隠れオタでもいいじゃないか
主にPCゲームの二次創作を書かせていただいています。 あとは最近やっているゲームやら読んでいるラノベやらのこととか……。
記事一覧: 200705
- 05月28日(月) それはすぐ傍に(14)
- 05月20日(日) それはすぐ傍に(13)
- 05月09日(水) 感激ですよ☆
- 05月07日(月) これも一種の花嫁修業〜兄と恋人、それに小姑〜
- 05月03日(木) それはすぐ傍に(12)
- 05月02日(水) 進路指導をしましょう♪
05月28日(月) [ 藤浪朋子 SS ] # 30 <固定リンク>
- それはすぐ傍に(14)
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(14)
「ごめんなさい、また話の腰を折っちゃったわね」
先ほどの態度を隠すかのように明るく振舞う竹内先輩。
「気にしないでください。もともと言い出したのはこっちですから」
私たちは再び椅子に座りなおし昼食を再開した。昼休みもそれほど残っているわけではないが、すでに昼食もあらかた食べ終えてしまっている。
そのため私たちは午後のゆったりとした時間を味わっていた。
「ねえ、藤浪さん……」
何気なく外を眺めていると、恐る恐るといった声で話しかけられた。
もちろんこの部屋には二人しかいないので誰かは分かっているのだが、彼女がそんな口調になる理由が分からない。
「それって、もしかして……おしるこ……?」
「ええ、そうですが。それがどうかしましたか?」
もしかしても何も、確かに私の飲んでいるものは缶に記されている通りおしるこだ。
何の変哲もない購買に売っている代物だ。
「いえ……。ただね、そういうものを買う人が本当にいたんだなって。ほら、缶のおでんとかラ―メンとか。そういうのにはあんまり手を出す気にはならないから」
「そうですか? 私は結構気に入っているんですが」
そういいながらもう一口飲む私を、竹内先輩は物珍しそうに見ている。
「先輩もどうですか?」
少々恥ずかしくなり試しに勧めてみた。しかし竹内先輩はなんともいえない表情になって手元を見た。
「ええっと、さすがに昼食を食べながらはちょっと……。それに私にはこれがあるから」
苦々しげにそう答えながら水筒からコップに黒色の液体を注ぐ。
一目見何かは分からなかったが、一拍後に特徴的な香りが漂ってきた。
「コ―ヒ―ですか」
学校にコ―ヒ―を持ってくる生徒など初めて目にした。高校生がコ―ヒ―を飲むことはそれほど珍しくは無いとはいえ、昼食時に飲む光景には違和感を覚える。
「仕方なく、ね。最近練習してるのよ。それほどコ―ヒ―は好きじゃないんだけど、まあ自分で淹れたものぐらいは飲まないとね」
苦笑しながら魔法瓶のコップを傾ける。
「良かったら一杯いただけますか?」
今までコ―ヒ―を飲んだことがなかったため、また先輩が自分で淹れたということもあり、好奇心からそう申し出てみた。
「それって、このコ―ヒ―のこと?」
「はい。私コ―ヒ―って飲んだこと無かったんですよ。だから良かったら竹内先
輩のいれたのが飲みたいなって」
「う〜ん……どうしても飲みたい?」
「できれば……あっ、別にどうしてもって言う訳じゃないんですけど。たた竹内
先輩が入れたのなら飲んでみようかなって思って……」
無理にお願いしているみたいに思い慌てて弁解したが、なんだかかえって失礼
な言い方になってしまった。
なんと言っていいものか困っていると、竹内先輩は苦笑交じりでコップを差し出した。
「はい、どうぞ。といってもあまり期待はしないでね」
渡されたコップからは暖かな湯気が立ち昇っている。
見た目は深い黒色。家では誰もコ―ヒ―を飲まないため初めて目にするが、なんとなく大人の飲み物といった雰囲気が先立つ。匂いも嗅ぎなれないものでなんだか緊張する。
ゆっくりとコップを傾け、味合うように口に含む。
まず最初に口の中に広がったのはじゃりっとした歯ごたえ。
なぜ歯ごたえが、と思った瞬間、口の中いっぱいに舌を突くような苦味が広がる。
鼻を突き抜ける刺激的な匂いに思わず咽てしまった。
それにしてもコ―ヒ―とはこんなにも苦いものだったのか。
初めて飲んだが私にはこんなものを日常的に飲んでいる人が信じられない。
「どうかな?」
「え〜っと……、やっぱりコ―ヒ―はまだ私には早いみたいですね……。私って甘党ですからコ―ヒ―の苦味とかってよく分からなくて……」
そう応えると竹内先輩は軽い溜息をついた。
「やっぱりまだまだね……。これでも練習してるんだけどなかなか上手くならなくて」
「そんなこと無いですよ。料理だって作れるんですからすぐに上手くなりますよ」
「いえ……そのね…………料理もまだ練習中だから」
乾いた笑いをこぼす竹内先輩。
「えっと、ちなみに先輩の作った料理はなんですか?」
肉じゃが……の火の調節と、ハンバ―グ……の解凍。…………冷凍だから。それとりんごの皮むきを少し…………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「あ、卵焼きは自分で作ったわよ?」
「す、すごいですね〜。私なんて包丁すら握ったこと無いんですよ」
「そんなことないわよ。藤浪さんだってすぐに作れるようになるわよ?」
「そうですか〜? あはははは…………」
「うふふふふ…………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「「はぁ〜〜〜〜」」
二人同時に深い溜息をついた。
なんだか言っていて虚しくなってきた。さすがに包丁すら握ったことが無いというのはまずいだろうか。
「それにしても、女が二人も揃って料理ができないっていうのは問題よね…………やっぱり料理ぐらいできないとまずいのかしら」
落ち込んだ様子の竹内先輩。空になったお弁当箱を持ちながらなにやら考え込んでいる。
「だ、大丈夫ですよ。ほら、竹内先輩は絵が上手じゃないですか。だからそれだけで十分ですって」
我ながらフォロ―になっていないと思う。やはり私は他人の補助役には向いていないようだ。しかし自分で言ってなんだが、竹内先輩が絵の才能があるから言いというのならば、何の才能も無い私はどうなるのだろうか。
「でも上倉先生は男の人なのに料理が上手で、しかも絵の才能もあるのよね……」
「上倉先生が…………?」
以外だ。あのいかにも面倒なことなどやりたくないと前面に現している人間が料理をするようには到底予想できない。
