隠れオタでもいいじゃないか

主にPCゲームの二次創作を書かせていただいています。  あとは最近やっているゲームやら読んでいるラノベやらのこととか……。

「それは舞い散る桜のように完全版」2008年10月30日発売

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  [ 藤浪朋子 SS ]   # 11  <固定リンク>

それはすぐ傍に(5)
                        (5)

 あの雪国を出てからどれだけの月日がたっただろうか。
 季節は冬。次々と舞い落ちる淡い結晶を見ていると、不意にあの邂逅がつい昨日のことのように湧き上がってくる。
 訂正。不意に、というのは少し違った。
  いつもあの病室での出来事を考えている。
 そっと目を閉じれば、あの人のことを鮮明に思い出せる。
 人生に数回あるだろう分岐点。私にとってはそれがあの人だった。
 あの日以来、世界が違って見えた。
 この頬を撫でる粉雪もその一つ。
 あの狭い世界の中では雪の冷たささえも知らなかった。
 外の出来事だと傍観を決め込み、触れようとはしなかった。
 でも今は違う。その世界に降り立ちその全てに触れることが出来る。
 この世界で精一杯生きて生きたい。

 あの人は自分の道を信じ、真っ直ぐに歩いていくだろう。
 私もそうでありたい。
 もう会うことは無いのかもしれない。
 でも運命というものが確かに存在するのならば、あの人との出会いはまさにそれだったから、もう一度、会うことも出来るかもしれない。
 会うことがなくても、あの人へ手紙を送ることが出来るかもしれない。
 きっとあの人は夢を叶えるだろう。
 彼ほど雄弁に、そして真摯に、世界の美しさと本質を語ることができる人がいるとは思えない。
 私と同じように多くの人が彼の絵に感銘を受けるだろう。
 そうなったとき、私は彼に感謝の気持ちを伝えたい。
 言葉ではなく、生き方そのもので彼に伝えられればいい。
 そのためにも今私に出来る最大限の努力を。
 今は勉強をしよう。出来る限り他人から認められるように努力しよう。他人に優しくあろう。それが今できること。
 あなたのおかげで今の私がいる。そう伝えるために。
 そのために毎日を幸せに過ごそう。


 今日の目覚めはいいほうだった。
 手早く着替えて学校の準備。
 転校してから少しだけ友達も出来た。
 私にしてはかなりの進歩だと思う。

 今日も学校への道のりを歩く。
 激しい運動は出来ないけれど、それでも毎日が楽しい。
 体のせいで友達に迷惑をかけているけれど、気にしなくていいと言ってくれている。
 ずごくうれしかった。

 月日は驚くほど早く進む。
 明日は遠足だ。
 バスで行くためそれほど付加がかからないとのことで、医者も許可してくれた。
 期待に胸を膨らませて布団に入った。
 けれどその期待はあっけなく潰えてしまった。
 その夜突然発作に襲われた。
 入院だった。
 痛みよりも悲しみのほうが強かった。


 一週間ぶりに学校へ行くとみんな心配してくれた。
 行けなかったことは悲しかったけれど、また機会があると励ましてくれた。
 沈んでいた気持ちが戻ってきた。


 けれどそれは一度では終わらなかった。
 それからというもの、行事と名のつくものに参加することは一度としてなかった。
 繰り返し襲う胸の痛み。
 私が何をしたというのだろうか。
 分からない。分からない。

 夕方。
 その日私は学校に忘れ物をしたため、教室へ取りに戻っていた。
 その途中に聞いてしまった。

――朋子ちゃんといると疲れるよね――
――先生に言われて話しかけてあげてるけど面倒だよね――
――あの娘のせいで周りが暗くなるんだよね――

 それからどんな行動をとったのかよく覚えていない。
 ただ気が付けば自分の部屋にいた。


 どうしてだろう。あれほど輝いていた景色がくすんで見えた。
 世界が信じられなくなってしまった。
 世界は本当に優しいのか、それとも冷たいのか、私には分からない。
 唯一つ信じていること。少なくともあの病室での日々は確かだった。
 では世界は、と聞かれれば沈黙を返すしかない。
 だから私は他人との距離を測りかねている。
 それが伝わったのだろうか。それからというものクラスメイトとの距離が少しづつ広がっていき、卒業する頃には誰とも話すことはなくなっていった。


 両親に中学は私立を受けたいと話した。
 二人は学校でのことを知らない。そのため友達とは離れてしまう等のことを言われたが、最終的には許可してくれた。
 友達などいないのだから別に構わない。
 それよりも早く大人になりたかった。
 彼に自慢できるような人間になりたかった。
 けれどそれも叶わなかった。
 受験の前日、私は入院した。


 結局進学したのは公立の中学校になった。
 そこからは言うまでも無い。
 友達など出来なかった私は、いつも一人だった。
 イベントに参加しようとも思わなかった。
 出来るとも思えなかった。
 希望はいつも虚しいものだから。
 高く積み上げた塔はいつか崩れ去る。ならば初めから積まなければいい。
 未来に目を向けることは好きではない。あるかどうか分からないものだから。
 私が思うのは懐かしい過去。幸せな思い出。

 あの冬の街の出来事だけが私の支えとなっていた。
 彼の笑顔はいつでも思い出すことが出来る。
 彼の優しさはいつも私を助けてくれる。
 だからだろうか。
 高校を選んだあの時。
 パンフレットに描かれていたその絵を見たとき、心が動かされた。
 彼の絵に良く似ていた。
 暖かさが心に直接伝わってくるようだった。
 迷うことはなかった。
 特に調べもせずその学園に決めたの。
 聞けばそこはいわゆる名門校というものだった。
 スポーツと芸術、共に力を入れていて、特に美術部は全国区の腕前をもつ人たちが集まるとのことだった。
 名門校だけあって偏差値もかなりのレベルだった。
 だが幸いというべきか、友人もいなく部活などもやっていなかった私のすることといえば、勉強か読書、あとは散歩といったものしかなかったため、自然と学力は身についていた。
 まあ予想通り、何の問題もなく合格することが出来た。


 4月。
 桜に導かれるようにして、学園へと続く坂道を踏みしめるように登っていた。
 次々と舞い落ちる花弁を見ながら思い出すのは幼い日。
 そのときは雪であったが、その美しい景色を見た感動は変わらない。
 この景色もいずれ日常になっていくのだろうか。
 そうなるまで通えるのだろうか。

 希望と諦め。期待と不安。その他もろもろの感情。
 自分でも分からないような混ざり合った感情を抱えながら正門へたどり着いた。
 これから通うことになる校舎を見上げながら小さく呟く。
「……撫子学園か」
 髪をなびかせる心地よい風を感じながら私は思う。
 決して祈りはしないけれど。
 それでも幸せになりたいと、あの頃のように幸せでありたいと、そう願う。
 そんなささやかな願いを叶えるために、私はまた一歩を踏み出す。

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それはすぐ傍に(4)
                        (4)

