隠れオタでもいいじゃないか
主にPCゲームの二次創作を書かせていただいています。 あとは最近やっているゲームやら読んでいるラノベやらのこととか……。
06月19日(木) [ FORTUNE ARTERIAL SS ] # 77
- FORTUNE ARTERIAL 千堂伽耶SS 『れくとあんぐる・ハート』〜ハーレムエンドなんか存在しませんから〜
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温暖化の影響か一足飛びに訪れた猛暑。鬱陶しいほどに求愛行動を続ける蝉たちと嫌気が差すほどの降水量。クラスメイトたちが脱力しながら過ごす毎日だが、俺の心情はここ数日非常に穏やかだった。
というのも吸血鬼のおかげか、気温の変化に耐性がついたのが一つ。うだるような暑さも辟易するような湿気にも不快感を覚えることはなかった。まあ副会長はそれでも暑そうにしていたが要は慣れの問題なのだろう。今は不便な状況が一転したための快適さ。これから先はその快適な状況が普通になり、しだいに不自由を感じるようになってくるのだろう。とりあえず今だけのボーナス期間みたいなものだろう。そして二つ目、ここ最近学園生活がとても平和だ。生徒会の仕事はそれなりに忙しく、クラスでは紅瀬さんや陽菜たちと楽しく話したり――そうそう、数日の間行方不明だった司がようやく戻ってきた。本人もどうしてそんなことになったのかは覚えていなかったらしいが――寮でもみんなとお茶会をしたり。ふと嵐の前の静けさではないかと嫌な予感も芽生えたりするが……
ともかく平々凡々な日々をようやく勝ち取れたと思えたある日。今回の物語はここから始まる。
FORTUNE ARTERIAL 千堂伽耶SS
『れくとあんぐる・ハート』
〜ハーレムエンドなんか存在しませんから〜
「なあ、今日は何の集会なんだ?」
俺の横を歩いていた司が不思議そうに尋ねる。眠そうな瞳を何とか開きながら気だるそうに歩く姿は、さながら真夏の動物園に放り出された白熊のようだ。
「残念ながら俺も知らないんだよな」
俺たちは全校集会に参加するため講堂に向かっていた。外はぎらぎらと輝く太陽が昇っており数十分突っ立っていたならば運ばれていってもおかしくない気温(のようだ。前述の通り俺は平気だ)なのだが、講堂は冷房がかかっているため、かなり過ごしやすくはなっている。ただ人の熱気のせいでそれほどの効果は期待できないが。
「知らないって……お前生徒会だろ?」
「生徒会でも知らないことは知らないんだよ。ただ今日起きたらメールが入ってただけ」
言いながら携帯を取り出し司に見せる。
「……本日体育館で緊急の集会を取り行なう。各員、至急準備をされたし……?」
「てなわけだ。んで朝っぱらから準備をしてたんだけどさ、送り主も分からない。結局副会長も東儀先輩も白ちゃんも知らないって言うし。ただ会長は怪しかったけど……兎に角理由は分からないまんまだったよ」
「あ〜……まあなんだ、俺は寝られればなんでもいいよ」
「お前はそういうやつだよな」
ぐだぐだと会話を交わしだらだらと歩き続けようやく講堂に到着した。本来ならばもっと早く着けるのだろうが、司を放置しておくと暑い暑いといいながらもその辺で寝てしまうだろうから誰かが連れてこないといけないのだ。その誰かとはつまるところ俺だ。他のやつは怖いからといって近寄ってこない。
俺は司を後列の椅子に座らせると、自分は脇を通って裏へと回る。そこから壇上に上るとこちらからは生徒の姿が見え、向こうからはこちらが見えない場所がある。ここが生徒会役員の定位置だ。
「もう、遅かったじゃない。生徒会役員たるもの全校生徒の見本となるものなのよ? それなのに一般生徒より最後に来るなんて」