「本当よ。鳳仙さんがいつも言っているから」
「鳳仙、さんが?」
鳳仙エリスと言いかけたが、さすがに彼女と親しい人間の前でそう呼ぶには躊躇われた。
しかしどうしてここで彼女の名前が出てくるのだろうか。
「ほら、鳳仙さんって上倉先生と一緒に住んでるでしょ。それで上倉先生がいつも料理を作ってるみたいなのよ。それで鳳仙さんが先生の料理はおいしいって――」
「一緒に住んでるんですか……?」
「あれ、知らなかった? 二人は従兄妹どうしなのよ。鳳仙さんがいつもおにいちゃんって言ってるでしょ? だから結構有名な話だと思ったんだけど……」
――そういう話か。彼女がおにいちゃんと慕う人間がいることは知っていた。けれど
上倉先生だと言うのは初めて知った。
胸の奥からなんだかよく分からない感情がふつふつと湧いてくるのを感じた。
上手く言葉に言い表すことができないが、とにかくいやな気分だ。
そんな気分を振り払おうと口を開きかけたとき、私の言葉はチャイムの音に遮られた。
「ごめんなさいね、また長引かせてしまって――って、なんだか謝ってばかりね」
急いで後片付けしながら謝罪の言葉を口にする竹内先輩。先ほどのチャイムは昼休みの終了の合図だったようだ。となれば授業開始まで後5分。私も同じように急いで後片付けを始めた。
「そんな、こっちこそ先輩の食事中に邪魔しちゃったみたいで。それに私は楽しかったですから」
「なら良かったわ。今度はおいしいコーヒーをご馳走するわ」
柔和な笑みを浮かべながら立ち上がる。
しかしどんなにおいしいコーヒーを出されたとしても、私に味が分かるのだろうか。
なんとなく不安な気持ちになってくる。
「それじゃあ出ましょうか」
教室を見渡し忘れているものが無いかを確認した先輩は、椅子を元の位置に戻し荷物を持ってドアの前まで来た。
二人揃ってドアを出たところで、ふと思い出したように先輩が口を開いた。
「そういえばあの絵のことだけど、やっぱり上倉先生に聞いてみるのが一番だと思うの。先生が描いたかそうでないか、どっちにしても何か知っていると思うから」
去り際にそんな言葉を残して先輩はそれじゃあ、と言って反対側へと歩いていった。
私はといえば、あれほど気にしていたというのに絵のことが頭から飛んでしまっていた。
それもあの良く分からない感情のせいだ。
今までに経験したことの無い感情。そんなもの迷惑以外の何物でも無いのに。いったいどうしてしまったというのだろうか。
「まったく……」
これ以上余計な苦労はしたくないのに。
私は頭を悩ませながら教室へと足を向けた。
どうも、やっとアップできました。
その割には内容が少ないといわれそうですが……。
まあ上手く区切りをつけようとしたらこんな感じになりました。
あんまぐだぐだ続けるのもどうかと持ったもので。
毎度のコトながら拍手はしっかりと見させていただいています。
ご返事が返せなくて申し訳ないとは思いますが、応援よろしくお願いします。
↓

05月20日(日) [ 藤浪朋子 SS ] # 29 <固定リンク>
- それはすぐ傍に(13)
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(13)
授業中だというのに全くといっていいほど集中できていない。
先ほどからずっと上の空で物思いにふけっている。
「はあ……」
私は今日何度目になるか分からない溜息をついた。
最近何かと溜息をついているような気がする。一回するごとに幸せが逃げていくというが、それならば私の人生は真っ逆さまだろう。
まあそんな迷信は信じていないのだが。
それに今の状況はそれほど悲観するものではなく、どちらかというと困惑していると言ったほうが正しいだろう。
――困惑。
そう、私は困惑しているのだ。
自分の気持ちが分からない。
今までは自分の気持ちなどに悩むことなどなかった。というより感情が揺さぶられることなどなかった。
他人に興味など持たず、淡々と過ごしてきた。
けれど近頃の私は変わってきたと思う。
きっかけはどうであれ、少しずつ世界が広がってきた。
この感覚は懐かしいものだった。
小さな箱庭の世界、真っ白な雪のような景色が少ずつ色づいていく感覚。
それと同じような想いを実感している。
だからこそ戸惑ってしまう。
今の私の感情はどの方向を向いているのか。
確かに私は上倉先生に惹かれている。これはまず間違いが無い。
けれど、その惹かれているというのはいったいどのような意味を持っているのだろうか。
先生という職業的な役割として?
それとも良い友人として?
あるいは異性として?
――それとも過去の思い出を引きずっているだけ?
考えるほどに分からなくなってく。
昨日の出来事――上倉先生に抱きとめられその温もりに包まれたとき、私は確かにあの人に惹かれていると感じた。
けれど冷静になってみるとさまざまな感情が駆け巡るのだ。
私がもっと単純だったならば、こんなに悩むことなどなかっただろう。
これだから中途半端な思考には嫌気が差す。
それに悩み事はそれだけではない。
机の中から取り出した一枚の冊子――撫子学園のパンフレット。
冊子を捲っていくと、癖のついたページが自然に開かれる。
もう何度開いたか分からないそのページには一枚の絵。
羽ばたく鳥と、舞い散る桜に彩られた学園。
見るたびにこれを書いた人物が知りたくなってくる。
私がここにいる理由となった絵だ。
一度その人物に会ってみたい。
そして話をしたい。
そうすれば私は、変われると思う。
別に確証があるけではない。しかしどうしても考えてしまうのだ。
箱庭の外へと連れ出してくれたあの暖かい手を。
そこまで他人に頼るのはどうかと思う。
しかしこの絵を描いた人ならば、私はもう一度歩き出せるかもしれない。
「えっ……?」
思いのほか絵に集中していたらしい。気がつけば午前最後の授業が終わっていた。
号令をかけたのは最前列の生徒、先生からも私のことが見えなかったため、そのまま号令をかけてしまったようだ。
誰か教えてくれてもいいのにと思う反面、誰も声をかけないのが当然だと思う。
私はあえてそうしているのだから。
とにかく授業が終わったのにここに留まる理由など無い。
パンフレットと財布を手に取り教室を後にした。
「さてと……」
購買でパンを買った後、私はとある場所を目指して食堂を出た。
階段を上り廊下を進む。迷いなく運ばれる足は、とある教室の前で動きを止めた。
――美術室。
