隠れオタでもいいじゃないか

主にPCゲームの二次創作を書かせていただいています。  あとは最近やっているゲームやら読んでいるラノベやらのこととか……。

「それは舞い散る桜のように完全版」2008年10月30日発売

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CLLANAD 一ノ瀬ことみSS 〜その二人、バカップルにつき〜
  CLANNAD 一ノ瀬ことみSS 
    〜その二人、バカップルにつき〜



 さんさんと降り注ぐ日差し。耳障りになるほどの蝉の声が輪唱に継ぐ輪唱を重ね、そろそろ殺意が芽生えそうになるのだが、まあ手を下すまでもなくすぐにお陀仏の時間なので情状酌量の余地はあるかもしれないなあと意識もうろうに考えてしまうほどの猛暑。
 人間は27度を超えるとアイスがほしくなるとかそんなことを聞いたことを思い出した藤林杏。ちなみに今現在アイスを食べながら水を張ったバケツに足を突っ込んでいるのだった。
「それにしても水に足つけるだけでも大分変わるものね。日陰に入れば風も気持ちいいし」
「ええと……」
 そんな姉の言葉への返答を詰まらせるのは妹の藤林椋。こちらも姉同様にアイスとバケツを使用しているのだが、表情はリラックスしている様子ではなく、逆に困惑しているように見える。
「こんな暑い日に学校に来させるなんてふざけてると思ったけど、これはこれでいいものね」
「で、でもちゃんと進路調査書を出してれば来なくて済んだんじゃ……」
「仕方ないじゃない。最近ことみのことで忙しかったのよ」
 その話は終わりだと言う様に手をひらひらと振る杏。確かに直ったバイオリンを取りに行ったり二回目のコンサート(という名の徴兵)を行なったりテスト勉強会をしたり演劇部を手伝ったりとかなり濃い毎日だった。受験生とは言いがたい日々だったけれど、そのメンバーは必死に勉強して大学に行くとうわけではない。意味合いとしては各々異なるのだが、ともかく充実した時間を過ごしていた。そのせいで夏休みに入るまで進路調査書を出し忘れていたというわけだ。
「ま、ことみが楽しんでたから良かったわ」
「うん。バイオリンちゃんと渡せたもんね」
「まさかあんなにカンパが集まるとは思わなかったわよ。ことみも随分慕われてるのね」
「あ、あはははは……」
 募金という字に脅迫というルビを振らせる姉の手腕を知る妹としては、手放しで喜ぶことが出来ない椋であった。
「そうねえ、今度はちゃんとバイオリンの勉強させたほうがいいかしら。どうせあのこのことだから時間は余ってるだろうし――――なんか風が弱くなってきたわね」
 そう杏が呟くと、先ほどまで髪を揺らす程度だった風が途端に扇風機並みの風量まで上がった。別に杏の言葉が言霊を持つだとか、風を起こすことが出来るだとか、ましてやどっかの女子高にいるゴドーワードの使い手だというわけでもない。
 ただ目下の人間を扱うのに長けているだけだ。
「それって僕のことですかね……」
「あれ? 自覚なかったんだ。あんた意外に誰がいるのよ」
 金髪の男子生徒を小間使いのように扱う杏、その姉と下僕のように扱われる不良生徒とをおろおろと見比べる椋。そして両手に団扇を持ちながらも自身を扇ぐことの出来ない春原。この三人が現在中庭にいる人間であった。
「にしてもこのアイス味は確かにいいけど量がいまいちね。あっ、別に椋のことを言ってるわけじゃないのよ。私が言ってるのはこのアイスが少ないってことだからね」
「う、うん。分かってるから」
「これだけで私を満足させようだなんて……いったい誰がこれ選んだのよ」
「あんた……人に買ってこさせておいてふざけたことぬかしやがりますね……」
「――はぁ?」
「ひぃっ」
「あんたさあ、勘違いしてない? 私は、あんたに、買ってこさせてあげたのよ? それともなに、まさかボタンにした仕打ちを忘れたわけじゃないでしょうね?」
「はははいっ!! もちろん覚えてますっ!!」
「それならいいんだけどさ。でもそれにしては気が利かないわね。まさか一個ずつしか買ってこないなんて思わなかったわ」
「で、でもですね、その……お金のほうが……」
「お金ならちゃんと渡したでしょ? 二人合わせて二百円」
「そのアイス一個が三百円もするんすけど……」
「あんた馬鹿ぁ? そこを何とかするのが男の甲斐性ってもんでしょうが。それに世の中にはお金も渡さずに買いに行かせる人間もいるのよ? それに比べたら二百円も払ってるんだからありがたいと思いなさいよ」
「お、お姉ちゃん。マンガと比べたら駄目だよ……」
 姉が映画のときだけ人が良くなるガキ大将のようになってしまうのを恐れる妹だったが、『利用できるものは自分だけではなく、他人にまで利用させる』をモットーとする姉に対しては言うだけ無駄である。
「というわけでさっさと行って来なさい。今度は三十種類以上あるとか自称してる店でいいわよ」
「それってかなり遠いですよね……」
「うん。溶けないうちに頼むわよ」
「あんた鬼ですね……」
「わ、私は一つで十分だから。二つも食べたらお腹痛くなっちゃうし……」
「あんたのせいで椋の体調が悪くなったら殺すわよ」
「もう無茶にもなれました……」
 そんな会話もいつものこと。杏が春原に重めの突っ込みを入れるのは普段どおりであり、妹が慌てながら止めに入るのもまた普段どおりである。
 ただそこにツッコミを入れる人物が一人足りないのを除いて。
「ったく、第一なんで岡崎を呼ばないんだよ。最近バイトしてるみたいだから僕よりあいつのほうが金持ってるよ?」
「へー、あいつバイトなんかしてたんだ」
 意外そうに声を上げる杏に、これまた意外そうな表情を浮かべる春原。
「知らなかったのか? 芳野――四月の終わりぐらいに知り合いになった人のところで電気工のバイトだかなんだかって言ってたけど……もしかして杏が不機嫌なのってそのせいだったりして」
「……どういうこと?」
「岡崎がバイトで忙しいせいでなかなか会えなくて、そのせえぶしっ!!」
 最後まで言い切るまえにその首は真横に向いていた。無論意識的にそうしたわけではなく、外部からの刺激のためである。
 奇声を発しながら地に伏した春原の顔に張り付いたのは、全千七百項以上にも及ぶ国語辞典であった。
「――って何すんだよ!!」
「ゴメンゴメン、ちょっと手が滑ったの。それで今なんて言ったの? ちょっと飛行機がうるさくて聞こえなかったわ」
「どんな手の滑り方だよ……だから、杏が不機嫌なのは岡崎が――」
 奇声を発するまもなくノーモーション、加えてゼロ距離から放たれたのは最近では使うこともめっきり少なくなった英和辞典。
「岡崎が――」
 四字熟語辞典。
「岡――」
 漢字字典。
「お――」
 古語辞典。
「――」
 漢和辞典、英英辞典、独和辞典、中和辞典、仏和辞典、蘭和辞典、伊和辞典などなどなど。
「お、お姉ちゃん……? それって必要なの?」
「備え有れば憂いなしって言うでじゃない。それに、こういうときに役に立つでしょ」
 辞典に埋もれた物体を指差しながらそう言い切る杏に、椋は溜息をつかずにはいられなかった。
「あ、あんた……殺す気ですか……?」
「あら、案外早く復活したわね」
「死んだ爺さんに腕を引っ張られるとは思わなかったけどね。つーか僕じゃなかったらやばかったぞ」
「あんたじゃなかったらやらないわよ」
「お姉ちゃん……」
 やんわりと姉を窘めるものの、椋が春原に謝罪することは絶対にない。彼女の中でのヒエラルキーは、杏=朋也>姉よりも発達した胸囲>トランプ>占いの結果>お気に入りのリボン>その他私物>ボタン>||超えられない壁||>両親>=友人 で既に固定されており、ランク外のものは無価値同然。無論のこと春原も同様であり、朋也と一緒にいないのであれば塵ほどの価値も持たないのである。
「あんたら最悪だよ――って、うん?」
