付いているんだい? みんな見てるよ?」
会長の指を指すままに視線を向ければそこにいるのは全学院生。好機の視線が束となって俺に襲い掛かってきた。
途端に羞恥心が湧き上がってくる。
「ちょちょちょっと伽耶さん!? いい加減その手を離してもらえないでしょうか?」
慌てて引き剥がそうとするのだが、がっちり食い込んだその手は一向に離れそうも無い。
「まあそう言うな。丁度いい機会ではないか」
「いい機会?」
馬鹿みたいに鸚鵡返しに呟いた俺に、会長が肩を叩きながらにこやかな笑みを浮かべてきた。
「そう、いい機会だよ」
遊園地で配られる風船のように手に紐を握らされた。反射的に引っ張ってしまう俺。すると一瞬の手ごたえとともに背後の壁が剥がれ落ちた。
「ドンドンパフパフ〜。第一回チーム対抗型鬼ごっこ〜」
秘密道具でも出すかのように声を上げる会長に唖然としてしまう。会場中も静まりかえり会長の言葉に聞き入っていた。
「今回の企画を説明させていただきましょう。ルールは簡単、鬼を捕まえるだけです。参加可能なのは全校生徒だれでもです。一チーム最大三人までとしてある人物を追いかけてもらいます。そのある人物とは――」
スポットライトがある一点に集中する。まあ言うまでもなく俺なのだが。
「って俺ですか!?」
「はい、ナイスツッコミをありがとう。そう、とある人物とは我が生徒会役員である支倉孝平君です。この支倉君を最初に捕まえたチームには豪華賞品を差し上げます」
「そこから先は俺から説明させてもらおう」
いつの間にか横に立っていた東儀先輩が会長かマイクを受け取り一歩前に躍り出た。それだけで会場中の熱い視線を独り占めしていた。
「豪華賞品とは形あるものではない。それは優勝者の望むもの、刑法に触れない限りはどんなものを望んでもらっても構わない。東儀家が全力を尽くしてバックアップをさせてもらおう」
その言葉に会場のボルテージが一気に引き上げられた。東儀家が付く、それはすなわちこの島で出来ないことは何も無いということだ。先ほどまでは半信半疑だった生徒も今では完全に乗り気になっているだろう。
「といっても誰もがその権利を得れるわけではない。もちろん参加は自由なのだが……」
そう言って何やら番号の書かれた布のようなものを取り出す。
「参加者にはこの鉢巻を身体の見える部分に結んでもらう。同じ番号の書かれたものが三枚、チームに三枚ずつ配られる。これを持っているチームだけが鬼を捕まえることが出来る。ここで重要なのは一つだけリーダー用の鉢巻があることだ。他の鉢巻きが取られても即失格にはならないがリーダーのものが取られたらそこで終了となる。ただしリーダーでなくても鉢巻を取られた人物はそこで退場となる。
しかしチームの誰かが再び鉢巻を取り返せば再び参加することも出来るので最後まで諦めないことだ。基本的なルールは以上となる。詳細はこの後各クラスに配布するのでその際に確認すること」
「補足させてもらうと直接的な暴力は禁止だよ。ただ危険が及ばないようなトラップはOKだ。そのあたりは自己判断で頼むよ。もしも危険だとこちらが判断すればペナルティーを受けてもらうからね」
何がなんやら。いつの間にか鬼にされた俺。まあ吸血鬼だからあながち間違いでは無いんだけどさ。それにしたってもうチョイ事前説明があってもいいんじゃないのか?
「だって言ったら反対するだろ?」
「当たり前です」
俺の返事に満足そうに頷くと再び生徒のほうに身体を向けた。
「先ほど行ったとおり賞品は自由だ。お金でも構わないし世界一周旅行でも構わない。身近なテスト免除でも気になるあの子あの人とお近づきになるのでも構わない。まさにアタック・チャ〜ンス」
「それはアレですか……?」
「めがねめがね〜」
「それはきよし違いです。あと東儀先輩の眼鏡を取らないように。多分本気で怒ってますよ」
どす黒いオーラが渦巻いてるあたり。
「それにだ、もしも逃げ切ったら君にもごほうびがあるからさ」
「ごほうび?」
訝しげに呟くと、会長は俺の傍に顔を寄せると越後屋のようにニヤリと笑った。
「瑛里華といいことをさせてあげよう」
「アホかぁぁぁっっっーーーーーっ!!」
数十メートルを一瞬でかける助走で副会長が飛び込んできた。突っ込みも忘れずに。
ただその右手に持つものはハリセンではなく角材だったが。この兄妹の漫才は命がけだな。
「え、瑛里華……なぜ、角を、取らない……?」
「角を取ったら殺傷能力が落ちるでしょ?」
小学五年生を相手に説明するかのような懇切丁寧な副会長の言葉。ただ言っている間もその両手は正確に振り下ろされているが。
「なあ……瑛里華…………どこからか、ごめんなさいって…………聞こえないか?」
「聞こえないわね」
集会で繰り広げられる惨劇。つーか対性のない人間が見たら卒倒する光景だぞ? そうでなくても副会長に対するイメージは滝のように落ちきっているだろうよ。
「それでは開始は三時間後の十二時からとする。全員用意をしておくこと。説明はこれで終わらせてもらう」
それでも動じることなく(眼鏡を取り返して)そう締めくくった東儀先輩。一礼をするとその場を伽耶さんに譲るように一歩下がった。
「以上を持って今回の集会を終わらせてもらう。一同礼」
こうして集会は終わったのだが、惨劇の気配は容赦なく俺の背後へと近づいていた。
<続>
ようやく更新完了です。まあ続きは結構早めに更新する予定☆
ただし次回はバトルものです(嘘)
ここ最近メモオフにはまりました。ヒストリーが手に入ったんでずっとやってます。いや、キャラがいい。普通なんだけどその普通さが。どっかの地雷作品よりもよっぽどね。
ちなみに一番気に入った台詞はこちら。
「デモは機動隊が鎮圧しました」
ちょっと違うかも知れんけどこんな感じ。私生活でもつい使えそうな台詞っすね。