目の前のドアに掲げられたプレートを確認し、数回深呼吸をする。
汗ばんだ手を制服で拭い、意を決して腕を上げる。
木がぶつかる乾いた音が廊下に響く。
昼休みの喧騒から離れたこの場所では、ノックの音も大きく感じらる。それとも普段よりも音が大きく感じられるのは私が緊張しているのだろうか。
「――上倉先生? どうかしましたか……?」
数秒の静寂の後、美術室からよく通る女性の声が聞こえてきた。
残念ながら私は上倉先生ではないのだが、彼女が来客者を上倉先生と思うのも当然だろう。
美術室に用のある生徒などほとんどいない。もちろん私も美術室自体の用事があるわけではない。
「失礼します」
一言断ってからドアを開く。
開けた視界の先に居るのは予想通りの人物。
「えっと、貴方は……藤浪さん、だったかしら……?」
彼女は予想外の来客に驚いたようだが、それでもすぐに私の名前を記憶の中から引っ張り出してきた。
一度しか会っていない、それも自分とは何の関係も無い人間のことを覚えていられるのには感嘆する。私なんて毎日会っているクラスメイトの名前さえも怪しいところがある。
いや、それは単に私が他人に興味を持っていないだけか。
「はい。こんにちは、竹内先輩」
軽く頭を下げながら竹内先輩に挨拶を返す。すると竹内先輩は少し驚いたような表情をした後、何故か小さな笑みを浮かべた。
そんな疑問が顔に出たのだろうか、竹内先輩は「ごめんなさい」と私に向き直った。
「久しぶりに竹内先輩なんて呼ばれたからなんか可笑しくて……。上倉先生にいたっては部活以外のときでも部長って――っと、ごめんなさい。また関係ない話になっちゃったわね」
竹内先輩はそう言うと可愛らしく微笑んだ。
元より美人といった印象を持っていたのだが、言動の端々から感じ取れる可愛らしさもあって、少女としても女性としても魅力的に感じられる。
「いえ、気にしないでください」
そんな先輩に羨ましさと憧れを感じるのは当然だろう。
「そう、ありがとう。それで藤浪さんの用事は何だっけ?」
「実は竹内先輩にお聞きたいことがあって」
そう言うと竹内先輩は手元に視線を落とし、やや困惑した表情を浮かべた。
「う〜ん、私もまだお昼の途中だから……。もし早く終わるんだったら先に藤浪さんの用事を済ませてからでもいいわよ」
申し訳なさそうな顔をする竹内先輩。こちらが無理を言っているのだからそんな顔をしなくてもいいのに。
きっと先輩は自分の仕事でもないのに、他人の世話を焼いて苦労する人だろう。
「心配しなくても大丈夫ですよ。ご一緒に昼食をお思いまして、今日はちゃんと買ってきましたから」
手に持っていたビニール袋を竹内先輩に掲げてみせる。
「ですから今日は分けてもらわなくても大丈夫ですよ」
そう答えると竹内先輩は本当に楽しそうに微笑んだ。
美術室にあった椅子を寄せて、竹内先輩と向かい合わせに座る。
私の昼食は購買のクラブハウスサンド。量がそれほど多いというわけではないが、もともと私は小食なのでこのぐらいでちょうどいい。
それに味のほうも撫子学園の中でもかなりの上位に入るものだ。
竹内先輩は自前のお弁当のようだ。
別段こったものが入っているわけではないが、一目見て栄養のバランスが考えられている物と分かる。
それに料理の作れない私にとって見れば、玉子焼きひとつでも難しい料理の部類に入ってしまうのだ。
いったいどのように作っているのか、私には理解できそうもない。
「そのお弁当、竹内先輩が作ったんですか?」
普通は母親が作るものだと思うが、なんとなく竹内先輩なら料理もそつなくこなしてしまいそうな印象を受ける。
「少しだけね。でも手伝ったっていうくらいで自分で作ったって言えるほどじゃないんだけどね」
照れたようにそう話す竹内先輩だったが、私にはとても羨ましく思えた。
私が母親にお弁当を作ってもらったのはいつの頃だったか。
少なくとも高校に入ってからは貰った覚えはない。
だからといって作ってくれ、などと頼むことなどできやしない。
馬鹿みたいに高い私の入院代を払うために遅くまで働いている両親。だから私がこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
「それでもすごいです。私は料理なんて全く駄目ですから」
だから純粋に憧れるだけ。料理を作れるのも、母親と一緒に何かできるのも。
「そうかな。まあもう少ししたら一人暮らしをするから、その練習みたいなものかな」
そういえば竹内先輩は受験生だった。美術部の部長をしているのであれば当然美大に行くのだろう。
「それで竹内先輩、ここに来た用件なんですけど」
昼食も大体食べ終えた頃、私は竹内先輩にずっと気になっていたことを尋ねた。
「この絵、美術部の人が描いたんですよね?」
横の机の上に置いておいたパンフレットを竹内先輩に見せる。
撫子学園の校舎とその前を羽ばたく鳥。そして囲むように舞い散る桜を描いた一枚の絵。
竹内先輩は私からパンフレットを受け取ると、その絵を食い入るように見つめた。
「誰が描いたのか分かりますか?」
「この絵……どこかで…………でも……」
よほどその絵が気になるのか、竹内先輩は私の声が聞こえないほどに集中していた。
「竹内先輩?」
「えっ? あっ、ごめんなさい。それでこの絵がどうしたの?」
もう一度呼びかけると、竹内先輩は驚いたように顔を上げた。
「この絵なんですけど、誰が描いたのは分かりますか?」
先ほどと同じ質問を繰り返すと、竹内先輩は何か考え込むような仕草を見せた。
「う〜ん、実は私もこの絵を見るのは初めてなのよね。ほら、このパンフレットは新入生用のものでしょ? それに私はこのパンフレットは貰わなかったから」
「それじゃあこの絵は生徒が描いたものじゃないんですか?」
予想外の答えだった。てっきり生徒の誰かが描いたものだと思ったのだが。
「違うとも言い切れないのよね。パンフレット用の絵を描いて欲しいなんて頼まれたことはなかったし……。でももしかしたら卒業していかれたOBの方たちの作品かもしれないから」
卒業生の作品だとしたらアウトだ。何の繋がりもない私には誰が描いたのか分かりそうもない。
「それじゃあ誰がこのパンフレットを作ったのか分かりませんか?」
「ごめんなさい、それはちょっと分からないわね……」
これで期待は費えてしまった。結局分かったのは今の撫子学園の生徒ではないといことぐらいだ。
「…………でもなんとなく見覚えもあるのよね」
呟くような言葉。
自分でも確証はないけれど、それでも絵描きの勘がそうだと告げるように、訥々と言葉を紡ぐ。