 愚痴を呟いていた春原であったが、ふと校門のほうに人影があるのに気がついた。目を顰めて手でひさしを作る。つられて杏、椋の二人もその人物に目をやった。
「……なんだかあの子を見たとたんに気分が悪くなってきたんだけど」
「そりゃあんたの馬鹿で低脳な頭じゃあの娘の半径十メートルには近づけないでしょうね」
「あん? それどういう意味だよ?」
「頭のつくりが違うってことよ。ていうか近寄らないでよ。ヘタレ菌が移るから」
「誰がヘタレだよ!?」
「あんたに決まってるじゃない」
 そんな会話をしているうちに、その話に上がった少女が三人の姿に気がついた。進行方向を変え、ぽてぽてと小走りに駆け寄ってくる。
「やっば、可愛すぎでしょ……」
「……話には聞いてたけど杏ってバイ――」
「なんか言った?」
「い゛え゛……ずみばぜんでじだ」
「ん、よろしい」
 そんな二人を尻目に少女は椋の前まで駆け寄り、手を前にそろえて行儀良く頭を下げた。
「杏ちゃんこんにちわなの」
「やっほーことみ」
「椋ちゃんもこんにちわなの」
「こんにちはことみちゃん」
 頭を下げあう少女二人。ただ杏と椋の足はバケツに入ったままである。
 リプレイをするかのように寸分たがわぬ動作で頭を下げることみ。相変わらずの仕草であったがそこもまた魅力である。
「うひょー可愛いじゃん。君名前なんていうの?」
「珍しいわね。今日は朋也と一緒じゃないの?」
「朋也君は夕方までアルバイトなの」
「え、朋也の知り合い? そっかー、僕岡崎の友達なんだ」
「ことみちゃんは学校に何か用事ですか?」
「図書室にご本を読みに来たの」
「ねえ今暇だったりする? 僕さあこの前面白い店見つけたんだ。よかったら一緒にどう?」
「杏ちゃんたちはどうして学校にいるの?」
「あー、実は進路希望の紙出し忘れてて、担任に呼び出されちゃったわけよ」
「私はお姉ちゃんの付き添いです」
「あの〜? もしも〜し?」
「にしてもことみも暇ねえ。もしかして一日中本読んでるんじゃない?」
「そんなことないの。朝は朋也君のお弁当作ってたの。そのあとお家の掃除をして、お昼ご飯を食べたの。今日は夏らしくうなぎを入れてみたの。うなぎはビタミンB1の不足を助けてくれるからおすすめなの」
「そうそう。それに意外と簡単にできるのよね。でも最近ちょっと高いからねー」
「あんたら人のこと無視しすぎですよ……」
「あら、あんたまだいたの?」
「いたよっ!! ていうかさ、この娘さあ杏の知り合い?」
「知り合いっていうか友達ね」
「うげ、杏のつれかよ……でもけっこう可愛いし……岡崎のことも知ってるみたいだし……」
「あんた何ぶつぶつ言ってんのよ。いくら人間失格だからって他の人に迷惑かけないでよね」
 実際かなり辛らつな台詞なのだが、既に自分の思考に入ってしまっている春原に聞こえようもなかった。
「よっし決定。ねえ君、岡崎の知り合いだよね?」
「朋也君?」
「そうそう、僕はその朋也クンの親友なんだよ」
 小首を傾げることみのリアクションにぐっと右手を握る春原。確かに『会話に興味を持ってもらう』というナンパの第一段階は突破したのだが、どうしようもなく報われないのが春原たる所以である。
「こんにちは、はじめまして。3年A組の一ノ瀬ことみです。趣味は読書とお料理とバイオリンです。もしよかったら、お友達になってくれると、うれしいです」
「ことみ……あんたまだその挨拶なの?」
「???」
「ま……ことみらしいからいっか」
「私も可愛らしくていいと思いますよ」
 二人に誉められて顔を赤らめることみ。その無垢な笑顔に同性であっても引き込まれてしまう二人だった。しかし残念ながら残りの異性に対しては効果がなかった。
「おおおい杏……なんで一ノ瀬ことみがここにいんだよ……」
「何でって、友達だからに決まってるでしょ。っていうかあんた顔真っ青じゃない。もとから変な顔がどうしようもないくらい変になってるわよ」
「余計なお世話だよっ!! 大体僕はこいつにウマシカがあるからあんまり話したくないんだけど」
「馬鹿はあんたよ。第一こんな可愛いことみのどこが怖いのよ。ね〜」
 ぎゅっとことみを抱きしめる杏。この暑い中くっ付くのはどうかと思うのだが、ことみはそんな些細なことは気にならないほどの魅力を持っているのである。
「どう見たって僕や岡崎とはそりが合わなさそうじゃん」
「え……でも岡崎君とことみちゃんは……」
「とっても仲良しなの」
 春原の言葉に首を振り、強めの口調で否定することみだったが、春原は馬鹿にしたように鼻で笑い取り合おうとはしなかった。
「そんな嘘言っちゃって。僕は岡崎のことなら何でも知ってる言わば親友なんだぜ。その僕がお前のことを聞いたことがないんだから。どうせならもっとバレ難いウソにしなよ」
「そんなことないの。朋也君と仲良しなの」
「っていうか岡崎のこと名前で呼んで馴れ馴れしいんじゃない? なんか自分のものだ〜って主張してるみたいだぜ?」
「朋也君は私のものじゃないの」
「だろうね。さすがにそこまで図々しかったら終わりだよ」
「……私が朋也君のものなの」
「…………」
「…………」
「ことみ、あんた結構大胆なこと言うのね」
 いろんな意味で固まった二人。言ったことみ自身も杏に指摘され真っ赤になっていた。
「えっと……岡崎のものって、なんのことですかね?」
「二人の仲が良いってことよ」
「僕、そんな話聞いたことないんですけど……」
「朋也があんたに言わなかっただけじゃないの?」
「そ、そんなことあるわけないじゃないか。だいたい僕と岡崎はいつも一緒に……」
「それって春頃までじゃないの? 最近は全然いないじゃない」
「え〜っと……」
「第一あんた朋也に彼女できたの知らないでしょ」
「………………はい?」
「はいはい、もうその反応だけで分かったからいいわよ」
「…………ま、まったまた〜、そんなこと言っちゃって、僕をからかうつもりなんだろ?」
「……はっ」
「ね、ねえ委員長?」
「えっと……」
「…………マジで?」
「マジよ」
「本当、です……」
「本当なの」
 一様に頷く三人。
「……彼女って、誰……?」
「ことみよ」
「ことみちゃんですけど……」
「わ、私……朋也君の、か、か……彼女、なの……」
「うっは〜〜〜ことみってば可愛すぎよ。もって帰りたいぐらいだわ」
 再びことみを抱き寄せる杏。椋は大胆すぎることみの言葉に真っ赤になっているし、本人にいたってはもう茹で上がっている。
「こ………………このドロボウ猫がーーーーーーーーっ!!」
「何すんのよっ!!」
 下から右へ、十字キーをすくい上げるお決まりのコマンドと強Pによって杏の手から放たれた現代用語辞典。既に廃刊となった千ページ越えの必殺ディクショナリー、『イミダス』が寸分たがわぬコントロールで眉間に直撃していた。
「ことみに手を出したらぶっ殺すわよっ!!」
「も、もう止めてお姉ちゃん!! 春原君のライフはとっくに0よっ!!」
「り、椋…………仕方ないわね。でも、今後ことみに手を出そうとしたらそのときこそあの世に送ってあげるわ」
「だ、だから聞こえてないから……」
「ったく、春原のせいで汗かいちゃったじゃない。水も温くなってるし……そういえば図書室ってクーラーついてなかったっけ?」
「お休みだから閉まってるんじゃないかな」
「でもことみって図書室の鍵持ってんでしょ? だったらクーラーもつけれるんじゃないの?」
「それは別の部屋だから鍵は持ってないの」
「う〜ん……そっか。まあ仕方ないわね」
「それだったら私のお家に来るといいの」
「ことみの家に?」
「でも突然お邪魔したら迷惑じゃ……」
「大丈夫なの。お部屋はとっても綺麗。それに昨日朋也君がかき氷の機械買ってきたの。しゃりしゃり動かしてとっても美味しいの」
「へぇ〜、それはいいこと聞いたわ。ほら椋、急いで準備しましょ」
「わ、お姉ちゃんちょっと待ってよ」