02月26日(火) [ FORTUNE ARTERIAL SS ] # 62 <固定リンク>
- FORTUNE ARTERIAL 千堂伽耶SS 〜妹!? × 娘!? × ロリ事長!!〜
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目覚めたときに飛び込んできたのは見慣れぬ天井。そう考える脳があるというは未だ生きているということなのだろう。
あれほどのことがありながら死を迎え入れられない悲劇、いっそ助けることなどせずにそのまま逝かせてくれたのならどれだけ良かったのか。個人の命でさえ世界のためと言う大義名分の下に管理され、己が意思すら棄却されるこの空間。やり場の無い思いを抱えながら、その向ける先は己が無力さを呪うだけの弱さ。永遠と自己完結するサイクルを続け怒りを消化する以外に道は無い。
そう愚痴りながらも自ら死を呼び込むことすら出来ないなんてとんだ臆病者だ。
「――起きたのね」
唐突に発せられたその言葉。予想していなかった第三者の存在に必要以上に取り乱しながら横を向けば、そこにいたのは常と変わらぬ彼女の姿だった。
手には文庫本を携えたまま、機械的な動作で一瞬だけこちらに視線を向けた。
「紅瀬、さん……?」
「あなたにはそれ以外の誰かに見えるのかしら?」
ページにしおりを挟み脇にどけた。目元にかかっていた髪を払うその仕草さえ優雅で、思わず些細な疑問なんて忘却してしまっても構わないとさえ思ってしまう。
「いや……そういう意味じゃなくて、何で俺の部屋にいるのかって思って」
あまり呆然と見ているわけにもいかず、戸惑いながらも疑問を口に出す。紅瀬さんはそんな俺の姿を薄っすらと笑みを浮かべながら眺めていた。けれどもそれは俺の狼狽振りを嘲笑するような冷笑ではなく、子猫を眺めているような自然な表情だった。
「そのぐらい分かっているわ。ただその質問は前提が間違っているから」
そう言われてようやくアイドリング中の思考が回り始めた。見慣れぬ天井――と思っていたが、造りは同じ。そもそも自分の部屋だったら見慣れぬわけがない。おそらく寝起きでぼんやりとしていたのだろう。
周囲に目をやれば俺のものではない家具が並び、窓から見える光景も若干の違いをもたらしている。
「ここって……司の部屋か?」
「ご明察」
おお、褒められた♪
なんて浮かれている場合ではなく、何故俺がこの部屋で寝ていたのかを思い出す必要があるだろう。
けれども俺のシナプスはどうやら職務怠慢気味らしい。この年で健忘症に陥るなど不覚の致す所、全くもって遺憾であります。どうやら思い出すにはきっかけが要るということだろう。つまるところ紅瀬さんがこの部屋に居る理由から解き明かすべきである。
「あのさ、紅瀬さんはどうしてここにいるの?」
あなたの寝顔を見ていたのよ、なんて素敵シチュエーション切に願ってみたものの、よくよく考えれば小説に没頭していた紅瀬さんが俺のことなど見ているはずもなく。
「そうね、しいて言えば鬼ごっこから隠れん坊変わったから、かしら……」
「へ?」
意味深な言葉。紅瀬さんはそれ以上の意味を説明するつもりは無いらしい。ならばこの部屋の主でありオーディエンスでもある人間に尋ねるしかあるまい。と、思ったのだが当の本人が見つからない。時刻はまだ八時前、司のやつがこの時間に起きていることなんてありえないだろう。そうやってきょろきょろと辺りを見回す俺の意図に気付いたようで、紅瀬さんは今日の天気を話すかのような気楽さで呟いた。
「八幡平君ならロビーに転がしておいたから」
「あんたすげーな」
そういえばいつの間にか寝袋ではなく布団で寝てるし。これって司のだろ?
「心配は要らないわ。夏だもの。それに寒くならないように暖かい格好にしておいたから」
格好良く流し目で示した視線の先にあったのは、強盗にでも入られたのかと疑うほどに乱れ、開けっ放しになったクローゼット。中身は空、僅かに残るのはアイロンをかけなければ着られそうになくなった薄手のシャツだけだった。
……とりあえず今度メシでも奢っておこう。
「そもそもなんで司を追い出す必要があったんだ?」
「決まってるじゃない。彼と一緒に朝を迎えただなんて思われたくなかったからよ」
証明するべくも無い単調な数式を解くがごとく、簡潔で明瞭な答え。ですが桐葉様、そう言われてしまいますと行間を脳内で補完してしまいますよ? 所謂――『脳内補完計画』――ちょい違うけど。
まあなんだ、言いたいのはつまり、俺となら構わないのか? ということ。けれども俺のシャイでチキンなブレイクハートはどちらに転んだところで致命傷。勘違い野郎も格好悪いがど真ん中に打ち返されたらそれだけで試合終了。ウブなハートの取り扱いにはくれぐれもご注意下さい。
「さあ? どうかしら。まあ、長い付き合いになりそうだし」
からかう様なその笑み。ここ数日の間でずいぶんと表情が豊かになったと感じたのは俺だけではないだろう。
「何? 随分と嬉しそうだけれどいいことでもあったのかしら?」
「まあね。紅瀬さんが笑顔になってくれるのが嬉しいかな」
「だったらそれはあなたのおかげね。支倉君がいなければ私も伽耶も救われなかったもの」
仕返しのチャンスと際どい返球をしたものの、向こうの方が一枚上手だったようで。見事に打ち返された球で思わず言葉に詰まってしまう。
と、思ったがどうやらここは痛み分け。そっぽを向いた横顔が薄っすらと染まっている。
「……そういえば」
ふと名案が思い浮かんだ。周囲との拒絶が必要なくなった今なら、紅瀬さんはもっと友人を作ることができるのではないだろうか。前のバレーの一件然り、クラスメイトからの紅瀬さんへのイメージを変えていけばすぐに人気が出るのは間違いない。
と、いうことでいかがでしょうか?