着くなり委員長のような言葉を浴びせてきたのは副会長だった。
「悪い。ちょっと司を連れてくるのに時間がかかった」
「またなの? 全く、ようやく紅瀬さんがまともになってきたと思ったら次は八幡平君だなんて……これは指導が必要かしら」
不穏な教育的指導を連想しながら哀れ司と心の中で呟く。もちろん口に出したりはしない。冗談でもそんなことをすればついでとばかりに俺まで指導されてしまうからだ。
殺伐とした雰囲気に恐怖しながら俺のために空けられた席に座る。怪しげな笑い声を上げる副会長と若干距離を開けながら。そうすると当然逆側の人とは距離が近くなるわけで。何気なく見たその隣――白ちゃんと視線がばっちり合う。一瞬どうリアクションを取るべきか迷ったが、とりあえず笑顔になってみた。
すると一瞬の疑問を浮かべた後、白ちゃんも満面の笑みを返してくれた。無垢で純真で、それでいて華やぐように。まさに癒しを具現化した笑顔だった。長らく続いた恐慌の日常によって擦り切れ叩かれ荒みきったその心が今この瞬間に洗われるような心地だった。俺は無意識のうちに癒しを求めふらふらと白ちゃんに引き寄せられ――
残り一メートルの距離で思いとどまった。
思いとどまらされた。
肩口から覗く一条の光。それは暗い闇の中から正確に俺に狙いをつけ虎視眈々と機会を狙っている。銀色に鈍く輝くその輪郭は暗く落ち込んだ相貌に反するようにぎらぎらと輝き俺の目を釘付ける。もし目を離そうものならその次の瞬間にどのような結果になるのか想像できない恐怖、逸らすことなどできはしない。幽鬼のように曖昧な輪郭にも関わらず、強烈な殺気のみがそこにあった。つうっと頬を伝う汗。からからに乾いた喉は万全に呼吸をすることさえ困難にしていた。
とりあえず怖いっすから東儀先輩。
どうやら俺に許された距離は一メートルらしい。距離を開けるとともに東儀先輩の殺気が薄れていく。まあ他の人間だったら数秒間視線を合わせるだけでアウトらしいからいい方だろう。未だにローレル・リングに人が入らないのは東儀先輩が希望者を闇に葬っているという公然の秘密があるぐらいだ。
「あれ? そういえば会長はどうしたんですか?」
副会長、白ちゃん、東儀先輩はいるにも関わらず肝心の会長がまだ居なかった。
「伊織なら準備があるといって先ほど出て行った」
「準備?」
「ああ。準備が整い次第始めるからそのまま待っていてくれ、だそうだ」
「まったく、アレのいい加減さには困ったものね」
辟易しながら肩をすくめる副会長に困ったような笑みを浮かべる白ちゃん。
「ですがしっかりしているところもありますよ」
「まあ有能ではあるけれどね」
それは俺も同感。同じことをやれといわれても絶対に無理だろう。あのカリスマ性や決断力、判断力。それは決して真似できない天性のものなのだろう。
そんな俺たちの注意を引き付けたのは耳を劈くほどの大歓声だった。講堂内を揺るがし、空気を振るわせたその人はまさに話に出ていたその人だった。
「何で会長が?」
「さあ? でも予想通り兄さんの仕業だったようね」
ちらりとステージのほうに目線を送る。突如巻き起こる伊織コールを浴びながら歩く会長を見ながらそう呟く。
「あれって……伊織先輩ですよね? いったい何を持っているのでしょうか……?」
颯爽と歩く会長だったけれども、白ちゃんが言うように何かを担いでいた。大工道具のように用途不明の物を担いでいるのだが全く持ってビジュアルと合っていない。にも関わらず違和感を持たせない会長のスペック。おそらくヘルメットとスコップを持っていても似合ってしまうに違いない。
まあそれはともかくとして、一体何を持っているのか。若干遠めではあるが吸血鬼アイを凝らせばすぐに見える距離である。目を細めるようにして意識を瞳の先に集中すればほら、一瞬にしてその詳細が見えてくる。
