隠れオタでもいいじゃないか

主にPCゲームの二次創作を書かせていただいています。  あとは最近やっているゲームやら読んでいるラノベやらのこととか……。

「それは舞い散る桜のように完全版」2008年10月30日発売

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  [ 藤浪朋子 SS ]   # 24  <固定リンク>

それはすぐ傍に(11)
                        (11)

 なんと言うか、これも一つの縁ということなのだろうか。
 袖振り合うも他生の縁。巡り合わせの縁。さまざまな言い方があるかもしれないが、私にはこの言い方が一番似合っていると思う。

 ――腐れ縁。

 
 何故か最近上倉先生と出会うことが多いような気がする。いや、気がするのではなく、実際に多く出会っている。
 さらに付け加えるのならば出会うだけでなく、大なり小なり何かしらの事件が起こっている。

 例えば放課後の廊下。私が図書館で借りた本を返しに行こうと歩いていたとき、突然横から誰かにぶつかられたことがあった。
 まあそれが誰かなど言うまでも無いのだが。それだけならまだしも、あの教師は私の顔を見た瞬間差し出した手を引っ込めたのだ。しかも軽く馬鹿にされた上にからかわれもした。
まったく、ほんっとーに腹の立つ教師だ。
 一応謝罪はさせたからまあいいだろう。

他にも上げればキリが無い。
例えば放課後に道端を歩いていたときだ。ふと視界の端に見覚えのある野良猫を見かけた。
「タロウ?」
 もちろん呼びかけても返事など無いのだが、つい呼んでしまうのは人間のさがなのだろう。
 当然のごとくタロウはそ知らぬ顔で歩いていってしまう。
 だがそんな行動も予想通りだ。私は秘密兵器を取り出すべく、ポケットに手を伸ばす。
 その後のタロウの反応は顕著だった。

 ポケットに入れられたビニール袋が音を立てると、タロウはピクっと体を揺らし、こちらへゆっくりと歩いてきた。そして私の前で行儀よく座り、そのつぶらな瞳でこちらを見上げ可愛らしく鳴いてくる。
 猫なのにこれではまるでパブロフの犬のようだ。ビニール袋が音を立てればその中身をもらえると分かっているのだろうか。あるいは私を見かけてもそっぽを向けば中身をもらえると思っているのか。

(ま、ここはタロウにのせられてあげるか……)
 唇に軽い笑みを浮かべながらポケットに入れておいた猫じゃらしを手に取った。
「ほ〜れ」
 タロウの前で軽く振ってやると、予想通り手を出してきた。
「ほれほれほれ〜」
 そのまま円を描くように、タロウの顔の前で猫じゃらしを振ってみる。
「にゃにゃっ!」
 まるでジャブを放つように手を素早く動かすタロウ。いわゆる猫パンチというやつだ。
 けれど私はそのパンチを紙一重で避けていく。そのまま猫じゃらしをタロウの周りで旋回させる。これまた尻尾を追う犬のようにくるくると回り始める。
「あはは、こっちよ、こっち」
 上下左右、タロウのぎりぎりを通って猫じゃらしを振っていく。
「あーあ、あんたは何も考えずに済んでいいわよね」
 思わず自嘲的な溜息が漏れる。
 今のタロウのように、ただ目の前の出来事に取り組むだけで過ごせたらどんなに楽なことか。
 獣の感といったところか。その一瞬の隙を着いて飛び掛るタロウ。
「甘いっ!」
 けれども私のほうが一枚上手だった。
 猫じゃらし目掛けて飛び掛ってきたタロウの前足を、手首を返しすんでのところでかわす。
腹の下を潜らせタロウの周りを一周させるようにして元の位置に戻す。
 後一歩のところで避けられたのが悔しかったのか、それとも馬鹿にされたことが伝わったのか、タロウは威嚇するように小さく唸った。
「あははははは」
 けれども私には、おもちゃをとられて拗ねている子供のようにしか思えなかった。