「そう……それで、支倉君はどんな提案があるのかしら?」
「そうだな、とりあえずクールフェイスを緩めてみよう」
「……そう言われてもこれが地なのだけれど」
「まあ意識するだけでも変わってくるよ。あとは楽しそうなことに挑戦してみるとか」
例えば猫と戯れている姿とか――そういえばアレは伽耶さんだったな。そう考えるとあの構図はちょっと面白いかもしれない。
「他には定着した間違ったイメージを一新してみるとか」
「そういうからにはアイデアはあるんでしょうね?」
予想外に乗り気な紅瀬さん。まあイメージを変えること自体に興味があるのではなく、俺が何を言い出すのかに興味が向いているようだが……まあよしとしよう。
「そうだな。とりあえずキャラを変えるべきだな。例えばボソッと面白いことを言ってみるとか」
「そう言われても、すぐには思い…………つかないわ」
「んん? どうしたんだその間は? 何か思いついたんじゃないのか?」
「まったく、随分と鋭いのね……」
「いやいやいや、そんなこと無いぞ。まあ俺のことはさておき、どうぞそのネタを披露してくださいな」
俺の熱心な説得についには折れる桐葉様。溜息をつきながらも、次の瞬間には真剣なまなざしだった。
なんかこう、お笑い芸人のオーディションみたいになってきたなぁ。
「…………絶対に笑わないでね」
いやいや、笑わなきゃマズイだろ? それともなんだ、もう始まっているのか? しかし以外と面白かったぞ。侮りがたし、紅瀬桐葉。
一瞬静まり返る室内。
「……今の気分は大なり小なり小文字B」
「………………」
「あるいはシグマ括弧にオーバーライン。ロを入れ小文字のLかける3」
「………………」
「………………だから嫌だったのよ」
再び沈黙。そして大爆笑。
「ぶはっはっはははははははっ!!」
なんていうか真顔で言われたあたりが最高だ。いろいろと問題があるかもしれないがモーマンタイ。パクリOKネタ最高。
「この路線で行けば人気間違いなしだ」
「やっぱり止めておくわ」
赤くなった顔でそう呟くけど、ウケて嬉しいのが隠しきれていないぞ♪
朝っぱらから何をやっているんだと思わなくもないが、楽しいのは仕方がない。既に疑問など吹っ飛び、もうどうでもいいやと楽観的になったのだが、どうやらそうは問屋がおろさない。和やかな朝の雰囲気を一変させる悲鳴が寮内を駆け巡った。
「うわーーーーーーーーーーー!? こーへーがロリっ娘になっちゃったーーーーーっ!?」
「五月蝿い!! 大体貴様が言える立場かっ!! すぐに姿見を覗いてみろ!!」
騒ぎの発生源はすぐ間近、というか三つ隣の俺の部屋だと予感に近い予想。聞き覚えのある声と妙な既視感、父さん嫌な妖気を感じます。けれども放っておくこともできず、布団を跳ね除け飛び出していた。ドアを開け放ち、閉じるのも待たず廊下を駆け抜け自室のドアを開く。
「え…………?」
勢いよく飛び込んだものの、俺は予想外の光景に呆然としてしまった。
何故か、俺のベッドの上で四つん這いのまま、猫のように警戒心をむき出しにしている伽耶さん。その格好は豪奢な二十重の着物姿ではなく、素肌が見え隠れするような薄手の寝衣姿であった。いくら伽耶さんの姿が人並み外れて華奢で矮小な体躯を有しているとはいえ、やはりそこは女性の体。見てはいけないと思いつつも、ついつい布地と地肌の境界線へと目が行ってしまう。
そしてこれまた何故か、俺の布団を握り締めたまま硬直しているかなでさんの姿。一体どうしてこんな光景がと思わなくがないが、ああなんとなく蘇ってきた俺の記憶、正しくは思い出したくなく蓋をしていた記憶がじわりじわりと溢れ出してきた。
昨日、突然来訪された我が吸血姫、建て前は副会長の様子を見に来たとのことだが、それが建て前であると把握できてしまうあたりが伽耶さんらしい。
その後監督生室に居座り俺たちの様子をじっと見ていた伽耶さん。日が落ちたら帰宅するかと思いきや、そのまま泊まると言い出した。困惑はしたものの、翌日――つまり今日は休日、まあいいだろうと了承したのだがその宿泊先が問題だった。寮に戻り階段のところで分かれたのだが、当然のごとく俺の横をついて来た伽耶さん。あまりに自然だったもので部屋に戻るまで気がつかなかった。
会長はやれやれ、なんて言って面白がっていたし、東儀先輩も『伽耶様をよろしくお願いする』なんて真面目な顔して頭を下げるし。
去り際に『不義を働くことは即ち、死と思え……』なんて低い声で呟くし。ホントあの人は冗談が下手なんだから。ははははは…………と自己防衛。
当然のように居座る伽耶さんを何とか宥めながら副会長に連絡。即座に飛んできた(比喩ではなく、本当に跳んできた)副会長が伽耶さんを引き取ることに。と言うか部屋に戻るまで気がつかなかった副会長も流石と言うところか。
まあそのまま戻ってくれれば問題は無かったのだが、伽耶さんに煽られた副会長が発火、そのまま俺の部屋で言い合いになってしまった。
第三者なればそんな二人が自然に会話できることを喜べたかもしれないが、この場合主に被害を被るのは必然的に俺だ。終わりが見えぬ和やかな罵り合いに心身ともに疲れきった俺は、仕方なく民間救護室@司の部屋へと逃げ出したのだった。
――以上回想終了。
「あの、一体何をしておられるのですか?」
思わず敬語で話しかけてしまうほど殺伐とした雰囲気。傍から見れば幼女が二人、仲良く見詰め合っている和やかな光景に見えるかもしれないが、其処に漂うのは明らかに厄介ごとが舞い降りる戦場、けれどもここが俺の領内である限り声を掛けないという選択肢は得られない。
「おお、こーへー!? 丁度いいところに。あのね、こーへーを呼ぼうと思ってきたんだけど、そしたらこーへーがこーへーじゃなくって、ロリっ娘のこーへーになっちゃって。こーへーじゃないからどうしようかと思ったらこーへーがやってきて。だからこーへーがこーへーじゃないってこーへーに教えてあげようと思って!!」
「混乱してるのは伝わりましたから落ち着いてください。女の子がへこへこ言うもんじゃありません」
とりあえずかなでさんを宥めておいて、もうお一方へと視線を戻す。やはりお怒りのご様子……いや、これは怒っているのではなく拗ねているのだろう。おそらく最初に声をかけたのが伽耶さんでなかったのが不満なのだろう。最近伽耶さんの感情の機微が掴めるようになってきた気がする。
「孝平よ、その幼女は何だ? 孝平の妹か?」
不機嫌そうな声を隠そうともせず、射抜くような視線でかなでさんを凝視する。
「違いますよ。ええと、かなでさんは…………」
しかし何と説明するべきか。関係上は俺の先輩であり寮長なのだが、そんな薄っぺらい役職上の関係ではない。俺の幼少期に世話になった人であり、現在もそれ以上に助けてもらっている。
「我が名は人呼んで悠木かなで、その実態はひなちゃんとこーへーの姉なのだっ!!」
いいあぐねているとかなでさんが自分で名乗ってしまった。まああながち間違いとも言い切れないのだが、何故ガラステーブルの上で仁王立ちになる必要があるのだろうか。
「はっ、戯言も大概にせい。孝平に親族がおるなど聞いておらぬ。第一姉では無理があろう。せいぜい妹が関の山だ」
けれど一蹴。伽耶さんはまるで相手にしていなかった。しかし俺にだって親はいるぞ? 言ってなかったけど。
「むむむ、失敬な。わたしはれっきとした年長者だぞ。ほら、こーへーからも言ってあげなさい」
「まあ……一応俺よりかは年上ですよ。あとテーブルから降りてくださいね」
