隠れオタでもいいじゃないか

主にPCゲームの二次創作を書かせていただいています。  あとは最近やっているゲームやら読んでいるラノベやらのこととか……。

「それは舞い散る桜のように完全版」2008年10月30日発売

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  [ リトルバスターズSS ]   # 68 

リトルバスターズSS 〜本日より絶対君主制に移行しました。〜 中編
ただいまの結果
鈴  :クド→葉留佳 デコピン
真人 :  →西園  腕立て
クド :真人→謙吾  膝枕
来ヶ谷:鈴 →小毬  ポッキーゲーム
葉留佳:恭介→小毬  くすぐる
恭介 :鈴 →恭介  お兄ちゃんと呼ぶ

リトルバスターズSS 〜本日より絶対君主制に移行しました。〜 中編

「ふむ、大分盛り上がってきたようだな」
「……盛り上がってるって言うのかな?」
 傷心している人が二人。憔悴している人が一人。ねじが外れてしまった人が一人。
 確かにテンションは上がっているのは間違いではないと思うけれど。
「気にすることは無い。人間などというものは往々にして他人の不幸を肴にするものだ。特にこういった場ではな。理樹君も気にすることは無い、むしろ笑ってやったほうが彼らの気もまぎれると思うがな」
 その目線の先には真人と謙吾がいた。
 結局のところ来ヶ谷さんも二人のことを気にかけているみたいだった。
「ほらほら唯ねえ、さっさと次に行きましょうよ」
 葉留佳さんがぐいぐいと来ヶ谷さんの腕を引っ張り、来ヶ谷さんは仕方ないと言わんばかりに苦笑しながら輪に加わっていく。なんだか親子みたいで微笑ましかった。