「笑ってる場合か? その猫怒ってるんじゃないか?」
「誰っ!?」
 不覚だった。この和やかな雰囲気のあまり、思わず気を抜いていた。こんな近くまで他人が近づいているというのに気づきもしなかった。
 緩んだ表情を引き締め、背後にいる人物の顔を確認する。
「怖い顔をすることはないだろ、失礼だな」
 だがそこにいた人物は予想外の人物だった。
「……なんで、あんたがここにいるわけ?」
「そりゃあ、この道がオレの通勤路だからだよ」
 そう応えた上倉先生だったが、私が聞きたいのはそんなことではない。
 何故この時間にここにいるのか。そして何故私に声を掛けたのか。その二点が疑問だった。
 今この時間は部活動の時間だ。ならば美術部の顧問である上倉先生は美術室にいるべきではないのだろうか。
 そう思った矢先、とある噂を思い出した。
(不良教師。それにチャランポラン教師……)
 二つ目の呼び名はどうかと思うが、とにかく部活に出ていないということだろう。
 ここにいる理由は分かったが、それでも何故声をかけたのか。
 学校で声を掛けるのは分かる。それは教師と生徒だからだ。では学校の外、プライベートの場合はどうなのか。私は何時かは切れてしまう個人的な繋がりなど望んでいない。学校でも必要以上に他人との干渉を避けている。寧ろ距離をとっている。
 それなのに何故この人は私に関わろうとするのか。
 
――分からない。

その困惑が顔に出ていたのか。上倉先生は私と視線が合うと慌てたように視線を逸らした。
タロウの方に視線をやると取り繕うように話し出した。
「その猫は藤浪の飼い猫なのか? 怒ってるみたいだからなだめてやってくれ」
 先ほどの疑問は未だ氷解してはいないが、このまま考え続けても答えは出ないだろう。
 けれどもそれで構わない。向こうがどう思っていようと私には関係無いことだ。
「この子は野良よ。私の言うことなんか聞かないわ」
「でもさっきは懐いてたじゃないか、ずいぶんと楽しそうに見えたが……よーら、よしよし」
 やっぱり見られていたか……。今思えばずいぶんと子供っぽい行動をしていた。
なんとなく弱みを握られた気分だ……。
不満を込めた視線で上倉先生を睨むが、本人は大して気にしていないようだ。私の隣に座り込み、タロウを撫でようと手を伸ばす。
「イテッ!」
 その伸ばされた手を勢いよく弾くタロウ。
「あははは、バッカじゃないの? 警戒してる猫に手を出したら引っ掻かれるに決まってるじゃない。ねぇ?」
 私の鬱憤を代わりに晴らしてくれたタロウ。お礼の意味を込めて喉をなでてやると気持ちよさそうな声を出す。
 そこへ再び手を伸ばす上倉先生。するとタロウはうって変わって低い唸り声を上げる。
 うんうん、やっぱりタロウは私の味方だ。
「大丈夫よ、その男には手を出させないからね〜、……あんたは動かないでよ、タロウが怯えるでしょ」
 やはり人徳というものだろう。顔をこすり付けるタロウはとてもリラックスしているようだ。

