隠れオタでもいいじゃないか
主にPCゲームの二次創作を書かせていただいています。 あとは最近やっているゲームやら読んでいるラノベやらのこととか……。
05月20日(火) [ 藤浪朋子 SS ] # 73
- それはすぐ傍に(27)
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(27)
「うーーーっ、みーーーーーぃっ!!」
海――それは生命の源であり、母なる大地の恩恵を享受する我々がそこに安らぎを感じるのは自明のことだ。海だけでなく雄大な山々、広大な空、そこに広がる自然と対峙したとき自分の小ささを、世界の広さを実感することが出来る。
「おっっっきぃーーーーーっ、なぁぁぁーーーーーっ!!」
それはあたかも自らの微小の身を痛感させ、同時に身体という檻から解き放たれる救いにも繋がっている。
「ねえねえ朋子ちゃん、可奈先輩どうしちゃったの?」
「……きっと私たちには理解できない深い理由がるのよ」
他者の目など気にせず心の赴くままに声を張り上げる可奈先輩。おそらく私のような凡人にカテゴライズされる存在では到底理解できはしない高尚な思考が存在するのだろう。
「朋子ちゃん話しかけてみてよ……」
「断るわ」
生憎私は可奈先輩とは違い一般人なために羞恥心というものが存在するのだ。
「でもみんな私達を交互に見てるよ……?」
「それは困るわね」
というわけで隣にいた自称保護者に視線を送る。可奈先輩を止めてきて、と。
「いやいや、俺だって御免こうむる。むしろエリス、お前が行ってこいよ」
「えぇーーーっ!? 何で私なの? わ、私よりも朋子ちゃんのほうがいいんじゃないかな? ほら、可奈先輩って朋子ちゃんの尊敬する人なんでしょ?」
「えっと……確かにそうだけど、気後れするというかなんというか……その分先生は可奈先輩のお師匠様なんでしょ? 可愛い弟子の面倒を見るのが筋なんじゃない?」
互いに牽制しあう三竦み状態。その矛先を間違えた瞬間に残る二人に叩かれるこの緊迫感。全員が笑顔ではあるけれど、その裏には一般人と変人――もとい、独特な思考回路を持つ天才との境目で綱渡りをする危うさを秘めている。
つまり第三者の目から見ればアレの仲間であると。
「ひーーーろーーーいーーぞーーーっ!!」
そうしている間にも事態は悪化の一途を辿っている。誰かがやらなければならないが誰もやりたくはない。けれども誰もやらなければいずれ訪れるのは最悪にまで落ち込んだ後の結末。全員が巻き添えをくうのであればいっそ――
「あ〜スッキリした〜♪」
だが私たちが決断するその直前に可奈先輩はこちらへと駆け寄ってきてしまった。体中のストレスを搾り出したかのようにさわやかな笑顔だがそれを受ける側は正反対、私たちの心情はエリスちゃんがぽつりと呟いた『戻ってきちゃった……』という台詞が如実に表している。結果としてはなんら代わりのないことだけれど、それでもいざその結果が目の前に現れるとどうしようもない疲労感が圧し掛かる。
「あれー、どうしたの? みんなゲッソリしちゃって」
そんな様子など露知らず、純粋な顔でな疑問を投げかける先輩に思わず苦笑を浮かべてしまう。
けれども全くといっていいほど嘲笑は浮かんでこないのはやはり可奈先輩の人柄だろう。私も含めた一般大衆であるならば空気が読めない奴として排斥されるのが常なのだが、可奈先輩であればそれを許してしまう(少なくとも私は)雰囲気を作り出す。
「なんでもないですよ。ねえ、先生?」
「ま、萩野に自覚を求めようなんざ俺も思ってないがな」
「そうそう。なんて言っても萩野先輩だし」
「くぬ……なんだか馬鹿にされた気がする……」
不満げに顔をしかめる可奈先輩だったが、そんな表情も長くは続かず数秒後には次の話題へと移行していた。
「それよりお腹空かない? わたしなんか食べた−い」
「あ、私も私も」
不思議なもので、さっきまで意識はしていなかったが他人がそう言うと私まで空腹のような気がしてくる。欠伸と同じようなもので伝染でもするのだろうか。