 どれほどの時間が過ぎたのだろうか。
 まだ夜も明けておらず、辺りは静寂に包まれていた。
 薄く灯る院内の明かりと窓から差し込む月明かりとが、朧ろげではあるが廊下を照らしている。
 頼りなく灯る光源はまるで私の心を映し出したかのようだ。
 肩から落ちかけたショールをかけなおしながら、何度目になるか分からないため息をついた。
 目の前にあるのは病室のドア。
 病人なのだから病室に入る。別段おかしいことではない。それが自分の病室で無いということを除けばだが。

 今私がいるのは隣の病室。暗くてネームプレートは良く見えないが、間違えるはずは無い。

 例の娘の部屋だ。

 おにーちゃんの一番。
 あの人がここに来る理由。

 緊張をほぐすために、何度目になるか分からない深呼吸を繰り返す。
 さっきから心臓がうるさいくらいに動いている。まったく、弱っているとは思えないほどだ。
 自分がこれほどまでに臆病だと初めて思い知った。
 緊張のあまり固まっていた拳を開き、汗で湿った手のひらを服で拭う。
 覚悟を決め、そのまま取っ手をつかんだ。
 ひんやりとした感覚に、まるで入室を拒むかのような雰囲気を覚えた。
 だからといってここまで来て引き返すつもりも無い。
 力を込め――しかし音を立てないように極力注意して――思い切ってドアを引いた。
「ひゃっ!! 」
 静まり返った空間では些細な音でも響き渡って大きく聞こえる。それが音に敏感になっているときならなおさらだ。
 予想以上に大きな音を立ててドアがスライドしたために、なんとも情け無い声を上げてしまった。
 今ので起きてしまったのではないかと心配になったが、どうやらそれは杞憂に終わったようだ。誰かが動いたような気配は無い。
(おじゃましま〜す)
 心の中で小さく唱えながら足を踏み入れた。

 最初に受けた印象は暗い部屋。
 光源がどうのこうのというわけではない。むしろ長時間暗闇の中にいたことで目が慣れ、加えて雲の合間から漏れた月明かりが薄く差し込んでいるため、部屋の様子が鮮明に見て取れる。
 この部屋には重い空気が沈殿している。
 病院に長くいる私には良く分かる。
 重い病にかかった人たちの部屋と同じ。暗く、悲しみに満ちた雰囲気が漂っている。
 明るい色――特に赤系の色がまったくといっていいほど見当たらない無機質な部屋。

 そんな牢獄のような特殊な空間の中、部屋の主はそれよりなお際立っていた。

 初めからそこに居たはずなのに、そこにいる気配がなかった。
 ベッドの上。彼女は上半身を起こし虚空を見つめていた。
 思わず息を呑んでいた。
 まるでそこに一枚の名画があるかのようだった。
 月光を一身に受け、ぼんやりと浮かび上がるその姿は、自分と同じ人間だとは思えなかった。
 空調により柔らかく揺らめくその髪は、闇夜に浮かぶどの光よりも美しく、金糸のように光輝を放っていた。

 少しずつ、月にかかっていた雲が途切れるごとに彼女の姿が鮮明に浮かび上がってくる。

 窓から注ぎ込む光が増えるほどその美しさが一層栄える。
 虚ろな視線とは対照的に、澄んだ瑠璃色の瞳。
 肌は外界に広がっている雪のように、血の気を感じさせない病的なまでの白さ。
 まるで作られたかのような顔のパーツの配置。

 その全てが彼女をこの世の存在では無いかのように思わせる。
 まるで触れてはいけないかのような。
 まるで近づいてはいけないかのような。
 彼女を意識する、それすら禁忌とされているかのような錯覚さえ覚えるほどだ。

 彼女に見入っていた時間はどれほどだっただろうか。
 まるで魅入られていたかのように立ち尽くしていた。
 こちらに気づいていないわけでは無いだろう。ドアを開けたときにも起きていたはずだ。
 しかし彼女はここではないどこかを見ているかのようだった。
 心がどこか別の場所に囚われている、あるいは奥底に沈みこんで閉じてしまっている。
 初めの印象どおり、確かにここは牢獄なのかもしれない。

 私は意を決し数歩、彼女へと近づいた。
 ぺたぺたと場違いなスリッパの音だけが、静寂の中で存在を主張する。
「こっ、こんばんは……」
 出来る限り明るい声で呼びかけたつもりだが、緊張のあまり消え入りそうで、震えた弱々しい声しか出なかった。
 そのためだろうか、彼女に届いた様子はなかった。
「こんばんは」
 もう一度。今度はちゃんと言えた。もっとも声が小さいのは相変わらずだが。
 しかし珍しく自分から声をかけたにもかかわらず、相手からの返事はなかった。
 いや、それどころか反応すらなかった。
 私が部屋に入ったときから変わらず、視線は虚空を捉えたままだった。
「ねぇ、聞いてるの?」
 少しムッとしたが、それを抑えて話しかけても全くの無反応。
 どれだけ話しかけても無駄だった。それどころか身体を揺すっても何の反応もなかった。
 まるで外界との接触を身体が拒否しているかのようだった。
 私は途方にくれて立ち尽くしていた。
(おにーちゃんはいつもどうしているんだろうか)
 ふと、毎日のように彼女に会いに来ている男に人の姿が浮かんできた。
 私と同じように、おにーちゃんに対しても無反応なのか、それとも逆に楽しそうに話すのだろうか。
 前者だったらおにーちゃんがかわいそうだ。
 毎日来ているというのに何様のつもりだ、といってやりたくなってくる。まあ人のことをいえた義理ではないが。
 後者であっても嫌な感じがする。
 おにーちゃんを独り占めされているかのような、胸の奥がうずくような感覚に襲われる。
 どちらにしても許せなかったし、同様に羨ましかった。
 まあ彼女から見れば逆なのだろうが、それでも嫉妬心が収まることはなかった。

 ――ふと視線を感じ顔を上げると、いつの間にか彼女がこちら方を見ていた。
 先ほどと同じような虚ろな瞳を、今度はこちらに向けている。
 その焦点は私を見ているようで、私に合ってはいるわけではない。
 まるで私の心の中を見通すかのように、真っ直ぐとこちらを見ていた。
 一瞬だけ、じっとこちらを見続ける瞳の中に、微かに悲痛の色が混じっているかのように見えた。
 恥ずかしかった。
 彼女にも悲しいことがあったのだ。そんなこと分かりきっていたのに。私と同じように――いや、それ以上に心が沈んでいると以前にも感じたはずなのに。
 なのに私は彼女が羨ましいと、妬ましいとおもってしまった。
 そんなことを思ってしまった自分の心が、そしてそんな気持ちを見られてしまったことがたまらなく恥ずかしかった。
 気が付けば私は逃げるようにして病室を飛び出していた。

 布団にもぐりこみやっと安堵の息をつくことができた。
 今になって思ったがずいぶん思い切ったことをしたと思う。普段の自分なら絶対にしなかっただろう。
 それは今日が最後になるからだろう。
 あと数時間、半日もたてばこの街ともお別れだから。