「本当かどうかは分からないけど、この辺りの色使いとか、独特のタッチとか……似てる気がするのよね……」
「その絵に見覚えがあるんですか!?」
似てると言う言葉に思わず身を乗り出してしまった。
「えっ、ま、まあ……。でもあくまで似てる気がするっていうだけだから……」
私の勢いに押されたように仰け反り気味になる竹内先輩。
慌てて元の姿勢に戻すと、竹内先輩もイスに座りなおした。
「それで、誰が描いたのかは予想がつくんですよね?」
「それなんだけどね、これを最初見たときに、上倉先生の絵に似てるなって……」
「上倉、先生が……?」
意外だった。いかにもいい加減そうなあの人がこんな絵を描くなんて。
しかし言われてみれば納得する部分もある。
以前に見た雪景色を描いた絵。あの絵を上倉先生が描いたというのなら、こんな風に事物の本質まで描き出した絵を描けるだろう。
「別に確証がある訳じゃないのよ? ただの推測だから……」
そう言葉尻を濁したが、それでも私にはこの絵を上倉先生が書いたのだとそう確信していた。
絵の技術についてなど無知もいいところだが、それでもこの絵から感じられる優しい雰囲気は以前に見たあの絵と同じように感じられる。
――いや、実際のところそれらの感銘さえも後付けなのかもしれない。
本当のところ、私はこの絵を描いたのが上倉先生であって欲しいと思っているのだろう。
雪国の絵と撫子学園の絵。それら両方が上倉先生の描いた絵ならば――それらの持つ優しく、暖かな懐かしい雰囲気が上倉先生のものならば。
私はそう望んでいるのだろう。
そしてあの幼き頃の思い出。
あの頃に出会った数々の絵を上倉先生の絵と結び付けている。
つまるところ、それは羨望。
自らの憧憬を他人を通して一つの形にしようとしている。
恋とは自らの理想を他人に投影しているだけだと言ったのは誰の言葉だっただろうか。
まさしくその通りだ。今の私は上倉先生を通してあの人を見ているのだ。
そして上倉先生があの人であって欲しいとも思っている。
まったく、なんておこがましい話だ。
「――だから私から言えるのは、その絵を上倉先生が描いたという可能性はあるということだけね。でもその可能性はかなり低いのよね。なにより上倉先生は自分から絵を描こうとしないから……」
「絵を、描かないんですか……?」
上倉先生が絵を描かない。それはつまり上倉先生があの人とは別人だということではないだろうか。
あの人があのまま絵の道を進んで行ったのかどうかは分からない。けれど絵を描くことを止めてしまうとは到底思えない。あの人にとって絵を描くというのは、呼吸をすることと同義と言っても過言ではなかった。
「そうなのよ。どれだけ頼んでも自分の絵を描こうとはしてくれないの……。確かに授業中にデッサンをすることはあるの。けれどそれはあくまで技術を見せるための絵。上倉先生の絵じゃないの……」
そう悲しそうに呟きながら席を立つ。部屋の隅にしまわれた一枚のデッサンを取り出す。
「そう、あくまで技術を見せただけの絵……。それなのに、どうして上倉先生の想いが溢れているんですか…………?」
「…………」
それは誰に向けた言葉だったのだろうか。
――私は何も言うことができなかった。
「ねぇ、先生……、どうして絵を描いてくれないんですか……。貴方の想いはどうなってしまったんですか……?」
こぼれる様に小さく呟いた彼女の言葉は、その相手に届くことなく静寂の中へと消えていった。
え〜、とりあえず申し訳ありませんでした↓
なんとなく完成はしていたんですが、どうしても途中の台詞回しが気に入らなくて、ずっと放置していました……。
ですがそのせいで文が長くなってしまったので、キリのいいところで締めました。やっぱどうしても長文になってしまって。(⊃Д`。)゜
兎に角もっと早く更新したいな〜〜。
かにしのオモシロ……
→清き一票をw
→疲れた心に栄養を。
テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学
05月09日(水) [ 未分類 ] # 28 <固定リンク>
- 感激ですよ☆
-
意外にもD.C.SSが好評でした。今までは1日の最高アクセス件数が800台だったのですが,今回は初めて1000件を突破しました!! しかも2日続けて!!
思わず色付になるほど興奮してしまいました……w
コメントも多くいただき,本当にありがたく思っています。
部活も一段落つき,ドラゴンSSも進められそうです.
今回は皆様のおかげでいつも以上にモチベーションを高く持てそうです.
ですが上には上がいるということで.
自分の尊敬するSS作家さんは3日続けて1000件越えだそうです.
まだまだ道は険しそうです.
一応ドラゴンの方を軸に書いていこうと思いますが,途中で1回ぐらいナーサリィ☆ライムのSSを書くかもしれません.
軸のSSを進めていると,途中で別のネタが浮かんでくるもので.
それでふと思ったのですが,ほかのSS作家さんはどんなときにネタが思い浮かぶのでしょうか.
ちなみに自分は食事中か通学途中,原付に乗っているときです.
入浴中に思いつく人が多いそうですが,自分は入浴中は何にも考えずぼ〜っとしています.
やっぱり偶にはリラックスしないといいネタ浮かびませんしね♪
まあその割には稚拙と言われるかもしれませんがw
皆さんのネタが思い浮かぶときも教えていただけると幸い.
今度自分でも試してみますから☆
05月07日(月) [ D.C. SS ] # 27 <固定リンク>
- これも一種の花嫁修業〜兄と恋人、それに小姑〜
-
眩しいほどの太陽がこの初音島を照らす夏の季節。
以前咲いていた桜は散ってしまいましたが、今は生命力溢れる新緑の葉が優しい木陰を創っています。
夏に入っても今日はいつもより涼しく、朝の清々しい空気が私を包んでくれるかのようです。
私――鷺澤美咲は幸せな毎日を送っています。
「ら〜らら〜」」
思わず浮かれてしまうほどの幸せ。掃除機をかけていると左手に輝く指輪が視界に入ります。それを見ているだけで踊りだしたくなるほどです。
今私がいるのは純一さんの――そういえばこの呼び方にも慣れてきました。最初は恥ずかしくて小声になってしまったんですが、今なら笑顔で言えるようになりました。
えっと、そうじゃなくて、今私は純一さんの家にいます。
別に何もオカシナことはありません。なんたって私は、その……純一さんの、ここここ恋人なんですから!!