「それよりもことみ、怪我はない?」
 歩きながら尋ねる杏の言葉に、ふるふると首を横に振ることみ。それを見てようやく杏は深く息をついた。
「良かった〜。ことみに傷がつくところだったわ」
「どこも傷ついてないの」
「あ〜〜〜、そういう傷じゃないから」
「???」
「え〜っと、なんていうか、その…………椋パス」
「ええっ!? 私が説明するの!?」
「椋ちゃん?」
「うぅ……えっと、その……ね、なんというか……」
 必死になって適切な言葉を捜す椋。所謂アレだ、赤ちゃんはどこからやってくるの? という質問を聞かれた姉の心境だろう。
「こ、恋人同士が結婚前に仲良くすることです」
 真っ赤になりながら何とかギリギリ妥協できるラインで言葉を選んだ椋。けれど三大欲求の上に知的探究心が君臨することみにとっては曖昧な答えでは納得できなかったようだ。
「??? 朋也君とはいつも仲良しなの」
「そういう意味じゃないんだけどね……」
「えっと、ことみちゃんもそのうち分かるようになるんじゃないかな」
 ことみを微笑ましい様子で見守る二人。対してことみは不満げに頬を膨らませている。それを見てことみに抱きつく杏。そんなことをしている間にようやくことみの家へと到着した。
「とりあえず朋也と仲良くしてればそのうち教えてくれるんじゃない?」
「ちょっ、お姉ちゃん!?」
「それか夜のお城につれてってほしい〜、とか朋也に頼んでみたら?」
 からかうように笑う杏、真っ赤になる椋を不思議そうに見ていたことみだったが、小首を傾げると玄関の鍵を開けながら一言答えた。
「夜のお城にはこの前一緒に行ったの」
「……………………」
「……………………」
「???」
「……………………」
「……………………」
「ふたりとも、どうぞなの」
「ってそうじゃなーーーーーーーーーーいっ!!」
「??? いらっしゃ〜い」
「んなお約束なボケなんか頼んでないわよっ!! てか錆び付いたギャグなんか面白くもなんともないわよ」
「??? うぇ〜るか〜む」
「ちっがーーーーーーーーーうっ!!」
「……いじめっ子」
「だーかーらっ、そうじゃないって言ってんでしょうがっ!! ほら、椋もいつまでぼけっとしてるのよ。く、詳しいことは家の中でゆっくり聞かせてもらうからね」
「わわっ」
「???」
 二人の背を強引に押していく。かって知ったる他人の家、居間へと二人を連れて行くと杏は隣に椋を座らせ、自分はことみの正面で足と腕を組んで座った。
「……で、さっきのはどういうこと?」
 ちょっと言いにくそうに、頬を赤らめて詰まりながらそう尋ねる杏。対してことみは相変わらず質問の意図がつかめないようで不思議そうな表情を浮かべたままだ。
「だ、だからその……よ、夜のお城がどうとかって話よ」
 なんとかそう話すとことみはようやく納得が言ったようで小さく声を漏らした。
「この前朋也君と夜のお城に行ったの。朝からずっといて一杯楽しんだの」
「あああああああ朝からぁ!?」
「はわわわわ」
「???」
「だだだ……だから、ことみ……もしかして初めてって……」
「初めてじゃないの。何回かいったことあるの」
「………………は?」
「…………」
「ぐるぐる回るのが面白かったの」
「ま、回る…………?」
「〜〜〜〜〜〜!?」
「お馬さんにも乗ったの」
「――――っ!?」
「(――――ぼん)」
「安全のためだって言われてぎゅっと縛られたのは窮屈だったけど、初めてのったから新鮮だったの」
「…………」
「(――――ばたん)」
「一緒に乗ったりもしたの。びしょびしょになっちゃったけど楽しかったの。実はちょっぴり怖かったけど、それは内緒なの」
「…………」
「水着を持ってこればよかったかなって朋也君も言ってたの。あと中は鏡が一杯あったの。ドレスとっても可愛くて、朋也君に写真を撮ってもらったのはちょっと恥ずかしかったけど、でも朋也君が可愛いって言ってくれてすごく嬉しかったの」
「(ぱくぱく)」
「杏ちゃん、金魚の真似?」
「(ぶんぶんぶん)」
「???」
 ぱくぱくと閉口するだけで声にならない叫びを上げる杏とクエスチョンマークを浮かべることみ。そんな無言の会話のBGMに聞きなれた声が混じってくる。続けて足音。それが段々と近づきドアを開く音と重なった。
「ただいま、ことみ。それと……やっぱお前らか。靴があったか――」
 瞬間、首を締め上げられた朋也の言葉はそこで途切れた。
「ああああああああああんたことみになにやってんのよ!?」
「〜〜〜んだよ突然!? 放せコラ――って、お前なんで顔真っ赤なんだ? それに泣いて――」
「泣いてないわよ!? ちょっと驚いただけよっ!!」
「だーーーーっ!! だから何にだよ!?」
 つかみ掛かってくる杏、必死にいなす朋也、おろおろとすることみ。ちなみに椋は行動不能。