 それは本当に突然だったとしか言いようが無い。
 夕方。いつもの訪問者が帰った後、両親が面会に来てくれた。
 最近はよく私に笑顔を見せてくれるようになった。向こうから言わせ れば私が笑うようになったからだと返すだろうが。
 初めて両親に『ありがとう』といったときは思いっきり泣かれてしまった。あの時は泣き声を聞きつけた看護師さんたちが私が倒れたと勘違いして大変だった。
 本当に恥ずかしい思いをしたが、それだけ両親が私のことを思ってくれていたということも感じられてうれしかった。
 二人とも疲れているだろうがそんな様子は微塵も見せず私の話し相手になってくれた。
 そんな会話の中から出た何気ない一言。

 ――家に帰る――

 ある程度予想はしていたとはいえ、さすがに動揺はした。
 もともとこっちには親の仕事の都合できただけだ。私はそれに付いてきただけ。
 ならばその仕事が終われば元の場所に戻るのもまた道理。

 でも、何で今なのだろうか。

 こんなことならもっと早く仲良くなっておけばよかった。
 ――後悔先に立たず。
 ――大事なものはなくしてから気づく。

 先人たちも言ってくれる。まさに今の私の状況に相応しい。
 どうやら明日の午前中には病院を出るらしい。
 急な話ではあるが、私に決定権があるわけではない。ここで私が行きたくないと言ったところでどうにかなるわけでもない。しいて言えば両親が困るというだけだ。
 だからといって素直に返事をすることも出来なくて。
 私は曖昧に頷くことしか出来なかった。

 それから夜まで、いろんなことが頭の中をぐるぐるとめぐっていた。
 まあいろんなことと言っても大概はあの人のことだったけれど。
 残りは隣の病室。
 せめて一度くらい会っておきたかった。
 おにーちゃんの一番。それがどんな人なのだろうか。
 今まで避けていたことではあるが、そろそろ自分の気持ちにけりをつけなくてはいけない。
 どの道この気持ちに選択肢が用意されているわけではない。唯一あるのはどのように諦めるのかというただ一点。
 会ってはっきりさせよう。そう思い立ったのが日が沈む頃。
 けれど対人経験の無い自分が、いきなり見知らぬ人間と会って何を話せばいいかも分かるはずがなく、結局夜半過ぎまで悶々とずごしていた。
 結局、直接話すことも出来ないから、せめてどんな人なのかしっかりと見ておこうと思った。
 その結果がこれなのだが。


「まったく、どうしようもいな……」
 空を見上げながらポツリと呟いたのは誰に向けた言葉だったのだろう。
 変えられない現状に。
 勝ち目が無い対戦相手に。
 優しすぎた鈍感なあの人に。
 そして臆病だった自分に。
 名残を惜しむように空に浮かぶ月を眺めていた。


「おっはよ〜ん。今日もいい天気でーす。て言っても雪ですケドね〜。ではでは、寝起き一番ドッキリターイム!! せくし〜な朋子ちゃんの寝顔を拝見させていただきましょうか!!」

 ……まったく、この人はここをどこだと思っているのか。
 普段からローテンションな私には、朝からこの人に付き合う余力は無い。
 そんな恨みのこもった突き刺さるような視線を受けても、この看護婦(看護師ではなく看護婦だと力説している担当の人)は浮かれたように歩き回っている。
「……何してるんですか」
 よく分からない行動をする妙齢の女性は踊るようにターンを決めると、感慨に浸るように応えた。
「う〜ん、なんて言えばいいのかな。朋子ちゃんとも今日でお別れってことは、つまりこの空間とも今日で最後になるわけで。まあ心に刻み付けておこうって思ってね」
 その言葉に半分眠っていた脳がたたき起こされた気がする。
 そうだった。今日の午前中でここともお別れ。ここにいる人たちともお別れ。そしてあの人とも。
「だからついつい空回っちゃってね。自分でも割り切ってるつもりなのに、それでもどうしようもないものもあるのさ。だから最後は楽しく分かれたいと思ってね……」
 急にこみ上げてくるものがあった。
 分かれは辛い。そんなことさえも忘れていた。
 他人を拒絶するようになってから初めて覚えた感情だった。
 何か言いたかったけれど、ここに来て私の頭は働くことがなかった。
 何か言いたかった。けれど何も言えなかった。
 それでも彼女は私の心の声が聞こえたかのように、優しく微笑みながら頭を撫でてくれた。
「ここは病院で貴方は患者。別れは喜ぶものであって惜しむものではない。そう、言われてるんだけどさ。やっぱ辛いものは辛いんだよね、私も。だから朋子ちゃんの気持ちも伝わってくるんだ……」
 ぎゅっと身体を包むその温もりが、言葉にならない気持ちを雄弁に語っていた。
 だから私も強張っていた両腕を、今だけは離したくないとしっかりと握り締めた。
「私は結婚もしてないし子供もいないけどね、患者はみんな私の子供みたいなものなんだ。だから親離れしていくのを見るのは嬉しさ半分、悲しさ半分。貴方にできるのは元気にここを出て行くことだけ。わかった?」
 優しく見つめる瞳は、まるで母親のようだった。
 私は返事をすることも出来ず、ただ頷くだけだった。
 思えばこの人はここに来てから一番長く居た人かもしれない。いつも私のことを見ていてくれた。どれだけ突き離しても笑いかけてくれた。
「あの……ありがへぷっ」
 誰かの手が私の頭をはたくようにして押さえつけた。まあ誰かは分かってはいるが。
 その犯人はさっきまでの切なげな表情をどこに置いてきたのか、一転して笑顔になっていた。
「暗いムードはここでおしまいにしまして。それでは例の彼との状況を語ってもらいましょうか。で、あの人はなんて言ったの? 朋子ちゃんはなんて言ったの? 離れたくないって? 遠距離恋愛開始とか? もしかして一緒についてくるとか?」
 壊れた蛇口のように話し出した看護婦と距離を置いてため息をついた。
「なーにーよ〜。まるで『まったく、こいつは患者をなんだと思ってるんだ。他人のプライバシーに突っ込みすぎなんじゃないのか?』みたいな顔してさ〜」
「……言いたいことが分かってるならその通りにしていただけませんか?」
「ついでに『顔も性格も良くて看護婦っていう萌え属性まで持ってるんだから彼氏作りましょうよ。なんなら私のおにーちゃんとかどうですか?』って言いたげな顔してさ〜」
「そんなこと1ミクロンも思って無いしおにーちゃんは私の彼氏じゃないし譲るつもりも無いの!!」
 思わず反応してしまった。目の前には例のいたずらを思いついたかのような、猫っぽい顔をした女性が控えている。
「ったく、さっきまでの雰囲気はどこにいったんですか」
「いや〜、私はシリアスなキャラじゃないからね。わたしは30秒しか真面目になれない人間なのだ。それ以上は危険だってカラータイマーが警告するのですよ」
「どこぞの超人だってもう少しがんばりますよ。だいたい自慢できることじゃないですよ」
 そうだっけ? と笑いながらパイプ椅子を引きずり出し、私の横に静かに腰掛けた。
「まあそれは置いておいて、実際のところ別れの挨拶はしたの?」
誰に、とは言わなかったがそれが刺す相手は一人しかいない。
「挨拶は、しないつもりです。午前のうちにここを出て行くからどっちにしても会えないから」
「それでいいの? 後悔すると思うけどな」
「後悔なら昨日のうちにもうしました。もうやることもありません。絶つ鳥跡を濁さず、敗者は黙って去るものです」
「なんか変なところで大人なんだね〜。そこは涙ながらの別れをして、大きくなったらまたいつか会おうって感じになって、最後はゴールインってのがお勧めルートなんだけどな〜」
「なんのルートよ……。とにかく全部済んだ事だからいいの」
「ほんとに? あの子ともう会えないかもしれないんだよ?」
「もう会えないからです。そんな人間から何を言われたところで重荷になるだけです。それに私は十分だから。次はあの娘の番」
 そう、私はもう助けてもらったから。次はあの娘が救ってもらう番。
「そっか。ならもう何も言わない。にしても強いね〜、朋子ちゃんは」
「強くなんかないですよ。おにーちゃんのほうがずっと強いですよ」
「はいはい、のろけは結構。さっさと荷物まとめちゃいましょうね。私も仕方ないから手伝ってあげるよん」
「……サボってないで仕事してくださいよ。それにもう少ししたら両親が来るから大丈夫です」
「なーに言ってんの。患者を見送るのが担当の仕事。ほら、さっさとやっちゃおうよ」
「あっ――」
 私が何か言う前にさっさと仕度を始めてしまう。
 まったく。おにーちゃんも、両親も、この人も。
 みんながみんな、人の話を聞こうとしない。それなのにいつも私のことを考えてくれている。
 この世界は思っていたより優しいのかもしれない。