これも一種の花嫁修業
〜兄と恋人、それに小姑〜
私が風見学園に転校してきた初日、私は純一さんの恋人になりました。
嬉しくって一日中浮かれていたのですが、後々聞いてみれば大変な状況だったそうです。
杉並さんから聞いたんですが、純一さんの周りには幼馴染とか、婚約者とか、学園のアイドルとか……、とにかくたくさんのライバルがいたそうで。
それからいろいろ有りましたが、とにかく私は純一さんの恋人になれました。
そんな純一さんですが、今は学園のほうに行っています。
学園は既に夏休みとなっているのですが、私たちの担任の白河先生に何か頼まれごとをされたみたいで、朝から出て行っています。
純一さんと会う約束をしていたのですが、用事があるのなら仕方がありません。
昨夜電話で昼から会おうという話になったのですが、私は朝から純一さんの家にいました。
純一さんが帰ってくるまでに掃除と洗濯を終わらせて、帰ってきたときに笑顔で「お帰りなさい」と言ってあげるんです。
そのときの純一さんの笑顔を思い浮かべただけで、足取りが軽くなります。
「あっ――」
うっかり純一さんの机の上に乗せられていた雑誌を落としてしまいました。
数冊の教科書が床に散らばってしまいました。
一冊ずつ拾っていくと、教科書には書き込まれた文字とマーカーでチェックされた跡がありました。
最近の純一さんはとてもがんばっています。
クラスの人たちが言うには、以前は口癖のように「かったるい」といって勉強もあまり真面目にやっていなかったそうです。
私が見る限りかったるいなんて言っているのを聞いたことは無いのですが……。
白河先生も、
「あ〜あれだね。ほら、鷺澤の前で格好悪い姿は見せられないってやつ? いや〜若いもんはいいねぇ」
なんて笑われてしまいましたが、きっと純一さんもいろいろと考えているんだと思います。
私も習い事やパーティーに出なければならないこともありますし、そうでなくてもあまり外出は出来ません。
ですからもっと時間を作れるように頑張っているのだと思います。
以前純一さんは私に相応しいように頑張るよ、と冗談交じりで言っていたのですが、きっと真剣だったんだと思います。
そのときの嬉しさを思い出していたらまた手が止まっていました。
慌てて片付けていくと、教科書ではない一冊の雑誌が目に留まりました。
「デートスポット特集……?」
そこには初音島とその周辺のお店が掲載されていました。デートスポットに最適なお店から穴場のお店など、写真と共に紹介文が載せられていました。
ページを捲りながら目を通していくと、とある場所が目に付きました。
「メイド喫茶――」
ふと思い浮かんだのは頼子としてこの家に来たときのこと。
懐かしい思い出。
メイドというのはどんな仕事なのかも分かっていなかった私を、純一さんは笑顔で家に置いてくれました。
紹介文の続きを読めば、そのお店は随分と人気だそうです。
「そういえば確か……」
前に屋敷の人たちに男の人はみんなメイドさんが好きだって話を聞いたことがあったような。
――えぇと、好きじゃなくて萌え? だったかしら……。
水越さん家の萌さんのことかと思ったけれど違うみたいでした。
とにかくメイドさんの格好をすると男の人は喜んでくれるそうです。
純一さんが帰って来るまでにはまだ時間はありそうです。そうと決まれば急いで家に帰らなければいけません。
私はもらった合い鍵で戸締まりをして家を飛び出しました。
「これでよし、っと…」
荷物を持って朝倉家まで往復30分、それからすぐにエプロンドレス――メイド服に着替えました。さらに頭には懐かしい物がついていました。
頼子のメイド服を取りに戻ったとき、屋敷にいたメイドさんに渡された猫の耳の様なカチューシャでした。
差出人は屋敷には珍しいフランクな人でよく私の相談にも乗ってくれた人です。
ちなみに男の人たちがみんなメイド好きだと教えてくれたのもこの人でした。
鏡に移る姿はあのころの頼子そのもの。純一さんを驚かせようとこの格好をしたのだけれど、思いのほか楽しんでいる自分がいました。
リビングで純一さんが帰って来るのを待つ。緊張して手を強く握ったり、純一さんの驚く顔を想像して微笑んだり、その後の甘い時間を思い 浮かべては頬を赤らめたり。
周囲に人がいれば奇異の視線で見られること間違いなしなのでしょうが、幸いなことに朝倉家には他に人はいませんでした。
ふと玄関に人の気配を感じました。
私はやや緊張した面もちで玄関に立ちました。
大丈夫、台詞はちゃんと覚えました。
ドアがゆっくりと開かれました。
――今です。
「お帰りなさいませご主人様。御食事になさいますか? 御入浴になさいますか? それとも御一緒に寝室へ参りますか?」
教えられた通りの台詞を間違えずに言うことができました。
ですが現れた人物は純一さんではありませんでした。
笑顔を浮かべた少女は玄関を開いた姿勢のまま固まっているます。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
二人の間には沈黙にカーテンが降りたまま。
動いたのは相手の少女でした。
現れたときの笑顔のまま、緩慢な動作でドアを閉じる。
私はというと状態が理解できず少女のいた場所を眺めるだけでした。
カウベルがわりの鈴の音が、静寂の間に小さく響きました。
カチッ、カチッ、カチッ――
玄関での邂逅から数分後、私と先ほどの少女はリビングで向かい合っていました。
私も彼女も混乱していたのでうやむやのうちにこのような状況になってしまいました。
二人とも無言、時計の無機質な音だけが正確なリズムを刻みます。
彼女は私のことを値踏みするかのように、上から下までじっくりと見回しています。
私はというと、緊張のあまり背筋を伸ばしたまま硬直しています。
純一さんのおかげで外に出るのは怖くなくなりましたが、まだ初対面の人と二人きりというのは緊張してしまいます。
ですが目の前の女性をどこかで見たような気がします。
「――それで、あなたはどちらさまですか?」
どうやら彼女は値踏みを終えたようです。
私が泥棒さんではないということは理解していただけたようですが、それでも訝しげな視線は変わっていません。
「ひゃっ、あ、あの……私は鷺澤美咲、です」
「では鷺澤さん。なぜあなたはこの家にいるのですか?」
「ふえっ? その、ここは純一さんのお宅ですよね……?」
私が純一さんの家にいると何か悪い理由でもあるのでしょうか。それとも家を間違えたのでしょうか?」
けれど彼女はその答えが気に入らなかったようで、眉をピクリと動かし、「純一さん?」と不機嫌そうに呟きました。
「あっ、純一さんというのは朝倉さんのことで……。それであなたはどうしてこの家に?」
「私がこの家にいるのは私も朝倉で、ここが私の家だからです。――それで鷺澤さん、あなたは兄さんとどのようなご関係で?」
にっこりと可愛らしく微笑む少女。
笑顔のはずなのに背中を駆け上がる悪寒はどうしてでしょう。
「あなたの、お兄さん……?」
さまざまな情報がピースとなって一つの事実に思い当たりました。
その決め手となったのは彼女の髪についていたリボン。
「黄色いリボンの音夢さんっ!?」
「何ですかその三下のような形容はっ!?」
「ひゃうっ!!」
「あ〜もう、いちいち悲鳴をあげないでください……。こっちが悪いような気がするじゃないですか」
「ご、ごめんなさい……」
どうしましょう。純一さんの妹さんに失礼なことを言ってしまいました。
ご家族へのご挨拶は第一印象が大事だと、屋敷であれほど教えられたのに……。
「話を戻しますけど、鷺澤さんは兄さんとはどのようなご関係で?」