 ――世界は私に優しく無いかもしれない。けれど私は小さな命に優しくなれる。

 そんな感傷に浸っている私を引き戻すかのように、タロウが飛び掛ってきた。
 突然のことに反応できず驚いている私に、追い討ちをかけるように飛び込んでくるタロウ。
 タロウを支えきれなくなった私は後ろへとひっくり返ってしまった。
「きゃあっ!?」
 思わず悲鳴を上げてしまうがそんなことお構い無しのタロウ。ポケットをあさり目的のものを引っ張り出す。
 ビニールに包まれたもの――煮干を器用に袋から出していく。
「……」
「…………」
二人の間を静寂が包む。聞こえるのはタロウが煮干を食べる音だけだ。
猫を挟み無言で向かい合う二人。猫は夢中で煮干を食べる。
 …………かなりシュールな光景だった。
 そんな異様な雰囲気に気づいたのか、タロウは口の中に詰め込めるだけの煮干を加え、一目散に駆け出していった。
 取り残される二人。
「……」
「…………」
 再び無言に包まれる。
 そんな沈黙を先に破ったのは向こうだった。
「……ニャ〜ン」
 ぷちっときた。
「不気味な声出さないでよ!! キモいじゃないの!! つーか何なのよ!!」
「いや、見えたからな」
「何がよ……」
「猫さんパンツとは洒落てるな」
「ぬぁっ!?」
 イ、イマコノオトコハナントイッタ…………?
「な、なな……ななな、なん……うぅ……」
 パンツ? パンツというのはあのパンツのことでそれはつまり今私の履いているものでということはそれを見られたということで――
「……う……み、みみ……みた、の……?」
 頭の中がぐちゃぐちゃに絡まって何を考えているのかさえも分からない。目の前の人物が何か言っているようだがそれすらも理解できない。
「ん……そうだな、見たというほどじゃないかもな」
(見られた……見られた……よりにもよってこんな奴に……)
「う、うううるさーい!! 今のことは忘れなさい!! つーか忘れさせてやるっ!! むしろ私が忘れるわよっ!! いいわね、あんたも忘れなさいよっ!!」

 言い終わる前に既に駆け出していた。まさに本当の捨て台詞となってしまった。

 ……とにかくあの駄目教師と関わるとろくな事が無い。
 ほかにも神社で鳩と戯れていれば邪魔をされ、学食でも他に席が空いているにも関わらず、わざわざ私の向かいに座る始末だ。

 全く、あの人は何を考えているのか分からない。


「ホントに何なのよ……」
 放課後、私は屋上のベンチに腰掛けながら駄目教師の愚痴――もとい、物思いにふけっていた。辺りを包むのはもう聞きなれた澄んだ歌声。
 歌っているのは学園内でも有名な美咲菫先輩。特に気にしなくても彼女の噂は私にさえ伝わってくる。それほどまでに歌が上手いということだ。
そんな先輩の歌をゆっくりと聞くのが最近の日課となっていた。
歌っている歌詞は日本語ではないためよく分からなかったが、それでも何の歌かは分かる。

断片的に聞き取れる単語、クリスマスが近いこの時期に練習しているということ、そして以前本で読んだ知識。歌のタイトルは確かアベマリアだったと思う。
 だがそんな知識などどうでもよくなるほどの歌声を彼女は持っている。
 他人と関わりを持ちたくない私でさえ、彼女の紡ぎだす魅力に惹かれている。やはり本当の芸術というのは自然と他人を引き付けるものなのだろう。

「そういえば私がここに入ったのもあの絵を見たから、なんだよね……」
 このところイベントがありすぎてそんなことも忘れていた。
 私がこの学園に入学した理由。あの人とよく似た絵を描く人物、その人を見つけるという目的。
「どうしてだろう…………」
 以前の私なら絶対にそんなことを忘れはしなかった。
私が生きているその理由。私が死んでいないという、そんな状態から救ってくれた一人の絵描き。
「――やっぱりあの駄目教師のせいだよね」
 良いにしろ悪いにしろ、上倉先生と共に学園生活を送ることで退屈はしなかった。
 いつも付きまとわれて迷惑だと感じる一方、隣に誰かがいるという安心感。
 二律背反であると分かっていながら、両者の感情を胸の中に抱いている私。
「まあ、考えても答えなんて出ないんでしょうけどね」
 ベンチから立ち上がり大きく伸びをする。
 冬の澄んだ空気のおかげか、それとも美咲先輩の歌のおかげか、はたまたそれ以外の何かか。とにかく、ごちゃごちゃと悩んでいた頭も大分すっきりとした。
 