 時間はあっという間に過ぎていく。
 気が付けばもうここを出て行く時間だ。両親は医師の人たちに挨拶に行っている。
 一人、ロビーで何をすることもなく目を閉じている。
 それだけでここに来てからの事が思い出される。特にこの二週間あまりのことが。
 私の世界はぐるりと一変した。もちろんいい意味で。
 新しい世界へ、箱にはの外へ足を踏み出す。
 多くの人に見送られながら、多くの人に迎え入れられる。
 その全員が私のことを思っていてくれる。
 だから期待を胸に、足を踏み出すことが出来る。
 だって、世界はこんなにも鮮やかに色づいているのだから。

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近況報告
どうも〜。SSも全体の3分の1ぐらい進んできたかな? と思う今日この頃。
 結構見切り発車で書き始めたのでこれからの内容について考えています。とりあえず今週中にアップできればと思います。出来る保障はありませんが……

一応学生の身なので単位の心配もありますが、なんとか乗り切れそうです。
 山場が過ぎればひぐらしを買う予定です。というより既に予約済みです。PC版も持ってますが、絵とシナリオが大分良くなっていたので即決ですw

今は部活が忙しいんであまり更新できないかもしれません。

 まあネタが突如天から降ってくるのを期待しています。

  [ 藤浪朋子 SS ]   # 8  <固定リンク>

それはすぐ傍に(3)
                       (3)

 世界がこんなにも色づいているなんて知らなかった。
 ふと顔を上げれば、そこには美しい世界が広がっている。
 本当はそんなことなどとうに知っていたのかもしれない。
 知っていて、気づかないふりをしていたのだろうか。
 どちらでも構わない。
 私は今、とても幸せな気持ちだから。


 今まで避けていたものを受け入れようと思った。ただそれだけ。
 何度も話しかけてくるあの男の人に、こちらから話しかけてあげようと思った。
 きっとあの人は驚くだろう。
 今まで何をしても、ほとんど返事もしなかった。
 こちらから話しかけることなど考えもしなかった。
 でも今日から少しずつ変わろうと思う。

 昨日はこっちから呼びかけてあげた。
 意識が定かではなかったが、私の声は確かに届いたと思う。
 その証拠に私が「おにーちゃん」と呼んであげたらあの人は笑ってくれた。
 やっぱりおにーちゃんにはいつも笑顔でいてほしい。
 あの人の笑顔をみているだけでなんかこう、胸の奥が暖かくなってくる。
 あの真っ直ぐな眼も、思わず見とれてしまいそうになる。
 そういえばおにーちゃんの身体も温かかった。
 大きくてお父さんみたいだった。
 でもおにーちゃんのほうがいい匂いがした。
「おにーちゃん、か……」
 あの人のことを考えるだけで心が満たされる気がする。
 それと同時にそれ以外のことが考えられなくなる。
 本当に兄弟がいたとしたら、こんな気持ちなのだろうか。

 ずっと前から傍に誰かいてほしかった。
 両親は「お見舞い」といえるほどに来てはいない。
 それは、私のせいだ。
 それは、私のためだ。
 だからせめて、兄か姉がいてくれれば。
 誰かが傍にいてくれれば、それだけで良かった。

 それが叶った。

 どんな偶然かは分からないが、あの人は私のことを救いに来てくれ た。
 ただ傍にいてくれただけでは無い。
 世界の素晴らしさ、それを教えてくれた。
 私の世界に色を与えてくれた。
 数え上げればきりが無い。