「それは――」
「――それにはボクがお答えしてあげましょう!」
私の言葉を遮るように背後から声をかけられました。
びっくりして振り返ると、そこには印象的な金色の尻尾を二つ垂らした小柄な少女がいました。
「さくらちゃん?」「さくらさん?」
背後から現れたのは私の恩人のさくらさんでした。そういえばさくらさんは純一さんのお隣さんでしたので音夢さんとも幼馴染でした。
それにしてもどこから入ってきたんでしょうか。
「さくらちゃん、鷺澤さんと知り合いなの?」
「もちろんだよ。なんたってボクは仲人なんだから」
「仲人って………。それじゃあ鷺澤さんは……」
「そう、美咲ちゃんは――」
一拍の間の後、
「お兄ちゃんのメイドさんなのだ!!」
「……メイド?」
ぎぎぎ、と音がしそうなほどゆっくりと私のほうを向く音夢さん。
「いえっ、メイドだったのは昔の話で、今はその、純一さんの恋人、だと思います……」
けれど私の小さな声など届きません。
「もう身の回りの世話から口には出せないようなお世話まで。お兄ちゃんは美咲ちゃんの恋人、たとえるなら恋の奴隷ってことかな」
「メイドで、主人……メイドの奴隷……」
「まあまあ音夢ちゃん、そんなに落ち込んだら駄目だよ。お兄ちゃんには妹属性よりもメイド属性のほうが強かったんだよ。それに猫耳までついてたんだから」
呆然とする音夢さんに、さくらさんが説明を続けます。知らない単語ばかりでよく分かりませんでしたが。
「それに料理下手っていう萌え属性も、自分の身に降りかかってみれば迷惑以外の何物でも無いんだよ」
音夢さんはショックを受けたまま固まってしまいました。
さくらさんは「にゃはは〜」と無邪気に笑っています。相変わらず理解できない言葉がありましたが。
「――ません……」
「「えっ?」」
音夢さんが何か呟きました。思わず聞き返すと、音夢さんは勢いよく立ち上がり私をゆびさしました。黒い弾丸が飛んできてもおかしくありません。
「認めません!! 急に現れたメイドなんかに兄さんの隣を奪わせるものですか!!」
「きゃうぅ!!」
思わず悲鳴を上げてしまう私。けれどさくらさんは小さく溜息をつくと、音夢さんに暖かい眼差しを向けました。
「音夢ちゃん、そろそろ現実を見ようよ。電波貰ってばかりだとこれからが大変だよ? それに家事も全部美咲ちゃんがやってるんだから、もう音夢ちゃんの居場所はないんだよ」
「どういうことですか!っ? 私にだってこの猫耳メイドに無いものを持ってます!!」
「そういえばそうだね〜。美咲ちゃんは胸がおっきいから、ナイチチ属性は無いんだよね。う〜ん、でも胸が無いのをあるっていうのも変な話だよね」
「さくらちゃんが人のことを言える立場じゃないでしょ!!」
「でも僕の場合は体格的には普通だよ? 幼女属性を持ってるからこれはこれでありなんだよ。それなのに音夢ちゃんってば、顔だけはいいのに他は中途半端なんだよ」
あわわわわ、もう話についていけません……。
「妹属性だってボクと被ってるし、委員長体質なのに眼鏡じゃないし、病弱キャラなのに倒れたりしないし。それに比べて美咲ちゃんは――」
私のほうをちらりと見やるさくらさん。続いて音夢さんが思わず縮み上がってしまうほどの三白眼で私を凝視してきました。
「わ、私がなにか……?」
思わず聞き返すとさくらさんは、
「まずはお嬢様キャラ、それに何故か守ってあげたくなるオーラを出してるでしょ。あとは転校生。もうこれで音夢ちゃんの負けなのに、美咲ちゃんはメイドで猫耳なんだよ?」
子供をあやすように、優しく諭すさくらさん。私も相変わらず理解はできませんでしたが、それでもよく分からない説得力を感じてしまうのは何故でしょう。
「でもっ!! 私だって兄さんの隣にいる権利はあるはずです!! あのニュータイプにだって、ロボにだって、許嫁にだって、幽霊にだって、天然にだって引き分けてきたんです!! ……まあ似非ツンデレとの勝負は話になりませんでしたけど……」
それなのに、と小さく呟く音夢さん。
「私がライバルたちと引き分けて再戦を誓ったというのに、ぽっと出のメイドなんかに何で負けないといけないんですかっ!! この泥棒猫!!」
「あ、音夢ちゃんうま〜い。座布団一枚だね」
「ふざけないでください! ――とにかく、兄さんの恋人を名乗るなら私に勝ってからにしてください」
「そ、そのぅ……勝負というのは何をすればいいんでしょうか……」
ようやく意味の分かる内容になってきました。どうやら私と音夢さんで何かの勝負をするみたいですが。
「勝負事にはあまり自信がありませんが……。それでも純一さんの恋人として認めていただけるのなら頑張ります!」
「うっ、その純粋な視線が痛い……」
「うにゅ、音夢ちゃんがどこかに置き忘れてきちゃったものだね」
「……ま、まあいいでしょう。とにかく、兄さんの恋人を自称するのなら、家事ぐらいは全てできなくては務まりません。怠け者の兄さんはいつもかったるいと言ってばかりですからね」
自慢気に胸を張る音夢さん。
「音夢ちゃん、いくら胸を突き出しても無い物は無いんだよ……。それにね、お兄ちゃんはもうかったるいなんて言ってないんだよ。美咲ちゃんのおかげでね。あっ、もしかしたら音夢ちゃんといるのがかったるかったんじゃないの?」
無邪気に笑うさくらさんを呆然と見つめる音夢さん。
「そっ、そんなわけありませんっ!! いくら私が言っても直らなかった口癖なのに……もしかして本当に――いえ実は私が注意するからこその口癖だったんですね私に構って欲しくてあんなことを言うなんて……全く子どもですねやっぱり兄さんは私がいないとだめなんですから」
「あ、あの、あの……音夢、さん……? 大丈夫ですか……?」
「あ〜音夢ちゃん? 美咲ちゃんが怯えてるからそろそろ戻ってきなよ」
「鷺澤さん、準備はいいですか?」
「……音夢ちゃん、切り替え早いね」
「そうですか、それではまず家事の三本勝負からですね。最初の勝負は料理からです」
「…………音夢ちゃん? 確かに世の中には負けると分かっていてもやらないといけない勝負ってものがあるんだけどね、初めてから勝負の舞台に立つ資格がない人もいるんだよ?」
「あら、鷺澤さんは料理ができないんですか? ふふ、そんなことで恋人を名乗ろうなんて百万光年早いんですよ」
「…………ベタなツッコミの前に正さないといけないことがあね……。いい? 音夢ちゃんは産業廃棄物しか作れないでしょ? 処理できるお兄ちゃんがいないんだから料理なんでしちゃ駄目だよ」
「何を可笑しなことを言ってるんですか? 看護学校でだって私の料理は評判だったんですよ? 朝倉さんの料理を食べると昇天してしまう、辞世の句を書いてからじゃないと食べてはいけないって」
「そ、それは美味しかったのではなくて……」
「美咲ちゃん、そこにツッコミをいれたら負けだよ」
「もう、何をこそこそ話してるんですか? ほら、私はもう作りましたよ」
「「はやっ!!」」
「これが朝倉家の味なんですから。これを覚えてもらえなければ兄さんも喜んでくれませよ?」
――朝倉家の味――
その言葉を聞いたとき余分な感情など消し飛んでいました。
そう、これはいわゆる花嫁修業なのです。その家の持つ家庭の味を引き継ぐ。本来なら純一さんのお母様から教わることなのですが、純一さんのご両親は離れて暮らしているとの事。それならば純一さんの妹さんである音夢さんに教えていただくのは普通のことです。
「音夢ちゃん……? 美咲ちゃんは純粋なんだから嘘言っちゃ駄目でしょ? 朝倉家の家庭の味は裏にあるロー○ンのお弁当の味でしょ?」
「何のことでしょうか? 私にはさっぱり」