「弁解の余地はないわよ」
 それから五分、必死に戦い続けたものの結局杏の気迫に押される形で朋也は床に正座をしていた。
「……なんで俺がこんなことしなきゃいけないんだ?」
「うっさい!! ネタはもう上がってんのよ。あんたがことみにした仕打ちは許されないんだからねっ!!」
「はぁ? 俺がことみに何したってんだ?」
「な――――な、何って、その…………ナニ?」
「…………は?」
「???」
「だだだだだだからっ!! っ、その…………あんたと、ことみが……ラ、ラララ、ラブ……に……
「…………何の話だ?」
「と、とぼけても無駄よっ!! ほらことみ、さっきの話最初からもう一回繰り返して!!」
「杏ちゃんこんにちわなの」
「戻りすぎよ!! だから玄関に入るときの話からよ!!」
「? 了解なの。えっと、夜のお城にはこの前一緒に行ったの」
「そう、それよそれ。で、朋也。何か言いたいことは?」
「言いたいことって…………行ったけど、それがどうかしたか?」
「どうかしたかって、あんたことみのこと考えなさいよねっ!!」
「べつにことみだって子供じゃないんだし問題ないだろ」
「子供じゃないって……あんた年じゃなくて精神的なことを考えなさいよ!!」
「杏ちゃん、耳がきーんってするの……」
「ごめんねことみ。でもこの万年発情期のお猿さんに注意しとかないとことみが大変なことになっちゃうのよ」
「大変なこと?」
「え…………あ、うんうん。大変なこと。だからもうちょっと待っててね〜。
 で、何か遺言は? 誰にも伝えないけど聞いておくぐらいはしてあげるわよ」
「お前酔っ払ってんのか? 全然意味わかんねえよ」
「まだ言ってんの!? だからあんたがこの前ことみを連れてった…………夜のお城のことよ」
「夜のお城? ああ、遊園地のことか?」
「…………………………………………へ?」
 たっぷり数十秒。十分すぎる間をとった返事は女の子らしからぬものだった。
「だからナイトパレードのことじゃないのか?」
「…………ことみ。さっきの続き」
「この前朋也君と夜のお城に行ったの。朝からずっといて一杯楽しんだの」
「ああ。昼前から行ったよな。ことみはまた弁当作りすぎたけどな」
「……ちょっと反省なの」
「まあ全部美味かったからいいけどな」
 ぽんぽんとことみの頭にてを乗せる朋也。それだけでことみの表情はほころんでいた。
「…………次」
「? 初めてじゃないの。何回かいったことあるの」
「まあ遊園地はいろんなところ行ったな。ちょっと遠出したりもしたし」
「その次」
「ぐるぐる回るのが面白かったの」
「ああ、楽しかったな。あれなんて名前だっけ?」
「ミュージックエキスプレスなの。定員四十名、最高七メートル、最高時速三十キロメートルの遠心力を利用したアトラクションなの」
「そうそう。終わった後ことみ目回してたよな」
「三半規管が揺れてぐるぐる……」
「次」
「おい杏。さっきからどうしたんだ?」
「次っ!!」
「お馬さんにも乗ったの」
「確かに乗ったけど、あれはことみがどうしてもって言うからだよ。この年になってメリーゴーランドはちょっと……」
「でも私は初めて乗ったの」
「いや、ことみはどっちかって言うと似合うけどな」
「……ありがとう」
「俺はことみが楽しそうにしてるのを見てるだけでも楽しかったけどな」
「私は朋也君と一緒に居るだけで楽しいの」
「……そっか。でも一緒に遊ぶのも楽しかっただろ?」
「うん。でもウォータースライダーは冬に乗ると大変なの」
「確かにな。でも冬には冬の楽しみ方ってもんがあるんだよ」
「朋也君とっても物知りなの」
「こういうのは知識じゃないよ。でも冬になったらまた行こうな。あそこのパレードだって時期によって内容が変わるらしいからなさ
「わあ……とっても、とっても楽しみなの」
「だな。でもさ、他にもいろいろ楽しいことはあるぞ。今度は部長とかも読んでバーベキューやってもいいし、どっか泊まりで行くのもいいし――そういえば早苗さんもことみに会いたがってたな。あのおっさんは邪魔だけど今度遊びに行くのもいいかもしれないな」
「うん。渚ちゃんともいっぱい遊びたいの」
「〜〜〜〜〜」
「ん? どうかしたか杏?」
「杏ちゃん?」
「うがーーーーーーーーーっ!!」
「――――っ!?」
「〜〜〜!?
 さっと朋也の後ろに隠れることみ。朋也も突然奇声を上げた友人に唖然とする以外の行動は出来なかった。
「き、杏?」
「うっさいわね!! どうせあたしの勘違いよ!! 勝手に変な想像してる可笑しな女よ!! 何よ、笑いたければ笑いなさい。ほら笑えばいいわ。あーーーはっはっは」
「…………大丈夫か、杏」
「杏ちゃん…………」
 暖かい眼差しにまずいと思ったのか、崩れ去りそうなアイデンティティーをなんとか必死に繋ぎ止めようと小さく咳払いをした。
「そ、それでことみ、遊園地は楽しかった?」
「うん」
「それは良かったわね〜。それじゃあ今度はみんなで行こうね〜。もちろんことみの彼氏の奢りで」
「待て待て待て。何で俺がお前の分まで払わなきゃいけないんだよ?」
「うっさいわね。そのぐらいの甲斐性は見せなさいよ」
「ことみの分はもとから出してるよ。俺が言いたいのは何でお前の分まで出さなきゃいけないかってことだよ」
「あら、私の分だけじゃないわよ。椋と部長の分もよ」
「……いい性格してるよ。なあ、ことみもなんか言ってやれよ」
「……彼氏……彼氏……彼氏……」
「あら、駄目ねこれは。もう3ヶ月もたったんだからいい加減慣れたと思ったんだけど」
「あんまりそういうことは言われないからだろ? というかことみもだけど、なんで藤林は倒れてるんだ?」
「あー、えっと……日本語の難しさを思い知ったから?」
「手持ちの辞書は何のためにあるんだよ」
「または音楽性の違い?」
「バンドの解散かよ……」
 そんなぐだぐだとした心地よい漫談を数分続けているうちに椋も目を覚ました。
 未だ夢心地なのかぼんやりとした表情のままきょろきょろと辺りを見渡している。
「あれ……お姉ちゃん? ここって……」
「や、やっと起きたのね〜。椋ったら眠いー、とか言って突然寝ちゃうからビックリしちゃった〜」
「え…………ええぇ!?」
「おまけに起こさないでよー、とか言うもんだからどうしようかと思ったわよ」
「そ、そうだったんだ……それじゃあさっきのやっぱり夢なのかな……」
「そうそう。当然夢よ!! それで椋はどんな夢見ちゃったのかな〜?」
「あう、え……っと、その…………な、なんだっけ? 忘れちゃった……」
「まあ夢だからね〜。忘れちゃっても仕方ないか」
「そ、そうだよね」
「そうそう――――なんとか誤魔化せたみたいね
「――というかお前らは何でここにいるんだ?」
「っ!?」
「〜〜〜!?」
 面白いようにびくっと反応する二人。煙草を吸っているところを教師に目撃された子供のようにわたわたと動いている。
「あ、あんたねえっ!! 突然声かけないでよっ!!」
「んな無茶なこと言うな……だったら今から声かけるぞって言えばいいのか?」
「そ、そんなこと自分で考えなさいよ」
 相変わらずの杏の言葉に小さく溜息をつくと、朋也は妹のほうに視線を向けた。
「おう藤林。いらっしゃい」
「ど、どうもです。あの……岡崎君はいつからここにいたんですか?」