「おっとこれは気がつかなかった。ともかく、わたしは名乗ったんだから君も自己紹介」
至極真っ当な言い分ではあったが、伽耶さんは格の違いを見せ付けるような冷淡な笑みを浮かべた。他人を傷つける鋭利さは無いものの、どこか妖艶ささえも感じさせる嘲笑を浮かべるその表情に思わず魅入ってしまう。
「淑女たるもの、伴侶の紹介もなしに名乗れるわけがなかろう」
どきりと心臓が飛び跳ねる。年相応ではあるものの、外見には不相応なその眼差しが頭に焼き付いてしまった。吸血鬼のもつ魅了だと言われても反論が出来ないくらいに。
「伴侶って……ヨメ?」
「当然だ。それ以外になかろう」
自慢げに笑みを浮かべる。
「まーたまた、そんな設定はいらないから。それよりも名前は? お姉ちゃんはここの寮長なんだから、ちゃんと家族のところへ連れてってあげるからね〜」
完全に迷子扱いしているかなでさん。面白い光景ではあるがどう転んでも面白い展開にはなりそうもないだろう。
「あの……一応成人は超えてますから。それと、名前は千堂伽耶さんです」
「千堂って……えりりんの?」
「ええ。それでまあ、信じられないかもしれませんが……副会長のお母さんです」
「…………」
「…………」
「…………」
困惑する俺と自慢げな伽耶さんの顔を交互に眺めるかなでさん。
「なんだってーーーーーーーーーーーー!?」
え〜寮内にお住まいの生徒の皆様、朝早くから騒ぎ立てして申し訳ありません。
FORTUNE ARTERIAL 千堂伽耶SS
〜妹!? × 娘!? × ロリ事長!!〜
「うむむむむ」
未だに奇怪な唸り声を上げ続けるかなでさん。加えて先ほどの騒ぎを聞きつけた陽菜までもが俺の部屋に集まっていた。
「今日は紅茶でいいかな?」
そして何故か分からないが朝っぱらからお茶会を開くことになってしまった。陽菜は嬉しそうに準備を進めているし、いつの間にかマイカップまで用意されている。ううむ、流れとは恐ろしい。
陽菜とかなでさんに伽耶さんを紹介してようやく一段落。慌ただしい雰囲気も収まりようやく朝らしい雰囲気になってきた。
「で、お二人はどうして俺の部屋にいたんですか?」
しかし流されっぱなしと言うのも問題だ。無理やりにでも軌道修正しておかなければ収拾がつかなくなりそうだった。とりあえず伽耶さんとかなでさんをクッションに座らせ話を聞くことにした。
「うむ。実はだな、昨夜は知らぬうちに孝平が消えていたのでな、様子を見がてら起こしてやろうと思ったのだが……」
「俺が居なかったと」
そこまでは分かるのだが、その続きが問題なのだ。
「そうしたら目の前に布団があってな、日差しを浴びてどうにも暖かそうだったものでついつい誘われるがままに…………」
きまりが悪そうに語尾を濁す伽耶さん。あったかそうな場所を見つけて二度寝とは、本当に猫みたいな人だ。
「その現場でわたしがこのロリっ娘を発見したのだ」
薄い胸を張って自慢するかなでさん。
「まだ言うか!? 第一貴様のほうがどう考えても幼かろう!!」
「なんだとー!? このぐらまらすぼでぃーに向かって何たる罵詈だー!?」
「笑止、そのような貧相な体に誰がなびくものか」
「そういうそっちの方こそ!! おこちゃまみたいな体型のくせに!!」
五十歩百歩と締めくくる前に俺は声を大にして問いかけたい。
あんた等、ロリのどこが不満なんだ!?
ロリ以上に素晴らしいものがどこにある!?
これだから世の中を知らん小娘どもが…………いや、知らなくていいか。小娘だし。
というかこの空間を何とかして欲しい。見た目同様、幼稚な口論を続ける二人。果てないボケを際限なく続けるコントのように底が見えない。そしていつその深みにとらわれるか気が気でない。
「もう、お姉ちゃん。そういう失礼な事言っちゃダメでしょ?」
颯爽と現れる助っ人一号。お盆に心安らぐ香りを乗せ俺たちの元へ運んできたその姿はまさに平穏の使者。
「人間ってね、成長期を過ぎると今度はとどんどん小さくなってくんだから」
そしてボケがここにももう一人!! くそう、ここはボケの魔窟なのか!? 流石に一対三では分が悪い。誰かっ、誰かツッコミの出来る人は居ませんか!?
「でも驚いた、初めは千堂さんのお姉さんかと思いました」
見た目が逆であろう!! なんて思わずツッコミを入れてしまいそうだった俺の腕、けれでもその言葉に引っかかるものを感じた。
そうだ、何故に副会長がこの場に居ない!? 伽耶さんのストッパーたるもの常に備えておくのが使命だろう? それとも何か、真のヒーローは遅れて登場か? ならば俺は呼ぶしかあるまい。せーの、瑛里華さ〜ん。
「お母様!! 何をしているんですか!?」
蹴破るように開けられた救いの扉。
流石は心のヒーロー瑛里華様。助っ人二号は弱者の声にはすぐ反応。まるで待機していたとしか思えないタイミングだ。技の一号・力の二号、ここは強引に決めちゃってください。
「他の生徒の模範となるべき年長者が進んで騒ぎを引き起こすなんてどういうつもりですか!? こんな時間から騒いで迷惑だと思わないのですか!?」
おおう、流石は委員長体質。叱る姿が様になっておられる。けれども言ってることは素晴らしいのですが、そのお姿がどうにも様になりません。
「芋虫…………?」
「尺取虫じゃない?」
「えっと、可愛いと思うよ?」
思わず疑問系で話したくなる副会長の姿。見事としか言いようがないほどの簀巻き姿だった。布団でぐるぐるまきになったうえに紐で何重にも縛られている。趣味でやっているとしたら拍手を送りたいほどの出来だった。
「どうした瑛里華。随分と暖かそうな格好ではないか」
ああなるほど。アレは伽耶さんの作品だったわけだ。冴える熟練の技といったところか。
「自分でやったくせによくもまあそんな事が言えるわね」
こめかみを浮き上がらせながら声を低くする副会長。けれどもどうにもコミカルな姿なだけにどうにもシュールな光景だった。
「とにかく、朝から男子の部屋に行くのは禁止されてるんです。ですから早く出てってください」
「ほう、ならばそれが可能なように校則を変えるとしよう」
「そんなこと出来るんですか?」
思わずツッコミを入れると、副会長が不機嫌そうに頷いた。
「一応……理事の一人だから…………」
「いや、昨日付けで理事長になった」
思わず集まる視線。ってかロリで金髪で理事長って…………キャラが被ってるぜ。
「というわけだ、文句はあるまい。それと、友人たちの前でそう騒ぐな。見苦しいぞ」
「う…………」
「そうそう、改めて紹介しておこうか。これが我が娘の瑛里華だ。これからもよろしく頼むぞ」
「あ、いえいえ。こちらこそえりりんにはいつもお世話になってます」
普段ははしゃいでいるものの、かなでさんも社会的常識のある先輩だ。このように言われれば即座にスイッチを切り替える。
「千堂さんのお母さんって素敵な人なんだね」
「え? あ、まあね……」
そして陽菜が羨望の眼差しで副会長に視線をやる。おそらく自分の母親のことを想っているのだろう。誤解が解けたからといって自らの負い目が簡単に消えるものでもあるまい。
副会長もそう言われれば伽耶さんを悪く言うこともできないだろう。もともと陽菜は助けてもらったということもあり、副会長を過度に持ち上げて見る傾向がある。副会長自身もそんな陽菜の期待に応えようと見栄を張る傾向がある。
そんな空気が弛緩しだした瞬間を見越したように、伽耶さんがさりげない口調で一言。
「それともう一つ。近々千堂から支倉に名が変わるのでそのように」
しまった!! 外堀から固められた!?