 七順目
「それでは次にいこうか。では引いてくれ」
 来ヶ谷さんはそう言ってくじを差し出した。一斉に手が伸ばされて割り箸をつかんでいく。当たり前の動作。けれども僕はそこに妙な違和感を感じた。
「せーの、おーさまだーれだ?」
 掛け声(号令は葉留佳さんにまかされている)を発していながらもついつい視線は来ヶ谷さんを追っていた。もしかしたら気のせいかもしれないけど、さっきくじを選ぶときの来ヶ谷さんの手元。ごく自然に、さっきの言葉のこともあり、なんとなく来ヶ谷さんの手元を見ていた僕だから気がつけたぐらいの見事な手際で、特定のくじを故意に動かしていたように感じた。
「おっと、私が王様だな」
 王様だったのは来ヶ谷さんだった。
「っ!?」
 もしかしたら――そう思ったのと同時に意味ありげな視線を送ってきた。
 おそらく僕の予想は正しいと思うし、来ヶ谷さんも僕がそう考えていることを理解して視線を送ってきたのだと思う。
 もっとも誰がどの割り箸を取るとかは本人の意思でありランダムだから、どれかを故意に選ばせるのは無理だと思う。それと同じで自分が王様を選ぶのもまた偶然だろう。ただちょっとばかり可能性をあげただけだ。
「では王様からの素晴らしい命令ターイムだ」
 王様の付いた割り箸をくるくると回しながらにやりと唇を吊り上げる。無駄にカッコいい仕草だった。
「ト屬鮖った人はゲームが終わるまでの間、今後私のことを『お姉ちゃん』と呼ぶがいい」
「なに? またあたしか!?」
 ……多分、偶然だろう。
「ああ鈴君なのか。これは素晴らしい偶然だ」
「……ト屬井ノ原さんや宮沢さんや恭介さんだったらどうするつもりだったのですか?」
「俺が来ヶ谷の弟だって? そうだな………………」
 真人はなにやら考え込んでしまった。
「来ヶ谷の弟か………………」
 謙吾も目を閉じたまま停止してしまった。
「……」
「……」
 何を想像したのか分からないけど、二人はそのままものすごく嫌そうな顔をしたまま固まってしまった。
「私だってこんなのの姉は御免だ。面倒見きれん」
「……ですがそうなっていた可能性も否定できませんが」
「なあに、そこは確率と期待値の問題だ。外れる可能性などそう多くも無く、メリットのほうが遥かに高い。
 それに、もし外れたのなら呼べ無いようにすればいいだけの話だ」
「……それもそうですね」
 意味ありげに微笑む来ヶ谷さん。深い意味は聞かないほうがいいだろう。西園さんも同感だったようであっさりと引き下がった。
「ところで鈴君はいつになったら呼んでくれるのかな?」
 その鈴はというと、難しい顔をしてうなっていた。というよりもあれは照れているのかもしれない。
「うりうり鈴ちゃんよ、さっさと言ったほうが楽になりますよー?」
「……くるがやおねーちゃん」
 来ヶ谷に200のダメージ。
「ああ……とっても可愛いぞ」
 来ヶ谷は悶えている。
「あれま、えらいあっさりいいましたね」
「あれに比べたらマシだ」
「……おい鈴。それはどういう意味だ?」
 あれ呼ばわりされた恭介が幾分か落ちたトーンで鈴を呼び止めた。随分とショックを受けているみたいだ。けれどそんな恭介にも構わず鈴は冷淡な視線を返した。
「ヘンタイ」
「ぐ……」
「どヘンタイ」
「ぐはぁっ……」
 さっきのことがよっぽど気に入らなかったらしい。恭介への態度が可哀想になるほど刺々しい。
「まあまあ鈴君よ、そこまでにしておきたまえ。あまり冷たくしていると恭介氏が目覚めてしまうかもしれんぞ?」
 いつもより上機嫌な来ヶ谷さんが鈴を止めに入る。
「ん、くるがやが止めるのなら仕方ないな」
「鈴君、お姉ちゃんだ」
「忘れてた」
「ならば次からは付けて呼ぶように」
「……ん」
 迷い照れながらも鈴は首を縦に振った。
「なあ理樹……なんで来ヶ谷だといいんだろうな……」
「うわっ、恭介どうしたの!?」
「いや、大したことはない……それに、いいことだろう……」
 そう言って自分の位置に戻ってしまった。
 哀愁の漂う笑顔。もしかしたら恭介にとっては自分よりも来ヶ谷さんに懐いていることが寂しいのかもしれない。
「…………」
「どうかしたの、クド?」
 来ヶ谷さんと鈴の姿をじっと見つめているクドの事が気になった。それはどこかクドがいつもより小さく見えたかもしれない。
「リキ? あ、いえ…………なんでもありません」
「そう?」
 あまり隠し事が得意ではない、というより感情がすぐ顔に出るクド。
 じっと視線を合わせるとクドは困ったように微笑んだ。
「……ただ、きょうだいがいるというのはどんな気持ちなのか考えていました」
「そっか……」
 僕もクドと同じように鈴たちを眺めた。