閑話休題、とりあえず何か買いにいこう。実際朝からほとんど食べていないから胃の中は空に近い。もともと許容量が人よりも少なめなのだ、今まではほとんど動くことなどなかったから一食抜いたところで問題なかったが、退院した今はそれではもたないだろう。
「どうする? どっか食べにでも行くか?」
「それでもいいけど朋子ちゃんは海に来たかったんだよね? だったら公園内にある屋台で何か買ってこようよ」
「さんせー。もちろんお金はセンセーのおごりね」
「奢りって……まあ給料日後だから構わないが……」
何を食べようかで騒ぎ合う三人だったが、私はその中で場違いな疑問を抱いていた。
「あの……屋台って?」
予想通り場違いな質問だったようだ。三人揃って不思議そうな顔で私のほうに向き直った。思わずたじろぎそうになったがそこは我慢、おそらく外には私の知らないことは数え切れないほどある。そのたびにいちいち申し訳無さそうにしていては逆に相手に気を使わせてしまう。真崎さん曰く、むしろ当たり前のように聞いたほうがいいとのことだ。
「そういえば朋子ちゃんはここに初めて来たんだっけ」
思い出したようにエリスちゃんが呟く。
「なら知らなくても当然か。まあさっきも言ったとおりここには結構屋台が出ててな、ヤキソバやらお好み焼きやらクレープやら。他にもドネルケパブとかタコなしのたこ焼きとかな。まあ聞いたことの無いような怪しいもんまでいろいろと出てるんだよ」
「それをいろいろ買ってこよーって言う話だなんだよー」
なるほど、そいういうことか。確かに今から店に行くよりもそちらのほうが良さそうだ。それに私にとっては『海で』というのが何よりも重要だった。
海に来るのが今日が初めてなどここにいるみんなに言えはしないが、それでもある程度は察していると思う。わざわざ聞いてこないのは確信しているからか、それとも無頓着からか。まあどちらにしても私にとってはありがたい。とにかく、一番大切なのはこのメンバーで海にこれたということだ。さらに高望みするならば今が夏であることだが、まあそれは次の機会にということで。最初に訪れたのが冬の海というのもなかなか味があるというものだ。それに子供の頃に消化するようにこなす『初めて』を記憶に残る今この瞬間に体験できるのも考え方によっては得をしているといえるだろう。ものすごいプラス思考ではあるが。
「私も、そっちのほうがいいかな」
「それじゃあけってーだね」
「そういうわけで、はい」
「……おいエリス。なにがはい、なんだ?」
笑顔で手のひらを上倉先生へと向けるエリスちゃんに怪訝な表情を向ける先生。
「なにって、お昼食べるんでしょ?」
「そうそう。お昼食べるんだよ」
エリスちゃんに並ぶようにして可奈先輩も手を差した。
「お兄ちゃんさっき言ってたじゃない。奢ってやるって」
「誰がお前に買ってやるって言った。今日は藤浪の退院祝いじゃないか。そもそもエリスには小遣いをやっているだろうが」
「だったら私にはくれるの?」
「余計に理由が無いだろ。自分で買え、自分でな」
「ぶーぶー。お兄ちゃんのけちー」
「センセーってば案外小さい人だったんだね……」
「仕方ないですよ。お兄ちゃんってこういう人ですから……」
「朋ちゃんの退院祝いならみんなで祝うのがふつーだよね……」
「それを朋子ちゃんだけにしか奢らないだなんて……」
「だーーーっ!! 分かったよ。ほら、これでなんか買って来い」
「さっすがお兄ちゃん」
「センセーってばカッコイー」
上倉先生が仕方なさそうにポケットから財布を取り出すや否や、コロッと態度を変える二人。
「ってこんなに貰っていいの!?」
「なんだよ。まさか硬貨だと思ってたのか? さすがに札ぐらい出してやるよ」
「センセーって実は気前良かったんだね〜」
「私も知らなかったな……」
「おいおいエリスまで……どれだけ俺を見くびってたんだ?」
「でもお兄ちゃん。これ五千円札だよ?」
「なっ……ちょ、まてエリス!!」
「待たないよー」
「センセーの分まで買ってくるから期待しててねー」
逃げるようにして駆け出す二人。完全に話題に乗り遅れた形となった私はその光景を見ているだけだった。
「ほら行こう朋子ちゃん」
「えっ?」
だから唐突に掴まれた腕にも反応することが出来なかった。
「初めはお好み焼きからだよー」