「あれって……階段か?」
「の、ようね……」
「そのようだな。以前に監督生室で目にしたことがある」
「階段ですか?」
一般的な視力を持つ白ちゃん以外には同様のものが見えているらしい。しかしだ、それを何故会長が持っているのかはさっぱりだ。まあ一般人の思考と志向を持つ俺なんかに狂人にして才人の嗜好なんかは理解し得ないのだが。
その会長は相変わらず続く伊織コールを受けながらステージの中央に置かれていた演台の前に階段を置くと、演劇のように両手を広げながら颯爽と視線を持ち上げた。
「すまない、みんな…….」
それだけで会場が静まりかえる。あっ、会場じゃなくて講堂だ。やばいなぁ……本気でライブ会場に思えてきてしまった。
「突然集まってもらって悪かったと思っている。貴重なみんなの時間を奪ってしまう俺を許してくれ」
「毎回思うのだけれど兄さんはもっと普通に話せないのかしら」
あんたも大概だぜ副会長さん。まあそこがいいところだけど。
「だが……だがっ!! 今日みんなに話があるのは俺じゃないんだ……」
訴えかけるように、見るものの憐憫を誘うかのような会長の言葉にほとんど全ての生徒が聞き入っている。残りは涙を流してまともに話を聞けない状況だった。なんつーか、とりあえずすごい人だ。最近の演技もまともに出来ないような俳優の変わりにドラマに出てほしいぐらいだ。ちょっと前まではよかったんだけどなぁ……十年位前にやってた子供戦争、だっけ? まあそんな感じのドラマ世代の子役が大人になったぐらいの年代のやつらか、兎に角酷すぎるからなあ。
閑話休題。会長の心の篭った訴えに会場中の――もう会場でいいや。会場中の人間がその主役へと関心が向かっている。
「では脇役は潔く身を引かせてもらおう」
会長が数歩下がるにあわせて見慣れた人影が袖から姿を現す。豪奢な着物を身に纏い、身の丈に合わぬその存在感を持つ人物。
「ってお母様っ!?」
思わずツッコミを入れたくなるその気持ちはよく分かる。俺が声を出さなかったのは、いや出せなかったのはその後の展開が何故か、知りたくなかったが、分かりたくもなかったが、用意に想像できてしまったからだ。
副会長の言葉が聞こえたのだろう。こちらに視線を向けた伽耶さんは意味ありげな笑みを浮かべた。会長もまあまあとでも言うように手のひらをこちらに向け、そうした後マイクを伽耶さんの前にあるスタンドに返した。
それを受け伽耶さんが視線を生徒に移した。伽耶さんが生徒に姿を見せるのはおそらく初めてだろう。一応この前悠木シスターズと司に顔を見せたから厳密には初めてでは無いけれど、公の場では初めてのはずだ。引きこもり児童だった伽耶さんの学校デビューといったところか。あるいは転校生紹介。みんなも突然登場した幼女に視線を引き付けられている。
「紹介に預かった理事長の千堂伽耶だ」
小さな咳払いとともに伽耶さんが口を開いた。戸惑いと好奇の声を上げていた生徒もその凛とした声に自然と静まっていく。
「暫しの間所用で外していたので多くの者は初見であるかと思う。以後見知っておいて欲しい。それでは私のほうから幾つか報告させてもらう。
まずは次週に迫ったプール開きについてだが、以前に書面で通達したように整備委員と水泳部はプールの掃除をしてもらう。またこれには有志の参加も受け付けている。希望のものは申請書を生徒会前に設置してある専用の箱に提出すること。
次に各部の追加予算について。春の大会において優秀な成績を収めた部活動に特別手当を授与することが先日の会議で決定された。対象となる部活動については顧問に通達してあるので各部確認しておいてほしい。
次にだが――」
意外、だった。伽耶さんが出てきたときはどんな騒ぎになるかと思ったのだが、平均以上に上手くできているではないか。まあ報告自体は生徒会の仕事の範疇であるものも含まれているのだが、おそらく出来る限り伽耶さんに話をさせようと会長が譲ったのだろう。