 無口で人見知りの激しかった以前の鈴の姿。それと同じように塞ぎこんでいた自分の姿。きっと恭介がいなかったら、僕は今、この世界に存在していなかったのかもしれない。
「僕にも兄弟がいなから分かんないけど、僕にとっては恭介たちが兄弟みたいなものかな」
「棗さんがですか?」
「うん。それだけじゃなくてバスターズのみんなが家族みたいなものだから……」
 親友以上の仲間だから。
「クドにもそうなってもらいたいな」
「リキ……」
「少年、言葉というのはもっと選びたまえ」
「うわぁ!?」
「わふっ!!」
 背後から突然掛けられた声。
「そこは僕がクドのお兄さんになるよ、ぐらいの気概のある言葉を用意しておくべきではないのか?」
 いつの間にか背後に立っていた来ヶ谷さんが呆れたような溜息をついた。
「来ヶ谷さん……何やってるの……?」
「なに、少年が能美女史となにやらいけ好かない雰囲気を作っていたものだから少し拝聴させてもらったよ」
「はぁ」
「それにしても理樹君。君はあれかね、ジゴロなのか?」
 ジゴロって……
「気のある振りをしてふらふらと。決めるときははっきりするべきだ」
「決めるって言われても何がなんだか」
「まあその件に関しては保留しておこう。ところでクドリャフカ君」
「はい?」
 突然話題を振られたクドは不思議そうに小首を傾げた。
「姉がほしいのならおねーさんに任せなさい。呼び方も自由にしてくれて構わない。いつでも大歓迎だぞ」
「むぎゅっ」
 潰れるクドを気にすることもなく正面から抱きしめる来ヶ谷さん。そうしてしばらく堪能した後、恍惚の表情を浮かべながら開放した。
「いやいや、やはり鈴君の抱き心地も素晴らしいがクドリャフカ君もまた格別だ」
「あんまりそういうことしたら駄目だよ」
「ファッキンこのアマクドの身体は俺だけのものだ気安くさわんじゃねえよメーンとでもいいたげだな」
「思ってないから……」
 どうにも僕の知り合いには人の話を聞かない人が多すぎる。
 ……いや、聞いていてなお無視しているのかもしれないけど。
「それにクドが迷惑してるから」
「あ、その……もう少しゆるめてもらえればのーぷろぶれむですから」
「ほらクドリャフカ君もこういっていることだしもう一度。なんならお姉ちゃんでもなんでも、自由に呼び方を変えてもらっても構わないぞ」
「呼び方ですか」
 むー、と困っているのか楽しんでいるのか良く分からない顔でしばらく悩みんでいる。
「ならゆいちゃんでけってーい」
「わっ」
 がくんと突然両肩が押し下げられる。
 何かと思って振り返ろうと思ったところで甘い香りが漂ってきた。
「……小毬君。その呼び名は拒否したはずだが?」
 小毬さん? ということは僕にもたれかかっているのは小毬さんなのか。それにこの甘い匂い……絶対にお菓子の匂いに違いない。
「でもゆいちゃん、クーちゃんには好きに呼んでいいっていったのに〜」
「あれはクドリャフカ君に言ったわけであって……」
「む〜〜ひいきだ〜」
 やっぱり来ヶ谷さんは小毬さんに弱いなあ。
「……仕方ない。そんなに呼びたいのだったら命令すればいい。まあ今日一日だけだがね」
 つまりは王様の命令。それならば来ヶ谷さんも断れないだろう。
「ってことは私も姉御に恥ずかしい名前つけていいってことですよネ?」
「そういうことになるな」
「よっしゃー。これは姉御に恥ずかしい名前を着けて楽しむチャーンス!!」
「ただそれなりの報復は覚悟して置きたまえ」
「うっ……」
 不敵な笑みを浮かべる来ヶ谷さんに暫しの逡巡を見せるものの、葉留佳さんにとってはリスクよりもリターンだったらしい。
「かかってこいやーーーっ!!」
「面白い。受けてたとうじゃないか」
 どうしても葉留佳さんが負ける未来が浮かんでくるんだけど……
「美魚君はどうするのかね?」
「……私は特には」
「理樹君にあんな名前やこんな呼び方をさせれるまたとない機会だぞ?」
「……」
「だからなんで顔を赤らめるの……?」
「べ、べつに赤らめたりはしていません。ちょっと想像してみただけです」
「想像って……」
 何を想像したのかは聞いたら駄目なんだろうな。
「へっ、そういうことだったら俺も参加するぜ」
「真人も?」
 いつの間にか復活していた真人が話しに加わる。
「いつかの借りを返さねえとな」
 ぎらぎらとした闘志を隠そうともせず好戦的な笑みを浮かべる。
「今日こそてめえをらいらいやと呼んでやるぜっ!!」
 随分と根に持っているようだった。
「よーし、それじゃあみんなに可愛い名前付けてあげるね〜」
 よく分かっていない鈴と我関せずの謙吾、そして暗い笑顔を浮かべる恭介を除いたメンバーは楽しそうに呼び名を考えている。