 この混ざり合った気持ちは言葉では言い表せない。

 会えるのはうれしいけれど、会えなくなるから寂しい。
 けれど幸せな気持ちに変わりは無い。
 早く時間が過ぎてほしい。
 でもいつまでもこの時間が続けばいい。

 この矛盾した気持ちは自分でもおかしいとは思う。
 その中で唯一つ共通している思い。
 早くお兄ちゃんに会いたい。

「ん〜、ご機嫌ね、朋子ちゃん」

 思わず過剰に反応してしまった。
 いつの間に部屋に入っていたのか、隣には私の担当の――名前は覚えていない――看護婦がパイプ椅子に座っていた。
 看護師ではなく看護婦。
 初めて会ったときにそう力説していた。あまりにも長く力説するものだから、記憶に焼きついてはなれな。
 むしろそのせいで名前を覚えていなかったのかもしれない。それほどまでに鮮烈だった。
 そんなことを思い出しているとその看護婦は身を乗り出して顔を近づけてきた。
「何?」
 横目で見ながらそっけなく言うと、その人はにやり、という擬音がぴったりとくる笑顔を浮かべた。
 目を細め唇を吊り上げいたずらっぽく微笑むその顔はなんだか悪戯を思いついた子供のようだ。
 この表情はなんだか苦手だ。嫌な予感がする。
「いや〜、表情がくるくる変わっちゃってさ、見てるだけで楽しくなってきちゃったよ。もうお姉さんめろめろ、って感じ?」
「――――っ!! 」
 ものすごく恥ずかしい。顔に血が集まっているのが分かる。
 穴が入りたいといった人の気持ちが良く分かる。
「あーもうかわいすぎ!!  持ち帰っちゃっていい? だめ? うー残念。でもでも、抱きしめるぐらいならいいよね。ほ〜ら、こっちおいで。こないからこっちから行っちゃうぞ?」
 …………この人はやっぱり苦手だ。
 いつも騒がしい人だけど今日はいつも以上だ。何がこの人をここまでさせているのだろう。
 頭をぐりぐりと撫で回されながらぼんやりと考えていた。
「朋子ちゃん、明るくなったね」
 不意に、そんなことを言われた。
 気がつけば頭に載せられていた手は既におろされている。
 乱れた髪を手櫛で整えながら振り返れば、彼女はいつものようにふざけた表情ではなく、真剣な目をしていた。
「本当に、明るくなったよ。いつも無理して生きてるみたいでさ、見ていて苦しかった。けど私にはどうすることも出来なくて。せめて笑わせてあげたいと思って、いつも明るくしていたんだけど、それでも駄目だった。だからいま笑顔でいてくれて、本当に良かったと思う」
 いい加減に見えて、やっぱり大人なんだ。
 この人も私のためにがんばっていたんだ。
「あの……、ありが――」
「それもこれも大好きなおにーちゃんのおかげかな?」
「なっ――」
「それもそうだよね〜。なんたってかっこいいし、優しいし。そういえば朋子ちゃんが倒れたときは抱きしめてもらったね〜。私は朋子ちゃんの容態も心配だったけど、同じくらいに貞操も心配しちゃったからね」
「ななっ――」
「んん? もしかして二人はもう深〜い関係だったり?」
「ぅ〜〜〜〜っ」
「あれれ? 意味通じちゃった? 朋子ちゃんってば物知りねぇ。もしかして本当に? って、まあさすがにそれは無いか〜。実際あの子、私たちの中でも人気あってさ。実は私も密かに狙ってるんだよね〜。だ・か・ら、おねーさんに譲ってほしいかな、なんてね」
「うぁあ〜〜!! 出てけーー!!」
「え〜っと、もしかして出てったほうがいいですか?」
 思わぬ第三者の声にドアのほうを見れば、入り口で固まっているあの人がいた。気まずそうに私たちを交互に見やり、苦笑いの表情を浮かべている。
「ど、どうして……」
 不意打ちのように現れたあの人を前にして頭が混乱してしまった。
 今日は親族意外は誰も面会できないようになっていたはずなのに、何故ここにいるのだろうか。
「そうそう、さっき下で見かけたから大好きな『おにーちゃん』に来てもらうように行っておいたから」
 …………謀られた。急は厄日に違いない。
 もう恥ずかしすぎて顔も上げれない。穴があったらと言う話どころではない。自分で掘ってそのまま埋まってしまいたい。ついでに叫んで蓋でもしてしまおう。その上から草が生えてきたって知ったところではない。
 …………駄目だ。おかしなテンションになってきた。
「なんだかあの娘は忙しそうだから、追い出されたもの同士仲良くしましょうか。これから長〜い付き合いになるかもしれないからね」
「うるさい!! さっさと出てけー!!」
「やっぱ出てったほうがいいみたいですけど……?」
「だからおにーちゃんは帰っちゃ駄目で、出てくのはそっちの看護婦っ!!」
「あらら、ちょっとからかいすぎちゃったかな。それじゃ私は出てくから、なんかあったら呼んでちょうだいな」
「機嫌悪そうですけど大丈夫なんですか?」
「問題ないって。君がいれば全部解決するからさ。――あの娘のこと、よろしくね」
 また妙なことを言い残しながらやっと看護婦がいなくなった。
 しかしいなくなったはいいが、部屋になんとも名状しがたい気まずい空気が残ってしまった。
 いつもは何もしなくても向こうから話しかけてくれるが、勘違いとはいえ入って一歩目で「帰れ」と言われれば気後れすることもあるだろう。
 しかしあれだけ怒鳴っていた手前、こちらから話しかけるには少々恥ずかしい。
 それにせっかく来てくれたというのに、なんだか胸の中がもやもやする。上手く言えないが嫌な気持ちだ。
 もっとも会いに来てくれたのが嫌なわけではない。それは間違いない。
 しかしこの人があの看護婦と話しているのを見ていたら急にそんな気持ちが湧き上がってきた。
 静まり返った空気が幾ばくか流れた後、病室に漂う妙な雰囲気を払拭するかのように、彼はいつも通りの明るい声とともに笑いかけてくれた。
「よう、意外に元気そうで安心したよ」
 慣れた動作でパイプ椅子を引っ張り出すと、これもまた自然な動作で私の頭に軽く手を乗せた。
「昨日倒れたばっかだからさ、今日は会えないかもしれないと思ってたよ」
 学校の帰りだったのだろうか、肩にかけられている鞄を床におろすと、いつも通りスケッチの準備を始めた。
 頭から離れていく温もりが名残惜しくて、思わず声を上げそうになってしまった。
 その呟きが聞こえたのだろうか、彼は不思議そうな顔をしたがすぐに作業に戻っていった。
「でも来てよかったのか? もしかしたら無理してるんじゃないのか?」
「そんなこと無い。来てくれて……うれしい……」
 彼は驚いた顔をして勢いよくこっちを振り返った。
 2、3秒固まった後、「そうか」とそっけなく返事を返した。
 それでもその顔はとてもうれしそうに微笑んでいた。
 私はお礼が言えたことよりも、おにーちゃんが笑ってくれたことのほうがうれしかった。
 なんだか不思議な気分。今日の私はくるくると気持ちが変わっていく。
 今までこんなに気持ちが浮ついたことはなかった。
「さっきまで本読んでたのか?」
 唐突に振られた話題に戸惑ったが、よく考えればそれも当然の質問だった。
 自分の手元にあるのはさっきまで読んでいた――いや、それは訂正しよう。さっき読もうと思っていた本が置かれている。読もうと思っていたのだが、ふと彼のことが思い浮かびそのままなし崩し的に今の状況に至ったのだった。
 加えるならばベッドの脇に今日読もうと思って出しておいた本が、何冊も鎮座している。
「……他にすることが無いから」
 それは本当のことだ。年がら年中、というわけではないが、ほとんどの時間を室内で過ごしている私には趣味と呼べるものがほとんど無い。
 もちろん友達なんてものも、いない。
「どんな本読んでるんだ?」
 ベッドの脇から身を乗り出し、積まれている本を手にとっていく。
自然と彼の顔が私に近づくことになる。予想していなかった出来事に思わず赤面してしまう。顔が熱くなるのに加え、心臓の音がうるさいぐらいに早鐘を打つ。病室中に響き渡るのではないかというほどに。
「時代小説に、少女漫画。ミステリーに伝記もの。……濫読家だな。まあそれだけ読んでるんならちょっと大人びた雰囲気にも納得だな」
 当然のことながら用事を終えれば元の体勢に戻る。心臓の音がだんだんと落ち着いてくるのに合わせ、少々残念な気持ちが湧き上がる。
「俺も本はたまに読むんだけどな、ちょっと長すぎるともう駄目だな。霧や柳の奴は結構読むみたいだが、俺にはあの集中力が理解できないな。まあ俺がそういうと俺の絵を描くときの集中力のほうがおかしいって言われるんだけどな」
 しゃべりながらも手にはスケッチブックと鉛筆が準備されている。
「んじゃ、今日も描きますか。ちなみに描いてほしいものあるか? さすがに見たことの無いものは描けないけどな」
「……かわいいの」
「う〜ん、かわいいのって言われてもな……。まあかけるやつを何個か描けばいいか」
 そういうと躊躇いもなく手を動かしていく。