歩く情報拡大源のかなでさんにそんなこと言われてしまったら休み明けから寮内で、いや学内で生活できなくなってしまうではないか!? よりにもよってこの人に――いや、違う。このようになる流れも含めて、かなでさんがそうするであろうことを見越しての行動だったのだ。やはりげに恐ろしきはその智謀。
「孝平君……本当なの?」
ああその純粋な眼差しが俺には痛い。だからといって否定も出来ない。ここで付き撥ねれば伽耶さんは大いに傷つくだろう。どうしてだろうか、俺はそれが堪らなく嫌だ。そして伽耶さんが慕ってくれているという状況をも手放したくは無い。そう、ここはいっそ認めよう。ああ俺はロリコンかもしれない。もとい男は例外なくロリコンだ。他人に頼ることもせず孤高に生き抜いてきたこの人が、俺に何の躊躇もなく寄りかかってくるのだ。クーデレもツンデレも入り混じった伽耶さんが――ツンの時期もクーの時期も極端に短かったが――華奢な体で俺を頼っているのだ。ここを助けずいつ立ち上がるのだ。
「こーへー。さっきは冗談だと思って流したけど……どういうこと?」
何時になく真剣なかなでさんの声。低くもなく冷淡でもない、ただただ問いかけるだけのその言葉に薄ら寒いものを感じる。
「陽菜ちゃんを捨てるの……?」
「へ?」
いつからそのような展開に? フラグを立てた覚えなぞありませぬが?
「私の前で誓ったのを忘れたの!? ヒナちゃんを幸せにしますって!!」
「いつです!?」
いや、そんなことを言った覚えなど無いはずだ。もしかしたら似たようなことを言ったかもしれないが、深い意図はなかったはずだ。
「は・せ・く・ら・く・ん? まさか二股どころか三股なんて真似、してないわよね〜?」
「え、ええ……そのつもりですが……」
ってか三って誰? 伽耶さんに、おそらく流れ的に陽菜。とすると…………ご自分も加えられてますか?
「ふふ……見苦しいわね、千堂さん」
「誰!?」
もぞもぞと反転する副会長。そんな様子を嘲笑うかのように入り口に寄りかかっていたのは紅瀬さんであった。手に持ったカップを口に運びながら、優雅に微笑んで見せた。
ちなみにカップは一つも減ってはいない。もしやわざわざ自分の部屋から持ってきたのか? なんて暇な人なんだろう……
「紅瀬さん、それは一体どういう意味かしら?」
副会長も威厳を持たせた声で問いかけるものの、如何せん、床に這いつくばったままではどうしようもなかった。ってか誰か解いてあげようよ。
「とりあえずその格好もそうだけれど、本題は支倉君のことよ」
突然の名指しに皆の注目が俺に集まるが、紅瀬さんはそんなこと気にも留めずゆったりとした足取りで進んでくる。
歩く、ただそれだけの動作なのに目が離せなかった。まるでモデルのような綺麗な足運び。まったく、美人と言うものは何をするにも格好がつく。
「自分の立場に慢心してるから足元をすくわれるのよ。勝負は状況を把握して、迅速に決めるのが鉄則。それに、フライングなんて無いんだから」
諭すように投げかけられた言葉。それが誰に対してのものなのかを理解する前に視界が覆われた。
「!?」
頬、というにはどうにもギリギリすぎる位置に感じた柔らかい感触。駆け足過ぎる展開に頭が付いていかず呆然としている俺を動かしたのは異様な雰囲気。
「面白いことするわね。支倉君……」
「こ〜へ〜〜〜〜」
「支倉……? どういうつもりだ?」
アウトー!! アウトアウトスリーアウト!!
どうやら審判団の判定はアウトのようです。ええ、見事なまでに満場一致でしたね。
って!? なんで俺なんだよ!? 被害者……ってのはおこがましいけど加害者は明らかに俺じゃないだろ!? おい、ちょっと紅瀬さん!? 何で部屋から出てくの!?
「ふふふふふふふ…………」
けれども聞いてはくれない女性陣。満面の笑みで仄暗いオーラを漂わせる副会長。どこからともなく凶器を取り出すかなでさん。そして幽鬼のようにふらふらと距離を詰める伽耶さん。恐怖のあまりに動くことも出来なかった。
「あ、孝平。なんか起きたらロビーに居たんだけど――」
そんな俺を動かしたのは司の声。即座に弾かれるように飛び出していた。
「――なんでか知らないか?」
「悪い司!!」
入り口に居た司を退け、再び入り口に立たせ廊下を疾走する。最後に聞いた司の言葉は尋ねるような短い声だけだった。
「どきなさい!!」
「へーじ邪魔!!」
「邪魔立てすると容赦はせんぞ!!」
あいつはもう何も言えなかった。部屋から聞こえたのは鈍い音と液体が飛び散る音だけ。俺は耳を塞ぎながら逃げることしか出来なかった。
ただそれでも、紅瀬さんの小さな呟きが聞こえたような気がした。
「楽しくなりそうね」
どうも。個人的にはきりきりが一番だと想います。てか唯ねえ@リトバスとキャラが被るのは俺だけでしょうか?