 八順目
 でも誰がどの番号か分からないのに、みんなどうするつもりなんだろう。
「っしゃあ!! 俺が王様だぜ」
 力強く札を握り締め高らかと声を上げる真人。こういうときの勝負強さというのも真人らしいといえるけど。
「真人少年では王様というよりはバカ殿というべきだな」
「おおー、たしかにそんな感じデスネ」
「理樹君はその従者といったところか」
「では三枝さんは下町の腕白少女といったところでしょうか」
「そういう美魚君は城内の女中さんだな」
「私はなんですか?」
「クド公はやっぱワンコでしょ」
「が、がーん……」
「はっはっは。クドリャフカ君は隣国のお姫様といったところか」
「やったですっ」
 嬉しそうにはねるクドの姿はどう見てもやんちゃなお姫様だろう。
「小毬君も鈴君と合わせて三人で下町の少女だな」
「こまりちゃんと一緒か。わるくない」
「よろしくねー」
「ん」
 ちりんと鈴を鳴らしながら小さく頷く。
「ねーねー鈴ちゃーん。私はー?」
「うっさいから知らん」
「はるちんしょっーーーっく!!」
 けれど鈴も本気で言っているわけではないと思う。現に小毬さんに促されるとすぐに頷いている。こう見ると鈴と小毬さんと葉留佳さんで確かに三人娘といった感じだ。
「宮沢さんは城に仕える武士ですね」
「ああ、確かに」
「悪くは無いな」
 それは僕も納得。
 謙吾はまんざらでも無い様子。
「それでは来ヶ谷さん自身はどうなのですか?」
「私か? まあ私は裏方の傍観者だな。登場人物の様子を楽しく見るだけで結構だ。まあそれでなければ賭博場の主といったところか」
 まあ似合っているけれど……
「僕は来ヶ谷さんもお姫様って雰囲気だと思うけどな」
「……正気かね、理樹君?」
「うん」
「そうもきっぱりと……第一私がそんな柄か? 私などよりももっと似合っている人物がいるだろう」
「そんなことないって。来ヶ谷さんは格好いいし綺麗だし。それに着物も似合うと思うよ」
「やけに来ヶ谷さんを押しますね……」
「えっ? それは……」
 確かに西園さんの言うとおりだった。自分でもどうしてここまで来ヶ谷さんを押すのか分からない。
 けれどどこか一歩引いている来ヶ谷さんの姿が無性に寂しく見えたからかもしれない。
「なあ恭介……今って俺が王様だよな……?」
「ああ……」
「なんか影が薄くなってねえか……」
「ふっ……そういう時もあるさ……」
 うわぁ、真人と恭介が隅で丸くなっている……
「ほ、ほらみんな、今は真人が王様だよ?」
「ん? ああ、そういえばそうだったな」
「にゃはははは、ゴメンゴメン」
「さっさと言え」
「へ……わりいな理樹……」
 複雑な表情をしながら真人がこちらに寄ってきた。
「来ヶ谷……俺をここまでコケにしやがったんだ。覚悟は出来ているんだろうな?」
「能書きは言い。さっさと命令したまえ」
「いい覚悟だ……ト屬!! てめえの名前は今日かららいらいやだっ!!」
「あっ、僕がイ澄
「へっ?」
「アホだな」
「あほ」
「えーと……」
「……さすが井ノ原さんです」
「ど、どんとまいんどですっ」
「ここまでアホだとは……」
「救えんな」
「うわあああぁぁぁぁぁっ!!」