背を押され、足がもつれながらもなんとか走り出す。
話に加われなかったとき、心なしか疎外感を感じた。近くにいるはずなのになんと話しかければよいのか分からなかった。
きっとそれは私が他者と関わりを持とうとしなかったからだろう。だからいざ自分から話しかけようと思ってもその経験が無いからどうして言いのか分からない。今までは自分の世界に閉じこもった気でいて、話しかけられるのをずっと待っていた。真崎さんや上倉先生、それに今私の手を引いてくれている二人もそうだ。そう考えてみると今まで自分がどれだけ甘えていたのかが良く分かる。
今の私は赤子も同然だ。一人で歩くことさえままならず、手を引いてもらい背を押してもらい、そうしてようやく一人前のように振舞うことが出来る。それはより大きなコミュニティーに属するとなるとなおさら顕著に現れるだろう。一人輪に加わることが出来ず孤独に過ごす姿が容易に想像できる。
今の私は恵まれているのだろう。何もせずにこんなにも素晴らしい人たちが周囲にいる。きっと学園でも彼女たちは私を助けてくれるだろう。しかしそれでは駄目なのだ。他人に頼りきっているのでは今までとなんら変わらない。私が私自身の力で一歩踏み出してこそ意味がある。私が歩み寄ってこそ先がある。一人の人間として確固たる自分を確立できなければ私は変わることなど出来ないだろう。
遅れがちだった足に力を籠める。私に合わせた小走り程度の速度、それでも若干の距離があった。けれど今ようやく並ぶことが出来た。だからだろうか、それとも単に上倉先生から十分に離れたからか、あるいは疲れただけか。二人は勢いを徐々に弱めゆっくりと歩き出した。ただそれだけだったけれど自然と笑顔になっていた。エリスちゃんも可奈先輩も笑顔だった。友人同士でいることがこんなにも楽しいことだとは知らなかった。
「で、随分と遅かったな」
「え、ええっと……お店がすごいたくさんあったから……」
「そうそう。どれを買うかちょーっと迷っちゃって〜」
「もしかして先生、ずっとここで待ってたの?」
「当たり前だろ。しかしこの寒空の中、まさか一時間も待たされるとは思わなかったがな」
妙に刺々しい台詞だった。というかそれこそ当たり前か。
「で、その量はなんだ?」
「え、ええっと……お店がすごいたくさんあったから……」
「そうそう。どれを買うかちょーっと迷っちゃって〜」
「その言い訳はさっき聞いた」
流石に私も口を挟めない。というのも単に遅めの昼食を買いに行っただけなのになぜか帰ってきたときには三人で何とか持ちきれる量の食べ物が目の前にあったからだ。ヤキソバやらお好み焼きやらクレープやら。他にもドネルケパブとかタコなしのたこ焼きや初めて聞くような怪しげなものまで、まさに上倉先生が挙げたものを全て取り揃えてきたといわんばかりだ。
「ほ、ほんとはね、何か一つにしようと思ったんだけど……ほら、朋子ちゃんがどれも食べたこと無いって言うからつい……」
「そ、そうそう。だから仕方ないよね。今日はセンセーが朋子ちゃんのお祝いをするって言ったんだから」
「な、何それ!? 私のせいなのっ!?」
さっきまで楽しい雰囲気だったのにここに来ていきなり責任転嫁!? なんという裏切りだ……
「で、でもね、朋子ちゃんを責めたりしないであげて」
「センセー、朋ちゃんが悪いわけじゃないんだよ? 私たちにも責任があるんだから」
私は何もしていないはずなのになんだこれは。これじゃあ私を庇っているみたいじゃないか。
「そうか……」
二人の熱心な言葉に大きく溜息をつく。それと同時に先生の表情も和らいでいく。その様子を見ていたエリスちゃんと可奈先輩も緊張を解き――
「きゃっ」
「あたっ」
上倉先生の両手が二人の顔面にのばされた。
「まったく白々しい三文芝居を。素直に謝れば許してやろうと思ったものを」
「いたたたたたたたっ!!」
「うきゃーーーーっ!!」
ぎりぎりとこめかみを締め付けること数十秒、ようやく上倉先生は二人の頭から手を放した。
「というかお前も一緒にいたなら止めろよな」
「あたっ」
ノックするように頭を小突かれた。
「まったく、仕方ないやつらだ」