「どうだ? 自分で言うのもなんだがかなり上手くかけたと思うんだけどな」
 まだ数分しかたっていないのにもう終わったらしい。
 自信を持って見せられたスケッチブックには、所狭しとデフォルメされている動物たちが描かれていた。
「どれか気に入ったやつ、あるか?」
「これ……」
 即答。一目見た瞬間で気に入ってしまった。
「この猫さん可愛い!!」
 以前にも猫は見たことがあったが、横目で見た程度なのでしっかりとは分からなかった。
 しかしそのつぶらな瞳。ぴんとはったヒゲ。滑らかな毛並み。愛くるしい体躯。
 なんていうかもう駄目になってきそうだ。
「猫が好きなのか?」
「ううん。けど好きになった。おにーちゃんの絵で好きになった」
 第一今まで猫を見たことなどほとんどなかった。こんなことなら今までにも猫を見ておけばよかった。なんだか人生を損した気分だ。

 それから日が暮れるまで猫の絵を描いてもらっていた。
 次の日も、また次の日も、さまざまな種類の猫を描いてもらった。図鑑を持ってきて描いてもらったりもした。可愛らしい猫や精密に描かれた猫の絵など、彼の絵を見るたびに心が引かれていった。
 こんなに声を上げて笑えたのは何年ぶりだろう。
 やっぱりこの人は魔法使いだった。私に幸せを運んできてくれる。

 この瞬間、私は自覚した。こんなにも心が動く理由を。
 このときから、部屋を間違えた変な男からおにーちゃんへ。そしてこの私、藤浪朋子の初恋の人へと変わったのだった。

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  [ 未分類 ]   # 7  <固定リンク>

ただいま春季休業中
 どうも。やっとこさてストが終わりました。
 てかホンマやばかった、というが現在進行形でやばいです。もしかしたら追試って可能性もありうるという悲惨な状況です。
 まあ結果が分かるまでは落ち着いて待ちましょう。

 で、早速ブログを更新しようと思ったんですが、あまりの眠さに断念。テストの疲れが押し寄せてきました。十字軍も真っ青な大行進。2日で20時間以上寝てしまいました。
 ちなみにそれから部活が連続してあったため、かなり遅れてしまいましたが、本日、やっと更新です。とりあえずSSの続きをアップします。
ストレスをやる気に変えてがんばった結果、結構な量になってしまいました。
 がんばって読んであげてください。それではまた☆

  [ 未分類 ]   # 6  <固定リンク>

ただいま全国統一中 + etc...
タイトル通り、ただいま戦国ランスをプレイ中。
なんかもうはまりすぎです。人気が出るのも納得です。
シナリオの量も半端無いです。
ただ残念なことに、今の時代に音声がないという欠点があります。
まあ、それであっても十分楽しめますし。

量が量なのですぐには終わらせられないけれど、他のゲームと並行してちまちまやってます。
自分の場合はゲームディスクではなく、イメージのデータをPCに入れてやってるんで、つみゲーとは言えないかな? なんていうんだろ?

とりあえずそれは置いておいて、明日は午後からテストなんでさくっと終わらせてきます。

それでもってSSの三話を書こうかと。
昨日、一昨日と一気にアクセス数が伸びて気を良くした単純な自分はハイペースで書いてしまいます☆
でもあまりに出来が悪かったりしたら落ち込んでかけないかもw

とりあえず期待しててくださいな。
まあ期待するほどいいもんができるとは限りませんが……。

  [ 藤浪朋子 SS ]   # 5  <固定リンク>

それはすぐ傍に(2)
                       (2)

 外は相変わらずの寒空が広がっている.
 次々と降り注ぐ粉雪が、踏み荒らされた草原をやさしく包む。
 汚された町並みを、美しく包み込む。
 それはまるで私の心のように。


 部屋の中は薄着でいても暖かいくらいの気温が保たれている。
 私のためだろうか、周りの人間は必要以上に気を使ってくれている。
 ――煩わしいぐらいに。
 他人の心に許可なく踏み入り、押し売りまがいの親切心を突きつけてくる。
 そんなものを貰っても、うれしくは無い。
 悲しみのほうが大きい。苦しみのほうが、大きい。
 そんなものを貰っても、私にはどうすることも出来ない。
 もどかしさがつもり、やるせなさに心がつまる。

 無邪気に外を走り回り、声を上げて同世代の子供たちが羨ましいとは思わない。
 強がっているわけではない。無いものをねだるつもりも無い。
 むしろ踏みつけられる深雪が痛ましく思える。

 この窓から見える景色が、今の私の世界。
 一面の白。周りと切り離された小さな世界。
 小さな箱庭のようなこの世界で、ひっそりと、一人で生きている。
 誰にも踏み入ってほしくない。
 誰かが近づくたびに、美しかった景色が変わっていってしまう。
 調和の取れた真っ白な世界に、不純な色を混ぜていく。
 それがたとえ優しさから生じた行為であったとしても、この小さな世 界には何の言い訳にはならない。
 荒らされた箱庭はすぐには戻らない。
 長い時間が流れ、新たな雪に覆われなければ。


 誰にも触れてほしくない。
 ――冷たさを与えることになるから。

 誰にも会いたくは無い。
 ――別れを味わうことになるから。

 誰にも近づいてほしくない。
 ――心にあとが残るから。

 誰も暖かさを与えないでほしい。
 ――雪がとけ、その下の汚れた地面が露呈してしまうから。


 そう理解しているのに、また期待してしまう。
 隣の部屋へ、人が入っていくたびに。
 自分が一番目で無いことを知っている。
 一週間もたてばさすがに気づく。自分がついでなのだと。
 しかしそれでも、むしろその方が良かった。
 一番だったら、その好意に、私に会いに来るというその行為に、潰されてしまう。
 一番でなくても、気まぐれではないのだから。
 何番であっても、約束は守ってくれる。
 あの人傍にいてくれる。

 特別なことをしているつもりは無いのだろう。

 冷たさを味わってもまだ触れてくれる。
 「冷たい」と、悪態をつきながら。
 無遠慮に手を伸ばしてくれる。

 分かれの後の寂しさを、また会えたときのうれしさで償ってくれる。

 いつか交わしたある会話。
 あの人が場を持たせるための言葉。
 写真たてに飾られた、私と共に写る二人の人物。
 私はその人たちを両親だとは認めなかった。

 義務や責任感や世間体。
 優しさという建前に隠された本音。
 私は認められなかった。
 でも、そう言い張るとあの人は腹を立てたような、悲しんでいるような、表現しづらい表情をした。