「…………そうまでして美咲ちゃんを亡き者にしたいんだね」
「まあまあ、さくらちゃんも席についてください」
万力のような力でさくらさんを席に押し留める音夢さん。ですが私はそんな様子に気づく余裕すらありませんでした。
「音夢さん!! どうか私に朝倉家の味を教えてください!!」
「まあ鷺澤さんったら。そんなに緊張しなくてもいいんですよ? あなたはいずれ私の姉さんになるかもしれないんですから」
「音夢さん……」
「…………ここだけ聴いていたら言い話に聞こえるんだけどね」
そう呟くさくらさんの肩には音夢さんの両手が置かれたままです。
「それじゃあ遠慮なくどうぞ」
「それでは、いただきます」
目の前に置かれた料理を一口。
唐突に視界が暗転しました。
「――音夢ちゃん、証拠の残らない毒殺って卑怯だよね……」
「大丈夫ですよ。これを食べたぐらいではせいぜい気絶がいいところです。――彼女にはこれからずっと苦しんでもらわなければなりませんから」
ごめんなさい純一さん。私は音夢さんと仲良くやっていく自信はまだもてません。
まあ小姑さんと仲良く過ごすのも一種の花嫁修業ということで。
コメディ難しいっす……。
ノリ的にもどっかで見たことのあるような感じだし、切りどころも分かんないし。
かなりお世話になっているSS作家さんに多謝。
みんなオラに元気を分けてけろ
↓
05月03日(木) [ 藤浪朋子 SS ] # 26 <固定リンク>
- それはすぐ傍に(12)
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(12)
十二月も中盤に入ってくると、風が一層寒くなってきた気がする。
手に息を掛けながら白い名残りと共に一人道を歩く。
さすがに雪が降るような気温ではないが、コートを羽織ってもいいぐらいだろう。
すっかり冬の装いとなった街を見ながら私は目に付いた建物へと足を向けた。
「いらっしゃいませ〜」
店員のやる気の無い声と共に穏やかな暖気が流れ込んでくる。
この時期になるとコンビニは既に暖房を入れているらしい。寒さで強張っていた手がゆっくりと温められていく気がする。
私は真っ直ぐに目当ての場所へと向かった。
そこに置かれているのはいわゆるタウン誌というものだ。その中から 私は迷わず一冊の雑誌を手に取った。名前はナデシコウォーカー。まあその名の通りこのあたりのショップやらお勧めスポットなどが乗せられているのだが。
私は順に目を通していった。
遊び場としてはスケートやスキー、屋内プールやボーリング場など。他にもデザートフェスタを行なっているケーキショップやバイキングの店などが割引となるクーポン券と共に載せられていた。
行ったことの無い場所だが写真を見ているだけで楽しくなってくる。
――行ったところで私に楽しめるものなどないのだから。
この体がもう少し丈夫ならばスケートもスキーもプールにも行けるのかもしれない。
だが一人で行って何が楽しいのだろうか。
私と共に行こうなどと考える物好きなどいないだろう。
まあ自業自得なのだが。
いずれ無くなるものなど欲しくは無い。
人と人との関わりほど希薄となるものは無い。
刹那的な幸福など、それ以降に続く永遠の悲しみの前には何の意味は無い。
私が望むのは平穏な日常。
平らな道に絶望という名の穴を掘ってまで、幸せへと届く坂を作ろうなどと思わない。
そんな坂、一度転げ落ちればそれまでだ。
淡々と過ぎる日常を機械的に過ごせば良い。
(――っと、そんなこと考えても仕方が無いか……)
思わず深く考え込んでしまった。
同じような思考を何度繰り返しただろうか。
いつも同じ結果が出る思考などまるでルーチンワークのようなものだ。
自分でもあまり建設的ではないと思う。
今は自分ひとりの小さな幸せをかみ締めていれば良い。
――そう、今は日常の中の些細な出来事でも幸福に感じられるのだから。
――だから、私の世界に入ってくる人間は最小限で良い。
例えば私の両親。
例えば病院の先生。
例えば保険室の先生。
例えば目の前にいる上倉先生。
………………何かおかしなものが混じったような気がする。
そう、薄い硝子を挟んだその先に。
「ってうぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」 店の中だというのに思わず奇怪な声をあげてしまった。
何か言おうと思っても、まるで金魚のように口を開閉するばかりで声が出てこない。
秘密にしておく光景を見られたというか、弱みを握られたというか、とりあえず失敗してしまったような気がする。
動揺する心を抑えきれない。
手に持っていたタウン誌を取り落としそうになり慌てて持ち直す。
もう一度視線を上げれば微笑ましそうにこちらを見やる教師の姿が目に止まった。
ふつふつと湧き上がってくる感情の前に、いつの間にか先ほどの羞恥が消え去っていた。
荒れる感情を隠そうともせず勢いよくタウン誌を閉じる。
視線の先にいる教師を硝子に穴が開くほどに睨みつける。
自動ドアが開き終わるのも待たず早足で男の目の前に立ちふさがる。
ちょぉーーーーっと、アンタッッ!!」
身体の奥から怒りを吐き出す。
何人の顔見てニヤニヤ笑ってんのよ!? ていうかなんでここにいんのよ!!」
「帰宅中にコンビニに寄ろうと思ってな……」
この男……、私の目の前で溜息をつき、加えて目線までも逸らしたのだ。
そのいかにもやれやれといった態度が怒りに拍車を掛ける。
「だからって人の顔見てニヤニヤしてんじゃないわよっ!! 用があるならさっさと済ませればいいでしょ!! なのにアンタは私のことをバカにしてっ……」
「別にバカになんてしてないさ。確かに藤浪のことを見て笑ったのは悪かったとは思う。だがな藤浪、もう少し落ち着いたらどうだ……?」
「うるさいっ!! なに余裕ぶってんのよ!? まともに話す気が無いなら最初から関わるんじゃないわよ」
一段上からモノを見たような態度。私のことを子ども扱いしているとしか思えない。
私を対等に見ていない。それが腹立たしさ以上に悔しくてたまらなかった。
「どいつもこいつも私をなんだと思ってんのよ!!」
それは心からの叫び。
皆が私から距離をとる。
誰しもが私を裏切る。
世界さえも優しさを覆い隠してしまう。
そして私は一人になる。
それは私の誓い。
私は皆と距離をとる。
私は誰も信じない。
私は一人の世界を作り上げる、
そして私は独りになる。
「あんたたちはいつも……いつも――」
ドクン――
「藤浪、あまり起こるのは身体に良くないぞ……。ほらこの前みたいに――」
ドクン――
「うるさいうるさいうるさーいっ!! あたしの病気のことを――」
――ドッ……
「っ!?」
それ以上言葉を紡ぐことが出来なかった。
「はっ、く、ぁ……」
いくら息を吸おうともがいても、肺に酸素が届くことはなかった。
変わりに吐き出される微かな呻き声。
胸を締め付ける圧迫感。
「ゃ……そん、な……っぐぅ……」
急速に光を失う世界。
既に足が地面を捉えている感覚さえなかった。
ブラックアウトしていく身体。
体から力が抜けていった。
朦朧とする意識を引き戻したのは冷えた体を包む暖かな感触だった。
「――み――薬は――か――」
微かに聞こえる声。その中の薬という単語に反射的に右腕はハンドバックを探していた。
その腕が誰かにしっかりと握られた。
力強さと暖かさを感じる。
それは何時か感じた温もりだった。
混濁する意識を繋ぎとめてくれる誰か。
胸を刺すような痛みを和らげてくれる優しさ。
夕日の中の出来事。
そんな懐かしい記憶。
(――おにーちゃん……?)