 急がなくても良い。答えを考える時間は十分にある。何時も通り、私の思うままに行動すれば良い。他に生きる理由など無いのだから。





 どうも、tiroです。ずいぶんと更新が遅くなりまして申し訳ありませんでした。

 部活の試合が佳境に入りまして、精神的にも肉体的にも追い詰められている状態でして。時間的にも余裕が無い状態です。

もう暫くこんな状態ですが、GWを過ぎればもう少し更新頻度をあげられるかと思います。



 いつもの通り、ランキングの応援をよろしくお願いします。


辛いときに拍手が入っていると明日への活力となります☆

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  [ 未分類 ]   # 23  <固定リンク>

最近の新番組とかさ
 最近ゲームやマンガのアニメ化が多いな〜と思います。

 でもどれだけ原作がよくっても、アニメ化するときの作画の出来でピンキリですよね……。

 このごろ録画だけして見てなかったんで、今日まとめて見てみたんですが、正直がっかりの作品も。

 「らき☆すた」はかなり満足でした。あのだるい感じがたまらんです。
 もう少し先には「CLANNAD」の映画版もやりますよね〜。自分は隠れオタなので堂々といけないもんでw
 ホームページやらを見る限り、出来はかなりよさそうです。後は要所で手を抜かなければ。

 「ポリフォニカ」は微妙でした。ストーリー自体は好きなんですが、絵がちょっと荒いかなと。

 「この青空に約束を」も期待してたんですけどね……。キャラが動いて無いよ……、てか動きが変だよ↓
 まあ見れないことは無いんですが、ちょっと楽しめそうに無いです。これから内容が進展していけば面白くなる可能性はありますが。

 ちょっと前に戻れば「うたわれるもの」とか「ハルヒ」とか「KANON」もあったよね〜。やっぱ京アニはいいですよ。

 絵的にもストーリー的にも満足でした。

 「ToHEART2」のOVAはどうしようか悩み中。個人的にはイルファよりミルファのほうが。

 まあやっぱ外せないのはあの伝説の作品でしょ。
 噂の「キャベツ」の作品です……。

 あれを見た後じゃどんな作品でも上手く見えてしまうw

 まあ作画しだいでどうとでもなると、という話。

  [ 藤浪朋子 SS ]   # 22  <固定リンク>

それはすぐ傍に(10)
                (10)
 茜色に染まった景色の中、ゆっくりとした歩調で廊下を歩く。
 こんなに緩やかな時間を過ごすのは何ヶ月――いや、何年ぶりだろうか。
 ただ時間に流され、太陽に追い立てられるかのように帰宅し、夜空に上る月のようにひっそりと一人の時間を過ごす。そしてまた次第に明るさを取り戻していく町並みと共に一日を始める。いつの間にかそんな生活を送っていた。
 別にそんな生活に不満を持っているわけではないのだが。他人から自分の生活をどうこう言われる筋合いは無い。私は私なりに今の生活を楽しんでいる。
 ――それでも。たまにはこうやってそれ以外に目を向けてみるのも良いかもしれない。
 
 この心地よい時間をいつまでも過ごしていたいのだが、回り続ける時計の針と沈み逝く太陽を止めることはできそうに無い。気づいたら日が沈んでいるなどという状況は回避しておきたい。
 そろそろ鞄も回収しておかないといけないだろう。なんとか理由をつけて、ここに留まろうとする足を動かして教室へと向かう。