おそらく明日にはキリ番行くんじゃないんでしょうか。自分が踏んじゃう展開は嫌なんでコメがくるまで待ってます☆
ちなみに見直してないんで、誤字があったらつっこんでねw
元ネタはエヴァンゲリオン、ナギサの、幽遊白書他、多数の提供でお送りしました。
02月18日(月) [ FORTUNE ARTERIAL SS ] # 57 <固定リンク>
- Fortune Arterial 千堂伽耶SS 〜俺の彼女はロリで子持ちで吸血鬼〜
-
「いい加減にしてください」
「!?」
乾いた音が夜の空気の中で響く。
軽く、けれど伝えたい気持ちを籠めて、俺の手のひらが伽耶さんの頬を打った。
「な……」
何が起こったか分からないといった表情で、伽耶さんは暫く俺を見上げていた。
「貴女はもう母親なんです。いつまでも子供のままでいられません」
「…………」
「今までの人生がどれだけ辛かったものだったか、俺には分かりません。
でも、時間は戻らない。あなたが幸せだった、あの頃には戻らないんです」
ゆっくりと、一つ一つの言葉を伝えるように。
次第に、伽耶さんの表情が歪んでいく。
「稀仁さんはあなたが幸せになることを願って珠を作ったんです」
俺の中にある稀仁さんの記憶が呼び起こされる。
彼の伽耶さんを想う気持ち、俺の伽耶さんを思う気持ち。確かに同情から始まったかもしれない。
けれどどこか歪で、それでいて一心に幸せを願った家族の形。それは幸せに飢えていた、繋がりを欲していた俺と同じだったから。
副会長の母親への思慕、会長の行き場の無い感情。伽耶さんのどうしようもない愛情。そのどれもが俺の心を強く打った。
「もし今、伽耶さんが幸せでないなら、彼は悲しみます。それに二人も。もちろん俺だって悲しいです」
周囲を圧倒するほどの気迫は既に無い。外見同様の、とても儚げで頼りない姿だった。
確かに伽耶さんは母親だったが、家族というものを知らなかったのだろう。甘えることも甘えさせることも知らず、ただ憎み憎まれることでしか繋がることができなかった日々。
そうしてやっと一つの区切りを得たのだ。今だけは子供でもいいだろう。
「そうさせないためにも頑張ってみてください。副会長も、きっと貴女と一緒にいてくれます」
そう言って、俺は伽耶さんの頭に手を乗せる。そして柔らかな髪を撫でた。
「う……うぅ……うあああぁぁ……」
俯いた伽耶さんが、堰を切ったように泣き出した。
次々に零れ落ちる涙。堪えようとすることもなく、子供のような泣き声が周囲に響き渡る。
ずっと孤独の中で生きてきた伽耶さん。彼女がこんなふうに泣くのは、何年ぶりのことなのだろうか。
「人の母親泣かせないでよね」
副会長が、紅瀬さんをおんぶして近づいてきた。
「ほら、副会長が見てますよ。子供の前でぼろぼろ泣かないでくださいよ」
「うっ……ううっ…………」
必死に瞼をこするが、絶えることなく溢れ出る雫は留まりはしない。
そんな伽耶さんの頭をゆっくりと、まるで子供をあやすかのように何度も撫でる。
ずっと独りで生きてきた人生に、傍に誰もいないままの人生に、心から安らげる場所を与えよう。
「貴女は独りじゃないんですから」
ただ震え続ける伽耶さんに温もりを与えるように。
「家族ならいるじゃないですか。それもこんなにも貴女を想ってくれている家族が……」
大丈夫。副会長ならいつだって伽耶さんの味方になってくれるはずだ。
「それで足りなければ俺もいますよ」
「うううぅぅ…………」
しゃくり上げながら、肩を震わせ俺の服にしがみつく。その温もりを放さぬように、独りになることを恐れるように。
ただその手を放さぬよう、小さな手のひらで俺を掴み続ける。
俺は自然と、そんな身体に両手を回していた。
伽耶さんが落ち着くように、背中を優しく撫でる。
「本当か……? 支倉……本当に、傍にいてくれるのか?」
俺を見上げるその瞳が、涙で揺れるその紅玉の瞳が、俺の目を一心に捉える。
「ええ」
俺は力強く頷いていた。
間違いない。きっとこれからは副会長と伽耶さんは親子になれるだろう。
「…………………人の母親口説かないでよね」
「へ?」
唐突に副会長は何を言いだすんだ? ここは母子の感動のシーンだろ? なんで俺が口説くとか、そんな変な話になってんだ?
「支倉……いや、孝平。先の言葉に……偽りは無いな?」
「え? あ、はい」
反射的に頷いていた。そしてその言葉の意味を考える前に俺の襟首は引き寄せられ――
「!?」
目の前には伽耶さんの顔があった。
「ずっと……私の家族でいてもらうぞ……」
唇への柔らかな感触と、赤みを帯びた伽耶さんの笑みが頭から離れなかった。
Fortune Arterial 千堂伽耶SS
〜俺の彼女はロリで子持ちで吸血鬼〜
俺たちは大広間に戻ってきた。俺の横には不機嫌な顔をした副会長と、飄々とした様子の会長が座っていた。
そんな俺たちの正面、一段高いところから伽耶さんがこちらを見ていた。
「今回の件……」
伽耶さんが話し始める。
「まあ私にも非が合ったのを認めよう。瑛里華にも…………伊織にも、迷惑をかけた」
「…………」
会長は驚きのあまり固まっていた。伽耶さんが会長の名前を呼んだことに加え、素直に謝罪の言葉を口にしたからだろう。
俺は思わず心の中で安堵の溜息をついていた。さっきは良く分からない展開になっていたが、ようやく本筋に戻ってきた感じだ。
「しかしな……やはり瑛里華が目をつけただけのことはあるな」
うっすらと頬を赤く染め、俺を流し目で捕らえる。
固まる空気。必死で視界から恐ろしい視線をはじき出すものの、ここ数日で格段に高まった俺の第六感が警鐘をガンガンと威勢よく鳴らし始める。
そんな俺の危機をも露知らず、先ほどの現場に居合わせていなかった会長は訝しげに眉をひそめている。
「なに、私もそこまで鬼ではない。まあ吸血鬼ではあるがな」
クスリと小さく笑う伽耶さん。やっぱり大人ぶっているようで子供っぽいところがあるようだった。が、そんな無邪気な子供の悪戯が俺の生死を分ける天秤を司っているわけで。
「瑛里華が孝平のことを思っているのは知っている。血を欲しているのも分かる。だからな、もしもお前が抑え切れなくなったとしたら与えてもいいだろう。まあ…………極稀に相手をするのも許してやろう。稀に、だがな」
そこまで一息で話すと、先ほどよりも強い口調で、けれど茹で上がったように染まった顔ではっきりと断言した。