それにしても話し方が上手い。抑揚の付け方、呼吸をするタイミング、発音の仕方も聞いている人間のことを考えている話し方だった。以前は威圧的な印象しか受けなかったのだが、今はそれとは完全に正反対だ。俺も副会長も白ちゃんも感心して、あるいは感動して伽耶さんの話に聞き入っていた。
「最後に私的なことではあるが報告しておこう。私の名前から薄々感づいているものも居るかと思うが、この千堂伊織の親でもある」
会場中にざわめきが走った。まあ当然の結果なんだけど。確かに千堂って苗字は珍しいから親戚かそこらだとは思うが母親とは思わないだろうな。
「それと近々、千堂から支倉に代わるのでよろしく頼む」
「「またそれかっ!!」」
見事に重なった二人の声。これ以上余計なことを言わせるかと立ち上がろうとしたのだが、その前にまるで引っ張られるようにして椅子に叩きつけられてた。
いや、これは叩きつけられているのではなく――
「なっ!? 椅子が動いて――」
「ど、どうなってるの!?」
「きゃああぁ」
パチンコではじき出されるように椅子が急発進。床を滑るようにして移動し――突如急停止。そうなると慣性の法則というもので。
気をつけて、車は急には、止まれない。
見事に放り出された俺たち四人は宙を舞っていた。突然のことに混乱はしたが、どうすべきかは身体が分かっていた。スロー再生を見ているかのごとく長く感じられる時間の中でゆっくりと自分の身体を動かしていく。落下が始まる前に反転、下半身を床側に、衝撃を殺し、体制を整える。
摩擦とともに音を上げる靴。両手両足でブレーキをかけながら何とか着地する。ポーンと放り出された白ちゃんは東儀先輩が見事にキャッチ。副会長も華麗に着地、はしたのだが。
「え゛っ?」
何故か勢いよく反転、逆立ちに近い状態になってしまった。加えてそれだけでは収まらずそのまま滑っていく。逆立ちをしたままで。くるくると回転しながら滑るその姿はブレイクダンスをしているかのようにも見えるが、違う点は本人には制御できないというところだろう。
そのまま真っ直ぐ反対側の袖へと吸い込まれていく。反対側――でっかい木材とか看板とか、用途不明の器具だとかの束――に突っ込んでいく副会長。いくら渾名がアレだからってホントに突撃しなくても……
などとボーリングの玉ように滑っていく副会長を悠長に見送ってしまう。だって俺にはどうしようもないしね? いくら身体能力が高くても物理法則には逆らえません。
反対側まで行き着くとまあ当然のごとく荷物の山にぶつかるわけで。
ここで質問。壁に寄りかかるように立てかけてある物の下方に対して、壁と垂直に力が加わるとどうなるか。
A、倒れてきます。
まあアレだ。ドミノ倒しをイメージして欲しい。正し倒れる方向はある一点に向かってだが。何の因果かその一点に居る副会長。あまりの轟音に擬音で説明するのも困難なほどの衝撃が会場に鳴り響く。副会長の状態は恐ろしくて確認することが出来ない。まあしいて言うならばアレだ。落下したトマト。あるいは叩きつけられたヒキガエル。
にしてもなんであんなに滑ったのだろうかと床に視線を落とせば、これでもかと磨き上げられたレーンがあった。いや、この光沢はワックスだろうか。あるいは氷か? ともかく異常なほどに摩擦が小さくされているのだろう。こんなことをするのは一人しか知らない。
「……準備ってこれですか?」
「はっはっは。何のことだいマイファーザー? 僕には何のことかさっぱりだよ」
「さわやかな笑顔で何を呟きやがりますかこの野郎」
「止めてくれよ父さん。今の時期しつけと虐待は紙一重なんだから気をつけてくれよな」
「だ・れ・が!! 父親ですか!?」