 教室のドアに手を掛けたとき、驚くことに中から話し声が聞こえてきた。こんな時間まで残っているとは物好きな人間もいたものだ。――いや、それは私のことでもあるか。
 軽く笑みを浮かべながらドアを開けると、窓際に座る二人の女生徒が目に付いた。
 名前は――出てこない。顔は見たことがあるのだからクラスメイトだろうと予測がつくのだが。といってもこのクラスで授業を受けたのも実 質一ヵ月にも満たない期間、それも飛び飛びの期間の中で。そんな中で大して仲の良くないクラスメイトの顔と名を一致させろというのは無理な話だ。
 思い出せないのは仕方が無いと割り切り、机の上にぽつんと置かれている鞄を手に取った。
 鞄の中に携帯と財布をしまい込む。そのまま踵を返し、足早に教室から出ようとしたそのとき、背中に物言いたげ視線を感じた。不思議に思い振り返れば、案の定先ほどの女生徒が呼びかけるような格好で停止している。
「あの……、藤浪さん……」
 もう一度、消え入るようなか細い声で名前を呼ばれる。今度は間違いない。
 私を呼んだのは二人組のうちの気の弱そうな方――ショートカットに眼鏡、図書委員をやっていそうな少女。
 その隣には寄り添うのは、逆に活動的な印象を与える長身の少女。
「なに?」
 呼び止められはしたものの、話が進む気配が全く感じられない。
 背の高いほうが隣の少女に何かを促しているようだが、何かを迷っているようだ。
「用が無いなら帰るわよ」
 目の前で密談をされて気分の良くなる人間などいないだろう。教室に入るまでのノスタルジックな雰囲気など既に消え失せてしまった。
 無駄な時間を使うことに嫌気が差し、教室を出ようと二人に背を向けた。
「藤浪さん――」
 先ほどよりも大きな声。私はもう一度振り返り、より鋭くなった相貌を彼女へ向けた。
 声の主である大人しめの少女は、その勢いに気おされたように身をすくめたが、隣に立つ少女に促され一歩前に出る。
「藤浪さん、すごい勢いで教室から出て行ったけど……、どこに行ってたの?」
 いきなりの質問に戸惑い、いい返事を見つけることができなかった。
 そんな私の心情が顔に表れていたのだろうか。少女は慌てて、付け加えるように話し出した。
「鞄が机の上に置いたままだったから……、すぐに戻ってくるのかと思ったんだけど、なかなか帰ってこなかったから……」
 つまりこういうことか。私が鞄を忘れて教室を飛び出していった。なかなか帰ってこないからどこに行ったのか気になっていたと。
「別に……、急ぎの用事があっただけ……」
 詳しい内容など恥ずかしくて言えやしない。それにしてもクラスの人間から見ても私の行動はおかしく見えたらしい。やはり直情的な自分の性格も考え物だ。
「それじゃあその用事はもう終わったのよね?」
 大きいほうが尋ねる。というより――
「終わったけど……、あんたたち誰?」
 場に静寂が訪れる。
 自分で言ってなんだが、もう少しマシな言い方があったかもしれない。だが質問の内容事態は妥当なものだ。あちらはあまり授業に来れない一人の生徒の名前を覚えるだけ。こちらはあまり一緒になることの無いクラスメイトの名前を全員分覚えなければならないのだ。その苦労には雲泥の差がある。
「そうだよね。藤浪さんあんまり学校に来て無いから……」
 戸惑いながらも納得したような二人。
「えと、私は椎子って言うの。それでね、ぽんちゃんは――」
「わたしのことはノリ子で良いわよ」
 小さいほうが椎子で大きいほうがノリ子か。椎子はノリ子のことを『ぽんちゃん』と呼んでいるあたり、二人は仲が良いのだろう。
「それで、私に何か用があるんじゃないの?」
「あ〜、そうそう。それで藤浪さんはこの後時間ある?」
「えっとね、暇だったら一緒に駅前に行かない? おいしいクレープ屋さんが出来たの」
 今の時刻は五時を回ったところ。それほど遅いという時間でもなく、夕食までにも時間はある。日が沈むのは確かに早いが、それでもクレープを食べに行く時間ぐらいはあるだろう。