 九順目
「ほら真人、元気出しなよ」
「ああ……」
「それに次の番で挽回すれば大丈夫だって」
「そうか……そうだよな。おっし、それじゃ次こそは俺の知的な一面を見せてあいつすげえじゃねえかってとこを思い知らせてやるぜ」
「すでにその台詞がアホだな」
「鈴君の言うとおりだな。まあ放っておいて次に行こう。王様だーれだ」
「あっ、僕だ……」
 割り箸にあるのは王のマーク。
「エロエロな理樹君の命令か。いったいどんなプレイをさせられるのやら」
「ぷれい? なんだそれは」
「プレイというのはだな……」
「言わなくていいから!!」
「クドリャフカ君。プレイというのはだな」
「だから!!」
「小毬君」
「そんな命令しないから……」
「……しないのですか?」
「しないって……」
 西園さんがものすごく残念そうだった。
「それじゃあ理樹君はどんな命令にするの?」
「悪いけど葉留佳さんの期待に応えられないからね」
 ここは無難に……
「それじゃあ,凌佑△凌佑里發里泙佑鬚垢襦
「おおっ、なかなか良さそうな命令ですネ」
 そんなに変わった命令だろうか。
「,浪兇。それで誰の真似をすればいいんだ?」 
 そう謙吾が札を上げたところで気がついた。まねをするのは男同士、女同士とは限らない。もしかしたら謙吾が、たとえば小毬さんの真似をするというのもあり得るんだ。
 ……僕は取り返しの付かない命令をしてしまったのかもしれない。
 明らかに期待している三人の視線を振り切り、僕は△真人であることをひたすらに祈った。
「△……」
 祈りは届かなかった。
「俺じゃないか」
 けれど残る僅かな可能性に引っかかった。
「ということは俺は恭介の真似をするわけか……」
 最悪の可能性も考慮していたけれど、考えられる最高の結果に転がることが出来た。
 謙吾は意外とモノマネが上手い。以前真人の真似をしたときなんかは僕が絶賛するほど上手かった。
 謙吾はじっと考え込み、みんなも何も言わず待っている。
「それでは行くぞ」
 謙吾は静かに目を開いた。
「――今回の作戦名はオペレーション・リトルロリロリハンターズだ。
 ちょっと待て、別に俺がロリってわけじゃないぞ? ただ単にこの雑誌に書いてあっただけだ――っておい!! なんでそこでドン引きなんだよ!?
 くそぅ……こんな屈辱は初めてだぜ……もういいよ、こうなったらロリでも真性でも勝手に呼んでくれ。
 はっ、俺ひとりでロリロリハンターズを旗揚げして見せるぜ!!」
 なんだろう……
 似てる。すごい似てるけど……
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
 女性陣の視線が物凄い……
「……時に理樹君。今のは似ているのかね?」 
「えーと……」
 なんと答えるべきなんだろう、と迷っていると鈴がぼそっと呟いた。
「恭介は変態だ……」
 その言葉に女性陣は一斉に恭介から距離をとった。
 さらにクドと小毬さんを恭介から隠すような位置に移動させた。
「うああああああああーーーーーっ!!」
 もうどうしようもなかった。
「才能というのは恐ろしいものだな」
「もっと別のを選んであげようよ……」
「ま、これ以上評価は落ちようもねえんだから良かったんじゃねえか?」
 そういえばそもそもどういう流れでそんな話になったんだっけ。
 暫く考えてみても思い当たるものが無い。けれどその事実だけは頭の中に残っている。
 ぼんやりとした思考。そこにぽっかり空いた虚無。忘れてしまったということだけを覚えている違和感。けれどあと少しでそこに届きそうな気がする。
 そう……あれは……誰かにプレゼントしようとして、確か雑誌を見ていて――
「理樹君」
 軽く頭を小突く誰かの手。その衝撃に収束しかけていた思考が途端に霧散していく。
「あまり難しいことは考えず今は楽しみたまえ」
「あ、来ヶ谷さん……」
 優しい微笑を残し僕の手から割り箸を抜き取る。
 何の変哲も無い動作だったのだけれど、どうしてか僕はその背中が気になって仕方がなかった。