「しかし支倉孝平は私のものだ!! 絶対に譲らんからなっ!!」
その声量に部屋中で木霊する恥ずかしい台詞。そのあまりの勢いに、部屋が静寂を取り戻すまで誰も口を開こうとはしなかった。
もっとも唖然とするあまり誰も口を開けなかったと思うが。
「えっと……母さん? いったい今のはどういう意味だ?」
おお、混乱のあまり会長が伽耶さんのことを『母さん』って言ったぞ!! 今まであの人呼ばわりだったのに……すごい進歩だ。
――――って、そうじゃなくて。
「意味? 聞いた通りであろう。孝平を私の伴侶とすると言ったのだが」
副会長は相変わらず憤慨したまま。会長は唖然とした表情で俺と伽耶さんを見比べている。
「支倉君……君は何をしたんだい?」
「いえ……ただ副会長たちと仲直りをするよう説得しただけですが…………」
「それが本当なら君は天性の軟派士だ。正直そのスキルを見習いたいね」
やれやれ、とばかりに大仰な仕草で頭を振る会長。おまけで身振りまでつけるサービスつきだ。表情からは俺の言葉を全く信じていないことがありありと見て取れた。まあ俺だって信じられないんだけどさ。
「伊織。そう支倉と堅苦しく呼ぶでない。お前たちの父となるのだぞ」
「父ぃ!?」
思わず叫んでいた。
いや、ありえないから。うんありえない。だって会長の父親って……年上にも程があるでしょ。それに副会長とは同級生だし。あっ……でも同級生の父親か……。昔そんな話が合ったよな……。
学校では同じ生徒会の仲間。支倉君と呼ばれ信頼の眼差しを受けながら一緒に働いている。
しかし一度家に帰ればその態度は一転。俺のことをお父様と慕う美人で器量のよい娘となる。
そして学園の会長であり、生徒の人望も厚い。町の中でも頼りにされている会長は俺のことを父さんと、信頼と尊敬を織り交ぜた声で呼んでくれる。
困ったことがあれば俺のところへ相談に来て、一晩語り明かすこともある。
「ちょっといいかも……」
「何馬鹿なこと言ってるのよ!!」
副会長の鋭い突っ込みが俺の後頭部を打った。
ひりひりとする痛みにようやく現世へと帰還を果たしたマイソウルは、過ぎた願望を抱いた俺に慰めの言葉を掛ける。
「ちなみに、東儀は自然と下に就くことになるな」
「東儀、ってことは……」
東儀先輩と白ちゃんが……俺の下に!?
成績優秀、眉目秀麗。完璧の名の下に冷静冷徹な仕事ぶり。クールダーティーと称すべきあの東儀先輩が俺の下に就く。ああ、なんて素晴らしいことだろう。先輩ならばきっと完璧な秘書になってくれるに違いない。一を言う前に十の仕事を終わらせ、より俺が上へと立てるように手はずを整える先見の明。あの人が俺の片腕ともなれば、まさに片手団扇と言うやつだ。
というか、東儀家の上=実質上この島の主?
さらにさらに白ちゃんまでセットとなれば、俺の人生まさに勝ち組。朝昼晩いつ見てもあの子が傍にいるなんて……飛びたて、俺の妄想!! 羽ばたけ俺の欲望!!
「消・え・な・さ・い!!」
やっぱり過ぎた願望は良くありませんよね、はい。
なんてことを思うまもなくフライアウェイ。捻りを加えた横っ飛び、体操王国ニッボン復活!!
ノーモーションからの肘鉄を食らった俺は、三回転の捻りと共に後方五回転宙返り。壁に見事に人型を残しながらめり込みました。ああ、流石は半吸血鬼。人智を超えたダメージにも見事に対応しております。
「って、普通死ぬだろっ!?」
何とか壁から体を引き剥がし、衝撃の発生源に抗議を申し立てる。
けれども副会長は未だご立腹の様子で、美貌を引き締めた三白眼で俺を睨みたてる。
「ふふ、親子喧嘩とは微笑ましいな」
どこがですか!? とは叫べない俺のチキンハート。この場で一番立場が弱いのは誰かと自覚している身ではどんな挑戦も無謀に終わる。できることと言えばささやく様な質問に他ならない。
「あの……伽耶さん?」
「孝平よ。そう他人行儀な呼び方をするでない。同じ支倉と名乗る者同士だ。伽耶で構わん」
ますます痛くなる部屋の空気。揶揄するようで微妙に棘の篭った会長の視線。隠し切れない怒気を籠めた副会長の嘲笑の視線。なんとかこの空気を換えなければ。俺の寿命はただいま石臼で挽かれるように目に見えて減っている最中です。
「その、伽耶……さんが支倉と名乗りますと……千堂の名前が廃れてしまうのではありませんか?」
正面からのプレッシャーで呼び捨てにしようとし、隣からの殺気に思わずさんをつけてしまった俺。多面攻撃に挫けそうだけれど、言っていることには間違いはない筈だ。伽耶さんだってそのことに気がついたようで、考えるように数度頷いている。
「孝平よ。そのことについては問題はない」
しばしの間を挟んだ後、そう言って俺たちへ順に視線を送る。
「お前たちは皆支倉と名乗れ」
…………へ?
「それに合わせて、千堂家もこれで終わりにする」
「ちょっと、伽耶さん!?」
「黙れ」
黙れって、俺の意見は無視ですか!? 思いっきり当事者なんですけど。で言うかこんなトコだけ本筋に持ってかなくてもいいでしょ!?
「待ってください!! 私は納得できません!!」
副会長が勢いよく立ち上がる。
「お母様は私たちに支倉を名乗れと言うのですか!?」
「嫌なら構わん。残ったもので再び家族を作る。しかし――」
含みを持たせた笑み。思わず副会長は身を引きかけるが、そこは意地なのだろう。踏みとどまると真っ直ぐに伽耶さんと対峙する。
それが掌の上だということもしらずに。
「――お前は支倉の性を受けることを拒むのか? 支倉瑛里華よ」
「っ!?」
その反応は顕著だった。電気が流れたかのように震え、そして硬直。
真っ赤な顔でちらちらと視線を送る副会長。擬音が聞こえそうなほどにぎこちない仕草は誰が見たって平常には見えなかった。
「もう一度聞こう。嫌なのか? 支倉瑛里華」
「そそそそ、そうね。べ、別に嫌って事はないんだけどね? その、なんて言うか……支倉君がどうしてもってお願いするなら考えないこともないわよ」
「ステレオタイプだなあ……」
感慨深げに苦笑をもらす会長にも、よく分からないことを言い出す副会長にも、『なんだそれは』と思わずにはいられない。
大体俺はちょっと待ってくれと言っているだろう? それがどうして俺が頼んだことになるんだよ。
まあ悪いとも言ってないんだけど。
「しかし瑛里華が良いと言うのであれば話は決まったな。孝平も良いであろう?」
良いであろう? って、選択肢は無いんでしょう……?