「何で……」
 だがそれよりも聞きたいことが一つ。
「何で私があんたたちと遊びに行くの?」
 ――戸惑い。それが最初の気持ちだった。大して仲がいいというわけでもないクラスメイトを遊びに誘う理由が分からない。
「何でって……その、藤浪さんあんまり学校来てなかったから。それでいつも一人でいたから……」
「それで椎子が一緒に遊びに誘ったってワケ」
「別に……。私は好きで一人でいるのよ」
 そう、私はこの環境を望んでいるのだ。誰かに構ってもらおうなどと思っていない。
「でも藤浪さん、休み時間にいつも寂しそうに外を見てるから……。だから一緒に遊べば元気になってくれるかなって……」
「いやよっ!!」
 反射的に応えていた。
 私が寂しそう? 勝手に決め付けないで欲しい。私は誰かと遊びたいなどと考えていない。
「ご、ごめんなさい……。無理に誘っているわけじゃないの」
「藤浪さんもそんな言い方しなくても良いでしょ。椎子は藤浪さんのために――」
「余計なお世話よっ!!」
 こいつらも同類か。二言目には『私のために』。そんな言い訳をしたところで結局のところ自分の優しさを見せ付けたいだけ。私を見下し哀れみの視線を投げかけ、自分が私よりも恵まれているということを確認したいだけ。
「ごめんなさい……でもね……」
「うるさいわね、あんたら一対何のつもりよ。ケンカ売ってんの?」
「ちょっと落ち着いてよ。怒鳴らなくてもいいじゃない」
 いちいち謝ってくる椎子も、冷静な声を出すノリ子にも腹が立つ。それほどにまで私が落ちぶれて見えるのか。
 悔しさが胸に積もる。
 私はクラスメイトとも対等でいられないのか。
「椎子は藤浪さんを気遣っただけよ?怒ることないじゃない」
「それが余計なのよ。あんたらに気遣われる謂われなんか無いのよ、私には!」
 顔つきが険しく成っていくのが自覚できる。語気も強くなっていく。だが自覚していながらも怒りを静めることはできそうに無い。
「そ、そうじゃなくて、私は藤浪さんが学園に来るの久しぶりだから一緒に遊ぼうって……」
「何で私が、あんたと一緒に遊ばなくちゃならないワケ?」
 二度目の質問は戸惑いではなく憤り。
 言葉を考えるでもなく口に出る。
 怒り、悔しさ、虚しさ。自分の感情が分からない。何故こんなにも激しい気持ちになっているのか。何故こんなにも苦しい気持ちになっているのか。
「――なんか……」
 そうだ。この二人がいるからこんなにも苦しいんだ。この二人がいなければ。
「あんた達なんか――」
「なんだか騒がしいようだが、何かあったのか?」
 続けて教室のドアが開く音。
 その声で我に返った。
 ――今、私はなんと続けようとしていたのだろうか。
 少しずつ思考が冷静になっていく。私はどこかで聞いたことのある声の主のほうへ首をもたげた。
 そこにいたのは先ほど合ったばかりの美術教師だった。
「――」
「あ……上倉先生……」
 だが私がその名前を呼ぶ前に、目の前の女生徒が口に出していた。
 ――無性に嫌な気持ちが胸の中で暴れまわる。何故か他の人間にその名前を呼んでほしくなかった。
 先ほどから変だ。自分の感情が理解できない。
「言い合いをしているように聞こえたが、オレの耳がおかしくなったのか?」
 その言葉に体が反応した。
 ――今のを聞かれていた。ただそれだけで胸の奥が締め付けられる。咽の奥が乾いてくる。
「いえ、あの……」
 一秒でも長くここにいたくはなかった。
 ドアを塞ぐように立っていた上倉先生に強くぶつかる。彼は困惑の表情を浮かべる。
 すると自然に、上倉先生と視線が合った。
「――っ」
 不意に視界がぼやけた。
「どきなさいよっ!!」
それが何か、頭で理解する前に駆け出していた。勢いよく階段を駆け下り、廊下を走り、息をつく暇も無いほど早く昇降口まで駆けていた。