 十順目
「それじゃあ次にいこうか」
 何とか復活した(本当になんとかだけど)恭介がさわやかに促す。
 けれども女性陣はまるで猛獣に餌を差し出すかのように恐るおそる、そして割り箸を手に取ると即座に手を引っ込めていく。
 そんな様子を眺める恭介の眼差しはとても寂しそうだ……
「王様だーれだ」
 とりあえず妙な空気になったのを仕切りなおす。
「……あたしだ」
 手を上げたのは鈴だった。
 けれどもその顔は困っているように見える。
「どうかしたの?」
「べつに大したことじゃない。けど……」
 歯切れの悪い様子で口ごもってしまう。小毬さんと葉留佳さんも不思議そうに鈴の顔を覗き込んでいる。
「鈴君は命令する内容をどうするか困っているのではないか?」
「どうして? さっきもそれに悩んでたんじゃないの?」
 それは鈴が思うとおりの命令をすればいいって事で納得したと思ったんだけど。
「そんなのテキトーに盛り上がるのを言っとけばいいじゃん」
「先ほどの恭介氏のこともあるんだろう。適当なことを言って自分に被害が回ってくるのを避けたいということだろう」
「それもソですねネ」
 確かに僕も自分があの境遇になるのはちょっと遠慮したい。
 影を背負った恭介を横目で見ながらそう思う。
「それにだ、鈴君なりに場を盛り上げたいと思っているのだろう」
「変なことを言って場をしらけさせたく無いってこと?」
 協調性なんて以前の鈴には理解出来ないことだと思っていた。なのに今の鈴は遊びといえど考えて行動しようとしている。それは考えられないほどの成長だと思う。
 難しい顔をしながらみんなの顔を眺める鈴。その視線が真人のところに行き当たったところで何かにひらめいたかのように声を上げた。
「思い出した」
「何を?」
「この前テレビでたくさん食べてるやつがいた」
「それって大食いの人のこと?」
 頷いて肯定する。
「あれは盛り上がっていた」
「まあ盛り上がってはいたけどよ……」
 あれは記録に挑戦とか、そういうものがあるからだと思う。
「俺もどうかと思うぞ。第一食事は楽しむものだ。苦しんでまでするものではないだろう」
 おお、謙吾がまともなことを言っている。ちょっと前のネジが外れていない謙吾だったら当たり前だったかもしれないけど。
「うーん、でもりんちゃん。食べるものそんなに多くないよ?」
 小毬さんが言うとおり、今僕たちが持っているのはみんなが持ち込んだお菓子ばかりだ。主な供給源は小毬さんだけど。
 それにこのメンバーで大食いといってもあまりいい結果にはならないと思う。
「あの、リキ。おおぐいってなんですか?」
「あ、クドは知らないんだ」
 といってもなんと説明すればいいんだろうか。
「えーと、フードファイトというかビッグイーターというか」
「おおっ、ぐらとにーですね!?」
「ん、そんな感じ……かな」
 まあ間違ってはいないと思う。
「ですがなにを食べるんですか?」
「それはだな」
「……来ヶ谷さん。クドに変な事言わないでよ」
「ん? 理樹君よ、変なこととはなんだい? すまないがおねーさんに教えてくれないか?」
 明らかにからかわれている。にやにやと笑みを浮かべる来ヶ谷さんに思わず溜息が出た。
「というのは冗談だ」
 そういって来ヶ谷さんはゴトン、という音とともにいくつかビニール袋を取り出した。
 みんなの注目がそれに集まる。
「なんですか、コレ」
 やっぱりこういうものにいち早く興味を示したのは葉留佳さんだった。
 ビニール袋をごそごそと探りながら中のものを取り出した。
 そこには一見ジュースのように見える缶が所狭しと入っていた。なんだろうと思い一つ手にとってみればはっきりと書かれている一つの単語。
「お酒……」
 次々と取り出してみてもはっきりと間違いようもなく書かれているお酒の文字。果実酒やチューハイなどばかりでビールはなかったけれどれっきとしたお酒だ。
「どうしたの、コレ?」
「いやなに、先ほど少しな」
 まあ行きには持っていなかったから買ったんだろうけど。
「酒ですよ酒!! さっすが姉御、分かってますねー」
「葉留佳さん未成年でしょ? それに来ヶ谷さんだって」
「そんなものは単なる目安だろう。身体的、精神的に発達しているか否かで判断するべき事柄を年齢などという杓子定規なやり方で決め付けるのは間違っているのではないか?」
「そう、なのかな……」
 なんだか上手く丸め込まれてしまったような気がする。
「いいんじゃないのか、修学旅行らしくて」
「恭介」
「無理やりじゃなければいいだろう。ま、その辺は各自の裁量に任せよう」
 恭介はようやく普段の調子を取り戻してくれたようだ。
「くるがや、結局どうなったんだ?」
 鈴は決して恭介に視線を合わせようとはしなかったけれど。
 やっぱり兄妹の確執は深いらしい。
「大食いは食べるものが無いから禁止、ただ代わりに飲むのはアリ、ということだ。異存のあるものはいるかな?」
 否定する人はいなかった。一人ぐらい難色を示す人がいるかと思ったけれど、旅先ということもあってか、幾分か気が緩んでいるようだった。まあ僕もその一人だったけれど。
 けれどついつい大丈夫かなあと思ってしまう。
 来ヶ谷さんや恭介はお酒を飲んでも大丈夫だと思う。謙吾も多分大丈夫だろう。真人はどうだか知らないけれど体育会系だからだろうか、苦手というイメージはあまり無い。
 問題なのは残ったメンバーだ。
 鈴はお酒なんて飲んだこと無いだろうし、小毬さんも同様だ。クドなんてもってのほかだし、葉留佳さんは間違いなく悪酔いするだろう。西園さんもどうみても強いようには見えない。もしかしたら体調を崩してしまうかもしれない。
「不安だ……」
 そんな僕の呟きをよそに鈴は納得したように頷いている。
「なんだか盛り上がるみたいだな」
「まあ人によるがアルコールが入る時点で盛り上がるだろうな」
 来ヶ谷さんの一押しで決まったようだ。みんなも異存がないようでさっきよりもテンションが上がっている。
「……ですがいいのでしょうか」
「どしたのみおちん。もしかしてお酒駄目なタイプだったり?」
「いえ、私ではなくて井ノ原さんが」
「あ? 俺がどうしたんだ?」
「……お酒は飲まないのかと」