 あの時は考えもしなかった。
 でも今なら考えなくても分かる。
 あの人が病院に来る一番の理由。
 隣にいる同世代の女の子。
 
 両親を失ったという、その少女。
 一度だけ覗きに言ったことがある。
 とても綺麗な女の子だった。
 とても儚げな女の子だった。
 まるで緻密に書かれた絵のように。
 彼女は何をするでもなく、ただ、宙を見ていた。

 私と似ていたから。
 そして納得もした。
 
 きっと放っておけなかったのだろう。
 あの子のために、そして私のためにも。
 だから彼は、悲しんだ。
 似ている私が、蔑ろにしていたから。
 あくまでも

 未だに名前を聞かないのは、ちょっとした境界線。
 未だに名前を聞けないのは、ちょっとした意地だ。

 一番になれないから、一番にしたくない。

 他人よりもなお近く、親密とまでは届かない。
 それでも、そんな距離か心地よい。
 図ったかのような完璧な距離。
 この距離ならハリネズミもジレンマなどに悩まされることは無いだろう。

 でもその人は、箱庭に作られた柵など軽く飛び越える。
 私の線引きなど、気にすることは無い。

 どんどん私の心に思い出を刻みつけていく。
 しかしそれを癒す気にはならない。
 傷が温かみを帯びていくから。

 とけた雪の下も気にならない。
 そこには醜悪な心など存在していなかったから。

 調和の取れた美しい世界を壊していく。
 しかし、それ以上に素晴らしい世界を描きあげていく。

 どうしていいのか分からない。
 会いたいけど、会うのが怖い。
 怖いのに、会えないほうがつらい。
 来てほしいのに、来てほしくなかったのに。
 頭で理屈を立てても、心が思いを抑えられない。
 どうすればいいのか分からない。
 ここまで自分が分からなくなったのは初めてだ。

 彼のことを考えるだけで、考えがつかなくなる。
 ドアがノックされるたびに一喜一憂している自分。
 本当に、分からない。



 雪が止み、代わりに沈みかけた太陽が部屋を赤く染め上げられていく。
 あまり夕日は好きでは無い。
 私のことを照らし出してしまうから。
 太陽が沈んでいくのを見るたびに、自分の気持ちもつられる様に動いていく。

 急にドアから音が響いた。
 確かめる前にドアが開け放たれる。あの人だった。
 まあこの部屋のドアを無遠慮に開けるのは一人しかいないわけなのだが。
「よう、調子はどうだ?」
 そんなことを言いながらベッドの横にあるパイプ椅子を引っ張り出す。
 慣れた様子でスケッチブックを取り出し、絵を描く準備を始める。
 いつもの日課だった。
 こちらが何も言わなくても、あちらが勝手に絵を書き上げる。
 どうだ、と言って私にその絵をくれる。
 興味が無いふりをしても、視界に入ればつい目を留めてしまう。
 その純粋な思いは、私の心をひきつける。

 だからだろう。
 一言だけ、お礼を言いたかった。
 ちょっとだけの勇気。
 初めて、私から近づいていいと思った。
 今の気持ちだけは、少しだけ信じられる。

 ――そう思えたのに、


「――――っ」

 そんな期待を踏みにじるかのような結末は突然襲ってきた。

 胸が締め付けられる痛み。
 心臓をさすように、何度も繰り返し訪れる。
 息が出来ない。
 熱が奪われる。体中を冷たさが襲う。
 耐えられないほどの痛みに、声を上げることさえままならない。
 混乱する頭とは別に、冷静な自分が考えている。

 もう助からないかも知れない。
 あるいは分かっていたのかもしれない。こうなることを。

――痛い――

近づきすぎればすべて終わってしまう。
心残りになるようなことはない。

――痛いよ――

 心残りになるような思い出も無い。
 ――いや、一つだけ。
 最後まで両親と認めてあげていなかった。
 あの人たちに、感謝できなかった。

 義務や責任感や世間体など、そんなことと比べるまでもなく、それ以上の愛情があった。
 母親は家事だけでなく仕事にもでて、それでも時間を作って会いに来てくれた。

――お母さん――

 そんなこと分かっていたのに、認められなかった。
 認めれば、想いに負けてしまいそうだった。

――助けて――

 父親は毎日、朝早くから仕事に出ている。休みなど無い。私のために働いている。
 優しく頭をなで、微笑みかけてくれた。

――お父さん――


 何故だろう。ふと、痛みが和らいだ。
 沈みかけた意識がつなぎとめられた。
 胸を刺すような痛みは続いているが、誰かが優しく包んでいる。
 誰かの温かみが、守ってくれている。
「…………お父、さん……?」
 そこにお父さんがいるみたいだった。
 記憶に残る思い出が、目の前にいる人物と重なる。
「お前には、俺がそんなにふけて見えるのか?」
 それは父親ではなかった。
 その顔色の悪さは今の私と同じぐらいだろう。
 その心は、今の私と同じぐらい締め付けられたのだろう。
 今にも泣き出しそうな目は、恐怖を必死に堪えていた。
 思わず薄く、微笑んでいる自分に気づいた。
 さっきまでの痛みがなかったかのような穏やかな気持ちだ。
 それとは対照的に、慌しく白衣の人々が駆け込んでくる。
 それでも心は落ち着いたままだ。

 そんなことよりも、今すべきことがある。

 先ほどの続きをこめて、感謝の想いとちょっとだけの譲歩。
 今までの喜びと、今までの悲しみも、
 少しばかりおまけを付け加えて、
 今の気持ちを素直に伝えよう。
 二人よりも先になってしまったけれど、
 溢れるほどの想いを止めるつもりは無い。
 それでもなお残る恥ずかしさの分を引いて、一言だけ。

「…………ありがと、おにーちゃん」

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  [ 未分類 ]   # 4  <固定リンク>

SS始めました
 周りに流されてつい書き始めちゃいました。
なんか自分の書いたものを読まれるってはずかし(。→∀←。)

ならブログ書くなよ!!(;==)ノ☆ って言われそうですけど、まあ複雑なお年頃なもんで。

とりあえず駄文なんですけど、読んでもらえると幸いです。
ついでにコメント(誹謗中傷だとおちこみますw)を残していただければさらに感謝感激します。

今日は急激にアクセス数が増えた記念に第2話も書いちゃいました。
楽しんでもらえるといいです☆

  [ 藤浪朋子 SS ]   # 3  <固定リンク>

それはすぐ傍に(1)
それは何の変哲も無い物語だった。
悲劇と呼べるほど悲しい出来事ではない。
ただ一人で落ち込んで、ただ一人で打ちひしがれて、ただ一人で人生に絶望したつもりになっていた。
つまりは一人よがり、それだけのことだ。
しかし喜劇と呼べるほど明るい話でもない。
ただ一人で舞い上がり、ただ一人で恋焦がれ、ただ一人で人生に幸せを見出しただけ。
そう、何の変哲も無い、当たり前の人生。
でも私は確かに救われた。


              それはすぐ傍に


                            (1)