 無理な運動のせいだろう、体に力が入らない。こんなに全力で走ったのは何年ぶりになるか。
 そこで再び頬を伝うものに気がついた。
 制服の袖で拭う。
 下駄箱にそっと寄りかかる。

 どうして自分が泣いているのか。
 どうして教室から駆け出していたのか。
 どうしてあんなにも感情的になっていたのか。
 どうして――。

 考えれば分かることだった。
 私は怒っていたのではなく、私は悔しかったのではなく、もちろん悲しかったのではない。

 ――私は、私自身が情けなかったのだ。
 私の弱さは私が一番知っている。
 誰かに頼れないのも、頼りたくないのも。
 誰かに甘えたいのも、甘えたくないもの。
 それは私が臆病だから。失ったときの痛みも知っているから。
 だから一歩が踏み出せない。
 『友情』という陳腐な言葉が、いかに呆気なく崩れ去るかを理解しているから。

 だから上倉『先生』という存在がありがたかった。
 それは友情ではなく、『先生』と『生徒』との繋がり。
 この学園に在籍している以上、その繋がりが途絶えることは無い。
 だから少しだけよりかかっても、その支えが外されることは無い。
 けれどあの教室で、他の人に上倉先生の名前を呼ばれたとき、私は怖かったのだ。その支えを奪われたような気がして。
 そして私は逃げたのだ。寄りかかることを拒否されるのが怖くて。
 
 私は、そんな私が情けない。悔しくて悲しくて――情けない。
「ったく……オレも歳なんだから労われよな」
 背後から嘆息と共に現れたのは、案の定上倉先生だった。
 動揺する心を押さえつけ、何とか平素のふりをする。
「あんたが……勝手に、追いかけてきたでしょ……」
「ま、見てしまった以上は教師として放っておけないんでな。後で知られて、どうして見過ごしたのかと教頭に怒られるのもいやだしな」
 ――教師として、ね。
 予想通りの答えが返ってきて安心した。やはりこの人といると気分が楽になる。
 必要以上に気を使う必要が無く、それ以上に気を使われなくていい。
「あっそ……」
 なんとなく視線を外へ向ける。廊下で見ていたときよりも太陽の位置が低くなっているような気がする。もうそろそろ日が暮れる頃だろうか。まあどのみち帰っても特にやることなど無い。今しばらくこの会話を続けよう。
「で、何が会ったのか話す気はあるか?」
「ないわよ」
 即答。会話を続けようと思った矢先、自ら会話を途切れさせてしまった。
 だが仕方が無いだろう。先ほどの話題など思い出したくも無い。反射的に断ってしまったのも当たり前の反応だろう。
 そう自分を弁護し、先生の次の言葉を待つ。
「そうか……なら仕方ないな」
 だが彼の口から出たのは予想外の言葉だった。もっと詳しく聞いてくるのかと思っていたのだが。
「……聞かないわけ?」
 ついついそんな事を言ってしまった。
「話す気はないんだろ?」
「ないけど……」
 確かに話す気はない。というよりしつこく聞かれれば、また激怒してしまうことぐらい自分でも予想が付く。
「なら仕方がないだろ」
「……そうだけど……」
 仕方がないのだけれど、それでも聞いてほしいのだ。自分でも矛盾していることは分かっているのだが、ここで話を終わらせたくはなかった。
 聞いて貰いたいのだけれど、聞いて欲しくない。袋小路の思考が堂々巡りを繰り返す。
 そんな私を苦笑しながら見やる目の前の教師。
「……なにがおかしいのよ?」
 ついついこの憤りをぶつけてしまう。自分でも短所だと分かっているのだが、それでもどうしようもない。
「ああ、すまん、なんでもないんだ」
「……フンだ……みんなして私をバカにして……」
 そうは言ってもあまり悪い気はしなかった。バカにされているといっても、仲のいい相手とふざけ合っているような感覚だった。
「さてと、藤浪を追いかけたから教師の体裁は整ったし、オレも帰るかな」
 上倉先生は大きく伸びをして、左腕にはめた腕時計を見る。
 そういえばこの人は何故あんなところにいたのだろうか。今の時間はまだ部活をやっているのではないだろうか。私のことが気になって、というのは自意識過剰だろうか。
「藤浪も学園に用事がないなら早く帰れよ。つっても手ぶらで帰るわけにはいかんだろうがな」
「え……あ」
 完全に忘れていた。本当に今日の私はどうかしている。何をやっても上手くいかない日という存在を確信してしまった。
「まあ、オレみたいに授業道具を学園に置いてあるなら関係ないか」
「お財布だって鞄の中なんだから、そんなわけにはいかないわよ」
 せめて財布と携帯を鞄の中にしまっていなければこのまま帰っても良かったのだが。
「好きにすればいいさ。じゃあな」
 このまま教室に取りに戻るなんてまねは出来やしない。
「好きにするわよ……」
 仕方ない、屋上にでも行って時間を潰そう。
 背をやや丸めて気だるそうに歩く教師を見送りながら、私は大きく溜息をついた。
 