「なんでだ? 飲めるけどよ……それがどうかしたのか?」
 みんなも不思議そうな顔をする。
「普段から筋肉がどうとか騒いでいるものですから……」
「ああ、そういうことか」
 来ヶ谷さんだけが納得している。この二人は意外とあっているみたいだった。
「美魚君が言いたいのはテストステロンとコルチゾンのことではないのか?」
 聞いたことも無いような単語にハテナマークが浮かんでいる。
「はい。諸説ありますがアルコールが筋肉の発達を妨げるというのは有名な話です。アルコールを大量に摂取することにより蛋白質の合成が阻害されるという研究結果が提示されています。蛋白質というのは筋肉の主成分のことですね」
「ぐぅ……頭が痛え…………」
「ちょっと、真人大丈夫!?」
 僕たちでも頭が痛くなるような単語ばかりで大変だっていうのに、真人に耐えられるはずがないじゃないか!!
「テストステロンという男性ホルモンのレベルが低下することにより筋肉の成長に著しい影響を与えてしまうのです。さらに筋肉を分解するコルチゾンの分泌量が増加、つまり筋肉量の減少が起こるわけですね。
 加えて内蔵にも負担がかかります。ですから井ノ原さんにとってはお酒は厳禁だと思ったわけですが……」
 全員が撃沈していた。
「……少々長すぎました」
 少し赤くなりながら西園さんは頭を下げた。
「って真人!?」
 真人が灰になっていた。目に光がなく、意識もあるかどうか分からない。
「……難しすぎてパンクしたみたいだな」
「あたしも頭が痛い」
 普段なら真人にツッコミを入れる鈴もぐったりしていた。
「あ、真人くん起きるみたいだよ」
「…………」
「真人、大丈夫?」
 気がついたみたいだけど何かぶつぶつ呟いている。
「やべえ……俺は何てことしちまったんだ…………」
 急に頭を起こした真人は震える右手を握りながら声を張り上げた。
「うおおぉぉぉっ!! 俺の筋肉が震えている!? やべえ、わなないていやがるっ!!
 こいつは……筋肉の下克上だぁぁぁーーーーーーっ!!」
「ありゃりゃ、倒れちゃった」
「って葉留佳さんなに冷静に見てるのさ!?」
「うわー、真人くん大丈夫?」
「井ノ原さんふぁいとですっ」
 よっぽどショックだったのか、真人は倒れたままだった。
「……申し訳ありません」
「なに、西園のせいじゃないさ」
「恭介氏の言うとおりだ。なあに真人少年のことだ、起きたら全部忘れているさ」
 それも酷い言いようだった。
「全く、酒ぐらいで。こいつも精進が足りんな」
「ならけんごが飲め」
 命令、と鈴が謙吾を指差す。
「名指しして命令することは出来ないんじゃなかったのか?」
「なら番飲め」
「俺じゃないか!?」
 鈴の指先が謙吾の手元に下がる。
「みえてる」
「ほんとだ」
 確かに鈴の言うとおりだった。
「不覚……」
「ま、見せるほうが悪いから仕方がないな。謙吾も諦めろ」
「まあ……問題はないだろう。して何を飲めばいいんだ?」
「じゃあコレをどーぞ」
 葉留佳さんがボトルを取り出す。というかさっき缶しかなかったような……
 どこから出したんだろう。
「では飲みたまえ」
 紙コップに注いだお酒を来ヶ谷さんが差し出す。
「ささ、ここは男らしくぐいっと行っちゃってくださいよ」
「……まあ少量だったら問題ないだろう」
 謙吾は以外と乗せられやすかった。
 コップに入った量を確認し、一気に傾けた。
「いっきに飲んじゃったんですかっ!?」
 クドの驚きに答えるようにごくりと喉が動き――
「ありゃりゃ、また倒れちゃった」
 音を立ててひっくり返ってしまった。
「謙吾ー!?」
「謙吾が秒殺とはな……いったい何を飲ませたんだ?」
 恭介がボトルを手に取りラベルを見る。
 『スピリタス』
「うわぁ……」
 誰とも分からない同情の声が漏れた。
「すぴりたす? くーちゃん知ってる?」
「あいどんとのーです」
 良い子の二人は知らないみたいだった。
「アルコール度数が高く、火をつけると燃える酒だな。まあコレを酒といっていいのか疑問は残るがな」
 そして悪い子がいけない知識を教えつける。
「その前に謙吾を何とかしないと!!」
「そう慌てるな。ただ喉が熱くて悶絶したんだろう。水を飲ませてやれば大丈夫だ」
 恭介は冷静に謙吾に水を飲ませていた。
 やっぱり恭介は頼もしい。
「そもそも葉留佳さんはどうしてこんなもの持ってるの?」
「なんか面白そーだなーと思いまして」
「だからって……」
 まあ葉留佳さんならやりそうな理由だけど。
 例のシュールストレミングとか……
「でも恭介、お酒なんか飲んで大丈夫なのかな?」
「大丈夫さ。現にみんなもう飲んでいるだろう」
「え?」
 思わず振り返れば、確かにいくつかの缶が空になっていた。
「そんなあっさり……」
 学生だとか難しく考えていた僕のほうが固すぎるんだろうか。
「まあまあそう悩むこともあるまい。第一理樹君だってもう飲んでいるだろう」
 来ヶ谷さんが指差すのは僕の紙コップ。中身はウーロン茶。
「ってもしかして!?」
 注意深く匂いを嗅ぎ口に含めば微かに違和感がある。
「正解。ウーロン茶というよりはウーロン茶わりだな。まあ気付かない程度だがな」
 既になくなりそうなペットボトル。最初から交じっていたのだとしたら結構な量を飲んでいたことになる。
「分からなかった……」
「お酒を飲んだことの無い人間にはコレぐらいが丁度いい」
 ちょうどいいね……
「なんだかきもちいいのですっ」
「あははー。くーちゃんも? 私もだよー」
「ごくごく…………おかわり」
「みなさん。飲みすぎは良くありませんよ。ですから節度を守ってください」
「美魚ちゃんが一番飲んでますからね……」
 完全に酔いの回っている様子の面々。葉留佳さんが一番正常に見えるのはどうなんだろう。
「これは予想外だ……」
「以外だな。来ヶ谷にも予想外のことがあったとは」
「私にだって計算外のこともあるさ」
「そうか? 俺にはそれすら予想通りだと思ったが、、気のせいだったか?」
「それは深読みしすぎだ」
 意味深な会話をする二人。
 そしてダウンしている幼馴染二人。
 きっとこれからの展開は僕一人ではどうしようもないのだろう。
 まだまだ夜が更けるのには早そうだ。