「いつからって言われても…………そうだな、藤林がソファーで寝言を呟いてるときだ」
「ね、寝言ですか……?」
「そういえば言ってたわね。椋ってばいきなり告白するんだもの」
「ここここくこくっ!?」
「……俺もいきなりだったから驚いたよ」
「……そうね。まさか恋人がいる目の前で言うなんて思わなかったわ」
「ふえぇぇぇぇぇぇぇっっっ!?」
「でもな藤林……いくらお前の頼みでも、それは無理だ」
「えええっと岡崎君!? そ、それはその……ただの寝言であって本心ではなくて……」
「まさかあんたがことみのこと好きだったなんて」
「ああ。いくら藤林でもことみは譲れないな」
「えっと…………………ってはい?」
「別に椋の好きな人が女の子であっても私は文句言わないけどさ、それでもことみは無理よ……」
「もし藤林がどうしてもって言うなら……俺たちは争わなくちゃいけないな」
「は…………? はっ、はわわわわ……あの、その、それは勘違いというか、だからことみちゃんのことは好きですけどそれは友達としてであって私の好きな人は別にいて」
「…………」
「…………」
「だから、その……岡崎君と争うつもりはなくてむしろことみちゃんと争わなくちゃいけなくて……あっ、その、本当に争うとかそういうのじゃなくて、もしもという過程の話であって」
「…………ぷっ」
「……ふう」
「ですから私の好きな人はっ」
「椋、冗談よ」
「好きな人は…………わ?」
「冗談よ」
「同じく」
「もう、椋ったら私の妹ながら可愛すぎるわね〜」
「お前に渡るはずだった女らしさが入ってるからな」
「あぁ?」
「……べつに」
「あ、あの……お姉ちゃん?」
「大丈夫よ」
 そういって杏は真っ赤になった椋に手を伸ばしぽんぽんと数回頭を軽く叩いた。
「というかことみも、いつまで旅立ってるのよ」
 言いながら放心し続けていたことみにぎゅっと抱きついた。
「!? 〜〜〜〜!?」
 突然のことに混乱したのか、我にかえったことみは自分を掴む手をとっさに振り払い朋也の背中へと逃げ出してしまった。
「あら、意外と素早くなったわね」
「ったく、お前は何やってんだよ」
「ちょっとしたスキンシップよ。ね〜ことみ?」
「あっ、朋也君なの」
「遅っ!?」
「って気付かなかったのかよ……」
「最初に会ってたのにね……」
「???」
 溜息をつく二人。分かってないのが一人。相変わらず真っ赤になって聞こえていないのが一人。煙が出そうなほどだが、まあ問題は無いだろう。
「まあいいよ。とりあえず……ただいまことみ」
「朋也君、お帰りなさい」
「……………………ふう」
「なんだよ杏、そのため息は」
「いや、別に深い意味はないんだけどね。ただ人前で正面から抱き合うのはどうかと思っただけよ」
「…………日課だし」
「……………………は、どこの新婚家庭よ」
「新婚…………」
「はいはい、ことみも加減慣れなさい」
 ふわりとした笑顔とともにトリップしそうだったことみを杏がこちら側に引き戻した。相変わらず照れた表情のままだったが、それでもなんとか話は通じそうだった。
「とりあえず何か飲むものくれないか?」
 ことみにそう告げるとこくんと頷き、可愛らしい足音を立てながら冷蔵庫の前まで歩いていった。
「そういえば朋也君、今日は夕方までアルバイトじゃなかったの?」
 冷えた麦茶を取り出しながら思い出したようにことみが尋ねた。
「ああ、そういえばことみがそんなこと言ってたわね…………クビ?」
「ちげーよ。ちょっと手違いがあって予定よりも早く終わっただけだ。まあ日給はもらえたから問題ない」
「へー。それじゃあ遠慮なくごちそうになるわね」
「……何でそうなるんだよ」
「だってさっきのはフリじゃないの?」
「なわけあるか。第一これは生活費で遊ぶ金じゃない」
「生活費?」
「そういうことだ」
 お盆に四つのグラスを載せてきたことみに礼を言いながらそのうちに一つに手を伸ばす。
「いくらことみがお金に困らないからっていってもさ、俺がそれに頼っておんぶに抱っこじゃ格好つかないだろ? んなひも生活はしたくないからさ。ことみの両親が残してくれたのはことみの学費。実際ことみなら奨学金とかで授業料の免除とかでいけそうだけど……まあ俺の意地みたいなもんだ」
「ふ〜ん」
 軽く頷きながら杏もグラスに手を伸ばす。
「格好いいじゃん」
「ぶっ」
 揶揄ではない率直な賛辞に思わず咽てしまった。
「いや〜そこまで出来るやつなんてなかなかいないよ〜。学費のこととか制度のこととかちゃんと調べてるっぽいしさ、良かったねことみ」
「…………うん」
「ごほっ、ごほっ…………ん、そんなんじゃねえよ。まだ解決しなきゃいけない問題だって残ってるしな…………」
「そのうち解決すればいいでしょ、そんなのは。第一学校公認で同棲してるやつにそれ以上の問題なんか残ってないわよ」
「ま、まあ……それはそうだが…………」
「でしょ? ことみだって嬉しいわよね?」
「とっても嬉しいの」
「うんうん。ところでさあ、同棲ってどんな感じなの?」
「お、おい杏?」
 あわてて止めに入る朋也だったが、ことみは平然と答えてしまう。
「朋也君と一緒にご飯食べるの」
「それでそれで?」
「一緒に半分こするの。私が朋也君に半分食べさせてあげると朋也君も私に食べさせてくれるの。二人で仲良く食べるととっても美味しいの」
「…………」
「な、なんだよその目は……」
「べっつにー? ことみ、他には?」
「お掃除も一緒にするの。私だと手が届かないところも朋也君なら届いちゃうの。ほかにも重い家具を動かしたり食器も洗ってくれるの」
「あら、意外とマメなのね」
「……そのくらい当然だろ」
「一緒にお買い物行ったりご本も読んだりするの。芝生にはだしで下りてご本を読むの。だけど朋也君はすぐに寝ちゃう。でも朋也君の寝顔を見るととってもとっても嬉しいの」
「…………」
「…………」
「耳かきしててもすぐ寝ちゃうの。でも一緒にベッドに入るといつも私が先に寝ちゃうの。朋也君をぎゅっとしてると、すごく安心するから……」
「…………もういいわ。限界」
「…………忘れてくれ」
「ん…………あれ? お姉ちゃんと岡崎君、どうしたんですか?」
「分からないの。気がついたらこうだったの」
「二人とも、大丈夫ですか?」
「え、ええ…………ちょっと甘ったるくなっただけだから」
「俺は、胃が痛くなっただけだ…………」
「は、はあ」
「……ま、まあ、あんたらが仲良くやってるのは分かったわ」
「だからそう言ったの。朋也君とはいつも仲良しなの」
 口を尖らせてそう主張することみに杏と椋は苦笑を浮かべた。しかし続く言葉にその表情は凍り付いた。
「一緒にお風呂だって入るの」
「――――――」
「――――――」
「えっと…………」
「一緒に洗いっこもするの。最近下着のサイズが一つ増えたの。朋也君は好きな人に触ってもらうと大きくなるって言ってたけど信憑性は曖昧なの。ただマッサージすると血行がよくなるから大きくなるの可能性はあるの」
「――――――」
「――――――」
「なんと言うか…………」
「……恋人同士の営みもするの」
「〜〜〜〜〜〜〜!!」
「きゅう……」
「ま、まあ……恋人同士が一緒の家に住んでれば、な……」