疲れたように言い捨てた先生だったけれどその目は優しく、本当に保護者みたいだった。エリスちゃんという存在がいるからだろうか、私たちは先生にとって生徒であり、同時に妹みたいなものでにあるんだろう。その他大勢の生徒と同一視されないことは嬉しいのだけれど、どこかほんの少しだけ物足りない感じがする。
「まあ買ったものは仕方ない。そのかわりこれが今日の夕食だからな」
「ええーーーっ!? それじゃあ今日はお兄ちゃんのご飯は食べられないの!?」
「んなこと言われてもな、第一お前が買っていたんだろ?」
「それはそうだけど……美味しいのは本当だけどこういうのはここで食べるものだよ? それにお兄ちゃんのご飯のほうが美味しいんだもん」
「そうそう。センセーってばこう見えて料理上手だもんねー」
先生が料理上手。意外だった、というか知らなかった。
少しショックだった。私が一番先生のことを知っているとは思わなかったが、どこかで私は先生のことを良く知っていると思い込んでいた。けれど実際良く考えてみれば私より可奈先輩のほうが一年以上も長い付き合いだし、それを言ったら先生の従兄妹であるエリスちゃんのほうが良く知っているに決まっている。
「私も……先生の料理食べてみたいな」
だから自然とそんなことを言っていた。
「お前もか……まあ今日は無理だけどまた今度な。そのうち萩野と一緒に食べにこい。とりあえず今はこれを食べることが先決だ。ある程度はここで食べるとして……後は萩野も藤浪も分担して持って帰れよ」
「はーい……」
「は〜い」
若干沈んだ声と高揚した声。いつも食べている身としては残念なことで、食べていないものとしては機会が出来たことに喜んでいるのだろう。
「それにしても珍しいね〜」
「何がだ?」
「いつもの先生なら面倒だー、とか言って断るのに今日は自分から食べにこいだなんて。もしかして朋ちゃんがいるからかな?」
「えっ……」
思わずもらしてしまった呟き。自然と期待するような眼差しを向けてしまう、が。
「んなわけあるかよ、たまたまだ。それにそろそろクリスマスだからな。そのまえにちょっと試したい料理があったからだよ」
がっくりと肩を落としてしまう。まあこんなことだろうとは思ったけれど項もあっさりといわれるとは。少しぐらいは含みを持たせてくれてもいいだろう。
「朋子ちゃん、元気出して」
ポンッと方に置かれる手。俯きがちだった顔を上げればそこに笑顔のエリスちゃんがいた。
「……残念だったね」
言葉ではそういっているが、顔は笑顔。
「……ちょっと喜んでるんじゃないの?」
「そんなことないよ」
どう考えても笑顔――いや、それもそうか。私たちはライバルなのだ。友人でもあるけれど譲れないものもある。
まあ本気で言っているわけではないだろう。その裏には若干の本当が交じっているだろうけれど。
「それじゃあ次は買い物だよー」
「はぁ? まだどっかいくのか?」
「まだって、ここにきただけだよ? センセーってばもしかしてもう疲れたの?」
「んなことない」
「それじゃあ買い物にいこーよ」
エリスちゃんと顔を見合わせる。お互いに軽く笑いあうと先生と可奈さんの会話に入っていく。
勝負はこれからだ。
「ねえお兄ちゃん。私は服が見たいな〜」
「私も。私服って全然持ってないから」
まだ私は歩き始めたばかりだ。手を引いてもらい背を押してもらい、それでようやく人並みになれる。だからこれからだ。学生らしく当たり前の生活をして、そして当たり前のように――
まずは今日を楽しもう。
随分時間が空いてしまいました。それも忙しかったから、という言い訳をさせてください。(⊃Д`。)゜
ええ、更新する時間は有りませんがゲームする時間はあるんです。
まあこれからはちょくちょくやっていくんで見捨てないでくださいな。
一応朋子さんは退院いたしまして、次回からは学園編です。原作だとそっこーでクリスマス&冬休みなんでチョイ変えます。休みまで一週間ってトコですかね。
次回はラブコメです☆

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これからも頑張ってください。
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