「待ってください!!」
しかし女神は現れる。このままでは強制的にエンドまっしぐらの俺を颯爽と救ってくれる副会長。ただし戦女神ですけど。
けれどそんなことはモウマンタイ。この窮地を救ってくれるのならば構わない。今副会長が輝いて見えます。立った……俺のフラグが立った!!
「苗字のことはまあいいでしょう。けれどお母様と支……孝平君とでは無理があるのではないでしょうか?」
おいおい副会長殿。何か衝撃的な発言がありませんでしたか!?
「……無理とは?」
そしてもう一つの発言に不機嫌極まりない気配を漂わせる伽耶さん。
「そんなことも分からないんですか? まず年が違いすぎます。一回りどころか十世代ぐらい違います。ギネス記録でも残すおつもりですか? それに世間の目も考えたらどうです?
で・す・か・ら、孝平君と同世代である私のほうが相応しくはありませんか?」
爆弾発言キタよコレ!! 頼みますから挑発しないで下さい。貴女たちの親子喧嘩はしゃれにならないんですから。
「いやぁ、女の戦いって怖いね。支倉君も気をつけないと。女性に手を出すときは一人ずつが定石だよ」
くそぅ、一時間前なら全く持って関係ない話だと一蹴できたのに、どうしてこんなことに。
そんな俺の声泣き叫びとは無関係に苛烈してゆく修羅場。
「ふ……何かと思えば。そんな心配など無用だ」
女性に年齢を聞くのはやぶさかではありませんが、それでも気になってしまうのは仕方ありません。俺だって気にします、うん百歳差もあれば姉さん女房なんてもんじゃありませんよ?
「愛し合うもの同士、そんな無粋なことは関係あるまい。加えて私の体は十台の前半で止まっておる。お前より余程若いわ。そもそも瑛里華よ、最近肌の乾燥が気になってきたのではないか?」
「でででっ、でも!! 孝平君は人間よ!? それでも良いって言うの!?」
副会長よ、それはあんたにも言えることだぞ? そこまで焦るなんて……もしかして図星だったのか?
「構わん。それにだ、孝平はもう人間などという詰まらん枠など、とうに超えておる」
「え?」
思わずユニゾンする俺と副会長。会長も興味を持ったように僅かに身を乗り出す。
「孝平の中にある珠だがな、先ほどまでは満足な効力ではなかったが、今は不完全ながらも珠としての効力を発揮しておる」
「で、ですがそれは運動能力が上がる程度のもので……それにあくまで人間の範囲内のはずです……」
「不完全、と言っておろう。確かに身体能力は人間の範囲内だ。がしかし、機能としてはヒトのそれを超えておる」
「と、言うと?」
会長の続きを促す問いかけに小さく頷く。
「代謝に関する機能の向上――つまりは不老、と言うことだ。あくまで不老であって不死ではないがな。まあ小さい怪我ならすぐに治るだろうが」
さらに爆弾発言来ました。驚愕の事実がさらっと伝えられてしまいました。
「なるほど。つまりは『獣』を押さえ込む代わりに、埒外の運動能力は保持していない。けれどもその新陳代謝は吸血鬼として維持したまま。よって半永久的には死なないわけだ」
「な……何なのよそれは……」
思わずよろめく副会長を支える。ショックを受けたいのはこちらなのだが、副会長の様子を見ているとどうにも落ち着いてしまう。これはあれだ、周りがパニックになるとかえって自分は落ち着いてくるという奴だな。
「ああ、言い忘れてたがな、お前たちの珠を消すこともできるぞ?」
「消せる……珠が!?」
それはつまり、俺も普通の人間に戻れるということなのか!?
「だが、私が消せるのは父様にもらった珠だけだ。孝平の珠は諦めろ」
持ち上げられて落とされた!? ってかつまり、副会長は元に戻れるけど俺はそのままってことか。
「お前たちは人間として平穏な暮らしをするがいい。私は孝平と永遠に幸せに暮らすとしよう」
「お断りします!!」
ノータイムで返された返事。それに便乗するように会長もこのままでいいと宣言した。
俺には俺で責任がある、とかカッコいいこと言ってるけど俺は分かってますからね!! 東儀先輩のこととか匂わせてるけどその方が面白いからでしょ!?
「さもあろう」
そんな二人の返答を予想していたかのように喉を鳴らす。残念ながら俺には副会長が断った理由が理解できないが。
「とりあえず今日は疲れただろう。ひとまず帰るがよい」
なんら問題は解決していないが――いやいや、一番の問題は綺麗さっぱり片付いたのだが何の遺恨も残さず、と言うわけにはいかなかった。
明らかに楽しんでいる会長と明らかに怒っている副会長。俺はこの先どうするべきなのだろうか。問題は山済み、それを単に棚上げしただけなのだ。
「ちなみに孝平よ。お主はこちらに住むつもりはないのか?」
「駄目駄目駄目駄目駄目、絶対駄目!!」
どっかにお住まいのお方のように駄目を連発する副会長。俺は暴力至上主義の先頭民族の一人称でも連呼するべきか?
「ここから学園は遠いでしょ!! 孝平君は寮に住むべきです!!」
そう言い放ち、もう用は無いとばかりに俺と会長を引っ張っていく。
やれやれとばかりに苦笑する会長。そして有無を言わせぬまま口を塞がれ引きずられる俺。けれども向上してしまった俺の聴覚は不穏な呟きを捕らえていた。
「ふむ……通い妻も悪くはないな……」
本編やってる最中に思いつきました(*´・ω・) やっぱこういうキャラについつい目が行っちゃうんだよね。ちなみに次に気に入ったのは 紅瀬さんでした。個人的には黒髪ロングのキャラがお好きなもので。例えばD.C.の人とかくじらの人とか
……曲芸ばっかw
後はショコラの人とか青空の人とか。
……今度は戯画ばっかだしwww
まあいつ空の人とか、はぴねすの人とかも好きだし、あえかなの人とかつよきすの人とか……正直書ききれんw
ともかく最近はいいペースで更新できてるかな。クオリティーのほうは相変わらず誤字脱字が減りません。(⊃Д`。)゜ ちゃんと見直してるんだけどな……↓
そうそう、余談ですが最近は『さくらシュトラッセ』をプレイ中。
今のところ魔法よりの二人をやって、前作とは違ってキャラゲーなのかな? と思いました。
正直全く感動しなかったw
でもね、最近の個人的クーデレランキングに変動が起こりました☆
1位 EF:エウレッタ → さくらシュトラッセ:ルゥリィ
やっべーよ……悶えるよ (´△`)
次回はクラナドIFの予定。
さ〜て、次回も見てくださいね♪
じゃーんけーんぽん!
うふふふふ。 (国民的アニメよりw)