 その頃の自分を思い出すだけでも張り倒したくなってくる。過去の話を知り合いに持ち出されると恥ずかしくなるだろうが、私の場合は憤りを感じてしまう。
 昔といってもつい最近までの話だ。
 今でこそ治っているが、その頃の私は心臓が弱かった。1年のうち、ほとんどを病院に通っていただろう。好きなことも出来ず、良くなったと思い一歩を踏み出そうとすれば、図ったようなタイミングで幸せを奪っていく。
 まあそんなことで諦めなければ良かっただけの話だ。幸せは諦めなければ手に入る。いや、むしろ自分で捕まえに行くものだ。
でもその頃の自分はそんなに強くはなかったのだろう。いつしか生きて行く希望さえも希薄になっていった。
 この話はそんな自分、藤浪朋子のちょっとした昔話だ。



 病室に入って一番に目に付いたのは眼前に広がる白い台地。空から舞い降りる羽毛のような雪が、街を柔らかに包んでいく。窓から注ぎ込む光が部屋の中を明るく照らしている。
 しかし、そんな光景にも何の感慨も持てなかった。
 ここ北海道には病気の療養のために連れてこられた。
そう、連れてこられたというのが一番正しい表現だろう。手術のできるほど体力も身体も出来ていなかったため、両親はそれ以外での回復方法を考えていた。空気のよい落ち着いた場所で過ごせば体調も良くなるだろうということだが、私にとってはどうでも良いことだった。唯一つ感謝したいことは、ここが煩わしい人間関係から開放されるということだろう。
 静かなこの街は自分に合っていると思う。
 別に死にたいとは思わないが、努力して生きようとは思えない。
 どうあがいても運命は変えられない。人生はなるようにしかならない。
 そして私の運命はもう決まっている。
 決して幸せにはなれない。
 ちょっとした希望を持っても、あと一歩まできた瞬間にあっけなく崩れ去る。
 それはいつ崩れ落ちるか分からない塔みたいなものだ。期待して登りつめれば、そのぶん崩れ去ったときに痛みを伴う。
 そしてそれがあらかじめ崩れ去ると分かっていたなら、そんなものに近づく間抜けはいないだろう。
 それが変わることの無い私の生き方だ。


 入院して二週間がたった。
 特に変わったことはない。いつものように朝が来て、稀に親が数十分の面会に来て、医者がやってきて、そして夜がやってくる。
 傍から見れば、自分はさぞ嫌な患者に見えることだろう。
 いつも無表情。愛想も無い。ませた考え。扱いにくい患者だと思われていることも知っている。
 でもそれが何のだ。
 いくら他人に好かれたといっても、すぐに自分から離れていく。
 いずれ失う悲しみを味わうなら、些細な幸せなど求めないほうがいい。
 そんな一日が今日も始まる。

「エリス、入るぞー」

 そんな思考をかき消したのは馬鹿みたいに明るい声だった。知らない人の名前を呼び、返事をする前にドアを大きく開け入ってきた。
 入ってきたのは制服を着た男の人。やわらかそうな髪を額が隠れるほど伸ばし、すっきりとした顔立ち。走ってきたのか心なしか頬が赤い気がする。背は父親よりも少し低いぐらい。制服の第一ボタンを開け、手には見慣れない薄い板のようなものと箱を持っている。
 何より驚いたのはその目だった。
 自身と希望に満ち溢れ、前に進んでいる、自分とは正反対の目。
 私はその目を直視することが出来なかった。声をかけることさえもできなかった。
 他人と関わりたくないだけではない。その男の人は私の生きかたにさえ関わってきそうで怖かった。自分が今まで守ってきたものが崩されてしまいそうだった。
 関わらなければいずれ去っていくだろう。
 私は何も言わなかった。むしろ何も言えなかったのかも知れない。
 しかし私のそんな心の内を知ってか知らずか、その人は何も言わずドアの前に立ちこちらを見ていた。
 心がかき乱される気がした。その希望に満ちた目で見られていることが、自分を責められているみたいで我慢が出来なかった。
 だから私は勇気を振り絞り、自分に言い聞かせるように呟いた。
「まだいたの?」
 言った瞬間男の人が気を悪くしたのが伝わってきた。もちろん狙ってのことだ。自分から遠ざかれば誰も近寄ってこない。
 しかしその男の人は違った。
「なあ、絵、見るか?」
 外見に似合った柔らかい声だった。
 私はその言葉の意味を理解するのに数秒を要した。さらにその言葉の意味が分かった後でも返事を返すことが出来なかった。
 驚きに満ちた目を少年に向けると優しく微笑みながら右手に持っている板――スケッチブックを私に見せるように少し目の高さまで持ち上げて見せた。
 その瞳は何の打算もなく、責任に迫られてでもなく、ただ真摯に、私のことを思ってくれている目だった。
「絵だよ、絵。分かるか?」
 少し馬鹿にしたような言葉。しかし今はそれが心地よかった。会話と呼べるものではなかったが、医者のようにこちらを気遣うような遠慮した態度ではない新鮮な言葉。
 だがその気持ちを自覚したとき、慌てて蓋をした。
 心が揺れてはいけない。またいつものように喜びは悲しみに、期待は落胆に、あっという間に変わっていってしまう。
 だが隠していたつもりでもそれは押さえ切れない。だからだろう。いつもは聞き流すような些細な問いかけにも答えていた。
「……知ってる」
「よし、じゃあ見ろ」
 言うや否や、男の人はベッドに近づきながらスケッチブックをめくり始めた。
 またもやこちらを無視した態度。
 しかし自分という主体性を持ち、他人に近づくことの出来る人間。
 同情や憐憫ではなく、対等な立場となって会話をしてくれる。
「どうだ、綺麗だろ?」
 言われてから初めて絵に視線を向けた。
 それを見た瞬間、思わず息を呑んでしまっていた。
それは高台から街を見下ろした風景だろうか。白くデコレーションされた町並みが淡く輝き、太陽の光を受けた海が光り輝いている。
 声を出すことも出来ないほどその絵に見せられていた。
 今まで一度も見たことの無いその風景が、一瞬のうちに思い出の場所に変わったかのように思えた。
 写真のよう、というわけではない。
 それは物事の本質を捉え、見るものにその素晴らしさをダイレクトに伝えるからこその感動。
 もちろん絵の技法などといった小難しいことは分からなかったが、それでもこの人の目に宿る自信と希望は、確かにココに存在していた。
「その絵はお前にやる。それと、また来てやるからな」
 なんと言っていいか分からず固まっていた私を無視し、男の人はその絵を手渡すとさっさと出て行ってしまった。
 やはり最後まで自分を突き通す人だった。
 しかし最後の言葉――

        
           ――また来てやるからな――


 何気なく放たれた一言が、たまらなくうれしかった。
 だが同時に、その一言が、たまらなく恐ろしかった。

 今回の不幸はいつ訪れるのだろうか。どれだけの幸せを奪っていくのだろうか。
 幸せだからこそ、もうこないでほしい。
 悲しみがあるからこそ、幸せでありたい。

 そんな終わることの無いパラドックスは消え去ることはなかった。

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

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