 その二人、バカップルにつき取り扱いに注意すること。下手にからかうと逆に恥ずかしい思いをすることになります。







 えらい時間がかかりました。まあその分は量でカバー。質でのカバーは出来ません。
もうチョイことみと朋也のからみを書きたかったので今度は学校編を書くかも。

 あと今度からweb拍手の返信も頑張って書きます。とりあえず伽耶さんは次に出ます。ボスは後から登場するものですから(謎


 最近はさくらんぼシュトラッセをやりました。るーりー物足りない…………

 あとは昔のゲームをもう一回やったり。最近あるととかプリミティブリンクとか。どっちもPurpleさんのやつっす。

 んで注目してるのは『それ散る』と『けよりな』と『タペストリー』とか、『明日の七海と〜』か『さかあがりハリケーン』とか……まあいっぱい。とりあえずそれ散る続編が待ち遠しいのと『SHUFFLE』の逆移植も気になる。
 まあSSも書いてみようかな。


 リリカルなのはが面白すぎる件と、『半分こ』って聞くと泣きそうになることが目下の悩みです。






テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  [ 未分類 ]   # 83  <固定リンク>

自爆w
自分でキリ番を踏んでしまった……

ちょっとテンプレとか弄っててプレビュー出したら200000hit

すんません。(⊃Д`。)゜

というわけで199999の人と200001の人。いたらコメント下さい!!

もし連絡なければ残念ながらスルーで。

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  [ FORTUNE ARTERIAL SS ]   # 82  <固定リンク>

FORTUNE ARTERIAL 千堂伽耶SS 〜Real Tag Game〜 
 人間ってのは意外とやるもんだなあとしみじみ思ってしまった。
 いや、人類の歴史を辿るだとか中国四千年の歴史だとかそういうことではなく、ましてやここ四、五百年の早すぎる進歩を考えるとかしたわけでもない。もっと身近な――そう、イメージ的には文化祭。どうしても間に合いそうも無いと思っていた前日の徹夜。火事場のなんとやらといったところか。意外や意外、蓋を開けてみればギリギリではあるものの完成してしまったという感じ。
 協力とかそういうものの素晴らしさ。学生生活で学ぶべきものの一つであると俺も思う。だからこそ監督生という模範に、そして規範になるべき存在になれてよかったと思う。

 ――ただこんなことで学んでほしくなかっただけで。

 FORTUNE ARTERIAL 千堂伽耶SS 
       〜Real Tag Game〜


 確か昨日まではここら一帯は何の変哲も無い広場だった。といっても他所から見ればとんでもなく豪華な造りだけれども。少なくとも俺が見る限りこんなところは他にはなかった。ともかく昨日までは見慣れた場所だったのだ。
 けれども今現在俺の目に映るのは凱旋門さながらの馬鹿でかい門。ライブでもやるのかというステージ。しかしその目的が違うというのは上のほうに掲げられたボードが主張している。
「しし☆るいるい 第一回支倉孝平争奪杯♪」
 心の中で呟いた言葉を繰り返すように明るい声が聞こえてきた。
「これ考えたのかなでさんですよね?」
「あれー? こーへーって実はエスパーだったの?」
「誰だって……というわけじゃないですけど、少なくともお茶会のメンバーで分からないやつはいないと思いますよ。ししるいるいだなんて変なネーミング」
 背後に立つかなでさんに視線を落としながら答える。それにしても視線を『落とす』というのはどうなんだろう。いや、個人的には奨励するけれども。
「違う……」
「え?」
「違うよ。こーへー」
「違うって……何がですか?」
 両手を広げ首を横に振ることで否定してみせるかなでさんは、まるで自己主張のやたら激しい男がやれやれだぜとぼやいている姿を髣髴とさせる。
「しし☆るいるい」
「??? だからししるいるいですよね?」
「そうじゃないよ。しし☆るいるい。星マークが抜けてるの」
「星マークって…………あれって必要なんですか?」
「星も名前の一部なの」
「はぁ、名前の一部ですか」
「当然。我ながら見事なネーミングセンスでしょ」
「センスはともかく、どうやって発音するんですか?」
「どうやってって――――しし☆るいるい、って感じで」
「俺にはそんなクリエイティブかつハイセンスなこと出来ません」
 少なくとも人間に発音できない言葉は操れない。
「まったくだらしないぞ。言葉っていうのは大切なものなんだよ。自分の伝えたいことを相手に届けるっていう無二のコミュニケーション手段なんだから、行間を読むだけじゃなく言えるようにならないと」
「んな言外で人外なことはできません」
「でもこーへーは吸血鬼になっちゃったでしょ?」
「まいったな、痛いトコつかれちまったZE☆」
「ふぅ、まったくこーへーは注意力が足りないんだから。そ・れ・に、今ちゃんと星を発音できてたよ」
「おおっと、こいつは驚きだぜ。まったく、とんだ授業だったな」
「でもよかったね。こういうのを棚ボタっていうんだよ」
「そいつは傑作だぜっ!! あっはっはっはっは」
「あっはっはっはっは」
「ってこのノリはなんですかっ!?」
 こんなポーカーの役っぽいアメリカンコメディーなノリは望んでなんかいない。
「と言いつつも素晴らしいノリツッコミだったよ。そんなこーへーにはこれを授けよう」