 大分影が長くなってきた。もう数十分もすれば夜の帳が下りる頃だろう。何もせず、無駄な時間を過ごすのは好きだが、数十分もの間、何も出来ず時間を無駄にしてしまうのはどうだろうか。
 どちらも似たようだが、私の中では明確な差があるのだ。
 要するに自主性の問題。周りに流されるのが嫌なのだ。
 そんな胴でもいい事を考えながら屋上への扉に手をかけた。
「――ラー」
 微かに聞こえてくるのは歌声だろうか。
 先客がいたのか。この時間ではまだ部活をやっているため、誰かがいてもおかしくない。
 そういえば合唱部がクリスマスのパーティーで発表をするとか言ってたっけ。
 ぼんやりとした記憶を掘り返しながら、流れるような旋律に耳を傾ける。
 誰かは知らないが、それは心に染込むような歌声だった。
 決して大きく響いているとは言えない。優しく、それでいて存在感をはっきりと主張する。
 撫子が芸術に力を入れているということを改めて実感する。
 
「ラーー、ラララー」 心が温かくなるようだ。
 先ほどまでの出来事を忘れてしまうほどに聞き入ってしまった。
 何故だか今なら自分に素直になれそうだった。
 
 無駄に過ごそうとしていた時間が、呆気なく過ぎていった。





 アップが遅くなりまして申し訳ありませんでした。
 一応昨日のうちに完成はしたんですが、保存する前にPCが勝手に再起動しやがりまして……。
 とにかく出来はともかく、もう一度作り直しました。
 
 
 毎度の事ながら、こちらのほうをぽちっと押していただければ幸いです。

 

 拍手のほうもいただければ、明日への活力となります。

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  [ 未分類 ]   # 21  <固定リンク>

多忙ですか?
 最近ブログを書けてないな〜、と思う今日この頃。
いえ、PC自体には触っているんですが、別件を処理していたもので全くといって良いほどSSの更新をしておりませんでした。

 まあ別件というのはとあるところへ小説を出していたという話で。
完全な一時創作で、どうしても10日までに終わらせなければならず、送れてしまいました。
 まあ作品自体は自分で言うのもなんですが頑張れたと思いますw
 何度か推敲もしたので読み飽きた感がありますが。

 大学も今日からリーグ戦が始まりました。結構忙しくなるかと思いますが、出来る限り更新していこうかと思います。

 とりあえず明日までにはSSをアップしますんで、末永く見守っていてくださいな。

 



拍手をいただけると感激のあまりディスプレイが霞んでしまいます。
力不足のため返事は返せていませんが、ありがたくよまさせていただいております。



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