「それじゃあ弟かい? 個人的には父親になってくれたほうがいいのだけれどね。それより支倉君、いつまでいちゃついているんだい? 息子としては両親のバカップル振りほど対応に困るものはないんだよ」
「へ?」
そういわれて初めて自分の隣に人がいることに気がついた。副会長の身体を張ったパフォーマンスに意識を奪われていたため今の今までそんなこと気にもしなかった。反射的にいわれた方向を振り返ってみればそこいたのは伽耶さんであった。ハテナマークが三つ並びそうな状況だったが、よくよく考えてみれば伽耶さんは初めからここに立っていたのだ。突っ込んできたのは俺のほう。
「ただなんで顔がこんなに近いんですか?」
「それは孝平の顔を良く見えるようにするためだ」
「なんで腰に手が回っているんですか?」
「それは愛しい孝平を受け止めるためだ」
もしかしてどうしてそんなにお口が大きいのと尋ねたら食べられてしまうんだろうか……
「ところでその台はどうしたんですか?」
「これか? 伊織に言って持ってきてもらったものだ。ただそれだけでは味気なかったのでな、少々手を加えたがな」
手に入れたおもちゃを自慢げに見せびらかす子供のようだった。ただそのおもちゃはものすんごい高級そうだった。表面は……漆か? 俺には良く分からないが。良く見れば所々に意匠が凝らしてあるし、おそらく俺には想像もつかない値段の代物なのだろう。
「どうだ、雅だろう?」
雅というよりみやびだ。なんだ俺は伽耶ちゃんぷりちーとでも言えばいいのか?
「ねえ支倉君、ちょっといいかい?」
「どうかしたんですか会長」
「さっきもいったんだけどさ、いつまでくっ付いているんだい? みんな見てるよ?」
会長の指を指すままに視線を向ければそこにいるのは全学院生。好機の視線が束となって俺に襲い掛かってきた。
途端に羞恥心が湧き上がってくる。
「ちょちょちょっと伽耶さん!? いい加減その手を離してもらえないでしょうか?」
慌てて引き剥がそうとするのだが、がっちり食い込んだその手は一向に離れそうも無い。
「まあそう言うな。丁度いい機会ではないか」
「いい機会?」
馬鹿みたいに鸚鵡返しに呟いた俺に、会長が肩を叩きながらにこやかな笑みを浮かべてきた。
「そう、いい機会だよ」
遊園地で配られる風船のように手に紐を握らされた。反射的に引っ張ってしまう俺。すると一瞬の手ごたえとともに背後の壁が剥がれ落ちた。
「ドンドンパフパフ〜。第一回チーム対抗型鬼ごっこ〜」
秘密道具でも出すかのように声を上げる会長に唖然としてしまう。会場中も静まりかえり会長の言葉に聞き入っていた。
「今回の企画を説明させていただきましょう。ルールは簡単、鬼を捕まえるだけです。参加可能なのは全校生徒だれでもです。一チーム最大三人までとしてある人物を追いかけてもらいます。そのある人物とは――」
スポットライトがある一点に集中する。まあ言うまでもなく俺なのだが。
「って俺ですか!?」
「はい、ナイスツッコミをありがとう。そう、とある人物とは我が生徒会役員である支倉孝平君です。この支倉君を最初に捕まえたチームには豪華賞品を差し上げます」
「そこから先は俺から説明させてもらおう」
いつの間にか横に立っていた東儀先輩が会長かマイクを受け取り一歩前に躍り出た。それだけで会場中の熱い視線を独り占めしていた。
「豪華賞品とは形あるものではない。それは優勝者の望むもの、刑法に触れない限りはどんなものを望んでもらっても構わない。東儀家が全力を尽くしてバックアップをさせてもらおう」
その言葉に会場のボルテージが一気に引き上げられた。東儀家が付く、それはすなわちこの島で出来ないことは何も無いということだ。先ほどまでは半信半疑だった生徒も今では完全に乗り気になっているだろう。