 孝平は『ノリツッコミ』を習得した!
 ノリツッコミ:
 どんなボケにでも乗ってしまう。突っ込んでしまう。天性の素質。相方は常に募集中。

「よかったね。新しい能力をゲットしたよ」
「ええ。これで俺も新しい素質に目覚めることが出来ました――って全然良くないですよ!! 勝手に変なものつけないで下さい!! それに天性のくせになんで後付けなんですか!?」
「おお〜、見事なノリ&三段ツッコミ。やっぱり天性のものだね」
「はっ!? 身体が勝手に……」
 恐るべきアビリティー。自分でも分からないうちにキャラ付けをされてしまっていた。てかそもそもかなでさんに吸血鬼のこと話したっけ?
「随分とリラックスしてるじゃない。もしかしてそれは余裕の表れかしら?」
 己の資質に絶望している最中、背後から声を投げかけられた。綺麗という言葉にイメージどおりの音を乗せた響き。ただ言葉を発するだけで、さもセイレーンが紡いだかのような甘い感情が脳髄を痺れさせる。
 培ってきたカリスマ、そして彼女の隠し持つチャームとが交じり合った魅力。俺に対性がなかったら一瞬のうちに彼女の虜となっていただろう。
「緊張して眠れなかったんじゃないかと思ったのだけど、どうやらその心配はなさそうね」
 苦笑を浮かべながら副会長が俺とかなでさんの前にやってくる。
 しかし体操服姿の副会長を見ていると今日がその日だと改めて実感させられる。
「いや、緊張というかテンションが低かったのは間違いないよ。ただ――」
 かなでさんと話していたら落ち着いた、と言おうと思ったのだが、ふと何故かなでさんがここにいるのかに疑問を持った。正規の集合時間まではまだ余裕がある。副会長は準備がちゃんと終わっているか、問題が無いかを確認しに来たのだろう。しかしかなでさんがこんな時間にこんなところへ来る必要は無い。それに集合したのだったら体操服なり運動の出来る格好で来るはずだ。しかしかなでさんは未だ部屋着のままだ。
 もしかしたら俺の緊張をほぐすためだったのだろうか。階下の部屋で俺が起きた気配がした。まだ夜も明けきらぬ時刻からそうしていたのだから、俺が起きていることにかなでさんが気づいても不思議ではない。
「ただ?」
「あ、いや……なんでも無いよ」
 ただの続きを不思議そうに尋ねる副会長に、思わず出そうだった言葉を押し留めた。別に隠す必要なんかなかったのだけれど、なんとなくかなでさんのさり気ないお節介に気付かない振りをしていたかった。親切は黙って受け取るものだから。
「そう、変なの」
 いまいち納得していなさそうだったけれど深く追求してくることはなかった。
「おおっと、いつの間にかこんな時間だー。それじゃあこーへーもえりりんもまた後でねー」
 若干わざとらしさの残る言葉を発しながら、手元の時計を見る振りをするかなでさん。まあ多分、俺が気付いたことを気付いたのだろう。照れた顔を隠すように回れ右、そのまま寮のほうへ走って行ってしまった。
「まったく、あの人はいつも慌ただしいね」
「ま、それがかなでさんらしいんだけど」
「……なんだか随分うれしそうね」
 それが思わず緩んでいた口元を示しているのに気付くまで、数秒間俺は微笑んでいた。
「ん、まあ。なんだかんだ言ってかなでさんは気配りの出来る人だし。不器用な親切っていうのは嬉しいものだからさ」
「ふ〜ん……」
「?」
 いかにも『私、そんなことには興味ないから』を装った態度にクエスチョンマークが次々に浮かんでいく。
 そのまま数十秒、副会長は眉間にシワを寄せながら唸っていたが、何か思いついたかのような顔とともにようやく熟考から解き放たれた。
「ねえ支倉君、一つ提案があるんだけど」
「提案?」
「そう、提案。いくら支倉君といえど学園の生徒全員から逃げ回るのは不可能だと思うの。だからここは私と協力して――」
「御免蒙る」
「敵対する生徒を排除して、頃合いを見計らって私に捕まるの。そうすれば私が優勝できるし、お願いだって支倉君が提案した軽いものにすれば一件落着じゃない? 別に支倉君だから特別にどうとか言うわけじゃなくて、その……あ、あの二人がこんな無茶な企画考えなければ良かったわけだし、罪滅ぼしというか――って拒否!? 今拒否した!?」
 ――ちっ、最悪なノリツッコミだな。タメが長い。間が悪い。返しもいまいちだ。これだから素人は。てめぇ見たいのが簡単にやれるほどノリツッコミってのは甘くないんだよ。
「ああ、断る」
 まあ腹の中では煮えくり返るほどの感情が渦巻いているわけだが、そこは俺も子供じゃない。本音を隠して会話をするのだって簡単だ。
「は、支倉君? 何か私と悠木先輩との扱いに差があるんじゃない?」
「そんなつもりは無いけど…………もしあるとするなら」
「するなら?」
「それは副会長が弱ツンデレ気質だからかな」
「…………はぁ?」
 残念ながら一度では理解できなかったらしい。普段の聡明そうな面影はそこにはなく、言葉通り残念な声を出す乗り遅れたキャラがいるだけだった。
「だからな、弱ツンデレ気質だからだよ。普通のツンデレならともかく、ツンもなくデレも弱い。そんな薄いキャラじゃ勝ち残れるわけ無いだろう? それにな、もうツンデレの時代は終わったんだよ」
 メディアが騒ぎ立てる一方、純粋に『ツンデレ』を理解しているものは数を減らしていった。ただの無愛想に表面だけの言葉を付け加えた者。ツンとデレの切り替えを理解していない者。ただただ流行に乗じて言葉だけを乱用する者。そんな偽者の社会で生き残るには本物たちはツンデレであることを隠して生きていくしかなかった。
「だから今はもうツンデレはいないんだ……。そして同様に俺の中でもツンデレは終わってしまった。
 そう!! 今俺の中にあるのは『素直クール』なんだっ!!」
 俺の中にある想いを正直に届けたい。嘘偽り無い現実、けれどきっと理解してくれると信じている。
「…………」
「副会長?」
「…………フッ!!」
「――っ!?」
 唐突に何かが頬を掠めていった。身体が反射的に避けた後で、ようやくそれが副会長の右腕であったことを理解した。
「言いたいことは……それだけかしら?」
 わけが分からなかった。俺としては冷静に伝えたつもりだったのだが。やはり言葉というのは難しい。状況は全く理解できない。一つ理解できるとするならば暴君の攻撃を避けなければ、式の開会を待たずして俺はゲームオーバーになるということだけだった。
「この、このっ――大人、しく、あたり、な、さいっ!!」
「無茶言うなよ……」
 恐ろしいほどの速度を持った刺突。その手が一閃するたびに風を切る音が耳につく。まさに眼に見えぬほど、というのがぴったりの形容だった。
 ただそれを避けれないかと問われれば簡単に首を振ろう。
 稚拙。ただ力に任せただけの動きでは実力差の無い相手にはまるで無意味。視線、肩の引き、腕の角度、踏み込みの位置、タイミング。全てが目に取るように分かる今、副会長は俺が避けたスペースを追うかのように手をさし伸ばしているにすぎなかった。
 延々と繰り返すのだが互いに全く動きは衰えない。まあ二人とも体力無限みたいなものだから終わりは無いに等しい。
 このままでは埒が明かなさそうだ。
「――よっと」
 次々と眼前に迫る腕を見ながらタイミングを計り、そして突き出した腕をそのままこちらに引く。それだけでバランスを崩した副会長は蹈鞴を踏んだ。互いの距離は一足一刀よりも数歩遠い。話し合いには十分の位置だった。
「ちょっとタイム」
 再び間合いをつめようとした副会長に手のひらを向ける。
「あのさ、一つ質問なんだけどどうして怒ってるんだ?」
「ど、どうしてぇっ!? 分からないの!?」
「うん。さっぱり分からない」
 再び素っ頓狂な声を上げる副会長に素直に頷いてみる。しかし残念なことに素直さは時に美徳にはなりがたいときがあるようだ。副会長のこめかみにシャープマークに近いものが浮かんでいる。ついでに拳は真っ赤に燃えている。
「そ・れ・はっ! 貴方がどうしようもないほどにボケているからよ」
 地鳴りのような音とともに彼女の威圧感が上がっていく。見れば副会長を中心として風が渦巻いているように見える。髪は揺らめき、よく分からないオーラのようなものが溢れ出している。