 あ〜疲れました。最近忙しすぎてPCに触れてなかった(´・ω・`)
 更新間際のすん止め状態。マジカンベンでしたね。

 ちなみに内容ですが、ホントは四話構成になりそうだったけどがんばって短めにしました。gdgdにならんくらいで丁度いい。あとネタはフィーネさん、半分あたり。もう半分はD.C.兇諭PAはとくに最後のあたりとか。



 んであんま関係ないけどまた最近やったゲームの話。今度は新作ね。


 君のぞ→やっぱいいねえ。バッドエンドなんて戦々恐々としながらも嬉々として魅入ってみました。ネタばれになるからあんま書きませんが、第三章はやるべき。まあ君のぞやったことのある人なら間違いなく買いでしょうがwww
 やったことの無い人は即刻やるべし。鬱ゲーとか言われてるけど、その辺の腐ったケータイ小説とか、ご都合主義大いに結構な恋愛ものを見るよりもよっぽどいい。


 かみぱに → しんたろー(原画)はどうしてこうもライターに恵まれんのか……。ボーイミーツガールのときよりはまだいいけど、出だしのムカつきかげんはどうにかならんだろうか。実際やめようかと思ったし。最後までやればそれなりにいいものかな? と思える。

 暁の護衛 → これ本編? 体験版じゃなくて? 超ビミョーな終わり方だし。まあ絵はいいよ。やっぱツンデレか……




 そういえばとらはもやったよ。今更!? ってツッコミ待ちで。
 とにかくシナリオがよければそれでいいと改めて実感。それに絵も悪く無いなーとやってるうちに思ってきた。

 リリカルなのはでも見てみようかな……w





テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

コメント

フィーネ : 読みました☆
やっぱりリトバスって個性が強烈ですね〜。
なんかしみじみ感じてしまいました(^O^)

最終的にどのような決着になるか、楽しみにさせていただくっす!


P.S 「とらは」は確かに素晴らしいっす!
私も以前1.2.3をプレイして、そのキャラクターの魅力に取り付かれました。
ちなみに私は、1.2.3の主人公の中では1の「相川真一郎」が一番気に入りましたっス。
ヒロインは1.2.3すべて最高でしたね☆

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