薄っすらと目を開ければ、そこにいたのは懐かしい人物ではなかった。
「……先生……?」
目の前にいたのは懐かしくはなく、既に見慣れた顔だった。
「藤浪っ!! 薬ってこれだろ?」
差し出された薬を掴み飲み込む。
薬を飲んでも痛みがすぐに治まるわけではない。けれども薬を飲んだという安心感か、それとも包み込むような温もりからか、気分は大分楽になった。
何分立ったか、時間の感覚など無くなっていた。
意識は徐々に回復している。そのため自分の置かれている状況がやっと理解できた。
吐息の掛かる距離にある上倉先生の顔。
硬く握り締められた右手。
抱きしめられた身体。
――誰が見てもこの状況を誤解するだろう。
けれど何故か振りほどこうとは思わなかった。
懐かしい温もり。
父親のような、おにーちゃんのような、なんともいえない力強さ。
男の人は皆、こんな暖かさを持っているのだろうか?
ふと周囲から視線を感じた。
見れば道行く人も、コンビニの店員も興味ありげにこちらを見やっている。
――急に恥ずかしくなってきた。
「……アンタ、いつまで手を握っているつもり……?」
間近にある顔をは軽く叩いてやろうと思ったけれど、右手はまだ自由ではない。
「握っているのは藤波もだぞ?」
「なぁっ!?」
言われてみれば強く握っているのは私も同じだった。急いで手を振り払うと可笑しそうに笑う上倉先生の顔が目に付いた。
「……忙しい奴だな」
「な、何言ってんのよ!? と、とと、とにかく、もう大丈夫なんだから離しなさいよ!!」
勢いよく立ち上がるが、まだ万全ではないためフラフラとよろめいてしまう。
「おいおい、無理するなよ」
そんな私を軽く受け止める上倉先生。
だがその受け止め方が問題だった。
「なな何やってんのよアンタッ!!」
「何って……藤波を支えてるんだろ。見て分からないのか?」
「そうじゃなくてっ!! あんたの右手が、その……私の、む、むむ胸に……」
そう、上倉先生の右手が見事に私の胸を覆っていたのだ。
「胸……? ああ、悪い、気づかなかった」
落ち着いた様子で手をどける一教師。そんな様子がさらに私を混乱させた。
(なんでそんなに落ち着いてんのよ。胸よ胸!! 普通もっと慌てるでしょうが!! それよりもさっき私のこと抱きしめてたし。でも倒れたのは私だし助けてくれたのは上倉先生だしやっぱりお礼を言うべきでだけどまずは誤らせてからでやいやいやそこは帳消しで――)
だめだ、何が言いたいのか分からなくなってきた……。
「あ〜〜〜っ!! とにかく、私はもう帰るからねっ!! バイバイ先生!!」
早足でその場から立ち去る。背後から上倉先生も別れの挨拶を返す。
背中で受けながら道を曲がる。
(そういえば、前にもこんなことあったっけ……)
前もちゃんとお礼を言えずに後で悩んだこともあった。
(そっか……。二度目、なんだよね……)
あの人は二度も私のことを助けてくれたのだ。
私は先生を突き放したというのに、もう関わるなと態度で示したのに、それでも私を包み込んでくれた。
足が止まる。
それはまるで、「おにーちゃん」のようだった。
顔が赤くなっているのは自覚している。
きっと誰が見ても変だと思うだろう。
方向を百八十度変更して数歩、顔だけコンビニの角から覗かせる。
幸いなことに上倉先生はまだ先ほどの場所にいた。
「あのっ!!」
どうしても言わずにはいられなかった。
「どうした?」
戻ってきた私に不思議そうな顔を向ける上倉先生。一層赤くなった顔を背け精一杯の勇気を振り絞る。
「ほ……ほんとはもっと早く治ってたんだけど……懐かしくって……甘えちゃったの……」
大きく息を吸い込み、上倉先生の顔を見る。
「ごめんなさいっ! ……それとありがとっ! それだけだから!!」
それだけ言うと急いでその場から離れた。すれ違う人が奇異の視線を向けるが関係ない。
恥ずかしさのほかに、心地よい高揚感を感じていた。
今ならはっきりと自覚できる。
鼓動が早くなっているが発作ではない。
落ち着かないのは別段変なことではない。
緩んだ口元は仕方の無いことだ。
だって私は、あの人に惹かれているのだから。
軽くなった足でアスファルトの地面を歩く。
十二月だというのに風は温かく心地よかった。
どうも〜ご無沙汰です。
予想以上のコメントをいただき感謝です。おかげさまで止まっていた筆が進みました。
皆様の意見を参考にいたしまして、軸はストーリー通り、とちゅうオリジナル要素も交えていこうかと思います。
ついでにこの勢いでGW明けにD.C.のSSを書いちゃおうかと思います。もうプロットは出来上がっているので、もしかしたら明日にあっぷできるやも知れません。
GWが終われば部活も大会が終わり一段落着くので、一気にスパートをかけまして6月中に終わるかと思います。
これからも応援よろしくお願いいたします。
押していただけると挫けそうになるときもがんばれます↓
テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学
05月02日(水) [ 未分類 ] # 25 <固定リンク>
- 進路指導をしましょう♪
-
最近どうもSSが進まなくて困っています↓
考えてみるに、どうにもキャラを動かしにくいのが理由ではないかと思うしだいで。
一応SSの趣旨としては、原作での朋子側の心情を書こう!! と思って始めたんですが、やっぱりあらかじめ決められたストーリーをなぞるのでは書いてるほうも微妙だなっとw
てなわけで次に何をアップしようか迷い中です。
一応候補としては、
屬修譴呂垢伊気法廚梁海
(ちょいとアレンジ。オリジナルストーリーも入れていこうかな、と)
D.C. 鷺澤頼子の短編SSをいくつか(こめでぃ〜テイスト)
ナーサリィ☆ライムSS(クルル+凛のストーリーといった感じ)
まあこんな感じでしょうか。D.C.も他にいくつか書けそうですが、まあ自分が書かなくてもそれ以上に面白い話をかける御方がいるので……。
リンクから飛んでいただければ納得できるはずです、はい☆
ナーサリィ☆ライムのほうは、原作での説明がなかった部分と物足りなかった部分を補完する形でまとめてみようかと。
皆さんから何らかの方針を指し示していただけると幸いです。拍手でもコメントでも構いません。
ぜひ若輩者にご指導ご鞭撻を。