 ――もしかして、大ピンチ?

 後ろに下がろうにも俺の足は絡め取られてしまったかのように動かなかった。
 靴が地面と捉える音がやけに耳をつく。副会長がゆっくりと足を進めるたびに死期が迫ってくるのが理解出来てしまう。
「反省、してね」
 その言葉に頷くことも、首を振ることも出来ない。ただ俺は貼り付けられた聖者のように最後のときを待つばかりだった。
「そこまで」
 何の前振りもなく現れた会長。瞬きすらしていないはずなのに、当たり前のように俺の目の前にいた。まるで、そこにいないことに気がつかなかったかのように。
「会長……?」
 驚く俺を見ながら悪戯の成功した子供のような笑みを浮かべている。けれど副会長を遮るようにして立っている会長は今まで見る以上に頼もしく見えた。
「まったく、そんな意地を張ったところで男は嬉しくもなんとも無いよ。どうせ張るならドッキドキイベントの伏線でも張ってくれ」
 肩をすくめながら大仰に呆れてみせる会長。まるで副会長を挑発するような仕草だったけれど、続いた会長の言葉にぴたりと動きを止めた。
「そんな呼び方ぐらいで嫉妬するなよ」
「――――っ!?」
 加えて顔も紅潮していた。威圧感はとうに消え去り、相応の――それ以下の存在感しかなかった。
「そ、それはそういうつもりじゃなくって……」
「だからって力で訴えかけるのはどうなんだろうって思うよ。まあ気持ちは分からなくもないけどね」
「だったら――」
「だからこその、今日だろ?」
「…………そうね」
「まあそういうわけだ。支倉君もそれでいいだろ?」
「なにがそれなのか全く分かりませんが」
 それとかあれとか言われたって理解不能です。そもそもどうして副会長が不機嫌になったのかという原因が分からないのに、そこから帰結を導けというのは元より無理な話だ。
「ま、そのほうがいいかもね。知らないほうが面白そうだし」
「面白そうって…………」
「冗談だって。ただ説明しようにもね――タイムアップだ」
 その言葉にあわせるようにしてチャイムが響いてきた。周りを見ればいつの間に来たのか生徒が集まっていた。どうやら本当に集合の時間らしく、先ほどのチャイムは予鈴、これからさらに人が集まってくる頃だろう。
「まあ今回は二人ともただの参加者だからね、進行は俺に任せて存分に楽しんでくれ」
 手をひらひらと振りながら会長はそのまま歩いていってしまった。
「…………」
「…………」
 まあそうなると微妙な雰囲気の漂う二人が残されるわけだ。
 何か話したほうが言いというのは分かるのだけれど、その内容自体が見つからない。謝ろうにも何に対して謝ればいいのかも不明だ。
「…………」
 となると結局黙るしかない。語りえぬことは沈黙するしかないとは言うけれど、黙ることで事態が好転するわけでもなく、全く厄介なことだ。
「あ…………」
 そんなことをうだうだと考えているうちに、対峙した相手は踵を返し、何も言わず去っていってしまった。
 まいった、これは確実に恨まれたパターンだろう。親密というと微妙に語弊があるかもしれないが、それなりに仲は良好だったと思う。結構話もしていたし監督生室でも一緒に仕事をしていた。そりゃお互いの教室まで会いに行くとかはなかったけれど、廊下で会えば一言二言の会話ぐらいは合った。それがなくなるというのはいささか寂しい話だ。やはり何とかして和解しないといけないだろう。
「その機会があるかどうかだけどな」
 これから始まる鬼ごっこの最中にそのチャンスがあるかは分からないが、まあ気長にやっていこう。人間話し合えば何とかなるもんだしな。






 モチベーションがだださがりだったんで一旦切りで。多分全四話構成の予定になる。


 ようやく夏休みに入って時間が出来たのでCLANNAD見ました。

 OPで泣きました……

 第九話でぼろぼろ泣きました……





 なんでしょう、この出来は。最高です。


 さらにそれ散るのリメイクが出ます。Basilも復活します。ホント最高です。続編超期待!!!!!
 皆さん買うべきでしょう。というか今すぐ予約できますから。


 そろそろキリ番です。今回は作品指定でキャラを選んでいただこうかと。

 作品:
 リトルバスターズ
 CLANNAD
 空を飛ぶ、3つの方法。
 D.C.シリーズ
 
 このあたりが楽に書けそうです。それ以外でもなんかこれ書いてくれ! ってのがあればどうぞ。やったことのある作品だったらやってみますから。あとはシチュエーションとかも言ってもらえると書きやすいです。

 次回はCLANNADで杏またはことみのSSか、リトバスで佐々美様のSSを更新予定です。タイトルは3つとも
     『その二人、バカップルにつき』
                         です。 






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