「といっても誰もがその権利を得れるわけではない。もちろん参加は自由なのだが……」
そう言って何やら番号の書かれた布のようなものを取り出す。
「参加者にはこの鉢巻を身体の見える部分に結んでもらう。同じ番号の書かれたものが三枚、チームに三枚ずつ配られる。これを持っているチームだけが鬼を捕まえることが出来る。ここで重要なのは一つだけリーダー用の鉢巻があることだ。他の鉢巻きが取られても即失格にはならないがリーダーのものが取られたらそこで終了となる。ただしリーダーでなくても鉢巻を取られた人物はそこで退場となる。
しかしチームの誰かが再び鉢巻を取り返せば再び参加することも出来るので最後まで諦めないことだ。基本的なルールは以上となる。詳細はこの後各クラスに配布するのでその際に確認すること」
「補足させてもらうと直接的な暴力は禁止だよ。ただ危険が及ばないようなトラップはOKだ。そのあたりは自己判断で頼むよ。もしも危険だとこちらが判断すればペナルティーを受けてもらうからね」
何がなんやら。いつの間にか鬼にされた俺。まあ吸血鬼だからあながち間違いでは無いんだけどさ。それにしたってもうチョイ事前説明があってもいいんじゃないのか?
「だって言ったら反対するだろ?」
「当たり前です」
俺の返事に満足そうに頷くと再び生徒のほうに身体を向けた。
「先ほど行ったとおり賞品は自由だ。お金でも構わないし世界一周旅行でも構わない。身近なテスト免除でも気になるあの子あの人とお近づきになるのでも構わない。まさにアタック・チャ〜ンス」
「それはアレですか……?」
「めがねめがね〜」
「それはきよし違いです。あと東儀先輩の眼鏡を取らないように。多分本気で怒ってますよ」
どす黒いオーラが渦巻いてるあたり。
「それにだ、もしも逃げ切ったら君にもごほうびがあるからさ」
「ごほうび?」
訝しげに呟くと、会長は俺の傍に顔を寄せると越後屋のようにニヤリと笑った。
「瑛里華といいことをさせてあげよう」
「アホかぁぁぁっっっーーーーーっ!!」
数十メートルを一瞬でかける助走で副会長が飛び込んできた。突っ込みも忘れずに。
ただその右手に持つものはハリセンではなく角材だったが。この兄妹の漫才は命がけだな。
「え、瑛里華……なぜ、角を、取らない……?」
「角を取ったら殺傷能力が落ちるでしょ?」
小学五年生を相手に説明するかのような懇切丁寧な副会長の言葉。ただ言っている間もその両手は正確に振り下ろされているが。
「なあ……瑛里華…………どこからか、ごめんなさいって…………聞こえないか?」
「聞こえないわね」
集会で繰り広げられる惨劇。つーか対性のない人間が見たら卒倒する光景だぞ? そうでなくても副会長に対するイメージは滝のように落ちきっているだろうよ。
「それでは開始は三時間後の十二時からとする。全員用意をしておくこと。説明はこれで終わらせてもらう」
それでも動じることなく(眼鏡を取り返して)そう締めくくった東儀先輩。一礼をするとその場を伽耶さんに譲るように一歩下がった。
「以上を持って今回の集会を終わらせてもらう。一同礼」
こうして集会は終わったのだが、惨劇の気配は容赦なく俺の背後へと近づいていた。
<続>
ようやく更新完了です。まあ続きは結構早めに更新する予定☆
ただし次回はバトルものです(嘘)
ここ最近メモオフにはまりました。ヒストリーが手に入ったんでずっとやってます。いや、キャラがいい。普通なんだけどその普通さが。どっかの地雷作品よりもよっぽどね。
ちなみに一番気に入った台詞はこちら。
「デモは機動隊が鎮圧しました」
ちょっと違うかも知れんけどこんな感じ。私生活でもつい使えそうな台詞っすね。
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